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第五十四話 魔導剣士ロイ、晩餐に招かれる

 クッコロさんと舌戦その他諸々、あの手この手で諦めさせようとすること、数刻。

「諦めが悪いな、君も」

「いえいえ、クッコロさんには敵いませんよ」

 互いに疲れ果てていた。気づけば、もう日が沈みかかっている。

「ふう。埒が明かないな。今夜は、うちで食事していくといい」

「いえいえ! そんな! 依頼未達成で、そのような厚かましい!」

「その未達成の原因が、夕食を付き合ってくれと言っているのだ。何の問題もなかろう?」

 え? いや、そうなのか? うーむ、丸め込まれているような。

「懐柔しようとしても、無駄ですよ?」

「あっはっは! 私がそんなに小賢しい人物に見えるか?」

「あ、いえ! これは失礼を」

 慌てて、頭を下げる。

「それだ」

「は?」

「どうも君は、鯱張ってていかん。もっと、砕けてくれたまえよ」

 背中を、ばしーんと叩かれる。

「はあ......」

「なんだろうな。君の諦めの悪さに、強い親近感を感じる。仲良くしてくれ」

 いやはや、好漢というか、女性だから傑女か? 懐の深さは、確かに器を感じさせるものがある。惜しむらくは、つくづく戦いの才がないこと。

「私は湯浴みをする。君たちは、茶でも愉しんでてくれたまえ。どうせ、父上の圧と奇妙な依頼のせいで、茶菓子が喉を通らなかったのだろう?」

 参ったな、お見通しか。そしてこの流れは、断れるものではないな。

「わかりました。ごちそうになります。しかし、テーブルマナーを嗜まぬ者もおりますが......」

「構わん。私からその旨、言っておく。我が家のシェフは、大したものだぞ! 楽しみにしていてくれ! 茶も一級品だ!」

 そう言い残し、からから笑いながら、向こうへ行ってしまった。

「ご案内いたします」

 うお! まだいたのか、アンタ下男!

「では、お願いします」

 こうして、俺らは客間に通されることになった。


 ◆ ◆ ◆


 ふう、暖かい。

 暖炉の火の、なんと暖かなことか。

 そして、茶が旨い。香ばしさ、コク、のどごし、どれをとっても一級品で、実にふくよかな香りが鼻腔をくすぐる。砂糖の甘味が、また上品だ。

 冷え切った体に、これはありがたい。俺らもクッコロさんも、よくもあの寒空の下、堂々巡りの舌戦をしていたものだ。

 しかし......。

 壁に飾られている「萌え絵」、あれ、クッコロさんだよな? 間違いなく、モロオさんの画風だ。いやはや、彼が言っていた、「自分の絵を気に入ってくれた貴族」というのは、ハイプライド卿であったか。他にも、上客がいるのだろうな。

「あの、ロイさん」

「何かな?」

 フランが不意に話しかけてきたので、応える。

「クッコロさんに、騎士への道を諦めさせるのが、本当に正解なのでしょうか?」

 実は、俺も気持ちが揺らいでいたところだ。何か。何か一つ、戦いの場で役に立つ才があれば、諦めなくても良いのではないかと。

「フラン姉~。でもよー、それじゃ報酬がフイだぜー?」

 サンの言うことも正論......というか、それが本筋だ。

「......少し、考える時間がほしい。とりあえず、食事を愉しもう」

 この件、どうするのが一番皆が幸せになれるのか。

 ため息を、深く一つ吐く。外だったら、息が白いだろうな。


 ◆ ◆ ◆


「うおー! いかにも、お貴族様のリョーリって感じだな!」

「こら。申し訳ありません。義妹いもうとが、さっそくご無礼を」

 サンが、コース料理の前菜を見て素っ頓狂な声を上げるので、たしなめ、謝罪する。

「構わない。私から、父上にも伝えてある」

「うむ。食事とは、気楽に愉しむものだ。自由にしてくれ」

「さっすが~、ハイプライドサマは話がわかるッ!」

 やれやれ。一度、テーブルどころか、対人マナーを教えたほうがいいな、これは。今回は、ハイプライド父娘の懐の広さに救われたが。

 そういえば一つ、気になることが......。
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女はAカップ以下の世界で! 冒険、観光、ウマいメシ!作者:みなはらつかさ
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第五十四話 魔導剣士ロイ、晩餐に招かれる

 クッコロさんと舌戦その他諸々、あの手この手で諦めさせようとすること、数刻。

「諦めが悪いな、君も」

「いえいえ、クッコロさんには敵いませんよ」

 互いに疲れ果てていた。気づけば、もう日が沈みかかっている。

「ふう。埒が明かないな。今夜は、うちで食事していくといい」

「いえいえ! そんな! 依頼未達成で、そのような厚かましい!」

「その未達成の原因が、夕食を付き合ってくれと言っているのだ。何の問題もなかろう?」

 え? いや、そうなのか? うーむ、丸め込まれているような。

「懐柔しようとしても、無駄ですよ?」

「あっはっは! 私がそんなに小賢しい人物に見えるか?」

「あ、いえ! これは失礼を」

 慌てて、頭を下げる。

「それだ」

「は?」

「どうも君は、鯱張ってていかん。もっと、砕けてくれたまえよ」

 背中を、ばしーんと叩かれる。

「はあ......」

「なんだろうな。君の諦めの悪さに、強い親近感を感じる。仲良くしてくれ」

 いやはや、好漢というか、女性だから傑女か? 懐の深さは、確かに器を感じさせるものがある。惜しむらくは、つくづく戦いの才がないこと。

「私は湯浴みをする。君たちは、茶でも愉しんでてくれたまえ。どうせ、父上の圧と奇妙な依頼のせいで、茶菓子が喉を通らなかったのだろう?」

 参ったな、お見通しか。そしてこの流れは、断れるものではないな。

「わかりました。ごちそうになります。しかし、テーブルマナーを嗜まぬ者もおりますが......」

「構わん。私からその旨、言っておく。我が家のシェフは、大したものだぞ! 楽しみにしていてくれ! 茶も一級品だ!」

 そう言い残し、からから笑いながら、向こうへ行ってしまった。

「ご案内いたします」

 うお! まだいたのか、アンタ下男!

「では、お願いします」

 こうして、俺らは客間に通されることになった。


 ◆ ◆ ◆


 ふう、暖かい。

 暖炉の火の、なんと暖かなことか。

 そして、茶が旨い。香ばしさ、コク、のどごし、どれをとっても一級品で、実にふくよかな香りが鼻腔をくすぐる。砂糖の甘味が、また上品だ。

 冷え切った体に、これはありがたい。俺らもクッコロさんも、よくもあの寒空の下、堂々巡りの舌戦をしていたものだ。

 しかし......。

 壁に飾られている「萌え絵」、あれ、クッコロさんだよな? 間違いなく、モロオさんの画風だ。いやはや、彼が言っていた、「自分の絵を気に入ってくれた貴族」というのは、ハイプライド卿であったか。他にも、上客がいるのだろうな。

「あの、ロイさん」

「何かな?」

 フランが不意に話しかけてきたので、応える。

「クッコロさんに、騎士への道を諦めさせるのが、本当に正解なのでしょうか?」

 実は、俺も気持ちが揺らいでいたところだ。何か。何か一つ、戦いの場で役に立つ才があれば、諦めなくても良いのではないかと。

「フラン姉~。でもよー、それじゃ報酬がフイだぜー?」

 サンの言うことも正論......というか、それが本筋だ。

「......少し、考える時間がほしい。とりあえず、食事を愉しもう」

 この件、どうするのが一番皆が幸せになれるのか。

 ため息を、深く一つ吐く。外だったら、息が白いだろうな。


 ◆ ◆ ◆


「うおー! いかにも、お貴族様のリョーリって感じだな!」

「こら。申し訳ありません。義妹いもうとが、さっそくご無礼を」

 サンが、コース料理の前菜を見て素っ頓狂な声を上げるので、たしなめ、謝罪する。

「構わない。私から、父上にも伝えてある」

「うむ。食事とは、気楽に愉しむものだ。自由にしてくれ」

「さっすが~、ハイプライドサマは話がわかるッ!」

 やれやれ。一度、テーブルどころか、対人マナーを教えたほうがいいな、これは。今回は、ハイプライド父娘の懐の広さに救われたが。

 そういえば一つ、気になることが......。
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