第20話 尾牟派麗子〜目堂冴②
聖リディア女学院の会議室。
尾牟派麗子は依頼を切り出しました。
「我が学園では今、謎の事件が起きておる。
そちの仕事は、その真相を突き止めることじゃ。」
他校の生徒に、生徒会長が直々に依頼。空玲須は、不自然な空気を感じとりました。
「あなたの学園の問題を、違う学校のオレに解決させるのはなぜでしょう。
...学園内では秘密にしたい、ということですか?」
「鋭いもんじゃな。
...そちに頼む理由は三つ。
一つ目は、そう、学園内では秘密にしたいから。
二つ目は、そちが或呉巣高校の怪事件を解決したと聞いたから。
三つめは、そちならば、『断らない』からじゃ。」
尾牟派麗子は、大人びた企みの笑顔を空玲須に向けました。
「水栓、天井と書道教室の扉...。」
眼鏡の女性が低い声で空玲須に言葉を投げました。空玲須の胸に突き刺さります。
「そちが解決してくれれば、全ての修理費と水道代を、聖リディア女学院が持とう。
予備費で持てるはずじゃな?目堂冴さん。」
目堂冴と呼ばれた女性。さっきから全く喋りません。つるに鎖のついた古風な眼鏡が知的な印象を醸し出します。目堂冴は、カタカタと文字盤を叩いた後、人差し指で眼鏡の位置を直しました。
「理事長の許可があれば、金額としては可能です。」
「よい。
おじい様には、わらわから話を通そう。」
空玲須は、考えました。
成功すれば、母や父に報告せずに済む...。
失敗した時のリスクは不明だが、この際忘れよう。
返事は決まった。こんな時は、何ていうんだっけ?そうだ、この前「てれび」で見た。空玲須は、さむらいが言っていた言葉を返します。
「そちも、ワルよのお。」
尾牟派麗子に睨まれました。
まずい。これは間違えたかな...。
しかし、尾牟派麗子は、目を逸らして「ふっ」と笑った後に言いました。
「わらわが、ワルか...。
そうかもしれぬ。しかし、わらわにも学園を守らねばならない使命があるのじゃ。
...そのためなら、ワルにでもなろう。」
そして、目堂冴に言いました。
「契約は成立じゃ。書類を。」
空玲須は、目堂冴が準備した何枚かの書類にサインをしました。尾牟派麗子は満足そうに微笑みます。
「では、早速。
アレに着替えてもらおうかの。」
空玲須はテーブルに置かれた服を手に取りました。
......。
聖リディア女学院の制服。
「コレを。
...オレが?」
「そうじゃ。一番大きいのを準備した。」
...沈黙が部屋を支配します...。
「絶対、着ないとダメですか?」
「うむ。
仕方ないの。理由を教えてやろう。
...試しにこの部屋を出て、隣の部屋に入ってみよ。」
空玲須は言われた通りに会議室を出て、隣の部屋のドアノブに触れました。
ふぁーんふぁーんふぁーん...。
たちまちサイレン&赤色灯が発動。
「この学園のセキュリティはの、
『制服に反応』するのじゃ。
目堂冴さん。
すまんが、警報を止めてきてたもれ。」
目堂冴は、警報を止めるため職員室に向かいました。すれ違いざま、空玲須は、眼鏡から染み出る黒い影を見た気がしました。
「のお?
...そちは、あの目堂冴をどう見る?」
尾牟派麗子は、あの人が怪しいとにらんでいる、そのことを空玲須に伝えるために、わざと同席させた?
尾牟派麗子。なかなか油断ならない者のようです。