ホームある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。昔の友人に会いに行きます……
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昔の友人に会いに行きます……

 011

「よ......バルちゃん」

 [あれ......誰かと思えば、お前か]

 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に......学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある......でも、性格が変わっているわけじゃない。

「お前はまた番号変えてるし......やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから......」

 [しょうがないだろ......俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ]

 そう......この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。

「更屋敷のお嬢さんもそうだよ......まあいい......ところで車いっぱい持ってるだろ?......一台貸してくれないか......子どもたちをコミケに連れていこうと思って......」

 [まあ、いいけど......お前、免許持ってるよな?......もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな......]

 静かに人を脅すこの喋り方......まったく変わってないな。

「とっくに取ってるよ......心配しなくていい......それで、貸してくれるよな?......」

 [ファミリーカーならあるけど......夕方に取りに来ればいいよ......]

「ああ......あと、忘れてた......十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか......」

 [そうか......もう結婚式も近いな......旧友にもずいぶん会ってないし......あ、この!......リタ!......パパ、電話してるんだぞ!]

「え......」

 [あ!アキトおじさん!!......うちに来るの!?]

「おお!リタちゃん......久しぶりだな......声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな......ママは元気にしてるか?」

 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ......最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]

「いいなあ......おじさんも行きたかったなあ......」

 少し電話を奪い合うような音がして......

 [ごめんな......最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ......]

「ああ......わかるよ、子どもってそういうもんだから......じゃあ夕方に行くよ......いろいろお願いすることもあるし......」

 [うん......夕方にな......こら!......リタ......]

 [またねー!!!!]

「ああ......また夕方に......」

 電話を切った......真夏の空が今にも顔を焦がしそうなくらい照りつけている。当然、今日は母校の夏服に着替えていた。半袖シャツに左胸の小さなポケット、少し薄手の黒いスラックス。

「みんな、それぞれ幸せに暮らしてるんだな......」

 菅原に会う前の自分なら、ため息をついてこう思っただろう。幸せを手にできないのは俺だけだ、と。

 でも今は菅原がいる......俺が一番大切に思っている人が。消えていた幸せが、またゆっくりと戻ってきているような気がする。

「これからも......この幸せを守っていかないとな......」


 夕方。和風の大邸宅。久志家。

「おじさん!!!」

 玄関を開けるなり、リタちゃんが全力で飛びついてきた。

「ちょっと!ずいぶん背が伸びたな......前は膝くらいまでしかなかったのに......」

「リタ!!そんなふうにおじさんに飛びかかっちゃダメよ......」

 リタちゃんは父親の言葉を一切無視した。肩によじ登って、そのままちょこんと座ってしまった。

「やったー!!背が高くなった!」

「ちょっと待て!......」

「なんの騒ぎよ......あら......どうしたのアキトくん」

 淡い青色の髪をした、体の弱そうな女性がリビングから出てきた。

「よ、スミちゃん......具合はよくなった?」

「うん......」

 彼女はバルちゃんの奥さん、久志澄だ。体があまり丈夫ではない......高校時代にバルちゃんの子を妊娠して退学することになったから。まだ若かったせいか、リタちゃんを産んでから体調が優れず、それからずっと入院生活が続いていた。

 でも、こうして歩いて話しかけてくれる姿を見ると、素直に嬉しかった。

「車を借りに来たついでに......姪っ子と遊んでいこうかと思って......」

「やったー!」

 リタちゃんの部屋へ向かおうとしたとき、組の構成員が片づけをしているのが見えた。

「前田さん......」

 筋骨隆々の知人の若者に声をかけた。

「子どもの世話って楽しいですか?」

 彼は何も言わず、中指を立てた......俺は笑いながら、リタちゃんの部屋へ上がった。

 ―――

「ね、おじさん!......一緒に踊ろうよ!」

「踊り?......おじさんはちょっと体がついていかないかも......」

「じゃあ踊ろ!」

 バルちゃんが心配するのもわかる......若いパパは大変だな。リタちゃんがYouTubeでVTuberの動画を開いた。よくフィードに上がってくるミュージックビデオで......かなり有名な曲だろう。

「これ......ゲンキちゃんじゃないか......」

「おじさん、知ってるの!?」

「これだけ有名なVTuberを知らない人はいないよ......」

「さあさあ......構えて!......曲が始まるよ!」

 俺は動画のリズムに合わせてぴったり踊ってみせた。リタちゃんは目を丸くして......負けじと踊り始めた。

「サビが来た......ここでおじさんに勝つよ!!」

「できるもんならやってみな......」

「~キュート キュート キュート!~みんな一緒に腰を振って!~キュート キュート キュート!~揺れて揺れてシェイク!~キュート キュート キュート!~わたしはダンスのプリンセス~いち......に......エレガント ドライブ!!!!!」

 曲が終わった。

「はあ......はあ......信じられない......おじさんがあんなに上手いなんて......」

「当然だろ......でもリタちゃんも上手いよ......あんな早いサビを歌いながら踊れるなんて......」

「そうかな......」

 二人で並んで話していたが......なんていうか......体のあちこちが痛い......俺まだ二十五なんだけどな。

「歌手になりたいの?」

「うん......ミュージックビデオを見るたびに、歌や踊りにすごく感動するの......かっこよく踊ってる人もたくさんいるし......だからずっと練習してるんだ」

 歌いながら踊るというのはコンサート向きで、ミュージックビデオを撮るには踊りの練習が欠かせないわけだが......

「ね、リタちゃんさ......これだけ頑張ってるんだから......おじさん的には、リタちゃんはすごいと思うよ」

「本当に!?」

「本当だよ......おじさんは、できてもいないのに褒めるタイプじゃないからな......知ってるだろ?」

「ありがとう!......もっと頑張るね......」

 彼女は俺に笑いかけてくれた......踊り疲れていたのが嘘みたいに、さっぱり消えてしまったようだった。

 遊び疲れた後、家の人たちと一緒に夕食を食べた。前の組長だったおじさんにも会えた。相変わらず優しかった。

 それから車を取りに行ったのだが......

「これが、お前んちのファミリーカーか......」

「そうだよ」

 邸宅の玄関前に停まっていたのは、メルセデス・ベンツGLS......しかもMAYBACH 600、このシリーズで最も高い仕様だった。

「お前がヤクザだってこと、すっかり忘れてたよ......」

 生きてきた中で高級車は何台も見てきたが......一度も運転したことはない。

「まあいい......どこかにぶつけなければそれでいい」

「ドアを開けるのも怖いんだけど......」

 せっかく貸してくれたんだから乗るしかない。SUVだからファミリーカーとしては正しいが、内装はどう見てもファミリーカーではなかった。

「勘弁してくれ......エアコンをつけるくらいは許してくれよ......」

 エンジンをかけるだけで体が固まった。

「またねー!!おじさん!!」

「おう!!時間ができたら遊びに来るよ!!」

 そうして走り出した......

「......ママ......」

「何?」

「ねえ、大きくなったら......アキトおじさんと結婚したいな......」

「はあ!?!?」

「ちょっと......パパをそうやっていじめないの......」

「だってパパをからかうの、楽しいんだもん......」

「ちょっと待て!!パパをそんなに驚かせるんじゃない!!!」
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こんばんは……コミケ。
ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
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「よ......バルちゃん」

 [あれ......誰かと思えば、お前か]

 水曜日の朝、お客さんのところへ行く前に......学生時代の別の親友に電話をかけた。彼は少し変わったところがある......でも、性格が変わっているわけじゃない。

「お前はまた番号変えてるし......やっと繋がったと思ったら、西尾に頭下げて番号聞き出さないといけないんだから......」

 [しょうがないだろ......俺の社会的立場上、同じ番号をずっと使うわけにはいかないんだよ]

 そう......この友人、久志昴は、関東一帯に影響力を持つ久志組のトップだ。これほどの勢力を誇るのは、他の組がすべて消えてしまったからでもある。先ほど名前の出た西尾は、今は恋人のキヨミちゃんと二人で私立探偵をやっている後輩だ。なかなかかっこいいコンビだと思う。

「更屋敷のお嬢さんもそうだよ......まあいい......ところで車いっぱい持ってるだろ?......一台貸してくれないか......子どもたちをコミケに連れていこうと思って......」

 [まあ、いいけど......お前、免許持ってるよな?......もし警察に止められて車の出所を調べられたら、生かしておけないからな......]

 静かに人を脅すこの喋り方......まったく変わってないな。

「とっくに取ってるよ......心配しなくていい......それで、貸してくれるよな?......」

 [ファミリーカーならあるけど......夕方に取りに来ればいいよ......]

「ああ......あと、忘れてた......十七日に、星野の結婚のお祝いを兼ねた集まりを家でやろうと思ってるんだ。できれば来てくれないか......」

 [そうか......もう結婚式も近いな......旧友にもずいぶん会ってないし......あ、この!......リタ!......パパ、電話してるんだぞ!]

「え......」

 [あ!アキトおじさん!!......うちに来るの!?]

「おお!リタちゃん......久しぶりだな......声を聞く限り、ずいぶん大きくなったみたいだな......ママは元気にしてるか?」

 [うん!ママ、最近ずっとよくなってるよ......最近はみんなでピクニックにも行ったんだよ!!]

「いいなあ......おじさんも行きたかったなあ......」

 少し電話を奪い合うような音がして......

 [ごめんな......最近、毎日おじさんに会いたいって言ってるんだよ......]

「ああ......わかるよ、子どもってそういうもんだから......じゃあ夕方に行くよ......いろいろお願いすることもあるし......」

 [うん......夕方にな......こら!......リタ......]

 [またねー!!!!]

「ああ......また夕方に......」

 電話を切った......真夏の空が今にも顔を焦がしそうなくらい照りつけている。当然、今日は母校の夏服に着替えていた。半袖シャツに左胸の小さなポケット、少し薄手の黒いスラックス。

「みんな、それぞれ幸せに暮らしてるんだな......」

 菅原に会う前の自分なら、ため息をついてこう思っただろう。幸せを手にできないのは俺だけだ、と。

 でも今は菅原がいる......俺が一番大切に思っている人が。消えていた幸せが、またゆっくりと戻ってきているような気がする。

「これからも......この幸せを守っていかないとな......」


 夕方。和風の大邸宅。久志家。

「おじさん!!!」

 玄関を開けるなり、リタちゃんが全力で飛びついてきた。

「ちょっと!ずいぶん背が伸びたな......前は膝くらいまでしかなかったのに......」

「リタ!!そんなふうにおじさんに飛びかかっちゃダメよ......」

 リタちゃんは父親の言葉を一切無視した。肩によじ登って、そのままちょこんと座ってしまった。

「やったー!!背が高くなった!」

「ちょっと待て!......」

「なんの騒ぎよ......あら......どうしたのアキトくん」

 淡い青色の髪をした、体の弱そうな女性がリビングから出てきた。

「よ、スミちゃん......具合はよくなった?」

「うん......」

 彼女はバルちゃんの奥さん、久志澄だ。体があまり丈夫ではない......高校時代にバルちゃんの子を妊娠して退学することになったから。まだ若かったせいか、リタちゃんを産んでから体調が優れず、それからずっと入院生活が続いていた。

 でも、こうして歩いて話しかけてくれる姿を見ると、素直に嬉しかった。

「車を借りに来たついでに......姪っ子と遊んでいこうかと思って......」

「やったー!」

 リタちゃんの部屋へ向かおうとしたとき、組の構成員が片づけをしているのが見えた。

「前田さん......」

 筋骨隆々の知人の若者に声をかけた。

「子どもの世話って楽しいですか?」

 彼は何も言わず、中指を立てた......俺は笑いながら、リタちゃんの部屋へ上がった。

 ―――

「ね、おじさん!......一緒に踊ろうよ!」

「踊り?......おじさんはちょっと体がついていかないかも......」

「じゃあ踊ろ!」

 バルちゃんが心配するのもわかる......若いパパは大変だな。リタちゃんがYouTubeでVTuberの動画を開いた。よくフィードに上がってくるミュージックビデオで......かなり有名な曲だろう。

「これ......ゲンキちゃんじゃないか......」

「おじさん、知ってるの!?」

「これだけ有名なVTuberを知らない人はいないよ......」

「さあさあ......構えて!......曲が始まるよ!」

 俺は動画のリズムに合わせてぴったり踊ってみせた。リタちゃんは目を丸くして......負けじと踊り始めた。

「サビが来た......ここでおじさんに勝つよ!!」

「できるもんならやってみな......」

「~キュート キュート キュート!~みんな一緒に腰を振って!~キュート キュート キュート!~揺れて揺れてシェイク!~キュート キュート キュート!~わたしはダンスのプリンセス~いち......に......エレガント ドライブ!!!!!」

 曲が終わった。

「はあ......はあ......信じられない......おじさんがあんなに上手いなんて......」

「当然だろ......でもリタちゃんも上手いよ......あんな早いサビを歌いながら踊れるなんて......」

「そうかな......」

 二人で並んで話していたが......なんていうか......体のあちこちが痛い......俺まだ二十五なんだけどな。

「歌手になりたいの?」

「うん......ミュージックビデオを見るたびに、歌や踊りにすごく感動するの......かっこよく踊ってる人もたくさんいるし......だからずっと練習してるんだ」

 歌いながら踊るというのはコンサート向きで、ミュージックビデオを撮るには踊りの練習が欠かせないわけだが......

「ね、リタちゃんさ......これだけ頑張ってるんだから......おじさん的には、リタちゃんはすごいと思うよ」

「本当に!?」

「本当だよ......おじさんは、できてもいないのに褒めるタイプじゃないからな......知ってるだろ?」

「ありがとう!......もっと頑張るね......」

 彼女は俺に笑いかけてくれた......踊り疲れていたのが嘘みたいに、さっぱり消えてしまったようだった。

 遊び疲れた後、家の人たちと一緒に夕食を食べた。前の組長だったおじさんにも会えた。相変わらず優しかった。

 それから車を取りに行ったのだが......

「これが、お前んちのファミリーカーか......」

「そうだよ」

 邸宅の玄関前に停まっていたのは、メルセデス・ベンツGLS......しかもMAYBACH 600、このシリーズで最も高い仕様だった。

「お前がヤクザだってこと、すっかり忘れてたよ......」

 生きてきた中で高級車は何台も見てきたが......一度も運転したことはない。

「まあいい......どこかにぶつけなければそれでいい」

「ドアを開けるのも怖いんだけど......」

 せっかく貸してくれたんだから乗るしかない。SUVだからファミリーカーとしては正しいが、内装はどう見てもファミリーカーではなかった。

「勘弁してくれ......エアコンをつけるくらいは許してくれよ......」

 エンジンをかけるだけで体が固まった。

「またねー!!おじさん!!」

「おう!!時間ができたら遊びに来るよ!!」

 そうして走り出した......

「......ママ......」

「何?」

「ねえ、大きくなったら......アキトおじさんと結婚したいな......」

「はあ!?!?」

「ちょっと......パパをそうやっていじめないの......」

「だってパパをからかうの、楽しいんだもん......」

「ちょっと待て!!パパをそんなに驚かせるんじゃない!!!」
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ある日突然、無職の俺が、自分より丸々8歳も年下の女の子がVTuberになるのを手伝うことになった。作者:SakuSaku
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