Episode 33 STELLA CLARITY
――ビー!!――
――ビー!!――
暗闇を裂くように、警報が鳴り響いていた。
赤い非常灯が、無機質な通路を断続的に照らす。
「急げ!」
「逃がすな!」
怒号が交錯する。
「はぁ......はぁ......」
ステラは息を切らしながら走っていた。
隣では、少年が必死に足を動かしている。
「......っ!」
荒い呼吸。
何度も転びそうになりながら、それでも前だけを見て走る。
――パンッ――
――パンッ――
壁が砕け、破片が二人の頬を掠めた。
「――っ!?」
「いたぞ!」
「ラムダだ!」
少年は振り返らない。
ただ歯を食いしばり、必死に走り続けている。
「走って!」
少年は小さく頷いた。
だが、その足は限界だった。
瓦礫へ躓き、勢いよく床へ倒れ込む。
――ドシャッ!――
「っ......!」
――バタバタバタッ――
追手の足音が近付く。
間に合わない。
そう思った。
その瞬間。
――ドンッ――
鈍い衝撃音。
「がはぁっ!?」
――ダンッ――
追手の一人が宙を舞い、壁へ叩き付けられる。
「誰だっ!?」
――カツン――
静かな足音が響く。
一人の男が、煙の向こうから姿を現した。
黒いコート。
手には、一挺のGAIN。
「女子供相手に、随分な人数だな」
低く落ち着いた声。
男は二人を一瞥する。
「立てるか」
少年は息を切らしたまま動けない。
男は小さく息を吐き、その少年へ視線を向けた。
「大丈夫だ。もう終わる」
その一言には、不思議と安心できる力があった。
少年はゆっくりと顔を上げる。
「間に合ったみたいだね」
少年の視線の先。
誰かがこちらに寄ってきた。
「ゼロ。ここはアタシが引き受けるよ」
澄んだ声が通路へ響く。
「お前はステラたちを連れていけ」
「すまん。あとは任せる」
「任せときな。レイ、準備はいいかい?」
「問題ない。行くぞ、エルザ」
ゼロは二人に背を向けて少年を抱える。
「よく頑張った」
ステラは少年の手を掴み、力強く頷いた。
「もう大丈夫よ」
その温もりだけを頼りに。
少年は意識を手放した。