ホーム払暁の夢
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 陽炎は揺れあなたのその真っ白い手の表面を焼いて溶かして悍ましい姿へと変貌させていき、それをぼんやり見ている自身に微笑みを向けるけれどその瞳にはあなた諸共焼失させていく熱い炎のみが映し出されている、というのが最後に残った記憶であった。
 この胸の寂しさが実は布団が蹴飛ばされていたうえに部屋の窓が大胆にも開け放たれていたから入ってきた秋風によるものだということに、朝日が瞼を叩いたことでようやく起きて知った。秋の風が斯様にも寂しさを訴えるものなのかと今朝に初めて理解しては朝だというのにしばしの間黄昏れて格好をつけていたが、誰もいないこの家でそのような行動をしていることが恥ずかしくなってきて耳が熱くなったので即刻やめる。
 熱を冷ますついでに今朝のこの泡沫のような淡い、しかして鮮明に克明にと眼の網膜に或いは脳の髄まで焼き付いた夢境の景色を思い返す。なんとも悍ましいほどに美しく背徳的な夢だったことだろうか、白い手が溶けてあわや骨まで見えてしまうのかというところまで炎が何かを焼き尽くすだなんてきっと、金輪際見ることのできない夢幻の夢であったことだろう。
 あの熱の記憶がいまだにこびり付いて剥がれないのが、なんとも愛おしいようなうざったいような不可解な感覚を立たせてくるものだから普段の生活の最中でも何度も思い出してはぼんやりとしてしまうものである。
 自身の白い手が視界に映り込む度にあの皮膚が爛れて焦げた鮮血と肉がまろび出て骨の見えそうになる様を思い出してしまう。これが日常で起きた出来事ならそれはさぞ残酷で恐ろしくてそして、そこにいる自身も同じように熱さで喘ぎ苦しみ焼け落ちる皮膚に絶望し惨めに泣いて救いを乞い願ったことだろうか、想像しただけでも臓腑が怖気立ち脳が思考を拒絶する始末である。
 あの瞳と笑顔は一体何故こちらを見ていたのだろうか、ふと思い返せどもその答えこそは払暁の夢の中にある。
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払暁の夢作者:氷翔麗華
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