ホーム›ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―›ep21 仲良くなれる?
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ep21 仲良くなれる?

「ったく、純のやつ本当に先に行きやがった」

 唯華と共にクラス掲示がされている場所に着くと当夜は周りを見回しながら姿の見えない親友に文句を言う。
 別に待っていてくれてもよかっただろうと心の中で悪態をつきながら、クラス掲示を確認する。
 時間も遅いせいか、人はあまりおらずとても見やすかった。

「げっ......」

 唯華が口内で小さく呟く。
 その瞳には自分の名前とその下に書かれている名前を凝視していた。

「おっ、山吹一緒のクラスだな」

 現実逃避しようとした唯華を当夜の言葉が無情にも現実に戻した。ゆっくりと唯華は表情を作ると当夜の方へ向き直る。

「そうみたいですね」

 山吹唯華
 結城当夜

 クラス発表の紙を破り捨てたい衝動に駆られながらも唯華は覚悟を決める。
 そして、自分の名前の上に書かれている名前を確認して誰にもバレないように口元を緩めた。しかしすぐに表情は消える。

(......とりあえず、面倒臭い事にはなりそうだ)

 はぁ......とため息をつく。

「山吹、教室に行くぞ」

 唯華の名前を見つけた後に純や翼の名前も見つけて嬉しそうに当夜は言う。

「あっ、はい」

 唯華は返事をすると仕方ない様子で当夜の後を追った。



 ♢♢♢♢



 唯華は困っていた。――否、苛立っていた。原因は後ろにいる人物だ。入学式が終わり、各クラスに移動した。五十音順の座席は見事に面倒事を運んできていた。

 結城当夜。
 先程から彼は唯華にずっと話しかけてきている。それが唯華にとっては苦痛だった。本日空席だった前の席をボーと見つめ続けた。
 そして初日のオリエンテーションが終わり、帰り支度をしていた。

「唯華、また同じクラスだったね」

 助け舟が来たと思った。中等部からの知人である翼を唯華は珍しく頼もしく感じた。

「山吹と九条は知り合いだったのか?」

 しかし、すぐに翼が当夜と知り合いだったらしいと知り、ため息が溢れる。

「中学から腐れ縁のように同じクラスになってる親友?」
「何で疑問系?」

 嬉しそうに話す翼を小突く唯華も親しそうな様子を見せる。

「だって、親友とか言われるの好きじゃないでしょ、唯華は」

 笑いながら答える翼に唯華は罰が悪そうな顔をする。

「はじめまして、山吹さん。このバカがごめんな?」

 翼と一緒に2人のそばに来ていた純はそう言って当夜の頭を手で鷲掴んで下げる。

「何すんだよ、純!!」
「馴れ馴れしく話しかけすぎだ。山吹さん嫌がってただろ」

 オリエンテーション中も小声で唯華に話しかけている様子を見ていた純は唯華に謝りながらも、当夜に指摘する。

「だって、九条以外で島に来た初日に良くしてくれた奴だから嬉しくて」
「えっ? 唯華、よくしたなんて珍しいね」
「それ、結城の気のせい。私は当たり障りのない会話をして逃げようとしてたし」

 当夜を説教する純を見ながら2人は会話を続ける。

「確かに、結城君は唯華の苦手なタイプだもんね。いつ化けの皮が剥がれるのか結構楽しみになってきた」
「人の失敗を楽しみにしてるって普通に本人に言う?」
「あはは。とりあえず私といることで敬語で誤魔化すことは出来なくなるよね」
「それ、楽しそうに言わないでくれる? 場合によっては翼に近寄らないようにするだけだし」

 嫌そうな顔を隠しもせずにそう言う唯華に翼はひどーいと笑いながら言う。
 くだらない会話を続けながら当夜達を見るも、純の説教はまだ続いている。朝から迷惑をかけられ続けて、いい加減純の堪忍袋は切れていた。

「これ、帰ってもバレないよね?」
「流石に、説教の原因にもなってるのにそれは薄情すぎるよ、唯華」

 やってられないと言うように荷物をまとめ始める唯華に翼は呆れたように言う。そして、唯華の前の席に視線を向ける。

「山吹詩織さんだったっけ? 入学式初日にお休みはびっくりだね。同じ苗字だけど、唯華の知り合い?」

 朝から空席だった席とクラス名簿を頭の中で掛け合わせながら翼は朝のクラス名簿を見た時から疑問だった事を聞く。

「居候先の同居人。諸事情があって私の苗字を名乗ってるだけ」

 興味なさそうにそう答える。

「それって、姉妹とか親戚とかじゃないのか?」

 急に当夜が話に入ってくる。

「血の繋がりはないですね」 

 すると先程まで気軽な様子で翼と話していた唯華は急に敬語になり笑顔を貼り付けた表情を浮かべる。

「変わり身早いなぁ」

 そんな唯華の様子を見て翼は小さく呟く。しかし、当夜は特に気にした様子もなく唯華に話しかける。

「同じ苗字なら山吹の事も名前で読んだ方がいいのか?」

 すると唯華はあからさまに嫌そうな顔をすると、その言葉を否定する。

「知り合ったばかりの人間に名前を呼ばれるのあまり好きじゃないんですよ。分けて呼びたいなら、詩織の事を名前で呼んでください」

 取り付く島もない様子で唯華は言う。相変わらずだなーと翼はそんな唯華達を見つめている。

「あー、えっと山吹さん、ごめんね。こいつバカの考えなしだから気にしなくていいよ」

 その様子を見て、純は改めて唯華に謝罪する。

「三好......でしたっけ? 気にしなくていいですよ」

 そう言って荷物を持って唯華は立ち上がる。

「明日は多分詩織が来ると思うから、その時にどうすれば決めればいいと思いますよ」

 そう伝えると、唯華はそのまま教室を後にした。

「ごめんね、2人共。唯華は協調性がないからさ」

 翼は笑いながら当夜達に謝罪する。

「なんで九条が謝るんだ?」

 不思議そうに尋ねる当夜に純と翼は大物だと思った。

「いつまでも学校にいるわけにもいかないし、俺達もそろそろ寮に帰ろうか」

 純がそう切り出すと、翼も同意する。

「そうだね、入学記念にどこかでお茶でもしようか」

 翼はそう言って笑う。

「そうだな。九条、色々島のオススメ教えてくれ」

 嬉しそうにそう言うと、当夜は荷物をまとめて立ち上がる。そして3人も学校を後にした。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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「ったく、純のやつ本当に先に行きやがった」

 唯華と共にクラス掲示がされている場所に着くと当夜は周りを見回しながら姿の見えない親友に文句を言う。
 別に待っていてくれてもよかっただろうと心の中で悪態をつきながら、クラス掲示を確認する。
 時間も遅いせいか、人はあまりおらずとても見やすかった。

「げっ......」

 唯華が口内で小さく呟く。
 その瞳には自分の名前とその下に書かれている名前を凝視していた。

「おっ、山吹一緒のクラスだな」

 現実逃避しようとした唯華を当夜の言葉が無情にも現実に戻した。ゆっくりと唯華は表情を作ると当夜の方へ向き直る。

「そうみたいですね」

 山吹唯華
 結城当夜

 クラス発表の紙を破り捨てたい衝動に駆られながらも唯華は覚悟を決める。
 そして、自分の名前の上に書かれている名前を確認して誰にもバレないように口元を緩めた。しかしすぐに表情は消える。

(......とりあえず、面倒臭い事にはなりそうだ)

 はぁ......とため息をつく。

「山吹、教室に行くぞ」

 唯華の名前を見つけた後に純や翼の名前も見つけて嬉しそうに当夜は言う。

「あっ、はい」

 唯華は返事をすると仕方ない様子で当夜の後を追った。



 ♢♢♢♢



 唯華は困っていた。――否、苛立っていた。原因は後ろにいる人物だ。入学式が終わり、各クラスに移動した。五十音順の座席は見事に面倒事を運んできていた。

 結城当夜。
 先程から彼は唯華にずっと話しかけてきている。それが唯華にとっては苦痛だった。本日空席だった前の席をボーと見つめ続けた。
 そして初日のオリエンテーションが終わり、帰り支度をしていた。

「唯華、また同じクラスだったね」

 助け舟が来たと思った。中等部からの知人である翼を唯華は珍しく頼もしく感じた。

「山吹と九条は知り合いだったのか?」

 しかし、すぐに翼が当夜と知り合いだったらしいと知り、ため息が溢れる。

「中学から腐れ縁のように同じクラスになってる親友?」
「何で疑問系?」

 嬉しそうに話す翼を小突く唯華も親しそうな様子を見せる。

「だって、親友とか言われるの好きじゃないでしょ、唯華は」

 笑いながら答える翼に唯華は罰が悪そうな顔をする。

「はじめまして、山吹さん。このバカがごめんな?」

 翼と一緒に2人のそばに来ていた純はそう言って当夜の頭を手で鷲掴んで下げる。

「何すんだよ、純!!」
「馴れ馴れしく話しかけすぎだ。山吹さん嫌がってただろ」

 オリエンテーション中も小声で唯華に話しかけている様子を見ていた純は唯華に謝りながらも、当夜に指摘する。

「だって、九条以外で島に来た初日に良くしてくれた奴だから嬉しくて」
「えっ? 唯華、よくしたなんて珍しいね」
「それ、結城の気のせい。私は当たり障りのない会話をして逃げようとしてたし」

 当夜を説教する純を見ながら2人は会話を続ける。

「確かに、結城君は唯華の苦手なタイプだもんね。いつ化けの皮が剥がれるのか結構楽しみになってきた」
「人の失敗を楽しみにしてるって普通に本人に言う?」
「あはは。とりあえず私といることで敬語で誤魔化すことは出来なくなるよね」
「それ、楽しそうに言わないでくれる? 場合によっては翼に近寄らないようにするだけだし」

 嫌そうな顔を隠しもせずにそう言う唯華に翼はひどーいと笑いながら言う。
 くだらない会話を続けながら当夜達を見るも、純の説教はまだ続いている。朝から迷惑をかけられ続けて、いい加減純の堪忍袋は切れていた。

「これ、帰ってもバレないよね?」
「流石に、説教の原因にもなってるのにそれは薄情すぎるよ、唯華」

 やってられないと言うように荷物をまとめ始める唯華に翼は呆れたように言う。そして、唯華の前の席に視線を向ける。

「山吹詩織さんだったっけ? 入学式初日にお休みはびっくりだね。同じ苗字だけど、唯華の知り合い?」

 朝から空席だった席とクラス名簿を頭の中で掛け合わせながら翼は朝のクラス名簿を見た時から疑問だった事を聞く。

「居候先の同居人。諸事情があって私の苗字を名乗ってるだけ」

 興味なさそうにそう答える。

「それって、姉妹とか親戚とかじゃないのか?」

 急に当夜が話に入ってくる。

「血の繋がりはないですね」 

 すると先程まで気軽な様子で翼と話していた唯華は急に敬語になり笑顔を貼り付けた表情を浮かべる。

「変わり身早いなぁ」

 そんな唯華の様子を見て翼は小さく呟く。しかし、当夜は特に気にした様子もなく唯華に話しかける。

「同じ苗字なら山吹の事も名前で読んだ方がいいのか?」

 すると唯華はあからさまに嫌そうな顔をすると、その言葉を否定する。

「知り合ったばかりの人間に名前を呼ばれるのあまり好きじゃないんですよ。分けて呼びたいなら、詩織の事を名前で呼んでください」

 取り付く島もない様子で唯華は言う。相変わらずだなーと翼はそんな唯華達を見つめている。

「あー、えっと山吹さん、ごめんね。こいつバカの考えなしだから気にしなくていいよ」

 その様子を見て、純は改めて唯華に謝罪する。

「三好......でしたっけ? 気にしなくていいですよ」

 そう言って荷物を持って唯華は立ち上がる。

「明日は多分詩織が来ると思うから、その時にどうすれば決めればいいと思いますよ」

 そう伝えると、唯華はそのまま教室を後にした。

「ごめんね、2人共。唯華は協調性がないからさ」

 翼は笑いながら当夜達に謝罪する。

「なんで九条が謝るんだ?」

 不思議そうに尋ねる当夜に純と翼は大物だと思った。

「いつまでも学校にいるわけにもいかないし、俺達もそろそろ寮に帰ろうか」

 純がそう切り出すと、翼も同意する。

「そうだね、入学記念にどこかでお茶でもしようか」

 翼はそう言って笑う。

「そうだな。九条、色々島のオススメ教えてくれ」

 嬉しそうにそう言うと、当夜は荷物をまとめて立ち上がる。そして3人も学校を後にした。
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ぱんどら ―治外法権の島で巻き起こる異能サスペンスと秘された謎―作者:星川宙
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