第7話 阿卯毛明日矢のプール掃除①
今日はプール掃除です。
女子はみんな、雨が降ればいいと思ってました。男子は...。
晴れ!素晴らしい!なんていい日だ!
生徒たちは普通、体操着でプール清掃をするのですが、水泳部だけは「水着に着替えて」プール清掃をする習わしなのです。
そして、男子たちの狙いは...。
帰国子女の水泳部エース、出井亜寧羅!
ちょっと勝気な、くりくりとした大きな瞳。太陽のように弾ける笑顔。そして引き締まったボディとすらりと伸びた手足!
あの水着を公的に眺められる...。
男子にとって、夢のような、最高の日。
代わって、女子は皆、不機嫌です。出井亜寧羅が嫌いなわけではないけれど、やはりそこに少しの嫉妬はあるのでした。
さらに、体育の阿卯毛明日矢先生。何かにつけて課題をふっかけてきて、できないと連帯責任としてグラウンドを走らされる、皆から嫌がられている先生がプール掃除の担当なのです。
空玲須が更衣室から出たのは、男子では最後の方でした。皆、超速で着替えてあっという間にプールサイドに行ってしまったからです。
「なあ、プールってどうやって掃除するんだ?」
空玲須はとなりの男子に書きましたが、返事は返ってきませんでした。...男子の意識は皆、釘付けでした。
出井亜寧羅が向こう側のプールサイドでストレッチをしています。男子たちの目は❤️。その後ろには部長をはじめ、他の水泳部員もいましたが、出井亜寧羅が注目の的なのは火を見るより明らかでした。
阿卯毛明日矢先生が出てくると、みんなきちんと整列しなおしました。なにしろ、どこに文句をつけられるかわかりません。うかつなことをすると、「全員グラウンド十周の刑」です。
「各班、バケツを二名。残りはデッキブラシ。
役割が決まったら道具を取りに来い。
それじゃあ...、おっと待った。」
阿卯毛明日矢先生は口の端だけでニヤリと笑って言いました。
「プール掃除は、この時間しか取ってない。もし終わらなければ、『全員グラウンド十周』な。」
生徒たちをどんよりとした空気が包みました。が、ぐずぐずしていると本当に「グラウンド十周の刑」になってしまいます。皆いそいそと役割分担を話し始めました。
「なるほど。水を撒いて、コレでこするのか。」
空玲須が掃除の仕方をようやく理解したとき、後ろから声がしました。
「ちょっと、水!かかったぁ。あははッ。」
女鹿蘭が、他の女子とデッキブラシで水を飛ばしてはしゃいでいます。キラキラと陽に輝く水しぶき。心から楽しそうな女鹿蘭の笑顔。
空玲須は、なぜだかドキドキしてしまいました。