♗25
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一時間ほど歩いて。念願の川に辿り着いた。
随分澄んだ川で飲み水でも全然問題なさそう。新生区の川とは全然違う。大自然ならではって感じ。しかし川を目指していたとはいえ川という場所に致命的な問題を持つ人が約一名。
「おい。あれだけ猿のような抜群の運動神経を見せつけておいて、本気で泳げないってどういうことだ?」
「まあ。ほらおれ、ファイヤーゴッドって名前なだけあって、水は苦手。みたいな。」
「泳げねえっても手前は浅いぜ。」
「無理無理無理。本当無理。ゴメンなさい。なんなら視界に入るだけでちょっと具合悪くなるぐらいに無理。」
歩は、納得いってなさそうな顔をしている。そりゃそうだねえ。この猿のように俊敏な忍者が水だけは本当に苦手というのは理解出来ないだろう。あたしとハクスイからしたら常識なんだけど、やっぱり普通の感覚でいくのそのキャラでカナヅチというの些か反則なキャラである。
「ほんとゴメン。簡潔に話すから、もうこれ以上追求しないで。おれ小さい頃、睡眠薬飲まされて、海に落とされるっていうなんか主人公みたいな設定あるから、本当に無理なんだ。だからゴメン。冗談でも川に近付かせようとか、トラウマ克服させようとかもしないで欲しい。これだけは本当に無理なんだ。」
なんだかんだ言って、ヒカミは歩とハクスイに腰をしっかり捕まえてもらった状態で、川で頭を洗っていた。別に二人掛かりじゃなくてもって思ったけど、まあそこまで水が苦手だと二人掛かりじゃないと不安なんだろう。
そんなヒカミを横目にあたしは川へダイブした。
最高!きったない返り血も綺麗になるし、それなりの深さもあるから普通に泳げそうだし、探せば魚も居そう。
この横で今夜は野宿かという案も上がったけど、ヒカミに猛反対を食らったので、結局ここから5分くらい歩いた場所を今夜の野宿地点とすることにした。
西日が強く。日が暮れる前に野宿の準備をするにあたり、ハクスイとキアラが洗濯と火種集め。歩が魚取り。あたしも歩に誘われたけど、あたしはどうしても魚よりなんとかして肉が手に入らないかと期待していたので、ヒカミと一緒に山の中を探索する事にした。
それなのに、ヒカミときたら何やら木の実とかキノコとか挙句の果てには芋虫とか腹の足しにならないものばかりを見ている。そんなんじゃ絶対腹の足しになら無いじゃん。ってか、芋虫ってあたし絶対嫌だよ。
木とか登ったら鳥とか、リスとか取れないだろうか。やーでも鳥もリスも食べるとこ少なそう。なんかもっと大物いないのかな。虎とか熊とか。
暫く歩き回ると動物の匂いがした。なんの動物か分からないけど、明らかに何か動物だ。匂いを辿ると、糞を見つけた。雑食の匂い。そしてゴアゴアした毛と足跡。多分猪だ。
『ヒカミ。こっち。』
ヒカミを呼ぶとヒカミは、木の実を手にこっちに来てくれた。ったくそんなの腹の足しにならないって。
「何だこれ?動物の糞か?」
『猪の。多分近くに生息していると思う。狩り行こう。』
「おいおい。今から狩りってマジかよ。もう日も暮れそうだぜ。」
いや、なんでそんな乗る気じゃないのさ。苛々するなあ。
『大丈夫。あたしが狩るから。』
あたしが苛ついているのを見透かされたのか訝し気にヒカミはあたしを見てくる。
「そんなに腹空かしてんのか?」
『うん。なんだか苛々するぐらいにはお腹空いてる。』
正直に言った。多分こんなに苛々するのはヒカミが変なものばかり集めているせいじゃなくて純粋にあたしが空腹の所為なだけだと思う。
しかし、ここで予想外。予想外な声が聞こえた。あたしは咄嗟に声の方を向く。
「おい。サク。どうし、」
そうか、ヒカミの聴力だと聞こえないのか。
『キアラの悲鳴。』
おれには聞こえなかったぞ。とかそんな事を言っていた気がするけど、あたしは真っ先にキアラの悲鳴の方へ走り出していた。なんか急がないとヤバい気がする。
「ちょっ、おい。サクーっ!」
ごめん。後から来て。多分あの悲鳴。異常事態だ。