線香花火で遊ぼう…
038
「わあ......きれいな色......」
「アキくん!!見て見て、ハートの形にできたよ、かわいくない!!」
「私のも見て!!」
「ハルくん!!五本同時はあぶなくない?」
「ははっ......余裕っすよ......ね、タカダさん」
「ほんとに気が小さいなあ、アキラちゃん......」
「やったことない......線香花火......幼稚園から......ずっと......」
「榎本さんの人生......なんか切ないですね......」
夕方、帰る前に......アキトたちのグループとシャルロットのグループが合流して線香花火をやっていた......
「よ......」
「あ......よ」
シャルロットが、一人寂しそうに線香花火をしていたユウタの隣に座った......
「あの......お昼のこと......ビンタしてごめんね」
「ああ!いいよ......俺も自分を抑えられなかったのが悪いんだから......」
ユウタはそう言い訳しながら、あの時のことを頭から追い出そうとした......
「ありがとう......」
「何が?」
彼女はまだ火をつけていない線香花火を眺めてから、一本手に取って火をつけた
「私のお客さんでいてくれることへのお礼だよ」
ユウタは心の中で考えた......これって、仕事が終わった後の普通のお礼ってやつなのか?
「なんで?」
「だって......リピートしてくれるお客さんって全然いなくてさ......何回も借りてくれたのって、あなたが初めてなんだよね......」
「そんなこと......別にお礼なんて言わなくていいのに......」
変わった子だな......ユウタはそう思ったが、まだ知らなかった。この女の子がどんな人間で、過去にどんなことがあったのかを
「そっか......なんか変なこと言ってごめん......」
「......正直言うと......同い年くらいだと思ってたのに......実は6歳も違うんだね......」
「......そうなの?」
「なんか......あなって......若く見えるっていうか......その......かわいいっていうか......高校生みたいだから......」
シャルロットはユウタの様子を見て笑った
「あはは、可愛いって言いたいだけなのに......そんなに遠回しにしなくていいんだよ?」
どうやらバレたらしい......ユウタはただ頷いた......
「エモくん、かわいいな......」
「っ......」
いじられたユウタは話題を変えた......
「それで......宮島さんってアキトさんと知り合いなの?......一緒に話してたみたいだけど......」
「......まあ......そんな感じ......」
少し間を置いてから彼女は答えた......
「......」
答えたくなさそうだった......先輩でもありバイトを紹介してくれた雇い主でもあるアキトが、決して人柄のいい人間ではないことは、ユウタも認めざるを得なかった。つまり
「何かされたの?......」
「は?」
「なんか......あなた、あまり彼と話したがってないみたいだったから......」
「え......エモくん......」
「分かるよ......あの人って別にいい人ってわけじゃないし......なんか胡散臭い感じもするし......」
気づいたら自分の上司の悪口を言っていた......
「そんなことないよ......悪いことなんてしてない......」
「そうなの?......」
少し顔が青ざめた......そして心の中で罪悪感を覚えた
「ははっ」
彼女はまた笑った......
「あなたって面白いね......」
彼女が笑顔を見せた......それはかなり珍しいことだった......
「実はアキトさんって助けてくれた人でさ......ずっといろいろ教えてくれてたんだよね......」
「ちゃんと謝りに行かないとだな......マジで......」
二人は線香花火をしながら、他愛のない話を続けた......
「ところで......なんで私を借りようと思ったの?」
そう聞かれて、ユウタは正直に答えた
「お母さんの愚痴を聞くのが嫌になってさ......あなたを借りたら忘れられると思って......」
「......お母さんと仲良くないの?」
「全然合わないんだよね......お母さんって古い考え方の人で、子供に高い期待をかけて近所に自慢したいタイプ......笑えるよな......」
「......」
「だからそういうのを全部頭から消せる場所が欲しくてさ......それで彼らと出会って......」
ユウタはアキトたちのグループが楽しそうに線香花火をしているのを眺めた......
「それに......あなたも......」
「......」
「ね?......あの日あなたを借りてから......ずいぶん気持ちが楽になったんだよ......」
「あんなにわがままだったのに?」
「それがあなたのキャラだからさ......」
「私とは全然違うね......」
「......あなたはお母さんと仲いいの?」
「お母さんだけが、残った家族なんだよね......」
「そうなんだ......じゃあ......あなたの仕事のことって、お母さんは知ってるの?」
シャルロットは首を横に振った......
「......そうだよね......こういう仕事って、いい目で見てくれる人なんていないし......あ!でも私はあなたのことを悪く思ってないからね」
「うん......ありがとう......」
彼女はちらりとユウタを見た......そして幼い頃、写真を撮るのが好きだったある少年のことを思い出した......
この子って......シンジくんに似てるな......
素直で......優しい性格で......
「ほんとに私ってバカだな......」
「ん?......」
「ううん......なんでもない......なんか独り言が出ちゃっただけ」
「そっか......」
少し話したところで......アキトが声をかけてきた。ちょうどその時、線香花火の火も落ちた
「帰ろうか......」
ユウタが手を差し出すと、シャルロットはその手を掴んで立ち上がった......
「うん......」
「ちょっと......二人でこそこそ何を話してたのかなあ、この肉食系女子め」
「黙ってて......私たちそういうんじゃないから......」
「えー、この背中の曲がった男の子のこと好きかと思ったのに......」
女子大生たちにそう言われてユウタは固まった。少しだけシャルロットの顔をちらりと見た
シャルロットは自分の気持ちを少し整理してから......表情を落ち着けて答えた。でも少し照れている様子で......
「好きってわけじゃないけど......嫌いでもない......」
それを聞いた女子大生たちは一斉にシャルロットに飛びついた......
「シャルちゃんかわいすぎっ!!!!」
「男の子もかわいいじゃーーーん!!」
「え、ちょっと待ってください!」
女子大生たちはユウタも引っ張って抱きついた......シャルロットとユウタは顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らした
「くっそ......羨ましすぎるだろあいつ......」
アキトがぼやいた......そして言わずもがな、また股間を蹴られていた......
サメちゃんはといえば......私がいるじゃないですか、それだけで世界中の人に羨ましがられてますよ、と言っていた
楽しいひとときだった......
暗くなってきた頃......アキトが女子大生たちを車で家まで送ると申し出た......
最初は女子たちも遠慮していた。トヨタ・アルファード(あの菅原から借りたやつ......)で来ているのを見て気を使ったのだが、アキトは夜道は危ないからと言って、結局みんな一緒に乗って帰ることになった......
帰り道、全員が眠ってしまった......アキトを除いて......だから彼はその機会を利用して、静かに音楽を流して車内の人たちをそっと眠りへ誘った......
「......懐かしくて......でも前とは違う......いつもの景色......」
「今日は本当に楽しかったな......」