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第十話 卒業

 千佳伊ちかいが一通の書状を高く掲げる。

「喜べ、仙せんよ! 裁判所から訴状が届いたぞ」
「嬉しくねー......今度はどこと揉めたんだよ?」
「埼玉県大宮市だいぐうしの市長の犯罪を暴いた件だ!」

 ついに政治家との騒動を起こしたと知り、仙はガックリと肩を落とす。

「なんで、んな嬉しそうなんだよ?」
「インプが普段の百倍くらいに伸びているからな!」
「......小説のPV伸ばせよ」

 付き合いきれないと思った仙は、生贄として弧見こみを召喚した。

「チカチカ、仙~。来たよ~。今日はなんのパーティー?」

 テーブルにはローストビーフ、スペアリブ、パエリアが並ぶ。
 弧見を釣るための必要経費だった。

「私の主催する政治家との開戦記念パーティーだ!」

 千佳伊が主催したことになっているが、仙はさらりと流す。

「おー、そうかそうか。後は二人でご歓談を。俺は仕事に戻るから」
「ちょ! ウチ一人でチカチカの相手はキツイって、嫁の面倒をちゃんとみて」
「嫁じゃねーよ!」

 弧見が仙を羽交い締めにし、全体重をかける。
 逃走ルートには千佳伊が先回りした。

「今日もゆっくり語ろうではないか」
「仙、もう逃がさないからぁぁあ! 道連れにしてやるぅぅう!」

 仙が諦めて着席。
 千佳伊も満足げに頷く。

「市長も仙も気が短すぎて困る。卒業証書も19.2秒では足りぬ」
「短いよね~」
「いやチラ見せよりは長いだろ? テレビCMより長いしさ」

 食事の手も口も止まらない。

「いや短い。大体、昨今のタイパ厨どくしゃは堪え性がない」
「ウチも短ければいいって風潮は嫌いかなぁ」

 千佳伊が語る。

「第一話を短く、一文を短く、伏線回収までを短く、投稿サイクルを短く......」

 そのまま急に「バンッ!」と台パンをする千佳伊。

「ふざけるな! 短いのは仙のアレと夜の営みだけで充分だ!」
「そっちこそふざけんな。事実無根で訴えるぞ」
「え? ってことは仙のは長いの?」

 千佳伊が足を組み、ゴミを見る目を仙に向けた。

「短いのもいいだろう。たまにはな」
「タマタマだけにね」
「セクハラやめろ。結局、何が言いたいんだよ」

 千佳伊はアルコールティッシュで手の油を拭き取る。

「すべてが短くあっさりでは、将来性をせばめてしまうと思わないか?」
「作風や作品ごとにバリエーションがあった方がいいってこと? わかる~」

 仙は頭を振り、小さく嘆息する。

「そうやって時代に逆らうからお前らの作品の先は未来永劫閉じてんだよ」
「ふむ。短くバッサリか。そう短絡的な発想だから堪え性がないと言っている」
「え? チカチカのは終わってるけど、ウチのは将来性あるよね?」

 相変わらず三人の話は噛み合わない。
 会話が平行線のさなか、千佳伊が一通の書類を取りだす。

「ちなみにテレビ局から討論会のオファーが来た。三人で出るぞ!」
「「はいーーー!?」」
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間違った創作論を語る作家の話作者:元毛玉(もとけだま)
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第十話 卒業

 千佳伊ちかいが一通の書状を高く掲げる。

「喜べ、仙せんよ! 裁判所から訴状が届いたぞ」
「嬉しくねー......今度はどこと揉めたんだよ?」
「埼玉県大宮市だいぐうしの市長の犯罪を暴いた件だ!」

 ついに政治家との騒動を起こしたと知り、仙はガックリと肩を落とす。

「なんで、んな嬉しそうなんだよ?」
「インプが普段の百倍くらいに伸びているからな!」
「......小説のPV伸ばせよ」

 付き合いきれないと思った仙は、生贄として弧見こみを召喚した。

「チカチカ、仙~。来たよ~。今日はなんのパーティー?」

 テーブルにはローストビーフ、スペアリブ、パエリアが並ぶ。
 弧見を釣るための必要経費だった。

「私の主催する政治家との開戦記念パーティーだ!」

 千佳伊が主催したことになっているが、仙はさらりと流す。

「おー、そうかそうか。後は二人でご歓談を。俺は仕事に戻るから」
「ちょ! ウチ一人でチカチカの相手はキツイって、嫁の面倒をちゃんとみて」
「嫁じゃねーよ!」

 弧見が仙を羽交い締めにし、全体重をかける。
 逃走ルートには千佳伊が先回りした。

「今日もゆっくり語ろうではないか」
「仙、もう逃がさないからぁぁあ! 道連れにしてやるぅぅう!」

 仙が諦めて着席。
 千佳伊も満足げに頷く。

「市長も仙も気が短すぎて困る。卒業証書も19.2秒では足りぬ」
「短いよね~」
「いやチラ見せよりは長いだろ? テレビCMより長いしさ」

 食事の手も口も止まらない。

「いや短い。大体、昨今のタイパ厨どくしゃは堪え性がない」
「ウチも短ければいいって風潮は嫌いかなぁ」

 千佳伊が語る。

「第一話を短く、一文を短く、伏線回収までを短く、投稿サイクルを短く......」

 そのまま急に「バンッ!」と台パンをする千佳伊。

「ふざけるな! 短いのは仙のアレと夜の営みだけで充分だ!」
「そっちこそふざけんな。事実無根で訴えるぞ」
「え? ってことは仙のは長いの?」

 千佳伊が足を組み、ゴミを見る目を仙に向けた。

「短いのもいいだろう。たまにはな」
「タマタマだけにね」
「セクハラやめろ。結局、何が言いたいんだよ」

 千佳伊はアルコールティッシュで手の油を拭き取る。

「すべてが短くあっさりでは、将来性をせばめてしまうと思わないか?」
「作風や作品ごとにバリエーションがあった方がいいってこと? わかる~」

 仙は頭を振り、小さく嘆息する。

「そうやって時代に逆らうからお前らの作品の先は未来永劫閉じてんだよ」
「ふむ。短くバッサリか。そう短絡的な発想だから堪え性がないと言っている」
「え? チカチカのは終わってるけど、ウチのは将来性あるよね?」

 相変わらず三人の話は噛み合わない。
 会話が平行線のさなか、千佳伊が一通の書類を取りだす。

「ちなみにテレビ局から討論会のオファーが来た。三人で出るぞ!」
「「はいーーー!?」」
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間違った創作論を語る作家の話作者:元毛玉(もとけだま)
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