彼女は一体、何者なのでしょうか?
055
「また雨が降りそうだね......」
「あぁ......そうだね......でもアメリアさんが傘を持たせてくれたよ、鞄の中にある......」
二日後、二人は相変わらず一緒に「仕事」に出かけていた。毎日一緒に歩き、母親が用意してくれたサンドイッチを食べる......そんな日々。一緒に暮らし始めてまだ二週間だったが、ユウタはもうこの生活に慣れ始めていた
密かに想いを寄せているレンタル彼女と同じ家に住むなんて、まるで夢のようだった......
ユウタは肩掛け鞄を開けて小さな傘を二本取り出した......そして一本をシャーロットに渡した......
「今日もまたデートなんだ?」
「うん......今回のお客さんは23歳の会社員なんだよね......」
「へぇ......君と同い年か......あれ?でも君ってまだ大学生だよね?浪人でもしてたの?」
「浪人?私が?ありえないよ......私は看護学部の学士課程で、その上さらに二年間修士課程も取ってるから......だから他の人より卒業が遅いだけ」
「すごいね......看護学部か、試験すごく難しいって聞くよ......」
「頑張れば別に難しくないよ、こういうのはその人の本気度次第だから......それであなたは?卒業したらどこに進むつもりなの?」
「一応、コンピューター工学か、機械電気工学に進もうと思ってるんだ......」
「結構高い目標を立ててるんだね」
「でも受かるかどうかは分からないけどね......」
「できないなんて思わないで......確かにこの世には頑張っても成功しない人はたくさんいる......でもあなたはまだ挑戦すらしてないじゃない。やってみなきゃ分からないよ」
シャーロットは力強い口調で言った
「もし失敗したら......」
「先回りして落ち込まないの......最初から失敗するって思ってたら、何も成し遂げられないでしょう......」
「そ......そうだよね......」
「自分ならできるって思うこと。自信を持って、一番好きなことに挑戦して、それを最高のものにするように頑張るの......いい?」
彼女は軽く彼の肩を叩いた
「あ......うん......アドバイスありがとう......」
「いつでもどうぞ......」
彼女は表面上、誰もが一目置くような大人びた印象だった。宮島大学でも、成績と実習の両面で優秀な学生として知られていた......
美しく信頼できる雰囲気を持ち、何を聞いても答えられる。そのせいで、いつの間にか大学の看板的存在になっていた
大学の名を背負ってはいたが、それも彼女自身の存在感には到底及ばなかった......
「じゃあ、ここで別れようか......」
「うん......晩ご飯の時にね......気をつけてね......」
「うん......行ってくるね......」
そして彼女は、駅前の大理石の柱のところで待っているお客さんの元へ歩いていった......
ユウタはこっそり彼女の後ろ姿を見つめた......
彼女の表情は、初めて会った時と同じように高慢そうに見えた......
「どんな顔をしても可愛く見えちゃうんだよなぁ......」
はぁ......
三人のライブ配信終了後、アキトの家のオフィスで......
「シャルちゃんとはどうやって知り合ったんですか?......」
「はい......その、アキトさんが彼女と話してるのを見たことがあって......」
配信が終わり、アキトとサメを含めたスタッフ全員でお菓子を食べていた......海に行った時からずっと二人のことが気になっていたユウタは、そのことを尋ねた。ただし、彼女が今レンタル彼女で今一緒に住んでいることは話さなかった......
「あぁ......実はかなり昔の話でね、話したところで君らはどうせ俺のことをおかしいって思うだろうな」
一体どんな話なんだろう......
「なんでですか......」
「9年前、福岡で起きた謎の失踪事件、覚えてるか?......」
みんな黙り込んだ......アキトが何の話をしているのか誰も分からなかったからだ......
「本当に?」
「その頃、俺たちまだ8歳ですよ......知ってるわけないじゃないですか......」
「そうですね......」
ミフユが相槌を打った......
「待てよ......お前、俺が福岡に二ヶ月行ってた間、雁来邸に預けられてたこと、本当に覚えてないのか?......」
「お兄ちゃん......その時私、まだ8歳だったんですけど......」
「まあいいや......この話はやめだ......こうしよう、シャルちゃんのことが知りたいなら、あの事件で誘拐された被害者の一人に直接聞きに行けばいい......」
「被害者?」
ユウタも自分のボスが色んな人と繋がりがあることはある程度知っていた......でも、そんな切り出し方をされると、自分が足を踏み入れるべきではない世界に近づいているような気がしてきた......
「あぁ......あいつなら今、豊島あたりに事務所を構えてるはずだ......行って聞いてみるといい......」
そう言い終えると、アキトは二枚の名刺を差し出した......
「不死身の探偵事務所、直江津西雄と直江津清美......は?」
「まあ......あそこに行って詳しいことを聞いてみるといいさ......」
「あ......はい......」
今日は少し早く帰宅した......いつもは午後から仕事に行って夜に帰ってくるのだが、今日は三人娘が焼肉に行くために午後から夕方までの配信で早めに終わらせていた......
でもユウタはシャーロットのことがどうしても気になっていたので......焼肉には行かないことにした......
「ここ......なのか?」
歩いていくと、通りの角にヨーロッパ風のモダンな建物が堂々とそびえ立っていた......
90年代の探偵事務所のような雰囲気を感じさせる......
彼はドアをノックした......しばらくすると誰かがドアを開けてくれた......
ドアを開けて彼を迎えたのは、白い髪に青い瞳の小さな女の子だった。ふわふわした黒いドレスを着ていて、とても可愛らしかった......
「こんにちは......」
ユウタはその子に挨拶した
「パパかママに、ご予約はされていますか?......」
え......パパとママ......この子はここの娘なのか?
「あ......いや......その、お兄さんはパパかママに話したいことがあって来たんだ......えっと......昔の親友のことで......名前はシャーロットっていうんだけど......」
「少々お待ちください......」
彼女はドアを閉めて......走ってママを呼びに行った......
「なんなんだ、これ......」
記憶違いでなければ、この二人は23歳のはずなのに、娘はずいぶん大きく見える......ということは、二人はかなり若くして親になったということか......
そしてドアが開いた......出迎えたのは白いボブヘアの美しい女性で、眼鏡をかけていた......
優しそうな雰囲気で、性格も可愛らしい印象だった......
「あら......あなた......ご予約はされていますか?」
「いえ......その、あなたが宮島さんを知っていると聞いて......」
「シャルちゃんのこと知ってるんですか?......」
「ええと......多少は知っています......」
「それでこの場所、どうやって知ったの......」
「アキトさんに紹介していただきました......」
その名前を聞くと、彼女はすぐに彼を事務所の中へ招き入れた......
「どうぞどうぞ、うちの事務所はあまり一般のお客さんは来ないから......たいていお客さんか警察くらいなのよ、はは」
彼女はユウタにお茶とお菓子を運んできてくれた。優雅で美しい雰囲気の彼女は、まさに「上流階級」という言葉が似合うようだった......
「ありがとうございます......」
「簡単に自己紹介するわね。私は直江津清美、この探偵事務所の副代表で、西雄くんのパートナーであり妻でもあるの。でも西雄くんは仕事があって今日は一緒にいないの、本当にごめんなさいね......」
言い終えると、彼女はユウタに名刺を差し出した。もう持っていたけれど......
「あ......僕はユウタといいます......普通の高校生です......」
さっきの女の子は、おそらく弟であろうもう一人の子供と奥の部屋で遊び回っていた......
「ごめんなさいね、少しうるさくて......あの子たち本当にやんちゃなのよ......」
「いい子たちですね......あの二人......」
「もちろんよ......二人とも私の目に入れても痛くないくらい可愛いんだから......」
彼女はお茶を一口飲みながら、楽しそうに遊び回る子供たちの様子にくすくす笑っていた......それを見たユウタは、ふとシャーロットと自分の子供のことを想像してしまった......
でもすぐに首を振って我に返った......
「それで、その......宮島さんとはどういうお知り合いなんですか?」
「知ってるも何も、小学校からの友達よ......」
小学校からの友達か......それならかなり親しい仲だったんだろうな......
「それで、その......彼女のことをどれくらいご存知ですか?よかったら聞かせてもらえませんか......」
彼女はしばらく黙ってお茶を一口飲んでから続けた......
「本当に話してほしいの?私が話しても、あなた信じないと思うわよ......」
なんなんだ、これ......アキトさんも同じだった......なんでそんなに話したがらないんだ......
「......なんでですか?」
「だって、私がこれから話すことを聞いたら、あなたはきっと私のこと頭がおかしいって思うでしょうから」
「...............」
「ユウタくんだったわね......あなたは、目の前で見たものを信じるタイプ?」
彼女は突然そう尋ねてきた
「もし僕がこの目ではっきり見たものなら、信じるしかないと思います......」
清美はそれを聞くと微笑んだ......そしてナイフを取り出した......
そして自分の腕を切りつけ、血が一面に飛び散った......
「うわあああ!!!!!!」
ユウタは事務所中に響き渡るほど叫んだ......しかし清美も子供たちも、まったく動じる様子がなかった......
「これを見てください......」
なぜこんなことになっているのか混乱しているユウタの目の前で、突然彼女の血が自分の腕に逆流していった......
「え......????」
「血が逆流しているんです......そして数秒後には、ナイフで切った傷も元通りに治ります......」
これは......一体どういう非常識な話なんだ......
「あ......あなた......何者......いや......何なんですか......」
「信じられないかもしれませんが、こういうものは本当に存在するんですよ、ユウタくん......」
「私と西雄くん、そして子供たちは、吸血鬼なんです......」
「嘘......なんだよこれ......」
池袋......東急ハンズの前
「じゃあ、また会いましょうね......」
「あ......うん......また今度」
どのお客さんも彼のキャラクターへの反応は皆同じだった......なぜ彼だけがあんなキャラクターを未だに楽しめるのか、シャーロットは密かに不思議に思っていた......
「はぁ......今日はデート早く終わったな......何か食べに行こうかな、それともエモくんを待った方がいいかな......」
彼女はしばらく歩いていた......そして一人の男性とぶつかってしまった......
「あっ......ごめんなさい......」
「いや......俺こそ悪かった......」
二人は互いの顔を見合わせた......9年も会っていなかったのに、彼女は彼の顔をはっきりと覚えていた......
整った顔立ちに鋭い目つき、どんな女の子でも夢中になってしまいそうな不良っぽい雰囲気の美男子。体つきもかなりしっかりしていた
まるでボーイズラブか少年漫画から抜け出してきたかのような姿......
でもそれは、彼が持つ「あるもの」の副作用によるものだった......
人間を超えた存在であることの副作用......
「シャルちゃん......だよね?」
彼にとって今、9年という歳月はまだ小学校時代の友人を覚えているには十分な範囲だった
「...............」
シャーロットは彼の顔を見て、動揺のあまり何も言えなくなった......
もう二度と彼らとは関わらないと自分に誓っていたのに......結局こうなってしまった......
「西雄くん......」