エピソード2 :兆し
地上での2年間は、まるで終わりのない一日の労働時間のように過ぎ去った。
かつては視線を向けることさえ恐れていた太陽も、今や空の当たり前な、まるで親しみ深い主(あるじ)のような存在になっていた。
埃っぽい道を歩く4人の少年少女の髪や服を、心地よい微風がいたずらっぽく揺らしていた。
これは、共通の過去と不確かな未来によって結ばれた4人組(クァルテット)だった。
16歳になったショーグンとオデッタ、そして年下の友人である15歳のカメリアとカーリーだ。
背中には学校のリュックを背負っていたが、彼らの目的地は家ではなく、労働のシフトだった。
一時間後、畑に漂う静寂を重いため息が破った。
カメリアは力なく泥の中に座り込み、手の甲で顔を拭った。
「あぁ......もう。疲れた」
「カメリア、お前ってやつは!」
近くで作業していたカーリーが振り返った。
彼はまるでゼンマイ仕掛けのように働き続け、土の塊が四方八方に飛び散っていた。その作業は混沌としていて、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
「学校でも泣き言を言ってたのに、ここでもかよ!俺を見ろ、エネルギーが溢れ出して止まらないぜ!」
彼は額の汗を拭ったが、その肌には黒土の太い跡が残った。
「カーリー、落ち着きなさいよ」
オデッタがカメリアに歩み寄り、友好的にその肩を抱き寄せた。
「彼女が疲れ果てるのは当然のことよ。私も疲れたわ。人間が疲れを感じるのは自然なことなのよ、カーリー。あんた、気づかなかったの?ねえ、カメリア?」
「その通りよ!」
カメリアは感謝を込めてオデッタに寄り添った。
ショーグンは、その正確な動きを止めることなく、肩越しに言葉を投げた。
「子供みたいな真似はやめろ。くだらないことで言い争わずに働け。清潔に、そして丁寧に。カーリー......自分を見てみろ。また泥だらけだぞ」
「わかったよ、ショーグン、わかったって......」
カーリーは汚れを落とそうとぶつぶつ言ったが、余計にひどくなるだけだった。
「また始まったわね」
オデッタは背筋を伸ばし、ショーグンを鋭い視線で射抜いた。
「ショーグン、あんたはどうしていつもそうなの?」
「俺はこういう奴だ。そして、こうあるべきなんだ」
「あんたはまるで、一歩一歩を監視する厳しい親みたい。自分でも変だと思わないの?」
ショーグンはゆっくりと腰を伸ばし、彼女の目を真っ直ぐに見つめた。
「それがそんなに気になるか?」
「ええ、すごくね」
「......トラブルが望みか?」
ショーグンの声に冷たさが混じり、カメリアは思わずクスクスと笑った。
「みんな、もう喧嘩はやめて!」
彼女は手を振った。
「ショーグン、あんたも今、働けって言ったばかりじゃない」
ショーグンはさらに数秒間、オデッタを視線で刺し続けたが、やがて黙って作業に戻った。
オデッタは不敵に微笑み、小さな勝利を祝った。
場面は急変した。
新しい居住地の外れに、政府のニーズに合わせて改築され、強化されたバルコニーを持つ5階建ての住宅がそびえ立っていた。
地図や書類の山が積み上げられた執務室の中で、レクヴィアのリーダー、カルデ・フレックがこめかみを指で押さえていた。
彼が報告書を次から次へと読み飛ばしていると、不意にドアが開いた。
そこに立っていたのは、プラクト・ノエルだった。
「やあ、フレック。久しぶりだな。邪魔じゃないか?」
フレックはすぐに書類を脇に置いた。彼の顔には、広く、心からの笑みが広がった。
「ノエル!友よ!やはり戻ってきてくれたか!」
二人は歩み寄り、互いに向き合った。それは役人同士の儀礼的な挨拶ではなかった。
古い戦友同士の、絶対的な信頼が込められた力強い握手だった。
一分後、彼らはバルコニーに立ち、茶を手にしていた。
「君がいない間、世界はさらに速く回り始めたよ」フレックが切り出した。「素晴らしいニュースがある。我々の外交官が合意に達した。今や我々には同盟国、アクトリアがいる。だがそれだけじゃない。本物の強国との接触に成功したんだ!」
「正気か!」ノエルは興奮して手すりを叩いた。「その名は?」
「シャドウ共和国(リパブリック・オブ・シャドウズ)だ」
「シャドウ共和国......」ノエルは考え込みながら茶をすすった。「珍しい名だ。慎重に付き合うべき相手のように聞こえるな」
フレックは真剣な表情になった。
「ノエル......戻ったばかりで、一時間の休息も与えないことを許してくれ......」
「よせよ」ノエルは穏やかに微笑んだ。「パニくるために戻ってきたんじゃない。働くために来たんだ」
「仕方のないことだ。すべては新しい世界のためだ」
「聞こうじゃないか」
「いいだろう。君の目的地はエデマの街だ。その開発を指揮してくれ。そして、そこは国境に危険なほど近い。境界線の防衛強化も頼む。二つの仕事を同時にお願いすることになる、ノエル」
「二つの仕事、か」ノエルは決然とカップを置いた。「承知した。時間を無駄にはできない。すぐに出発しよう」
ノエルがドアの向こうに消えると、部屋の空気が急に濃くなったようだった。
揺らめく青い粒子の中から、フレックの前にアガハンが姿を現した。
「見事な手際だ、フレック」
「休みなく働き続けることに、一体何の意味があるんだ?」フレックは霊体に向き直った。彼の声は緊張で震えていた。「君はこの世界がすでに占拠されていると言い、準備が必要だと繰り返した。だが、我々の敵はどこにいるんだ?!」
アガハンはゆっくりと首を巡らせた。その視線はフレックの魂を射抜くようだった。
「お前は......本当にその敵に会いたいのか?」
「くっ......」フレックは思わず唾を飲み込んだ。「いや、会いたくない」
「信じろ、フレック。時が来る前に彼らを見ない方が身のためだ」霊体は囁いた。「その敵は疲れを知らない。傷口は戦闘中に塞がっていく。彼は溶岩と氷を操る。彼はすでにこちらに向かっている。我々がそれを知っていたとしても、結局は準備不足に終わるだろう」
「な、なぜだ?」
「なぜなら、彼は単純に閉じ込めておけるような力ではないからだ。準備せよ。そして、私が教えた敵の情報を軍に伝えろ」
フレックの背中に冷たい戦慄が走った。脅威のあまりの大きさに、腕の毛が逆立った。
レクヴィアに夜が訪れた。3人は疲れ果てた足取りで家路についていた。
「ただいまー!」
カメリアが元気に叫びながら、カーリーの家になだれ込んだ。
「しっ! そんなに大きな声を出すな」
カーリーの父親が廊下から顔を出した。彼は家事で忙しそうだった。
「見ろ、母さんが寝ているんだ。起こしてしまったじゃないか」
「大丈夫よ、あなた......」
奥の部屋から、か細い咳の音が聞こえた。カーリーの母親が枕を支えに身を起こした。
「みんなが戻ってきてくれて嬉しいわ......無事で何より」
「母さん!」
カーリーが輝くような笑顔で彼女の元へ駆け寄った。
「見てよ! 今日はすごく頑張ったから、班長がボーナスをくれたんだ。ほら、これは全部母さんのためだよ!」
彼は誇らしげに、くしゃくしゃになった札束を見せた。
ショーグンは少し離れた場所に立ち、黙ってその様子を見守っていた。それから彼はカーリーの父親に歩み寄った。
「おじさん、母さんの具合はどう?」
「ああ......」
男は重いため息をついた。
「見ての通りだ。変わりないよ。何も......」
ショーグンは拳を握りしめた。
(また班長のところへ行かなければならないな)
彼は暗い気持ちで考えた。
(残業を願い出て、薬代を借りるんだ)
カーリーの母親が立ち上がろうとした時、ショーグンが真っ先に駆け寄り、彼女を支えた。チーム全員がすぐに彼女を囲み、介抱した。
オデッタは自分の空っぽのアパートに戻った。彼女はベッドの端に長時間座り、壁を見つめていた。まるで「フリーズ」したかのように、現実から切り離されているようだった。数秒が経過し、彼女はハッとして我に返った。
「ふぅ......仕事が多すぎるわ......」
彼女はテーブルに座り、パンとお茶で手早く食事を済ませた。
「どうして班長はあんなに威張っているのかしら?」彼女はぶつぶつと文句を言った。「いつも無理難題ばかり。イライラするわ」
彼女は立ち上がり、服を整えてドアに向かった。太陽はとっくに沈んでいたが、彼女の一日はまだ終わっていなかった。オデッタは暗闇の中へと出て行き、カメラはその背中を、シルエットが夜に溶け込むまで追い続けた。
「でも、働かなければならないの......」彼女は静かに呟いた。
太陽はゆっくりと地平線に沈み、空を血のようなオレンジ色に染めていた。古びた建物の屋上に、3人が座っていた。
カーリーとカメリアは端に足を投げ出し、終わりゆく一日に合わせてぶらぶらと揺らしていた。ショーグンは少し離れた場所に、彫像のように微動だにせず座っていた。
「ショーグン、何を考えているの?」
カメリアが振り向かずに静かに尋ねた。
「ああ、ショーグン。お前、すっかり無口になったな」
カーリーが同意するように言った。
ショーグンは短く鼻で笑った。その瞳には、いつもの皮肉めいた光が宿っていた。
「ハッ! 無口だと? 俺は昔からこうだ。カーリー、お前、畑で働きすぎて頭でも打ったのか?」
「ねえ、ショーグン! 質問に答えてよ」
カメリアが彼を問い詰めるように見つめた。
少年はため息をつき、沈みゆく太陽に視線を向けた。
「わかった、悪かったよ。俺は......どうすれば我らがリーダーと連絡が取れるか考えていたんだ」
「何だって?!」
カーリーは屋上から落ちそうになった。
「正気か? 一体どうやってそんなことをするつもりだよ?」
「そうよ!」
カメリアは手を振り回した。
「ここからリーダーの住む首都までは......1000キロもあるのよ! 到着するだけで数週間はかかるわ。それはまだ簡単な方よ。どうやって彼に近づくつもり? ああいう人たちの周りに、どれほどの護衛がいるか想像つく?」
「もちろん、想像はついている」
ショーグンはきっぱりと言った。
「もちろん?!」
カーリーは友人の顔を覗き込んだ。
「で、どうするんだ? 計画は?」
ショーグンの表情が真剣になり、その声に鋼のような響きが加わった。
「カーリー......他にどうやってお前の両親を治すつもりだ? お前の母さんは、地上に出てすぐに放射線がんを患った。父親は薬代を稼ぐために必死に働き、結局建設現場で腰を壊した。今は俺たちが働いているが、このはした金では食いつなぐのがやっとだ。今の俺たちの状況を救えるのは、本当に裕福で影響力のある人物だけだ。リーダーだよ。放射線がんに勝てる技術を持っているのは、レクイエムの者たちだけなんだ。俺たちはあらゆる手を尽くさなければならない」
カーリーは黙り込んだ。彼の熱意は一瞬で消え去り、重苦しい感謝の念に取って代わられた。
「あ......ええと......わかったよ......」
「それで、何を企んでいるの?」
カメリアがショーグンの目を覗き込んだ。
「今あそこに行くのは自殺行為だ。俺はリーダーに手紙を書く」
「その方が現実的ね」
少女は頷いたが、その声にはまだ疑念が混じっていた。
「でも、その計画には欠点があるわ。彼はただ読まないかもしれない。手紙は何千もの他の書類の中に埋もれてしまうわ」
「そうかもしれない」
ショーグンは拳を握りしめた。
「だが、チャンスはある」
「まあ、悪くない響きだ」
カーリーが再び元気を取り戻した。
「やってみる価値はある。挑戦しようぜ!」
カメラはゆっくりと引き、燃えるような夕焼けを背景に、少年少女たちを黒いシルエットへと変えていった。階下の狭い路地の影から、オデッタが現れた。
「おーい、みんな! ちょっと手伝ってくれない?」
彼女は上に向かって叫んだ。
「オデッタ、寝ろよ......」
ショーグンがぶつぶつと言った。
「もう、ショーグン、ふざけるのはやめて!」
カメリアは立ち上がり、下に降りる準備をした。
カデルタリア。総司令部。
ヴォルクリューの執務室は、贅を尽くしていた。厚い赤いカーテン、豪華なシャンデリア、棚を埋め尽くす数千の書物。そこには、レクヴィアを支配するあの荒廃の影など微塵もなかった。
ドアが静かに開き、フレイヴェン・クリントと若い女性、ラルデン・シルヴィアが入ってきた。彼女はわずか22歳だったが、その瞳にはすでに兵士としての冷徹な決意が宿っていた。
「ヴォルクリュー様、準備はほぼ整いました」
クリントが報告した。
「まだ理解できません」シルヴィアはリーダーを見つめ、眉をひそめた。「なぜ、地位を去る決意をされたのですか?」
ヴォルクリューはゆっくりと彼らの方を向いた。その表情は相変わらず不可解だった。
「準備完了まであと何日だ?」彼は質問を無視した。「シルヴィア、これが必要なことだったのだ。心配するな、我々の新しいリーダーは、我々の誰よりもこの役割を完璧にこなすだろう」
クリントとシルヴィアは深いショックを受け、顔を見合わせた。
「何ですって? 彼を『我々の』と呼んだのですか?」シルヴィアは身を乗り出した。「彼の権力を認めるというのですか?」
「静かにしろ、我が子らよ。お前たちが案じることではない。私が必要だと言えば、そうなのだ!」
ヴォルクリューの声が鋭く、硬くなった。
「クリント、質問に答えろ。シルヴィア、報告を!」
「約2週間です」クリントが素早く答えた。
「設計図は完成しています」シルヴィアは背筋を伸ばした。「建築技術を確認し、戦車の組み立てを開始します。あなたの『ヘリオスの力』があれば、プロセスは遥かに速く進むでしょう!」
「あぁ......そうか。上出来だ。作業を続けろ」
その頃、エネルギーの粒子で編まれた実体のない霊、アガハンは、誰にも気づかれることなく街の通りをゆっくりと歩いていた。
(私の計画は完璧ではない)彼は思考を巡らせた。(それはこの世界に対する私の理論と観察に基づいている。だが、私の本体がカーリーの内部にいる限り、すべては予定通りだ。今の最優先事項は、シャドウ・ヴェッセル(影の器)を見つけることだ)
彼は指定された場所で足を止めた。建物の影から一人の男が現れた。アガハンの個人的な情報提供者でありスパイのニキータだった。
「自分から呼び出しておいて、遅刻か?」ニキータは不満げに腕を組んだ。「お前は一体、何の化け物なんだ?」
「そんなことは重要ではない」アガハンの声がスパイの脳内に直接響いた。「お前に任務がある」
「今度は何だ?」
「極めて重要なミッションだ」
「あぁ、わかったよ」ニキータは苦々しく笑った。「そして、いつもの質問だ。俺に選択肢はないんだろう?」
「当然だ。あの地下シェルターの地獄からお前を救い出したのが誰か、忘れるな。そして、お前の命が今誰の手の中にあるかもな」
ニキータは思わず一歩後退した。霊体から放たれる冷気に圧倒されたのだ。
「その口調、気に入らねぇな......」
「本題に入ろう。この任務は命に関わる。不可能と言ってもいいだろう。戻ってこれないかもしれない」
「何だと?!」
「お前はカデルタリアの首都へ向かえ。目的は、最も厳重に警備された保管庫だ。そこには『ブレイド・オブ・エレメンツ(属性の刃)』――我々の手に渡るべき伝説の武器がある」
「正気か?!」ニキータは叫んだ。「あそこは首都だぞ! 最も厳重な場所だ! 最初の検問で見つかって殺される! どうやって潜り込めって言うんだ?」
「だからこそ、お前に頼んでいるのだ」アガハンは恐ろしいほど冷静だった。「お前ならできる。行け」
「断る! それは純粋な自殺行為だ!」
「お前に選択肢はない、ニキータ。お前を信じている。お前ならやり遂げられる」
「嫌だ! 俺は嫌だと言ったんだ!」
「お前の呼吸が誰のものか、瞬時に忘れたのか?」アガハンは空気の中にゆっくりと溶け始めた。「行け。選択肢はないのだ」
霊体は消え去り、空っぽの路地にニキータだけが残された。スパイは虚空を見つめ、実行不可能な命令の重さに押しつぶされていた。カメラはゆっくりと引き始め、冷たい月光の下で立ち尽くす彼の一人ぼっちの姿を映し出した。
翌朝、我々の4人組(クァルテット)が住むエデマの街に、一台の乗用車が到着した。
車から降りてきたのは、プラクト・ノエルとミラナだった。
ミラナは精鋭アヴァンギャルド部隊の副官であり、フレックが戦力強化のために自らノエルに預けた人物だ。
ちょうどその時、3人組は学校から畑へと向かう途中で、その横を通り過ぎようとしていた。
「おい! あの人たちは誰だ?」カーリーが足を止め、見知らぬ二人組を凝視した。「あの女の人......すごく、危険な感じがする」
「明らかに首都から来た人たちね」カメリアが肩をすくめた。
「行くぞ」ショーグンは顔を向けることすらしなかった。「あんな連中、もう何十人も見てきた。俺たちは仕事の時間だ」
仮設本部の内部で、ノエルはミラナに向き直った。
「何をすべきか分かっているな?」
「よしてよ、ノエル。初めてじゃないわ」ミラナは慣れた手つきで装備を整えた。
「我々もこうした街を何十箇所も回ってきた。いつも通りだ」ノエルが確認するように言った。
「了解。明日から任務に取り掛かるわ」
ジャングル。エデマ近郊。
24時間後、ミラナ指揮下の部隊は生い茂る茂みの中を突き進んでいた。
兵士たちは最高級の装備を身に纏っていた。重い補給バッグ、キャンプ用機材、弾薬。
そして全員が腰にダイショウ(二本差し)とライフルを備えていた。
「なんてこった......」新兵の一人が、つる植物を切り払いながらぼやいた。「これがジャングルってやつか?」
「慣れなさい、新兵」ミラナは振り返りもせずに言った。
「でも、どうして藪の中を進むんです? 道路を通ればいいのに......」
「通ることはできる。だが、我々の任務は道路を見渡せる位置に陣取り、かつ敵から姿を隠し続けることだ。分かるか?」
「副官殿、ここが絶好のポイントです!」兵士の一人が叫んだ。
ミラナは注意深く広場を見渡した。
「悪くないわ。迷彩(カモフラージュ)を設置すれば、完璧ね」
「司令官、俺たちはそもそも何のためにここにいるんです?」別の兵士が尋ねた。
「陣地の強化だ。上層部からの命令よ」ミラナは短く答えた。
夕方までにキャンプが完成した。偽装されたテントの中で、ミラナは全員を集めた。
「よく聞きなさい。我々の任務はここで一ヶ月耐え抜くこと。周囲を調査し、境界線を強化する。補給は来るわ。全員、分かったわね?」
兵士たちは黙って頷いた。ただ、新兵だけが小さくため息をついた。
(この地獄で丸一ヶ月か......勘弁してくれ......)
その頃、ショーグンは郵便局の列に並んでいた。
(この行列......いつか俺をダメにするな)彼はそう考えながら、ようやく窓口に辿り着いた。
「こんにちは。手紙を出されますか?」局員が尋ねた。
「ああ。これを見てくれ。宛先だ」
女性が住所に目を落とすと、その目が見開かれた。
「坊や......これ、国のトップ(フレック)宛てじゃないの? それは......少し無理があるわ」
「事情があるんだ」ショーグンは無理に微笑もうとした。「届くように手配してくれ。頼む」
「ええ、最善を尽くすわ。良い一日を」
「ありがとう」
ショーグンが外に出ると、カメリアとカーリーが待っていた。
一緒に家の前の花に水をやろうとしたその時、突然空が暗くなり、乾いた大地に土砂降りの雨が降り注いだ。
「やった、雨だ!」カーリーが顔を雨粒に向けながら叫んだ。「水やりをしなくて済むぞ!」
「すごい雨......」カメリアは手で頭を覆った。
「雨はいいことだ」ショーグンは空を見上げた。「家に入ろう。ずぶ濡れになる」
彼らがドアの向こうに消えた後も、カメラは外に残った。
雨筋が地面を叩き、埃を洗い流していく。
カットはゆっくりと花壇へと移り、豪雨の中で激しく揺れる真っ赤な花々を映し出す。
窓越しに見える友人たちのシルエットはぼやけ、霞んでいく。
そして最後には、雨に打たれながら震える紅い花びらの、鮮やかで力強い映像だけが残った。