青山美冬の、周囲に対する視点。
028
平日......私は四時に起きる......軽く三十分ほどジョギングして、気分によって行かない日もある。家に帰って、シャワーを浴びて、着替えて、朝食を作る。
でも最近は、お兄さんがいつも早起きしていて......だから朝食を作る機会もあまりなくなった
「よ、座れよ」
彼はいつもこうして私に声をかけてくれる......
三ヶ月くらいになるだろうか、彼が私に時間を割いてくれるようになって......それに彼女もできたみたいで......
その人は私の学校の後輩で、直接話したことはないけれど、SNSではそれなりに有名だと聞いている
正直、お兄さんが年下の女の子を好きになるとは思っていなかった......そしてその子がとても礼儀正しくて、同い年の子たちとは全然違うことにも驚いた
「お兄さん......」
自分でもよく分からない、なぜかお兄さんと話すたびに怖くなってしまうのが......
「ん?」
だからどう表現すればいいのかも、分からなくて......
「最近......ずっと早起きしてますよね......疲れないんですか?」
「別に......そっちは?学校はどう?」
彼はいつも私の様子を気にかけてくれる......
「......」
私はただ首を横に振った......話せば、学校のことをお兄さんが全部解決しようとするのが分かっているから
「そうか......お弁当はいつものところにあるからな......遅刻するなよ」
「お兄さんも......」
朝食が終わると彼は部屋に戻って寝る......それが毎日の繰り返し
「行ってきます......」
この大きな街では......人は冷たいもの......お兄さんはそれを小さい頃からずっと私に教えてくれていた......
お兄さんは明るくて、よく話して、頼りになる人......でも一つだけ、怖いと思うことがある......
それは彼が、私とは正反対の存在だということ......
どこにいても、彼はいつも輝いている......私と違って
「あっ!」
学校の門の前で、誰かにぶつかってしまった......その子が転びそうになった
「あ......ごめんなさい」
「は、はい!すみませんっ!」
私が頭を下げると......その子は謝って、すぐに走って行ってしまった......
「もう、マユリン......ゴシックロリータってほんとに縫うのが大変なんだから......」
「一年あるんだから間に合うって」
「でも新しい同人誌も描かないといけないし......」
「え!?彼氏レンタル!?ほんとに借りてきたの!?」
「うるさいってば!」
お兄さんがよく家に連れてくる後輩たちのグループを、私は遠くから眺めていた......
「......いいなあ」
私には、友達が一人もいないから......
靴を履き替えて教室に入った。昼休みになると、新しい校長が開放してくれた屋上に上がって弁当を食べることにしている
「あの......隣、座っていいですか?」
「は......あ、はい!どうぞ!」
話しかけた女子生徒たちは、いつもこんな反応だ
誰もかれも、私を怖がる......みんな、全員......
だから誰ともあまり話せなくて......正直、とても寂しい......
「ねえ......あの先輩って......お兄さんが更屋敷財閥と関わりがある、あの人じゃない......?」
どこかからひそひそ声が聞こえてきた
「更屋敷って、女の子を闇市場に売り飛ばしてたって噂のあるとこ?」
「それだけじゃないよ。十年くらい前、一族同士の抗争があって、そのせいで先輩のお兄さんも殺されたとか......」
「ああ......渋谷五叉路で銃乱射があったって聞いたことある......でも私たちあの時まだ子供だったし」
噂話......いつも、絶えず聞こえてくる......
私を見た人はみんな、口から口へと「絶対に関わるな」と伝え合っている
だから怖い......ずっとお兄さんのことが怖かった......
だから孤独でいるしかなかった......ずっと
図書委員になったのも......どうせ静かだから、と思ったから
「...............」
でも最近は
「こんにちは......本を借りに来ました......」
家によく来るあの後輩グループが、私によく声をかけてくれるようになった
お兄さんの噂を知っているのかどうかは分からないけど......彼らは私のことを、ごく普通の先輩として接してくれる
「いいよ......」
お兄さん自身のことも......家ではあまりいろんな面を見たことがなかった......普段は静かにしているか、私に話しかけるときは穏やかにしてくれるか、どちらかだった......
でもあの日......お兄さんが友人たちを家に連れてきた日、私は彼のいろんな表情を初めて見た......
悲しそうな顔も、嬉しそうな顔も、おかしそうな顔も、ロリコンらしくちょっとどうかしてる顔も
「これをください......」
「ああ......あれ?君たち......昨日家で会ったよね」
彼らが家に来るたびに私は部屋で本を読んでいたから、特に話すこともなかった。昨日になってようやく顔を合わせたくらいで
「あ......アキトさんの妹さんですか」
「ちょっと、先輩だよ」
なんか可愛いグループだな......VTuberのチームを作るとかって聞いてたけど
「いいよいいよ。私、三年生だけど......まだ17歳だから」
「早生まれなんですね......」
「そう、アキラちゃん......ほら......期限までに返してね」
「はーい!!」
そして彼らは出て行った......チャイムが鳴った
「片付けて帰ろう」
―――
帰り道はたいていウチの学校から近い池袋に寄って歩くことが多い......
「アニメイトでデュラララ!!20周年フェア?......やっぱり名作だよねえ」
池袋といえばアニメイトは外せない......私は腐女子系を好んで読む文学少女だから
「あ!東京エイリアン新刊出てる。買わなきゃ!」
しばらぶらついてからサンシャイン通り近くへ行って、食べ歩きをした
歩いていると、お兄さんが感じの良さそうな中年の男性と一緒に歩いているのが見えた
「最近、お兄さんをよく見かけるなあ......相変わらず仕事終わるの早いし......」
二人とも、仕事帰りにそのまま遊びに来た感じだった。邪魔するのはやめておこう......
「楽しそうな顔してる......」
私は別の方向へ歩いて行った......
家に帰ると......以前だったら......待っているのはいつも、静寂と、慣れ切った灰色の孤独の色だった
でも今日は違った
「おかえりなさいませー!先輩」
「おかえりなさいです、先輩」
私を怖がりもしない後輩たちが、少しずつその灰色を塗り替えてくれている......
せめて少しだけ......心を開いてみようと思う......
「ただいま......」
そしてもし、青山アキトお兄さんへの恐怖心を、いつか手放せる日が来たなら
その日には改めて、ちゃんと関係を結び直したいと思う......
妹として