第六話 妹との休日
カーテンの隙間から陽の光が差し込んで目が醒めた。いつもならそれでもまだ起きたりせずゆっくり休むのだが。しかし、今日は土曜日だ。
(きっとみんな集まる)と思って俺は仕事でもないのに休日の午前中にわざわざ着替えていそいそと出かける準備をした。
行き先はもちろん『麻雀食堂』だ。
麻雀食堂は仕事の帰りに寄るにはちょうどいいが休みの日にわざわざ行くには離れてる。けど、もう行きたくて仕方ない。
「あれー、お兄ちゃん今日仕事ないんじゃないの? 起きるの早いじゃん。どうしたの?」
「うん......ちょっとな」
俺は母と妹と俺の3人で暮らしてる。親父はけっこう前に俺達を捨てて出ていった。理由なんか知らない。ただ、あの優しい母さんが怒ってたってことは覚えてる。つまりろくでもないんだろう。そんな男なんてもう顔も忘れたよ。
母さんはタクシードライバーで、家にいない時はしばらくいない。今日は家に妹と2人だ。
「これお母さんが、お兄ちゃんも休みだから土曜だし久しぶりに2人でごはんでも行けばって置いてったお金」
俺が学生の頃は妹の美咲と2人で近くのメシ屋までごはんを食べに行ったり弁当をスーパーに買いにいったり、そういう日が多かった。でも今は俺はもう社会人だし妹だってバイトしてる。いつまでお昼ご飯代を置いていくつもりなのか。お金なら俺も稼いでいるし、そもそも美咲は冷蔵庫の食材で適当に料理できるというのに。
「俺はいらないから美咲が持ってろ」
「ラッキー! ねえ、お兄ちゃん。ごはんはどうするの?」
「パンでも焼くよ」
「それは朝ごはんでしょ。そうじゃなくてお昼ご飯。何食べる?」
昼代はいらないと言ったはずだが、妹は俺がお昼を一緒に食べるものだと思っているようである。
「お兄ちゃんと一緒に食べるの久しぶりだなぁー」
(うっ......楽しみにしてやがるのか? メシは食いに行くから一人で食えって言いにくいな)
確かに、最近は土日に出勤続きだったから学生の美咲とは長い事一緒にお昼を食べてない。でも、別によくないか? 家族なんだし、夕飯は一緒だったりするし。今は朝飯を一緒に食べるんだから。
とは思いつつも。なぜかワクワクしてる妹に『おまえ一人で食え』と言うことが出来ず
「ちょっと遠いが、食いに行きたい定食屋があるんだ。電車で行くことになるけど、ついてくるか?」
「行く!」
そんな流れで俺は麻雀食堂に妹を連れて行くことにした。
――まさか、これがきっかけで妹が麻雀プロを目指す! なんていい出すとは思いもしなかったから。