第10話 居場所になるため
「最強......? 最強だって? バカだろ! ふざけんなよ!」
ライルは地面に拳を叩きつけた。
「お前は、そんな大それた事言って、それで俺を! ......お前は、だから」
「......」
「だから、お前は......天才の癖に、毎日書庫で勉強してんのか......?」
あらま。書庫に入り浸ってるのバレてたのか。まあ隠してるわけじゃないけど。
「そうだよ。遺跡巡りだって、その為にやるんだ」
「......最強になって何がしたいんだ」
「うーん」
慎重に言葉を選ぶか。ライルが納得できるように。
「みんなを守りたい、どっかの戦争を終わらせたい、誰にも負けたくない。まあ色々あるけどさ」
これは、ついさっき分かった事。
「俺は、みんなの居場所になりたいんだよ」
「居場所......?」
「そう。俺がいるところは安心だって。一緒にいれば大丈夫だって。俺なら守ってくれるって。すぐ近くにいる人にそう思ってもらいたい」
「すぐ、近く......?」
ようやくわかった未来への展望。
「それは、アリシアも入っているのか?」
「もちろん、ライルもね」
「じゃあ......いつかは帰ってくるんだな」
「そういうことになるね、多分」
領主にはなる。だけど、その前に最強になって、それから帰ってくる。
ライルに死んで欲しくない。と泣くアリシアの為にも。
「......はは。なんだよ、そうなのか」
ライルはそこでようやく立ち上がろうとする。俺はそれに手を差し伸べた。
「じゃあ俺は、お前が村を離れている間、この村を守る......アリシアを守る人間になってやるよ」
「腰抜かしてたくせに」
「もう抜かさねえよバーカ」
「バカつった方がバカなんですー」
「はあ? てめえムカつく! お前も腰抜かせこの野郎!」
そう言ってライルが俺の手を握った瞬間。
バチッ!
「「イテッ」」
ハモった。
「いてて......んだよ今の魔法」
「ごめん......静電気」
「んだそれ?」
魔法じゃないよ......と言おうとしたところで、向こうから声が聞こえてきた。
「おぼっちゃまーー! ハルトおぼっちゃま、どこでぇすかぁーー!!」
「やべ、すぐ帰ってくる予定だったのに。これめちゃくちゃ怒られるな。お前のせいだぞライル」
「......そうだな、すまん。でも怒られてくれ」
「理不尽なぁー!」
そして、声のした方に歩いて行ってドロシー達に見付けられ、二人してコテンパンに絞られるのであった。
いつかの出会いの時とは違う本気のドロシーのお説教に、精神は大人の俺でも流石に泣きそうになった。
嘘、泣いた。
だって、本気で心配してくれてたし。
泣きながら抱きしめられたし。そりゃ貰い泣きするわ。
心配かけてごめんなさい。
✳︎✳︎✳︎
ライル達が森を抜けた後、討伐隊の予定だった者たちがその現場に検分の為にやってきていた。
「......死んでいるな、やはり」
「全部か?」
「全部だ」
「特に目立った外傷はない......いや、見えにくいが身体が焼け焦げた痕があるな」
「......やはり天から光が降ってきたのか?」
「だが、今日は雨は降っていないぞ」
討伐隊の面々が空を見上げる。
木々の隙間から見える限りだが、雲一つない快晴だ。
「森が光ったという証言はある」
「では、天が何もないのに光を降らせたというのか?」
「......だとしたら、ライルという子は神に見初められたのか?」
討伐隊の一人が首を横に振った。
「いや、あるいは......助けに出たという少年が......神の子なのか」
✳︎✳︎✳︎
「でも良かった、ハルトが無事で」
次の日、アリシアと書庫で勉強を始める前にまた言われた。
「もう何度目だよ、アリシア」
「だって。心配だったんだからねーもう」
「それはごめんって」
「でも俺モードだったもんね。その時のハルトってすごく頼もしいもん」
「......へ?」
「気づいてなかったの? ハルトって本気になった時とかたまに俺って言ってるよ」
マジで??
全く気づいてなかった......。
やっぱ無理があるのかな。普段から俺にしようかもう。
ウダウダと悩んでいると、書庫の扉が開いて誰かが入ってきた。
「......よう」
ライルだった。
「ライル! なんでここにきたの!」
「そ、それは......」
なんかしどろもどろになるライル。
「......俺もさ。勉強、混ぜてくれよ」
「えーーー!!」
やっぱりな。
「俺も魔法もっと使えるようになりたいんだ。昨日改めて実感した。このままじゃダメだって。だから、プライドとかどうでもいい。俺も一緒に勉強させてくれ!」
「......いいよ」
「よくないよー!」
なんでだアリシア。
「......せっかくハルトと二人っきりの時間だったのに」
「ごめんってアリシア。後半には出てくからよ」
「......?」
なんか二人がぶつぶつと話しているけど、奇妙な風が吹いてて微妙に聞き取れない。書庫なのに?
「そんなわけだから、これからは俺にも声をかけてくれ」
「どんなわけだったか聞き取れなかったんだけど。まあいいけどさ」
アリシアの方は微妙に納得してないみたいだけど。でもこれ以上は駄々をこねないらしい。
こうして。
これからも長く続く、魔法図書庫のお勉強トリオが出来上がったのだ。