第18話 「仲間」
校舎が元に戻る少し前。
「出井亜寧羅、スマホよこせ。」
「ああッ、それ持っていかれたら、空玲須くんが戻れなくなっちゃう...。」
「うるせえ、ウチが行くから大丈夫!」
パァン!
女鹿蘭は、必歩流帝を平手打ちします。
「テメェ...。」
「空玲須は、外のみんなを頼むって言った。
わたしも、あんたも、頼まれたことをやらなきゃ。」
必歩流帝は、横を向いてケッと言いました。そして、
「行くったら行くんだァッ!」
叫びながら校舎に突撃!
「そのまま行っても迷子になるよう!」
出井亜寧羅もスマホを手に後を追っていってしまいました。
校舎内は、空玲須が言ったとおり、真っ暗です。
「結局、オマエも来たんじゃねえか。」
必歩流帝は、女鹿蘭にグチります。
「...。」
三人は出井亜寧羅のスマホを頼りに空玲須の位置へ向かいます。通話はすでに切れています。多分、向こうのバッテリーが切れたのでしょう。
と、そのとき、黒い影は校舎の床や壁、天井からさあっと引いていき、元通り明るくなりました。
三人は、二階の書道準備室に走りました。
「空玲須くん!」
書道教室前。トップで着いたのは出井亜寧羅です。
「無事で、よかった。返事してよねもう。」
必歩流帝が到着。砂埃で汚れた空玲須と、崩れた瓦礫を見て、察しました。
「結構、やられたな。大丈夫か?」
女鹿蘭は到着するなり、空玲須に突進。空玲須は、女鹿蘭を受け止めて支えます。
「...心配した。」
空玲須の胸に頭をつけて、下を向いたままそう言いました。ポタリと床に雫が落ちました。
「...ごめん。ちょっと力を抜くわけにはいかなくて...。」
空玲須は、その場にいる人にしかわからない説明をしました。
「あー、ずるい。あたしも。」
出井亜寧羅も空玲須に突撃、空玲須の腕をとってギュッとします。
必歩流帝は、その様子を見てつぶやきました。
「お前ら、空玲須好きだな...。」
そして、思いました。ウチも、同じか...。
空玲須は、後ろで微笑む井尾玲の視線に気がつきます。
「そうそう、彼女が井尾玲さん。」
「井尾玲です。逃げ遅れたせいで、ご心配、ご迷惑をおかけして、すみません。」
三人は井尾玲を見て、はっと息を飲みました。
キラキラと光を纏う転校生。銀の髪も、白い肌も、華奢な身体も、優雅な立ち居振る舞いも。
...まさに、プリンセス。
三人のテンションは、なぜか爆下がってしまいました。
翌日。
「駅土奈先生。はいこれ。」
空玲須がレジ袋を差し出します。
「まあ、ありがとう。
...ん?」
駅土奈先生は、美しい片眉を上げました。
「これ、うちの子じゃないわ。」
「は?」
「これはミノタウロス。どっちかっていうと、ポセイドンの管轄。」
「ぽせい丼?何が載ってるどんぶり?」
出井亜寧羅が聞きますが、駅土奈先生は華麗にスルー。
「まあ、せっかく連れてきてくれたから、戻しとくわね。」
空玲須は聞きました。
「どうせ、まだいるんですよね?」
駅土奈先生は美しく妖しい笑みを浮かべました。
「そうね。この感じだと、うちの子じゃないやつもまだいそう。
平米以外の誰かの趣味かしらね。」
「全部、ここでいいんですか?
他に協力してくれる人とか?」
女鹿蘭の質問に、駅土奈先生はあっけらかんと答えた。
「いいわよ。どうせ仲間みたいなもんですもの。戻し方も同じようなもんだから。」
話していると、校内放送がかかりました。
ピンポンパンポーン。
「三組、空玲須。職員室まで。」
...空玲須は、書道教室の扉と天井の弁償を命じられました。