ホームある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。線香花火で遊ぼう…
← 前の話目次

線香花火で遊ぼう…

 038

「わあ......きれいな色......」

「アキくん!!見て見て、ハートの形にできたよ、かわいくない!!」

「私のも見て!!」

「ハルくん!!五本同時はあぶなくない?」

「ははっ......余裕っすよ......ね、タカダさん」

「ほんとに気が小さいなあ、アキラちゃん......」

「やったことない......線香花火......幼稚園から......ずっと......」

「榎本さんの人生......なんか切ないですね......」

 夕方、帰る前に......アキトたちのグループとシャルロットのグループが合流して線香花火をやっていた......

「よ......」

「あ......よ」

 シャルロットが、一人寂しそうに線香花火をしていたユウタの隣に座った......

「あの......お昼のこと......ビンタしてごめんね」

「ああ!いいよ......俺も自分を抑えられなかったのが悪いんだから......」

 ユウタはそう言い訳しながら、あの時のことを頭から追い出そうとした......

「ありがとう......」

「何が?」

 彼女はまだ火をつけていない線香花火を眺めてから、一本手に取って火をつけた

「私のお客さんでいてくれることへのお礼だよ」

 ユウタは心の中で考えた......これって、仕事が終わった後の普通のお礼ってやつなのか?

「なんで?」

「だって......リピートしてくれるお客さんって全然いなくてさ......何回も借りてくれたのって、あなたが初めてなんだよね......」

「そんなこと......別にお礼なんて言わなくていいのに......」

 変わった子だな......ユウタはそう思ったが、まだ知らなかった。この女の子がどんな人間で、過去にどんなことがあったのかを

「そっか......なんか変なこと言ってごめん......」

「......正直言うと......同い年くらいだと思ってたのに......実は6歳も違うんだね......」

「......そうなの?」

「なんか......あなって......若く見えるっていうか......その......かわいいっていうか......高校生みたいだから......」

 シャルロットはユウタの様子を見て笑った

「あはは、可愛いって言いたいだけなのに......そんなに遠回しにしなくていいんだよ?」

 どうやらバレたらしい......ユウタはただ頷いた......

「エモくん、かわいいな......」

「っ......」

 いじられたユウタは話題を変えた......

「それで......宮島さんってアキトさんと知り合いなの?......一緒に話してたみたいだけど......」

「......まあ......そんな感じ......」

 少し間を置いてから彼女は答えた......

「......」

 答えたくなさそうだった......先輩でもありバイトを紹介してくれた雇い主でもあるアキトが、決して人柄のいい人間ではないことは、ユウタも認めざるを得なかった。つまり

「何かされたの?......」

「は?」

「なんか......あなた、あまり彼と話したがってないみたいだったから......」

「え......エモくん......」

「分かるよ......あの人って別にいい人ってわけじゃないし......なんか胡散臭い感じもするし......」

 気づいたら自分の上司の悪口を言っていた......

「そんなことないよ......悪いことなんてしてない......」

「そうなの?......」

 少し顔が青ざめた......そして心の中で罪悪感を覚えた

「ははっ」

 彼女はまた笑った......

「あなたって面白いね......」

 彼女が笑顔を見せた......それはかなり珍しいことだった......

「実はアキトさんって助けてくれた人でさ......ずっといろいろ教えてくれてたんだよね......」

「ちゃんと謝りに行かないとだな......マジで......」

 二人は線香花火をしながら、他愛のない話を続けた......

「ところで......なんで私を借りようと思ったの?」

 そう聞かれて、ユウタは正直に答えた

「お母さんの愚痴を聞くのが嫌になってさ......あなたを借りたら忘れられると思って......」

「......お母さんと仲良くないの?」

「全然合わないんだよね......お母さんって古い考え方の人で、子供に高い期待をかけて近所に自慢したいタイプ......笑えるよな......」

「......」

「だからそういうのを全部頭から消せる場所が欲しくてさ......それで彼らと出会って......」

 ユウタはアキトたちのグループが楽しそうに線香花火をしているのを眺めた......

「それに......あなたも......」

「......」

「ね?......あの日あなたを借りてから......ずいぶん気持ちが楽になったんだよ......」

「あんなにわがままだったのに?」

「それがあなたのキャラだからさ......」

「私とは全然違うね......」

「......あなたはお母さんと仲いいの?」

「お母さんだけが、残った家族なんだよね......」

「そうなんだ......じゃあ......あなたの仕事のことって、お母さんは知ってるの?」

 シャルロットは首を横に振った......

「......そうだよね......こういう仕事って、いい目で見てくれる人なんていないし......あ!でも私はあなたのことを悪く思ってないからね」

「うん......ありがとう......」

 彼女はちらりとユウタを見た......そして幼い頃、写真を撮るのが好きだったある少年のことを思い出した......

 この子って......シンジくんに似てるな......

 素直で......優しい性格で......

「ほんとに私ってバカだな......」

「ん?......」

「ううん......なんでもない......なんか独り言が出ちゃっただけ」

「そっか......」

 少し話したところで......アキトが声をかけてきた。ちょうどその時、線香花火の火も落ちた

「帰ろうか......」

 ユウタが手を差し出すと、シャルロットはその手を掴んで立ち上がった......

「うん......」

「ちょっと......二人でこそこそ何を話してたのかなあ、この肉食系女子め」

「黙ってて......私たちそういうんじゃないから......」

「えー、この背中の曲がった男の子のこと好きかと思ったのに......」

 女子大生たちにそう言われてユウタは固まった。少しだけシャルロットの顔をちらりと見た

 シャルロットは自分の気持ちを少し整理してから......表情を落ち着けて答えた。でも少し照れている様子で......

「好きってわけじゃないけど......嫌いでもない......」

 それを聞いた女子大生たちは一斉にシャルロットに飛びついた......

「シャルちゃんかわいすぎっ!!!!」

「男の子もかわいいじゃーーーん!!」

「え、ちょっと待ってください!」

 女子大生たちはユウタも引っ張って抱きついた......シャルロットとユウタは顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らした

「くっそ......羨ましすぎるだろあいつ......」

 アキトがぼやいた......そして言わずもがな、また股間を蹴られていた......

 サメちゃんはといえば......私がいるじゃないですか、それだけで世界中の人に羨ましがられてますよ、と言っていた

 楽しいひとときだった......

 暗くなってきた頃......アキトが女子大生たちを車で家まで送ると申し出た......

 最初は女子たちも遠慮していた。トヨタ・アルファード(あの菅原から借りたやつ......)で来ているのを見て気を使ったのだが、アキトは夜道は危ないからと言って、結局みんな一緒に乗って帰ることになった......

 帰り道、全員が眠ってしまった......アキトを除いて......だから彼はその機会を利用して、静かに音楽を流して車内の人たちをそっと眠りへ誘った......

「......懐かしくて......でも前とは違う......いつもの景色......」

「今日は本当に楽しかったな......」
シェア
← 前の話
ただの知り合い……
最新話です
目次に戻る
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
目次を見る
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホームある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。線香花火で遊ぼう…
← 前の話目次

線香花火で遊ぼう…

 038

「わあ......きれいな色......」

「アキくん!!見て見て、ハートの形にできたよ、かわいくない!!」

「私のも見て!!」

「ハルくん!!五本同時はあぶなくない?」

「ははっ......余裕っすよ......ね、タカダさん」

「ほんとに気が小さいなあ、アキラちゃん......」

「やったことない......線香花火......幼稚園から......ずっと......」

「榎本さんの人生......なんか切ないですね......」

 夕方、帰る前に......アキトたちのグループとシャルロットのグループが合流して線香花火をやっていた......

「よ......」

「あ......よ」

 シャルロットが、一人寂しそうに線香花火をしていたユウタの隣に座った......

「あの......お昼のこと......ビンタしてごめんね」

「ああ!いいよ......俺も自分を抑えられなかったのが悪いんだから......」

 ユウタはそう言い訳しながら、あの時のことを頭から追い出そうとした......

「ありがとう......」

「何が?」

 彼女はまだ火をつけていない線香花火を眺めてから、一本手に取って火をつけた

「私のお客さんでいてくれることへのお礼だよ」

 ユウタは心の中で考えた......これって、仕事が終わった後の普通のお礼ってやつなのか?

「なんで?」

「だって......リピートしてくれるお客さんって全然いなくてさ......何回も借りてくれたのって、あなたが初めてなんだよね......」

「そんなこと......別にお礼なんて言わなくていいのに......」

 変わった子だな......ユウタはそう思ったが、まだ知らなかった。この女の子がどんな人間で、過去にどんなことがあったのかを

「そっか......なんか変なこと言ってごめん......」

「......正直言うと......同い年くらいだと思ってたのに......実は6歳も違うんだね......」

「......そうなの?」

「なんか......あなって......若く見えるっていうか......その......かわいいっていうか......高校生みたいだから......」

 シャルロットはユウタの様子を見て笑った

「あはは、可愛いって言いたいだけなのに......そんなに遠回しにしなくていいんだよ?」

 どうやらバレたらしい......ユウタはただ頷いた......

「エモくん、かわいいな......」

「っ......」

 いじられたユウタは話題を変えた......

「それで......宮島さんってアキトさんと知り合いなの?......一緒に話してたみたいだけど......」

「......まあ......そんな感じ......」

 少し間を置いてから彼女は答えた......

「......」

 答えたくなさそうだった......先輩でもありバイトを紹介してくれた雇い主でもあるアキトが、決して人柄のいい人間ではないことは、ユウタも認めざるを得なかった。つまり

「何かされたの?......」

「は?」

「なんか......あなた、あまり彼と話したがってないみたいだったから......」

「え......エモくん......」

「分かるよ......あの人って別にいい人ってわけじゃないし......なんか胡散臭い感じもするし......」

 気づいたら自分の上司の悪口を言っていた......

「そんなことないよ......悪いことなんてしてない......」

「そうなの?......」

 少し顔が青ざめた......そして心の中で罪悪感を覚えた

「ははっ」

 彼女はまた笑った......

「あなたって面白いね......」

 彼女が笑顔を見せた......それはかなり珍しいことだった......

「実はアキトさんって助けてくれた人でさ......ずっといろいろ教えてくれてたんだよね......」

「ちゃんと謝りに行かないとだな......マジで......」

 二人は線香花火をしながら、他愛のない話を続けた......

「ところで......なんで私を借りようと思ったの?」

 そう聞かれて、ユウタは正直に答えた

「お母さんの愚痴を聞くのが嫌になってさ......あなたを借りたら忘れられると思って......」

「......お母さんと仲良くないの?」

「全然合わないんだよね......お母さんって古い考え方の人で、子供に高い期待をかけて近所に自慢したいタイプ......笑えるよな......」

「......」

「だからそういうのを全部頭から消せる場所が欲しくてさ......それで彼らと出会って......」

 ユウタはアキトたちのグループが楽しそうに線香花火をしているのを眺めた......

「それに......あなたも......」

「......」

「ね?......あの日あなたを借りてから......ずいぶん気持ちが楽になったんだよ......」

「あんなにわがままだったのに?」

「それがあなたのキャラだからさ......」

「私とは全然違うね......」

「......あなたはお母さんと仲いいの?」

「お母さんだけが、残った家族なんだよね......」

「そうなんだ......じゃあ......あなたの仕事のことって、お母さんは知ってるの?」

 シャルロットは首を横に振った......

「......そうだよね......こういう仕事って、いい目で見てくれる人なんていないし......あ!でも私はあなたのことを悪く思ってないからね」

「うん......ありがとう......」

 彼女はちらりとユウタを見た......そして幼い頃、写真を撮るのが好きだったある少年のことを思い出した......

 この子って......シンジくんに似てるな......

 素直で......優しい性格で......

「ほんとに私ってバカだな......」

「ん?......」

「ううん......なんでもない......なんか独り言が出ちゃっただけ」

「そっか......」

 少し話したところで......アキトが声をかけてきた。ちょうどその時、線香花火の火も落ちた

「帰ろうか......」

 ユウタが手を差し出すと、シャルロットはその手を掴んで立ち上がった......

「うん......」

「ちょっと......二人でこそこそ何を話してたのかなあ、この肉食系女子め」

「黙ってて......私たちそういうんじゃないから......」

「えー、この背中の曲がった男の子のこと好きかと思ったのに......」

 女子大生たちにそう言われてユウタは固まった。少しだけシャルロットの顔をちらりと見た

 シャルロットは自分の気持ちを少し整理してから......表情を落ち着けて答えた。でも少し照れている様子で......

「好きってわけじゃないけど......嫌いでもない......」

 それを聞いた女子大生たちは一斉にシャルロットに飛びついた......

「シャルちゃんかわいすぎっ!!!!」

「男の子もかわいいじゃーーーん!!」

「え、ちょっと待ってください!」

 女子大生たちはユウタも引っ張って抱きついた......シャルロットとユウタは顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らした

「くっそ......羨ましすぎるだろあいつ......」

 アキトがぼやいた......そして言わずもがな、また股間を蹴られていた......

 サメちゃんはといえば......私がいるじゃないですか、それだけで世界中の人に羨ましがられてますよ、と言っていた

 楽しいひとときだった......

 暗くなってきた頃......アキトが女子大生たちを車で家まで送ると申し出た......

 最初は女子たちも遠慮していた。トヨタ・アルファード(あの菅原から借りたやつ......)で来ているのを見て気を使ったのだが、アキトは夜道は危ないからと言って、結局みんな一緒に乗って帰ることになった......

 帰り道、全員が眠ってしまった......アキトを除いて......だから彼はその機会を利用して、静かに音楽を流して車内の人たちをそっと眠りへ誘った......

「......懐かしくて......でも前とは違う......いつもの景色......」

「今日は本当に楽しかったな......」
シェア
← 前の話
ただの知り合い……
最新話です
目次に戻る
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
目次
✍️
まだ感想がありません
あなたの一言が、作者の次の一話につながります。
最初の感想を書いてみませんか?
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません