生きていることの幸せ
彩乃は息が苦しくなり立ち止まった。
でも、絶対に諦めない。
彩乃はまた走り始める。
あの魔法使いの言葉が頭から離れない。
『彩乃ちゃんはどうして諦めたがるの?』
これからのわたしは違う。
生まれ変わってみせる!!
虹の坂を下り始め、ふもとが見えてきた。
確かにそこには金色のカップが輝いていた。
涙が溢れて風に乗って後方に飛んでいく。
お父さん。
確かに虹のふもとには金のカップがあったよ。
魔法使いもいたよ。魔法使いは
わたしに幸せという目標があるって
気づかせてくれたの。
彩乃は力強く足元の虹を蹴り金のカップに
向かってジャンプした。
彩乃は、金のカップを手に入れることができた。
◯◯◯
目が覚めると心配そうな顔をした母が彩乃の
顔を覗き込んでいた。
手にはおしぼりが握られている。
「目が覚めたのね!良かった!」
母に抱きしめられて、はじめて自分が
ベッドで寝ていたことに気づいた。
「お母さん...」
母は体を離すと彩乃が熱を出して
丸2日も寝ていたことを話してくれた。
バイト先にも休みの連絡を入れてくれていた。
彩乃は、母が自分のことを想ってくれている
ということを改めて実感して、
同時に申し訳なかった。
「お母さん、心配かけてごめんね」
「いいのよ、彩乃が目を覚まして本当に良かった」
母は瞳を潤ませる。
「もしかしたら、お父さんが助けてくれたのかもね」
...もしかして、魔法使いとして
夢に現れてくれたのはお父さんだったのかな。
そう思うと父にありがとうと言いたくなる。
わたしをいじめたいじめっ子たちに
明日は反撃してやる。
「貧乏で何が悪いのよ」って。
先生に告げ口したっていい。
これは、わたしが幸せに
生きるための手段なんだから。
彩乃は明るい気持ちで
雨上がりの晴れた空を見上げた。
(終わり)