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第9話 レトロ・ブックレンタル(2)

 一連のことをイヴリンに伝え、袋の中のお金をテーブルに出してみた。その数を見て、あたしは眉を下げる。

「どう思う? イヴ」
「お前のやった功績だ。有り難く受け取っておけ」
「でも......お金をもらうつもりなんて、なかったのに」
「それでも、その価値があると思ったから貸本屋はお前に報酬を渡した。プロの商売人だな。価値と対価についてきちんと理解できている」
「あたし、家具を合成して、店内を整理しただけだよ?」
「なかなかできる技ではない」

 イヴリンが金貨をあたしの手のひらに置き、大切に握らせた。

「お前の働きの対価だ。好きに使うと良い」
「......それなら、種を買おうと思って」
「種?」
「庭を作るの! そこで薬草を育てて、薬を作れるようにしておくの。そうすれば、イヴが風邪を引いた時に、すぐに対応できる」
「......お前はこんな時でも、わたくしのことを考えてくれるのか?」
「当たり前だよ」

 あたしはイヴリンの手を握りしめる。

「イヴは、あたしの全てだもん」
「......言いたかった言葉を先に言われてしまったな」
「えー!? また以心伝心!? イヴ、やっぱりあたし達、結ばれる運命だったと思わない!?」
「なんだ? お前は運命なんてものを信じるのか? 面白い。試しに確認してみようか」

 イヴリンが椅子から立ち上がり、あたしの方へ歩いてきた。身をかがませると、あたしの頬に唇を押し付けた。

「ふむ。......残念ながら、運命だったようだ」
「むふふふ!」
「ちゅ」
「あっ、やだ、イヴったら、......ふふっ!」

 金貨を袋へ戻し、あたしも立ち上がり、今度はあたしからイヴリンの首筋にキスをした。そしたらイヴリンが仕返しに耳に甘く噛みついてきたものだから、おかしくなってしまって、あたしは笑いながらイヴリンを抱きしめた。そしたらイヴリンも笑いながら手をあたしの腰へ回し――二人で抱きしめ合う。

「......この間、ダンが言ってた。女同士で恋人なんて、変だって」
「そんなことを言うのはどこの子供だ?」
「最近家に遊びに来てくれる男の子。でも、大丈夫。人間と人間が恋をすること自体、何もおかしなことじゃないことを言ったら、ダンはそんな人を見たことがないから変だと思うだけであって、あたしで慣れるって言ってくれたの。あの子、とても良い子なの」
「何かされたらすぐに言え」
「大丈夫だよ。イヴ。今日もね、気の強そうな大工さんに変な目で見られてたところを、間に割って入ってきてくれたの。明日、一緒に種を買って、庭作りを手伝ってもらうんだ」
「変な目ってなんだ?」
「え?」
「大工に、変な目で見られたと」
「あー、なんか顔と体をすごく見られたの。男の人って貴族も平民も変わらないね。あの下心のあるいやらしい目......」

 イヴリンの魔力が殺気を放つ。
 あたしは大慌てでイヴリンに強く抱きついた。

「でも! ダンが守ってくれたから大丈夫だったよ!!」
「その大工を調べておく。どんな顔だ」
「イヴ! 何もなかったんだから大丈夫だってば!」
「その男に強姦でもされたらどうする。大丈夫だよ。パレイが見えないところで全部完了するから」
「大丈夫だから絶対手を出しちゃ駄目! ......あ、だったら」
「ん?」
「つまり、あたしのこと心配して言ってくれてるんだよね? だったら、さ」

 背伸びをして、ギリギリ届いたイヴリンの唇に触れるだけのキスをする。

「イヴの匂いつけてくれたら......そういうこともなくなるかも」

 殺気が消えた。代わりに、下心のある熱い眼差しで見つめられる。

「上手になったな。パレイ。わたくしがそれに釣られるとでも?」
「......」
「来い」

 冷たい声を出したイヴリンと二階へ駆け上がり、彼女の部屋に入ると――甘い夜が始まった。

「イヴ、っ、今夜は......むちゅっ、あたしが......ん、上がいい......♡」
「上か? いいよ。......わたくしの上で......沢山啼かせてやろう......」
「あ、ちが、上って、あたしが、あの、リードするほ......あ......ふぅ......♡」


(*'ω'*)


 騎士団長がアルノルドの元へやってきた。

「報告書です」
「ごくろう」

 アルノルドが報告書を見て、ため息を吐いた。騎士団長は覚悟していたように口を開く。

「申し訳ございません」
「これだけ捜して、パレットの影すら見た者はいないのか?」
「騎士団一同、全力を尽くしております」
「その言葉は聞き飽きた」

 報告書を破り、アルノルドが悔しそうに唇を噛んだ。

「あの夜、俺も参加していたら良かったんだ。そしたら......あのバカクリスを止められなかったにしろ......パレットを救うことが出来た。聞いただろ? あの場にいた中で、イヴリン・ラ・アティカス以外、誰も罪のない彼女を庇う者がいなかったと」
「しかし......イヴリン様も、その後のパレット様をお見かけしていないと申されてます」
「まさか、本気にしてるのか?」
「もちろん調査は進めてますが......彼女の側にパレット様がいるような気配はございません」
「とにかく捜索を続けろ」
「御意」
「馬鹿なクリスめ」

 卒業してからの彼の姿はどうしようもない。今までパレットがやってきたものが全て返ってきた。彼の魔力量は平民と変わらず、それでも王子として振舞ってはいるが、書類整理すらろくに出来ない。学生時代、どれだけパレットに甘えていたのか想像がつく。

 ――それでもいいの。だって、クリス様を支えることがあたしの役目だもの。
 ――本当はクラスの皆とも仲良くしたいんだけど......クリス様が嫌がるの。
 ――お陰で研究が進むから良いんだけどね! ふふふ!

(無事でいてくれ。パレット......!)

 アルノルドが拳を握りしめた。
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私の幸せなインテリア・パレット作者:石狩なべ
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第9話 レトロ・ブックレンタル(2)

 一連のことをイヴリンに伝え、袋の中のお金をテーブルに出してみた。その数を見て、あたしは眉を下げる。

「どう思う? イヴ」
「お前のやった功績だ。有り難く受け取っておけ」
「でも......お金をもらうつもりなんて、なかったのに」
「それでも、その価値があると思ったから貸本屋はお前に報酬を渡した。プロの商売人だな。価値と対価についてきちんと理解できている」
「あたし、家具を合成して、店内を整理しただけだよ?」
「なかなかできる技ではない」

 イヴリンが金貨をあたしの手のひらに置き、大切に握らせた。

「お前の働きの対価だ。好きに使うと良い」
「......それなら、種を買おうと思って」
「種?」
「庭を作るの! そこで薬草を育てて、薬を作れるようにしておくの。そうすれば、イヴが風邪を引いた時に、すぐに対応できる」
「......お前はこんな時でも、わたくしのことを考えてくれるのか?」
「当たり前だよ」

 あたしはイヴリンの手を握りしめる。

「イヴは、あたしの全てだもん」
「......言いたかった言葉を先に言われてしまったな」
「えー!? また以心伝心!? イヴ、やっぱりあたし達、結ばれる運命だったと思わない!?」
「なんだ? お前は運命なんてものを信じるのか? 面白い。試しに確認してみようか」

 イヴリンが椅子から立ち上がり、あたしの方へ歩いてきた。身をかがませると、あたしの頬に唇を押し付けた。

「ふむ。......残念ながら、運命だったようだ」
「むふふふ!」
「ちゅ」
「あっ、やだ、イヴったら、......ふふっ!」

 金貨を袋へ戻し、あたしも立ち上がり、今度はあたしからイヴリンの首筋にキスをした。そしたらイヴリンが仕返しに耳に甘く噛みついてきたものだから、おかしくなってしまって、あたしは笑いながらイヴリンを抱きしめた。そしたらイヴリンも笑いながら手をあたしの腰へ回し――二人で抱きしめ合う。

「......この間、ダンが言ってた。女同士で恋人なんて、変だって」
「そんなことを言うのはどこの子供だ?」
「最近家に遊びに来てくれる男の子。でも、大丈夫。人間と人間が恋をすること自体、何もおかしなことじゃないことを言ったら、ダンはそんな人を見たことがないから変だと思うだけであって、あたしで慣れるって言ってくれたの。あの子、とても良い子なの」
「何かされたらすぐに言え」
「大丈夫だよ。イヴ。今日もね、気の強そうな大工さんに変な目で見られてたところを、間に割って入ってきてくれたの。明日、一緒に種を買って、庭作りを手伝ってもらうんだ」
「変な目ってなんだ?」
「え?」
「大工に、変な目で見られたと」
「あー、なんか顔と体をすごく見られたの。男の人って貴族も平民も変わらないね。あの下心のあるいやらしい目......」

 イヴリンの魔力が殺気を放つ。
 あたしは大慌てでイヴリンに強く抱きついた。

「でも! ダンが守ってくれたから大丈夫だったよ!!」
「その大工を調べておく。どんな顔だ」
「イヴ! 何もなかったんだから大丈夫だってば!」
「その男に強姦でもされたらどうする。大丈夫だよ。パレイが見えないところで全部完了するから」
「大丈夫だから絶対手を出しちゃ駄目! ......あ、だったら」
「ん?」
「つまり、あたしのこと心配して言ってくれてるんだよね? だったら、さ」

 背伸びをして、ギリギリ届いたイヴリンの唇に触れるだけのキスをする。

「イヴの匂いつけてくれたら......そういうこともなくなるかも」

 殺気が消えた。代わりに、下心のある熱い眼差しで見つめられる。

「上手になったな。パレイ。わたくしがそれに釣られるとでも?」
「......」
「来い」

 冷たい声を出したイヴリンと二階へ駆け上がり、彼女の部屋に入ると――甘い夜が始まった。

「イヴ、っ、今夜は......むちゅっ、あたしが......ん、上がいい......♡」
「上か? いいよ。......わたくしの上で......沢山啼かせてやろう......」
「あ、ちが、上って、あたしが、あの、リードするほ......あ......ふぅ......♡」


(*'ω'*)


 騎士団長がアルノルドの元へやってきた。

「報告書です」
「ごくろう」

 アルノルドが報告書を見て、ため息を吐いた。騎士団長は覚悟していたように口を開く。

「申し訳ございません」
「これだけ捜して、パレットの影すら見た者はいないのか?」
「騎士団一同、全力を尽くしております」
「その言葉は聞き飽きた」

 報告書を破り、アルノルドが悔しそうに唇を噛んだ。

「あの夜、俺も参加していたら良かったんだ。そしたら......あのバカクリスを止められなかったにしろ......パレットを救うことが出来た。聞いただろ? あの場にいた中で、イヴリン・ラ・アティカス以外、誰も罪のない彼女を庇う者がいなかったと」
「しかし......イヴリン様も、その後のパレット様をお見かけしていないと申されてます」
「まさか、本気にしてるのか?」
「もちろん調査は進めてますが......彼女の側にパレット様がいるような気配はございません」
「とにかく捜索を続けろ」
「御意」
「馬鹿なクリスめ」

 卒業してからの彼の姿はどうしようもない。今までパレットがやってきたものが全て返ってきた。彼の魔力量は平民と変わらず、それでも王子として振舞ってはいるが、書類整理すらろくに出来ない。学生時代、どれだけパレットに甘えていたのか想像がつく。

 ――それでもいいの。だって、クリス様を支えることがあたしの役目だもの。
 ――本当はクラスの皆とも仲良くしたいんだけど......クリス様が嫌がるの。
 ――お陰で研究が進むから良いんだけどね! ふふふ!

(無事でいてくれ。パレット......!)

 アルノルドが拳を握りしめた。
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