ホーム›星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~›第4話 翼鷲獅
← 次の話目次前の話 →

第4話 翼鷲獅



「ちょっと ヤバかったわね」

「......いや ホンマに」

「何で こんなところ東の森に 翼鷲獅グリフォンなんて いるのよ?」


 マリノアが 辺りを警戒しながら 紅瑠石ガーネットの傍に歩いてくる。
 幻獣の死骸から柳葉刀を回収しながらの闇エルフの返答。


「分からへん。翼鷲獅グリフォンなんて 王都の近所にいるような生き物もんちゃうで? ハイリシアの辺りなら ともかく......」

「牙猪タスク・ボアーは 翼鷲獅グリフォンに追われて 怯えて 気が立ってのかな?」

「......かもな」

「あの1頭だけかな? 北の山地にしかいないハズなのに......」


 頭上を 少し不安そうに警戒しながら 海碧瞳ディープ・マリンの薬師が言う。
 

「さすがに もうおらんと思うけど 早めに撤収しよーや。並みの片刃刀長ドスで無茶鬼殺斬したから 刃に脂回ってしもて 切れ味ガタ落ちや。もしかしたら ちょっと刃こぼれしてるかもやし......。マリノアも薬瓶2個 使つこて 残り少ないんちゃうの?」


 鞘に仕舞った片刃刀の柄を左手で確かめながらの紅瑠石ガーネットの問い。
 

「火炎系は残り1瓶。酸系とかは まだあるけど ちょっと心許ないわね......」


 マリノアも肩掛け鞄を撫でて 中の薬瓶の数を思い返す。
 

「......爆炎瓶エクスプロージョン2本とか 想定外やんな」

「こんなことなら業焔瓶インフェルノとか用意しとけばよかった」


 ジト目で マリノアを見詰め返す紅瑠石ガーネット。


「......いや。業焔瓶インフェルノなんか使つこたら ウチも一緒に焼け死ぬやん......。ってゆーか 2本目の爆炎瓶エクスプロージョン ウチも巻き込まれそうやってんけど? 2本目 飛んでくんの見て 慌てて 翼鷲獅グリフォンの影に隠れてんで?」

「ああ アレ? 人のこと 貧・乳・とか言った罰よ。一発目で巻き込んでやろうか 悩んだんだけど あんまり可哀想だから 二発目にしといたの。優しいでしょ?」

「気づかへんかったら どないすんねんっ!」

「......どーせ アンタ そんなヘマしないでしょ。巻き込まれりゃよかったのに」

 
 お互い罵り合いながら 森を抜け リイン村へと続く小道へと出る。
 そのタイミングで闇エルフの長耳が 微かに揺れ 端整な美貌が仄かに痙攣ひきつる。


「紅瑠石ガーネット どうかした? また ヤバい感じ?」

「......いや。ヤバい訳や あらへんけど...。いや まー ヤバいちゅーか...」


 白銀髪プラチナ・ブロンドのエルフが 言い終わらない内に 飛んでくる甲高い声。


「ししょ~っ! ししょ~じゃないっすか!? 何でこんなところに!?」


 視界の先に 軽装金属鎧を装備した濃緑髪マラカイトの少女が見えたかと思うと 後ろを振り向き 大きく手を振る。


「分隊長~っ! 分隊長っ! 紅瑠石ガーネットししょ~とマリノアさんを 発見したでありますっ!」


 そして もう一度こちらを振り向くと 子犬のように駆け寄ってくる。
 その後に続いて視界に入る 全身金属鎧の青年と 革鎧の衛士の一団。
 軽装金属鎧の少女を含めて 全員が弓で武装している。


「リアンじゃない。アンタこそ どーしたのよ こんなとこ東の森で。フォージとデート?」

「ちっ 違うであります! 自分と分隊長は そーゆー関係じゃないのであります! 任務中なのであります 任務中っ!」

「何の任務なん?」

「そっ それは ししょ~相手でも 言えないのであります。極秘任務なのでありますから......」


 少女の名前はリアン・ペイジ。
 王都の騎士団に勤務する騎士見習い。
 細身の長剣と小型盾 金属片で補強された革鎧。
 濃緑色マラカイト・グリーンのショートヘア。
 年齢は 17歳。


「おい リアンッ。任務に関すること喋るなよ?」


 追い付いてきた金属鎧の青年が 少女に釘を刺す。
 衛士隊の分隊長を勤める青年はフォージ・ヒューガス。
 柔和な表情ながら かなりの高身長で 重装の金属鎧と相俟って 近くに立つだけで 一定の威圧感を放っている。


「大丈夫であります 分隊長」

「こんにちは マリノアさん。あと 紅瑠石ガーネットも。今日は アリシア様は 御一緒では ないのですね」

「こんにちは フォージ。今日は アリシアは来てないわ」

「そう言えば アリシア様は王都訪問中の賓客の護衛任務中だった筈です。失礼いたしました」

「......アリシア来てたら あんな苦労せんで済んだのに......」
 

 ボソッと呟く 白銀髪プラチナ・ブロンドの闇エルフ。
 
 アリシア・アダマンティ。
 マリノアや紅瑠石ガーネットと よく行動を共にする女性騎士。
 リアンやフォージの上官筋にあたる人物でもある。
 

「それで 王都の衛士隊が こんなとこ東の森で 何してるの?」


 水碧髪アクア・マリンの薬師の質問に 焦茶色の短髪の青年は 真面目そうな表情を崩さず 淡々と答える。


「任務に関することには お答え出来ません」

「どうせ 翼鷲獅グリフォン狩りやろ?」

「ぶっ 分隊長 自分 まだ何も喋ってないのでありますっ」


 慌てた顔で 上官の顔を見上げて 釈明を始めるリアン。
 その様子に無言で 目を見合わせ 肩を竦める紅瑠石ガーネットとマリノア。
 

「なぁ フォージ。コイツ 致命的に斥候スカウト向いてへんで?」

「ホントよね...。どうして こんな娘 斥候スカウトにしようと思ったワケ?」

「......知らないですよ。騎士団長が 眼が良くて 脚が速いなら斥候向きだと仰ったと聞いてます」


 焦茶色の短髪を横に振りながら 小さくタメ息を吐く21歳。
 

「なっ なんでありますか? ししょ~達まで......。じっ 自分 本当に 何も喋ってないのでありますっ」

 .........。
 ......。
 ...。




 
シェア
前の話 →
第3話 東の森
← 次の話
第5話 R.P.巡察日誌〈その1:日常業務〉
星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム›星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~›第4話 翼鷲獅
← 前の話目次次の話 →

第4話 翼鷲獅



「ちょっと ヤバかったわね」

「......いや ホンマに」

「何で こんなところ東の森に 翼鷲獅グリフォンなんて いるのよ?」


 マリノアが 辺りを警戒しながら 紅瑠石ガーネットの傍に歩いてくる。
 幻獣の死骸から柳葉刀を回収しながらの闇エルフの返答。


「分からへん。翼鷲獅グリフォンなんて 王都の近所にいるような生き物もんちゃうで? ハイリシアの辺りなら ともかく......」

「牙猪タスク・ボアーは 翼鷲獅グリフォンに追われて 怯えて 気が立ってのかな?」

「......かもな」

「あの1頭だけかな? 北の山地にしかいないハズなのに......」


 頭上を 少し不安そうに警戒しながら 海碧瞳ディープ・マリンの薬師が言う。
 

「さすがに もうおらんと思うけど 早めに撤収しよーや。並みの片刃刀長ドスで無茶鬼殺斬したから 刃に脂回ってしもて 切れ味ガタ落ちや。もしかしたら ちょっと刃こぼれしてるかもやし......。マリノアも薬瓶2個 使つこて 残り少ないんちゃうの?」


 鞘に仕舞った片刃刀の柄を左手で確かめながらの紅瑠石ガーネットの問い。
 

「火炎系は残り1瓶。酸系とかは まだあるけど ちょっと心許ないわね......」


 マリノアも肩掛け鞄を撫でて 中の薬瓶の数を思い返す。
 

「......爆炎瓶エクスプロージョン2本とか 想定外やんな」

「こんなことなら業焔瓶インフェルノとか用意しとけばよかった」


 ジト目で マリノアを見詰め返す紅瑠石ガーネット。


「......いや。業焔瓶インフェルノなんか使つこたら ウチも一緒に焼け死ぬやん......。ってゆーか 2本目の爆炎瓶エクスプロージョン ウチも巻き込まれそうやってんけど? 2本目 飛んでくんの見て 慌てて 翼鷲獅グリフォンの影に隠れてんで?」

「ああ アレ? 人のこと 貧・乳・とか言った罰よ。一発目で巻き込んでやろうか 悩んだんだけど あんまり可哀想だから 二発目にしといたの。優しいでしょ?」

「気づかへんかったら どないすんねんっ!」

「......どーせ アンタ そんなヘマしないでしょ。巻き込まれりゃよかったのに」

 
 お互い罵り合いながら 森を抜け リイン村へと続く小道へと出る。
 そのタイミングで闇エルフの長耳が 微かに揺れ 端整な美貌が仄かに痙攣ひきつる。


「紅瑠石ガーネット どうかした? また ヤバい感じ?」

「......いや。ヤバい訳や あらへんけど...。いや まー ヤバいちゅーか...」


 白銀髪プラチナ・ブロンドのエルフが 言い終わらない内に 飛んでくる甲高い声。


「ししょ~っ! ししょ~じゃないっすか!? 何でこんなところに!?」


 視界の先に 軽装金属鎧を装備した濃緑髪マラカイトの少女が見えたかと思うと 後ろを振り向き 大きく手を振る。


「分隊長~っ! 分隊長っ! 紅瑠石ガーネットししょ~とマリノアさんを 発見したでありますっ!」


 そして もう一度こちらを振り向くと 子犬のように駆け寄ってくる。
 その後に続いて視界に入る 全身金属鎧の青年と 革鎧の衛士の一団。
 軽装金属鎧の少女を含めて 全員が弓で武装している。


「リアンじゃない。アンタこそ どーしたのよ こんなとこ東の森で。フォージとデート?」

「ちっ 違うであります! 自分と分隊長は そーゆー関係じゃないのであります! 任務中なのであります 任務中っ!」

「何の任務なん?」

「そっ それは ししょ~相手でも 言えないのであります。極秘任務なのでありますから......」


 少女の名前はリアン・ペイジ。
 王都の騎士団に勤務する騎士見習い。
 細身の長剣と小型盾 金属片で補強された革鎧。
 濃緑色マラカイト・グリーンのショートヘア。
 年齢は 17歳。


「おい リアンッ。任務に関すること喋るなよ?」


 追い付いてきた金属鎧の青年が 少女に釘を刺す。
 衛士隊の分隊長を勤める青年はフォージ・ヒューガス。
 柔和な表情ながら かなりの高身長で 重装の金属鎧と相俟って 近くに立つだけで 一定の威圧感を放っている。


「大丈夫であります 分隊長」

「こんにちは マリノアさん。あと 紅瑠石ガーネットも。今日は アリシア様は 御一緒では ないのですね」

「こんにちは フォージ。今日は アリシアは来てないわ」

「そう言えば アリシア様は王都訪問中の賓客の護衛任務中だった筈です。失礼いたしました」

「......アリシア来てたら あんな苦労せんで済んだのに......」
 

 ボソッと呟く 白銀髪プラチナ・ブロンドの闇エルフ。
 
 アリシア・アダマンティ。
 マリノアや紅瑠石ガーネットと よく行動を共にする女性騎士。
 リアンやフォージの上官筋にあたる人物でもある。
 

「それで 王都の衛士隊が こんなとこ東の森で 何してるの?」


 水碧髪アクア・マリンの薬師の質問に 焦茶色の短髪の青年は 真面目そうな表情を崩さず 淡々と答える。


「任務に関することには お答え出来ません」

「どうせ 翼鷲獅グリフォン狩りやろ?」

「ぶっ 分隊長 自分 まだ何も喋ってないのでありますっ」


 慌てた顔で 上官の顔を見上げて 釈明を始めるリアン。
 その様子に無言で 目を見合わせ 肩を竦める紅瑠石ガーネットとマリノア。
 

「なぁ フォージ。コイツ 致命的に斥候スカウト向いてへんで?」

「ホントよね...。どうして こんな娘 斥候スカウトにしようと思ったワケ?」

「......知らないですよ。騎士団長が 眼が良くて 脚が速いなら斥候向きだと仰ったと聞いてます」


 焦茶色の短髪を横に振りながら 小さくタメ息を吐く21歳。
 

「なっ なんでありますか? ししょ~達まで......。じっ 自分 本当に 何も喋ってないのでありますっ」

 .........。
 ......。
 ...。




 
シェア
← 前の話
第3話 東の森
次の話 →
第5話 R.P.巡察日誌〈その1:日常業務〉
星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません