第4話 必歩流帝〜酷等との抗争①
その日の授業は終わり。
空玲須は、学校からの帰り方がわかりません。
「むう。
『バス』とはどこに行けば乗れる?
...女鹿蘭が『じゅく』に行く前に、帰り方を聞いておくべきだったか...。」
校門の前で迷う空玲須。道路には、爆音と共に駆け抜けていくバイクの集団。
「あれは、なんと読む。?」
必歩流帝。バイクの後ろにつけられたのぼりに記された文字は、当然の如く空玲須には読めませんでした。
「オマエか。獅子夫を倒したのは。」
一台のバイクが、空玲須の前で止まりました。
ヘルメットを取ると、溢れ出す金髪。長身の白い特攻服の中からは、サラシを巻いた胸にかかる、宝石を散りばめた金属のベルトがのぞきます。
「獅子夫は、殴っても倒せなかったはず。
どうやって倒したか、教えてほしい。」
バイクから降りた美女は、意志の強い眼差しを空玲須に向け、聞きました。
「あれは『怪化』というらしい。
殴っても効かないなら締める。
オレはそうやって倒した。」
「なるほど...。お前、強いな。
よし、ウチと来い。
行きながら話そう。」
美女は空玲須の手を引いて、自分のバイクの後ろに乗せました。いきなり発車するバイク。空玲須は振り落とされないよう、美女にしがみつきました。
「ウチらは『必歩流帝』。最近ウチらのナワバリに入ってきた『酷等』と抗争中なんだ。」
「ヒッポリュテー...?
ヒドラ...?」
二人は走行中のバイクで話します。
「この間やり合ったとき、『酷等』の奴らは、明らかに普通じゃなかった、」
「獅子夫と同じように?」
美女はハンドルを握ったまま、首を振りました。
「ちょっと違う。
一人倒すと、二人に増えるんだ。
人間が増えるわけがない。
ウチらも、わけがわからなかった。
でも、あれがお前の言う『怪化』なんだろう。」
空玲須は、駅土奈先生の言葉を思い出しました。人に取り憑いて、力を表す...。
バイクは速度を上げて、暴走集団の先頭に立ちます。そのまま「必歩流帝」は町を抜け、海岸沿いの道を走っていきました。
バイクが止まった頃には、辺りはもう暗くなっていました。巨大な建物が広い道の両端に立ち並んでいます。
共に来た「必歩流帝」のメンバーは、皆女性でした。女性の戦闘集団、ヒッポリュテー...。軽い頭痛を抱えながら空玲須は聞きました。
「必歩流帝、ここは闘技場か?
それにしては、観客席がないな。」
「『必歩流帝』はチームの名だ。ウチの名前じゃない。
...けど、まあいいや。
ここは港の倉庫だよ。決闘といえば倉庫に決まってるだろ?」
空玲須は、また一つこの世界のセオリーを知りました。
「にしても、闘技場...か。」
必歩流帝は、ニッコリ笑って言います。
「カッコイイな!その言い方。」
空玲須は、その笑顔にドキッとしました。