ホーム白壁熊〈シラカベア〉蔵くま白壁町
目次
挿絵AIで作った挿絵

白壁町

「......ここはどこだ?」

蔵くまは目を覚ました。

目の前には、真っ白な壁。

右を見ても。

左を見ても。

白い。

「なんだ、ここ......。」

立ち上がろうとした瞬間。

ズキッ。

足に痛みが走った。

「痛っ......。」

その痛みとともに。

記憶が蘇る。

―――

北極。

ドドドドドッ!

雪煙を上げ、シロクマの群れが走っていた。

「走れ! 蔵くま!」

前を走る兄くまが叫ぶ。

「はぁ......はぁ......!」

蔵くまも必死に走る。

群れの中で一頭だけ。

蔵くまの頭には、小さな蔵が載っていた。

背後から犬の吠える声。

犬ぞりが猛スピードで迫ってくる。

その上で、一人の女がライフルを構えた。

照準の先。

蔵くま。

「逃がさないわよ。」

パーン!

「あうっ!」

弾丸が蔵くまの足をかすめる。

ザシャアッ!

「うっ......!」

蔵くまは雪の上を転がった。

「蔵くま!」

兄くまが足を止め、引き返してくる。

犬ぞりも止まった。

ザッ。

女が雪の上へ降りる。

ライフルを肩に担ぎ、倒れた蔵くまを見下ろした。

「手こずらせたわね。」

蔵くまは後ずさる。

女の視線は蔵くまではなく、その頭の上。

蔵を見ていた。

「どんな獣も、この氷麗子からは逃げられないわ。」

ライフルを構える。

「さあ。」

ニヤリと笑った。

「その蔵の中身を差し出しなさい。」

「蔵の......中身?」

そのとき。

「黙れ!」

兄くまが蔵くまの前へ飛び込んだ。

牙をむき出す。

「この爪と牙の餌食になりたくなければ去れ!」

麗子は銃口を向けたまま動かない。

「蔵くまに弾が届くほうが早いわよ。」

兄くまが低く唸る。

「試してみる?」

麗子の銃口がゆっくり動く。

今度は兄くまへ。

「それとも――。」

指が引き金にかかる。

「あなたが先か。」

兄くまが一歩踏み出す。

「駄目だ......。」

蔵くまが呻く。

「駄目だ、兄さん!」

その瞬間。

カッ――!

「なっ!?」

蔵くまの頭の蔵が、まばゆく光り始めた。

「まぶしい!」

麗子が顔を覆う。

「蔵くま!」

兄くまが叫ぶ。

光が一気に膨れ上がる。

そして――。

フッ。

蔵くまの姿が消えた。

「......え?」

麗子が目を見開く。

兄くまも、何もなくなった雪原を呆然と見つめた。

「蔵くま......?」

―――

「はっ!」

蔵くまは我に返った。

「兄さん!」

そこは再び真っ白な壁の中。

「そうだ......。」

撃たれて。

兄さんが助けに来て。

それから。

「僕の蔵が光って......。」

蔵くまは頭の上を見る。

もちろん、自分の蔵は見えない。

「あの光はなんだったんだ?」

壁に触れる。

「ここは......天国?」

少し考える。

「やけに白いけど。」

蔵くまは北極のシロクマの群れで育った。

頭に蔵を載せていること以外、自分は普通のシロクマだと思っていた。

だが。

ハンターたちは、明らかに自分を狙っていた。

「僕は一体......。」

「お前は蔵くま。」

突然、背後から声がした。

「うわっ!」

蔵くまが振り返る。

そこには一頭の白熊がいた。

ただし。

頭の上には――。

城。

立派な天守閣が載っている。

「し、城!?」

白熊はふんぞり返った。

「くるしゅうない。」

「いや、あなた誰ですか?」

「余は城クマ。」

城クマは胸を張る。

「この白壁町を治めておる。」

「白壁町?」

「うむ。ここは日本、鳥取県、白壁町じゃ」

城クマは蔵くまをじっと見た。

「そしてお主は、誇り高き白壁熊。」

「白壁熊?」

「シラカベアじゃ。」

「シラカ......ベア?」

聞いたこともない。

「ここは白壁町。」

城クマが白い壁を見上げる。

「我ら白壁熊が暮らす、唯一の町じゃ。」

蔵くまは自分の体を見る。

「僕が?」

「そうじゃ。」

「でも僕、ずっと北極でシロクマと暮らしてましたよ?」

「そうらしいのう。」

「じゃあ、どうして僕はここに?」

城クマの視線が、蔵くまの頭へ向いた。

「その蔵の力じゃろうな。」

「僕の蔵?」

「白壁熊の建物には、それぞれ不思議な力が宿っておる。」

城クマが得意げに笑う。

「例えば余の城からは――。」

ガラッ。

城の戸が開いた。

カラン。

一本の刀が落ちる。

「刀。」

ガシャン。

「槍。」

ドサッ。

「火縄銃。」

さらに。

ゴトン。

ライフル。

蔵くまが固まる。

城クマは嬉しそうに笑った。

「ふふふ。拳銃やライフルもいけるぞ。」

「怖いな、この人。」

「機関銃も出るかもしれん。」

「試さなくていいです。」

「ふふふ......血がたぎるのう。」

「この町、本当に大丈夫かな......。」

そこで蔵くまは、はっとした。

「そうだ! 兄さん!」

城クマを見る。

「僕、兄さんを置いてきちゃったんです!」

「あわてるでない。」

「でも!」

「あやつなら心配いらんじゃろう。」

城クマはのんびり言う。

「ハンターも普通のシロクマには用はないはずじゃ。」

蔵くまが固まった。

「......え?」

「じゃあ、なんであいつらは僕たちを?」

城クマの表情が少し変わる。

「奴らが狙っておったのは、お主じゃ。」

「僕?」

「正確には――。」

城クマが、蔵くまの頭を指さした。

「その蔵の中身じゃろう。」

「中身?」

「蔵くまの頭の蔵には、とんでもないお宝が眠っておる。」

蔵くまは目を丸くした。

「お宝?」

自分の頭を見上げようとする。

「お宝どころか、何も出たことないですよ?」

「む?」

城クマが蔵を眺める。

「まだ力が目覚めておらぬのか。」

「力......。」

「まあよい。」

城クマはくるりと背を向けた。

「行くところもないのじゃろう?」

「......はい。」

「ならば、しばらく白壁町におるとよい。」

「いいんですか?」

「余は心が広い。」

「自分で言うんだ。」

「住むところくらい用意してやろう。」

城クマが歩き出す。

蔵くまは、その背中を追いかけた。

一度だけ振り返る。

白い壁。

知らない町。

知らない自分の正体。

そして。

頭の上の蔵。

「兄さん......。」

こうして。

北極で育った白壁熊・蔵くまの、

白壁町での暮らしが始まった。
あとがきタスカク
はじめまして、白壁町の生活と蔵の秘密を描いていきます。蔵くまのキャラについて、感想コメントぜひお聞かせください。
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白壁熊〈シラカベア〉蔵くま作者:タスカク
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白壁町

「......ここはどこだ?」

蔵くまは目を覚ました。

目の前には、真っ白な壁。

右を見ても。

左を見ても。

白い。

「なんだ、ここ......。」

立ち上がろうとした瞬間。

ズキッ。

足に痛みが走った。

「痛っ......。」

その痛みとともに。

記憶が蘇る。

―――

北極。

ドドドドドッ!

雪煙を上げ、シロクマの群れが走っていた。

「走れ! 蔵くま!」

前を走る兄くまが叫ぶ。

「はぁ......はぁ......!」

蔵くまも必死に走る。

群れの中で一頭だけ。

蔵くまの頭には、小さな蔵が載っていた。

背後から犬の吠える声。

犬ぞりが猛スピードで迫ってくる。

その上で、一人の女がライフルを構えた。

照準の先。

蔵くま。

「逃がさないわよ。」

パーン!

「あうっ!」

弾丸が蔵くまの足をかすめる。

ザシャアッ!

「うっ......!」

蔵くまは雪の上を転がった。

「蔵くま!」

兄くまが足を止め、引き返してくる。

犬ぞりも止まった。

ザッ。

女が雪の上へ降りる。

ライフルを肩に担ぎ、倒れた蔵くまを見下ろした。

「手こずらせたわね。」

蔵くまは後ずさる。

女の視線は蔵くまではなく、その頭の上。

蔵を見ていた。

「どんな獣も、この氷麗子からは逃げられないわ。」

ライフルを構える。

「さあ。」

ニヤリと笑った。

「その蔵の中身を差し出しなさい。」

「蔵の......中身?」

そのとき。

「黙れ!」

兄くまが蔵くまの前へ飛び込んだ。

牙をむき出す。

「この爪と牙の餌食になりたくなければ去れ!」

麗子は銃口を向けたまま動かない。

「蔵くまに弾が届くほうが早いわよ。」

兄くまが低く唸る。

「試してみる?」

麗子の銃口がゆっくり動く。

今度は兄くまへ。

「それとも――。」

指が引き金にかかる。

「あなたが先か。」

兄くまが一歩踏み出す。

「駄目だ......。」

蔵くまが呻く。

「駄目だ、兄さん!」

その瞬間。

カッ――!

「なっ!?」

蔵くまの頭の蔵が、まばゆく光り始めた。

「まぶしい!」

麗子が顔を覆う。

「蔵くま!」

兄くまが叫ぶ。

光が一気に膨れ上がる。

そして――。

フッ。

蔵くまの姿が消えた。

「......え?」

麗子が目を見開く。

兄くまも、何もなくなった雪原を呆然と見つめた。

「蔵くま......?」

―――

「はっ!」

蔵くまは我に返った。

「兄さん!」

そこは再び真っ白な壁の中。

「そうだ......。」

撃たれて。

兄さんが助けに来て。

それから。

「僕の蔵が光って......。」

蔵くまは頭の上を見る。

もちろん、自分の蔵は見えない。

「あの光はなんだったんだ?」

壁に触れる。

「ここは......天国?」

少し考える。

「やけに白いけど。」

蔵くまは北極のシロクマの群れで育った。

頭に蔵を載せていること以外、自分は普通のシロクマだと思っていた。

だが。

ハンターたちは、明らかに自分を狙っていた。

「僕は一体......。」

「お前は蔵くま。」

突然、背後から声がした。

「うわっ!」

蔵くまが振り返る。

そこには一頭の白熊がいた。

ただし。

頭の上には――。

城。

立派な天守閣が載っている。

「し、城!?」

白熊はふんぞり返った。

「くるしゅうない。」

「いや、あなた誰ですか?」

「余は城クマ。」

城クマは胸を張る。

「この白壁町を治めておる。」

「白壁町?」

「うむ。ここは日本、鳥取県、白壁町じゃ」

城クマは蔵くまをじっと見た。

「そしてお主は、誇り高き白壁熊。」

「白壁熊?」

「シラカベアじゃ。」

「シラカ......ベア?」

聞いたこともない。

「ここは白壁町。」

城クマが白い壁を見上げる。

「我ら白壁熊が暮らす、唯一の町じゃ。」

蔵くまは自分の体を見る。

「僕が?」

「そうじゃ。」

「でも僕、ずっと北極でシロクマと暮らしてましたよ?」

「そうらしいのう。」

「じゃあ、どうして僕はここに?」

城クマの視線が、蔵くまの頭へ向いた。

「その蔵の力じゃろうな。」

「僕の蔵?」

「白壁熊の建物には、それぞれ不思議な力が宿っておる。」

城クマが得意げに笑う。

「例えば余の城からは――。」

ガラッ。

城の戸が開いた。

カラン。

一本の刀が落ちる。

「刀。」

ガシャン。

「槍。」

ドサッ。

「火縄銃。」

さらに。

ゴトン。

ライフル。

蔵くまが固まる。

城クマは嬉しそうに笑った。

「ふふふ。拳銃やライフルもいけるぞ。」

「怖いな、この人。」

「機関銃も出るかもしれん。」

「試さなくていいです。」

「ふふふ......血がたぎるのう。」

「この町、本当に大丈夫かな......。」

そこで蔵くまは、はっとした。

「そうだ! 兄さん!」

城クマを見る。

「僕、兄さんを置いてきちゃったんです!」

「あわてるでない。」

「でも!」

「あやつなら心配いらんじゃろう。」

城クマはのんびり言う。

「ハンターも普通のシロクマには用はないはずじゃ。」

蔵くまが固まった。

「......え?」

「じゃあ、なんであいつらは僕たちを?」

城クマの表情が少し変わる。

「奴らが狙っておったのは、お主じゃ。」

「僕?」

「正確には――。」

城クマが、蔵くまの頭を指さした。

「その蔵の中身じゃろう。」

「中身?」

「蔵くまの頭の蔵には、とんでもないお宝が眠っておる。」

蔵くまは目を丸くした。

「お宝?」

自分の頭を見上げようとする。

「お宝どころか、何も出たことないですよ?」

「む?」

城クマが蔵を眺める。

「まだ力が目覚めておらぬのか。」

「力......。」

「まあよい。」

城クマはくるりと背を向けた。

「行くところもないのじゃろう?」

「......はい。」

「ならば、しばらく白壁町におるとよい。」

「いいんですか?」

「余は心が広い。」

「自分で言うんだ。」

「住むところくらい用意してやろう。」

城クマが歩き出す。

蔵くまは、その背中を追いかけた。

一度だけ振り返る。

白い壁。

知らない町。

知らない自分の正体。

そして。

頭の上の蔵。

「兄さん......。」

こうして。

北極で育った白壁熊・蔵くまの、

白壁町での暮らしが始まった。
あとがきタスカク
はじめまして、白壁町の生活と蔵の秘密を描いていきます。蔵くまのキャラについて、感想コメントぜひお聞かせください。
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白壁熊〈シラカベア〉蔵くま作者:タスカク
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