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第14話 G.P.S.覚書〈その2:臨時休業〉



 読者の皆様 お久しぶりです。
 ジーナ・ダイヤモンドです。
 マリノア店長様が コウト百合を採取してウェスティリア星降る街に戻ってこられた後 唐突に宣言されました。

 
「悪いんだけど 新薬の調合に集中したいし 2週間ほど〈碧猫屋あおねこや〉閉めるわね」


 正直 呆然としました。
 マリノア店長様は2週間と仰いましたが 2週間後には学院の試験期間が始まってしまうのです。
 となりますと 結構な期間 収入無しになってしまいます。
 実家暮らしですから たちまち飢え死にするようなことは 無いと思いますが『お給料が入ったら...』と楽しみにしていました アレもコレも諦めないといけない感じです。
 もしかしたら 試験終わりに お友達と行く約束をしていたケーキの美味しいお店も断らなくてはならないかも......。


「店長 休業補償とか無いんすか?」


 バイト仲間のキールさんが抗議の声を上げて下さいます。
 キールさんは 25歳前後のお兄さん。
 結構長身のスラッとした方。
 親切で気さくな方ですが 時々伸ばしてらっしゃる薄茶色の無精髭が 生理的に受け付けません。
 あと 煙草臭いのも......悪い方で無いのは 重々承知なのですが。
 普段は 配達や買い出し・調達といった外回りのお仕事をして下さっています。
 シャリオ草の新芽摘みのような 危険が伴う可能性のある業務の際には 私わたくしともチームを組んで ご一緒することもある方です。


「ハァ? んなもんあるワケないでしょ?」


 当然のように けんもほろろな マリノア店長様のお返事。


「いや 店長。俺 本業の方 どーなるか分かんねぇしさ。お嬢にしても 試験や何やらで 働けねぇ日もあるしさ。急に2週間も放り出されたら 飢え死にしちまうって」


 キールさんが 喰い下がって下さいます。
 私わたくしも 隣で大きく首を縦に振り 同意を表します。
 キールさんの本業は2度ほどお尋ねしたのですが 言葉を濁して教えては下さいませんでした。
 ただ 最近 紅瑠石ガーネット様のことを〈姐ねえさん〉と呼んでらっしゃることに気が付き 何となく推測できるようになりました。
 野外採取の際も 革鎧に短剣といった軽装で身軽に活動されていますし......。


「エレノアールは 調合の補助して欲しいし いつも通り出勤してね」


 キールさんと私わたくしの存在なぞ そもそも最初からなかったかのように マリノア店長様が話を続けられます。
 学生言葉で言う〈ガン無視〉というヤツです。


「......ダメだ お嬢。取りつく島もねぇ」


 因みに〈お嬢〉というのはキールさんが 私わたくしに付けた渾名でございます。
 はじめ〈お嬢〉なんてトンでもないとお断りしたのですが「古代文字読めるだけで 俺からしたらお嬢様だよ」と仰って 結局そのままになっております。

 エレノアールさんが 申し訳なさそうに私わたくし達に目配せして マリノア様の傍へ行き 指示を受けてらっしゃいます。
 エレノアールさんは 41歳。
 2人のお子さんを育てながら〈碧猫屋〉で働いてらっしゃる優しいお母様。
 お若い頃は 薬師として活躍してらしたそうで 私わたくしのいない時は店番 私わたくしが出勤致しますと 裏で調合や補助のお仕事をしてらっしゃいます。


 カウンターの上に 何かのリストを広げて エレノアールさんに 必要な作業と器具の説明を始めるマリノア店長様。
 エレノアールさんもノートを開き 必要事項を丁寧に書き取っていってらっしゃいます。
 水碧髪アクア・マリンを猫目石キャターズ・アイのように煌めかせたマリノア店長様が 書類に目を落としたまま 仰います。


「あのさ キールと ジーナと...さ。〈碧猫屋あおねこや〉には 暫しばらくアンタ達にできる仕事無いんだけど 実は リイン村のフィネルさんから 手紙来てんの。アンタ達に 丁度いいぐらいの仕事だと思うし 一度 話 聞きに行ってみたら?」


 背に腹は代えられません。
 私とキールさんは 目を見合わせると〈碧猫屋あおねこや〉を後にしたのでした......。
 .........。
 ......。
 ...。


 王都ウェスティリア星降る街の東門から 歩いて1刻ほどのところにリイン村はございます。
 東の森と通称されております森林地帯の端に位置し 王都向けの野菜の栽培を中心に 麦や豆等の穀物の栽培 ヤク等の牧畜 後は 森で採れる動植物の加工等が 主な産業の典型的なウェスティリア星降る街近郊の農村と申せましょう。

 私わたくし達は お手紙を下さったフィネルさんのお宅を目指します。
 リイン村のフィネルさんのお宅への道は レノア草の受け取り業務で 何度も通った道ですので 私わたくしが先頭に立って 案内致します。
 やがて 藁葺きの一軒家が見えて参り 見慣れた木柵を開け 入り口横の呼び鈴を鳴らします。

 ── リリーーン ──
 

「はーい。どうぞー 入ってー」


 中から明るいフィネルおば様の声が聞こえたのを確認して 木戸を開けます。
 よく日焼けして 少し小太りのフィネル家の奥様が姿を現し 土間へと招き入れて下さいます。


「あらあら ジーナちゃんじゃないの! 今日もカワイイわねぇ。あらっ? そちらのお兄さんは?」

「こんちわ。俺 〈碧猫屋あおねこや〉で お世話になってるキールってもんです」
 
「ああ。マリノアさんにお願いした件ね。わざわざ来て下さったのねぇ。あの ちょっと ここで待っててくださるかしらねぇ? デュンクルさんと先生 呼んで来ますから......」


 .........。
 ......。
 ...。

 
 
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星降る街の薬種商〈碧猫屋〉~薬師マリノアの仕入帳控え~作者:金星タヌキ
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 読者の皆様 お久しぶりです。
 ジーナ・ダイヤモンドです。
 マリノア店長様が コウト百合を採取してウェスティリア星降る街に戻ってこられた後 唐突に宣言されました。

 
「悪いんだけど 新薬の調合に集中したいし 2週間ほど〈碧猫屋あおねこや〉閉めるわね」


 正直 呆然としました。
 マリノア店長様は2週間と仰いましたが 2週間後には学院の試験期間が始まってしまうのです。
 となりますと 結構な期間 収入無しになってしまいます。
 実家暮らしですから たちまち飢え死にするようなことは 無いと思いますが『お給料が入ったら...』と楽しみにしていました アレもコレも諦めないといけない感じです。
 もしかしたら 試験終わりに お友達と行く約束をしていたケーキの美味しいお店も断らなくてはならないかも......。


「店長 休業補償とか無いんすか?」


 バイト仲間のキールさんが抗議の声を上げて下さいます。
 キールさんは 25歳前後のお兄さん。
 結構長身のスラッとした方。
 親切で気さくな方ですが 時々伸ばしてらっしゃる薄茶色の無精髭が 生理的に受け付けません。
 あと 煙草臭いのも......悪い方で無いのは 重々承知なのですが。
 普段は 配達や買い出し・調達といった外回りのお仕事をして下さっています。
 シャリオ草の新芽摘みのような 危険が伴う可能性のある業務の際には 私わたくしともチームを組んで ご一緒することもある方です。


「ハァ? んなもんあるワケないでしょ?」


 当然のように けんもほろろな マリノア店長様のお返事。


「いや 店長。俺 本業の方 どーなるか分かんねぇしさ。お嬢にしても 試験や何やらで 働けねぇ日もあるしさ。急に2週間も放り出されたら 飢え死にしちまうって」


 キールさんが 喰い下がって下さいます。
 私わたくしも 隣で大きく首を縦に振り 同意を表します。
 キールさんの本業は2度ほどお尋ねしたのですが 言葉を濁して教えては下さいませんでした。
 ただ 最近 紅瑠石ガーネット様のことを〈姐ねえさん〉と呼んでらっしゃることに気が付き 何となく推測できるようになりました。
 野外採取の際も 革鎧に短剣といった軽装で身軽に活動されていますし......。


「エレノアールは 調合の補助して欲しいし いつも通り出勤してね」


 キールさんと私わたくしの存在なぞ そもそも最初からなかったかのように マリノア店長様が話を続けられます。
 学生言葉で言う〈ガン無視〉というヤツです。


「......ダメだ お嬢。取りつく島もねぇ」


 因みに〈お嬢〉というのはキールさんが 私わたくしに付けた渾名でございます。
 はじめ〈お嬢〉なんてトンでもないとお断りしたのですが「古代文字読めるだけで 俺からしたらお嬢様だよ」と仰って 結局そのままになっております。

 エレノアールさんが 申し訳なさそうに私わたくし達に目配せして マリノア様の傍へ行き 指示を受けてらっしゃいます。
 エレノアールさんは 41歳。
 2人のお子さんを育てながら〈碧猫屋〉で働いてらっしゃる優しいお母様。
 お若い頃は 薬師として活躍してらしたそうで 私わたくしのいない時は店番 私わたくしが出勤致しますと 裏で調合や補助のお仕事をしてらっしゃいます。


 カウンターの上に 何かのリストを広げて エレノアールさんに 必要な作業と器具の説明を始めるマリノア店長様。
 エレノアールさんもノートを開き 必要事項を丁寧に書き取っていってらっしゃいます。
 水碧髪アクア・マリンを猫目石キャターズ・アイのように煌めかせたマリノア店長様が 書類に目を落としたまま 仰います。


「あのさ キールと ジーナと...さ。〈碧猫屋あおねこや〉には 暫しばらくアンタ達にできる仕事無いんだけど 実は リイン村のフィネルさんから 手紙来てんの。アンタ達に 丁度いいぐらいの仕事だと思うし 一度 話 聞きに行ってみたら?」


 背に腹は代えられません。
 私とキールさんは 目を見合わせると〈碧猫屋あおねこや〉を後にしたのでした......。
 .........。
 ......。
 ...。


 王都ウェスティリア星降る街の東門から 歩いて1刻ほどのところにリイン村はございます。
 東の森と通称されております森林地帯の端に位置し 王都向けの野菜の栽培を中心に 麦や豆等の穀物の栽培 ヤク等の牧畜 後は 森で採れる動植物の加工等が 主な産業の典型的なウェスティリア星降る街近郊の農村と申せましょう。

 私わたくし達は お手紙を下さったフィネルさんのお宅を目指します。
 リイン村のフィネルさんのお宅への道は レノア草の受け取り業務で 何度も通った道ですので 私わたくしが先頭に立って 案内致します。
 やがて 藁葺きの一軒家が見えて参り 見慣れた木柵を開け 入り口横の呼び鈴を鳴らします。

 ── リリーーン ──
 

「はーい。どうぞー 入ってー」


 中から明るいフィネルおば様の声が聞こえたのを確認して 木戸を開けます。
 よく日焼けして 少し小太りのフィネル家の奥様が姿を現し 土間へと招き入れて下さいます。


「あらあら ジーナちゃんじゃないの! 今日もカワイイわねぇ。あらっ? そちらのお兄さんは?」

「こんちわ。俺 〈碧猫屋あおねこや〉で お世話になってるキールってもんです」
 
「ああ。マリノアさんにお願いした件ね。わざわざ来て下さったのねぇ。あの ちょっと ここで待っててくださるかしらねぇ? デュンクルさんと先生 呼んで来ますから......」


 .........。
 ......。
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