プロローグ
あ、落ちる。そう思ったときにはもう手遅れだった。
遠足でやってきたキュウリ池は地元で有名なすごい場所。長寿になるとか、病気が治るとか、いろいろな力があるとされている。そのためわたしたちはザックリ『願い事が叶う池』と呼んでいる。小学校でも何人かの子が「恋が叶った!」とか「百点取れた!」とか言って、キュウリ池をありがたがっていた。
願い事をするのは簡単だけど難しい。なにしろ池の水を頭から被らないといけないのだ! 服が濡れてしまうではないか!
けれどわたしにはお願い事がある。すごく大事なお願い事だ。泳げるようになれれば、すこしくらい自信が湧くかもしれないから。
だからわたしは誰にも見られないようにそっと池の縁をまわり、誰もいない木陰に隠れ、手で水をすくった。
それがいけなかった。なんとわたしはバランスを崩して池に落っこちてしまったのだ!
わたしは泳ぐことができないので、それはもう絶体絶命のピンチであった。
(溺れる......! 息できな......)
耳に水が流れ込んでくる音がする。ゴポゴポというあぶくの音が遠くから聞こえる気がした。
目も開けられない。当然だ、水中で目を開けるなんて恐ろしくてできっこない。
意識が遠のいていく。ああ、わたしはここで死ぬのだと考えて涙が出そうになる。そしてわたしは気を失った。
このときのわたしは思いもしなかった。『まさかこんなことになるなんて』が立て続けに起こるなんて。
これは、そう。齢十一にして渡った、ちょっと不思議な世界の冒険の記憶である。