第八十五話 魔導剣士ロイ、機転を利かすがグダグダになる
「キマイラは炎を吐く! 気をつけろよ! 雷王......」
「待ってください!」
先制攻撃をしようとした刹那、背後から声がかかる。位置的に、魔獣使いの女性だろう。
「チャッピーはいうことを聞く子なんです! 殺さないでください!」
チャッピーってキマイラのことか。無駄に可愛い名前だな。いや、そんなことより。
「無茶言わんでください! あなた、襲われたばかりでしょう!」
「でも!」
困ったな。キマイラの生け捕りなんてできるのか?
「確約はできませんよ!」
やるだけやってみようの世界だな。
「強重結縛糸!」
まずは、飛行能力と機動力を封じさせてもらう!
「ナンシア! 挟み撃ちにするぞ!」
「了解!」
とはいっても、キマイラの頭は三つある。挟み撃ちが有効なのか不明だが。
まずは一番たちが悪い、竜の頭から攻略だ!
「ボクも加わります!」
パティの声とともに、がしゃんと鎧の音が鳴り響く。
「武器は!?」
「ポールを手に入れました! 槍代わりにします!」
「助かる!」
これで三対一。いや、頭数なら三対三か。
「龍の頭は、パティに任せた! いくぞ!」
挨拶代わりに、炎のブレスがきた! これは、パティのポールで挑発し、意識をそちらに向けてもらう。ナンシアが、上手いことヤギの頭をホールドした!
ライオン頭が、咆哮を上げる! ん? なんか今、違和感が......?
「クコ! キマイラに命活癒術草だ!」
「はい?」
突飛な指示に、変な声を出す彼女。
「キマイラに命活癒術草だ! いいからやってくれ!」
「ええ......? よくわからないですけど! 命活癒術草!」
キマイラの体を、淡い光が包む。......と、キマイラが大人しくなった。
「なんですと!? どういうことですか!」
驚くクコ。
「あいつな、虫歯だったんだ。ちらっと見えた」
呆然とする一同。
「あとは、私が」
魔獣使いの女性が、キマイラを檻に誘導する。
やれやれだな。
◆ ◆ ◆
「いやあ、実にお見事! これはこれで、彼氏の格好の良いところが見れた、充実したデエトだな!」
クッコロさんが、拍手で迎えてくれる。
「いえ、それほどのことは」
「前も言ったが、デエトなのにその口調はないだろう」
「あ、ああ。わかった」
「うむ!」と満足そうに頷くクッコロさん。
「サンとフランも、避難誘導お疲れ様」
「おう!」
「大したことはしてませんわ」
などとやっていると、団長と思しきシルクハットの男性がやってきた。
「ありがとうございます! 団員と、チャッピーの命を救っていただいて......。少ないですが、お礼としてお受け取りください」
小袋を渡してくる彼。
「いやあ、それほどのことは」
「ロイ君、厚意は無下にするものではないな。受け取っておきたまえよ」
「うーん、君がそう言うなら」
金子をいただく。
「今日はもう無理そうだが、また明日デエトし直そうじゃないか!」
「はあ。まあ、構いませんが......じゃなかった、構わないが」
殺気! なんでー?
「君は、どうにも鈍感でいけないねえ」
やれやれと、ため息とともに首を横に振るクッコロさん。だから、何なの!?
「とりあえず、今日はここでお暇するよ。アフターフォローをするといい。女は怖いからね」
くすりと微笑むと、颯爽と去って行く彼女。ぽかんとする俺。
「兄貴ー。今度はオレとデートするっすよ!」
「待って、お姉ちゃんだって!」
「あ、あの......えと、なんでもないです!」
もじもじするパティ。どうしよう、このグダグダ。
困ってフランを見ると、肩をすくめて手のひらを上に、呆れていた。
俺がなにをしたー!?
「わかった! デートでも何でもするから、この変な空気をどうにかしてくれ!」
「よーし! ナンシアの姉貴! コイントスで!」
コインを弾く義妹。
「表!」
ほんと、やれやれだな。