第1話 青春とは
人間としての生を終え、神となったヘラクレス。
青春の女神へーべと結ばれ、オリンポスに迎えられます。
幸せな夫婦生活。
ラブラブです。
子孫はひどい目に会いますが、甥のイオラオスがなんとかがんばりました。
別の国ではヘラクレス朝なんかが開かれて、結構みんなそれなりに幸せに過ごしているようです。
そして。ヘラクレスはふと、疑問を持ちました。
「あなたは青春の女神ということになっているけど、『青春』ってどんなの?
若いってこと?」
イオラオスは、「もし私が若ければ、この王を討つことができるのに」と願ったようですが、実際、青春って何だか、ヘラクレスには実感できないのです。
へーべは言いました。
「そうですね。
あなた様は、早く結婚しましたし、その後は十二の試練でしたし...。
わかりました。
あなた様に青春を謳歌していただきましょう。」
「え?それはどういう...。」
ヘラクレスの言葉を聞かず、青春の女神へーべは、ヘラクレスの額をやわらかい人差し指で、ちょんとつつきました。
「青春とは。
楽しむことですよ。」
へーべの姿と声は薄らいでいき、だんだんと視界が白くなっていきます。
気がつくと、ベッドの上。
ベッドとは?
この寝台のことか。柔らかい。この毛布も肌触りなめらかで、暖かい。
ここは?
ヘラクレスが見回すと、壁は白く...紙?
石ではない。床は木。石ではない。
どうやら、紀元前のギリシャではない、それはヘラクレスにもわかりました。
部屋を出て、下に降りました。
「あら、空玲須、おきたのね。」
母、歩口愛音が、笑顔で空玲須に声をかけました。
「母さん!?」
久しく会ってない母との再会です。ところが、母も父も久しぶり感は全くないのです。
「母さん、オレ...。」
母さんなんて、言ったこともない言葉が口から出ます。
「蘭ちゃんと一緒に行くんでしょ。
早くしないと待たせちゃうわよ。」
空玲須は、母に促されるまま、バンを食べて学校に行く準備をした。
パン。普段食べているものより柔らかく、ふわふわで、美味しい...。
学校とは?よくわからないが、黒い服を着て、カバン?を持って行くところらしい。
蘭ちゃん?人の名前か?
様々な疑問を持ちながらも、空玲須は玄関の扉を開けて外に出ました。