ホーム›紺碧のトライアド -Triad in Azure-›# 9
← 前の話目次次の話 →

# 9

「いやー素晴らしいね」

 満足気な紫苑の顔を見た。

「すぐにここまで弾けるのは才能だね」

 才能?その言葉にどきりとした。私は彼の曲をただ弾いただけだ。それだけが私の才能――思わず涙が出た。なんの涙だろう。

「あれ、どうかした?」

 紫苑が驚きの表情を見せる。何かが変わると期待してきた――そんな私はやっぱり馬鹿だった。

「いえ、気にしないでください。とっても素敵な曲でした。これはお世辞ではなく、貴方だけの音楽――本当に羨ましい」

「羨ましい?」

「ええ、私には自分がないんです。誰かが作った曲を、誰かの演奏と同じようにただ弾くだけ。別に私がピアノを弾かなくたっていいんです――」

 ライブの話はお断りしようと思った。

「それだと僕が困る」

 ――え。

 紫苑は照れくさそうに目を伏せていた。

「この曲は君が弾くピアノをイメージして作った。君のピアノと僕のベースが重なって、ぶつかって、また重なる――それは素敵な音になる――そんな予感があった」

 彼の目がまっすぐ私を捉えた。

「君がピアノを弾いてくれないとこの曲は完成しない。これからも君のために曲を作るよ。そして二人で演奏しよう――どうだい?二人合わせてのオリジナルだ」

 こくん、とうなずいた。涙は止まっていた。

「よし。じゃあ練習しよう。この前送った楽譜は見てくれた?オリジナルだけじゃなく、スタンダードも演らなきゃ」

「え、今から――ですか?」

 壁にかかった時計は12時をまわっていた。

♪ PlayList No.09 Round Midnight
シェア
← 前の話
# 8
次の話 →
# 10
紺碧のトライアド -Triad in Azure-作者:凪野 朔
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

# 9

「いやー素晴らしいね」

 満足気な紫苑の顔を見た。

「すぐにここまで弾けるのは才能だね」

 才能?その言葉にどきりとした。私は彼の曲をただ弾いただけだ。それだけが私の才能――思わず涙が出た。なんの涙だろう。

「あれ、どうかした?」

 紫苑が驚きの表情を見せる。何かが変わると期待してきた――そんな私はやっぱり馬鹿だった。

「いえ、気にしないでください。とっても素敵な曲でした。これはお世辞ではなく、貴方だけの音楽――本当に羨ましい」

「羨ましい?」

「ええ、私には自分がないんです。誰かが作った曲を、誰かの演奏と同じようにただ弾くだけ。別に私がピアノを弾かなくたっていいんです――」

 ライブの話はお断りしようと思った。

「それだと僕が困る」

 ――え。

 紫苑は照れくさそうに目を伏せていた。

「この曲は君が弾くピアノをイメージして作った。君のピアノと僕のベースが重なって、ぶつかって、また重なる――それは素敵な音になる――そんな予感があった」

 彼の目がまっすぐ私を捉えた。

「君がピアノを弾いてくれないとこの曲は完成しない。これからも君のために曲を作るよ。そして二人で演奏しよう――どうだい?二人合わせてのオリジナルだ」

 こくん、とうなずいた。涙は止まっていた。

「よし。じゃあ練習しよう。この前送った楽譜は見てくれた?オリジナルだけじゃなく、スタンダードも演らなきゃ」

「え、今から――ですか?」

 壁にかかった時計は12時をまわっていた。

♪ PlayList No.09 Round Midnight
シェア
次の話# 10
紺碧のトライアド -Triad in Azure-作者:凪野 朔
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません