㉒ 雪子の告白⑴
「色々とお疲れ様。どうしたの?ひどい顔してるわね」
マンションの屋上の手すりにもたれて、ボンヤリしていると、久しぶりに雪子さんが現れた。
「やっと受験勉強から解放されて、燃え尽きているところですよ」ボクは言った。
「おめでとう。ほうれい線と、目の下にはクマまで刻まれて、念願のオジサン顔になったじゃない」と言いながら、ボクの隣で、同じように手すりにもたれる雪子さん。
「目もどんよりしてて、まるで魚の腐ったヤツみたいでしょ?」と自虐的に答えるボク。
「心にも、何だかポッカリ穴が開いた感じですよ......それにしても、久しぶりですよね。今までどうしてたんですか?」
「遠くで観測を続けていたわ。あなたの受験の邪魔にならないようにね」
「そりゃ、どうも」
「なんかちょっと、ヤサグレてるのかしら?」
「残念ながら、名護屋市最高峰の公立高校には、行けなかったので」
「なんだ、そんな事か」
「それにどうやら、僕は文系なので、雪子さんみたいな、物理学のエキスパートには、なれそうにもありません」
「でも、精一杯がんばったんでしょ?」
「まあ同じ事を、二度とやりたくないくらいには」
「じゃあ、いいじゃない」
「......」
「今日はそんな心がカラッポのあなたに、丁度いい話をしに来たの」
「へえ、なんですそれは?」
「一つ目は、病気療養中だった酒井さんのこと」
「......あっ」
あんなに心配していたのに、受験勉強のせいで、すっかり忘れていた。
「彼女、三年生の2学期始めには、自宅療養も終わって、高校受験に間に合ったみたいよ」
「それはよかった」
安堵するボク。
「四月には、どこかの私立の女子高に入学するらしいわ」
酒井さんの、今後の人生に幸あれ。
ボクは、心の底からそう思った。
「......それから」
雪子さんは話を続ける。
「こっちの話がメインなんだけど......そろそろ私の正体と目的を、あなたにハッキリ明かしておきたいの」
「!?」
えっ、今?ここで?
「この説明には、難しい概念やワードが出てくるから、全部は理解できないかもしれないけど......今のあなたなら、なんとなく解るはずよ」
「......そう......なんですか」
「私としても、正直、今まで説明できなかったことが、心苦しかったのよ。いい機会だから、是非この場で説明させて」
「......わかりました。どうぞ」
「わたしはね......」
おもむろに語り始める雪子さん。
「......この世界の住人ではないのよ」
「それは知ってます」
「でも別に、幽霊でも妖怪でもない」
「......それもわかります」
「じゃあ、私は何者でしょう?」
なんと突然のクイズだ。
ボクは、かねてから、自分なりに予想していた結論を、言ってみる。
「あなたは未来からやって来た、ボクのお姉さんでは?」
「う~ん、50点......だって、あなたのお姉さんは、もう死んでいるでしょう?」
「あ......」
ボクは、言葉に詰まってしまった。