ホーム›ヤブ医者、治癒魔法の耐性ができた世界で人々を救う›27.もう一人の助手
目次前の話 →

27.もう一人の助手

 隊長さんと一緒に処置室から出ると、ベントさんとヤコブさんが待っていた。

 ベントさんは隊長さんの腕がくっついているのを見ると、僕の前へと歩み出て頭を下げた。

「先ほどは、申し訳ありませんでした! 隊長の腕をつけて頂き、有難う御座います!」

「まだ、動くかはわからない状況です。ただ、できる事はしました。腕が動かなくても、切り捨てないでくださいね?」

 ちょっと意地悪を言うと涙を溢れさせて頭を再び深々と下げた。

「おれ......本当に馬鹿で......すぐ周りが見えなくなっちゃうんです。隊長を助けたいだけだったんです。切り捨てられても文句は言えません。なんなら、斬り伏せて頂いてもいいです! すみませんでした!」

 ベントさんはそう言い放ち、剣を差し出してきた。
 僕も少し意地悪を言ってしまったからなぁ。

「僕こそ、すみません。ちょっと意地悪をしました。これでおあいこです。別に怒っていませんし、わかってくれればそれでいいです。ベントさんが隊長さんを大切に思っているのだということはわかりました」

 そう言葉を紡ぐとベントさんは顔を赤くしだした。
 何をそんなに慌てているのだろう?

「べ、べつに隊長を好きってことではないですよ!? そ、そのっ! 尊敬していると言いますか、慕っていると言いますか......」

「ふふふっ。それはわかっていますよ。いい部下をお持ちですね?」

 隊長さんへと笑顔を向けると。
 呆れた様に鼻で笑い、ベントさんを見つめて言い放った。

「お前は、もう少し冷静になることを覚えろ。ましてや、助けてくれようとしている治癒士に剣を振り下ろすなど、言語道断だ」

「......すみません」

 俯いて震えだすベントさん。

「ただ、私を思っての行動なのはわかる。ベントが自分に肩入れしてくれているのは、面倒見ているからだろう? もう、そんなの気にする必要ないんだぞ?」

「そういうわけにはいきません! おれは、すぐにカッとなるから、どこの仕事をしようにもうまくいってなかった。そんなとき、隊長が自分を軍に誘ってくれたんです。そして、ずっと面倒を見てくれている。感謝しかありません!」

「だが、ずっと自分の部下でいる必要はないんだぞ? 他の部隊にいったっていい。わざわざ防衛部隊になんて入らなくたってよかったんだ」

 その言葉には再び顔を赤くしているが、今度は恥ずかしさからではなく、怒りからのようだ。

「おれは! 隊長といたいから防衛部隊を希望したんです! おれは、あなたのために働きたい! 他の誰に何を言われようと、隊長を信じて、一生ついて行くんです!」

 耳が痛くなるほどの大きな声でそう宣言した。
 思わず笑ってしまった。
 こんなに気持ちいいくらい部下に信頼される上司がいるだろうか。

 少なくとも、僕の知る限りはいない。
 これは、もはや尊敬というより、崇拝しているに近い。

「はははっ。隊長さんは凄く熱い信頼を得ているようですね。そのままの人間でいて下さい。国の上のような腐った思考の持ち主にならないでください」

「ヤブ先生に言われるとは。自分だけではないじゃないですか。見ていればわかりますよ? 助手のユキノさんと言いましたか? ヤブ先生への信頼、忠誠心はかなりのものだ」

 そういわれると僕も照れてしまう。
 たしかにユキノさんは僕のことを信頼してくれている。
 それに、アドバイスもくれる。

 もう、僕にはかかせないような存在になっているのだ。

「僕にとっても、大切な存在ですよ」

 正直にこう話すと、遠くで会話を聞いていたユキノさんの顔が仄かに赤くなった。照れているみたいだ。それをみた僕まで顔が熱い。

「くっくっくっ。ヤブ先生。いいコンビですね。そのポイズンスパイダーも、先生を信用しているように思える。たいしたものです」

「ムーランといいます。この子は、不思議と僕の言葉を理解して行動してくれるんです」

「っ!? そんなことが!? 興味深いですなぁ。聞いたことがないですが。ヤブ先生、もしかしてテイマーの素質でもあるのではないですか?」

「僕には、何の能力も力もありません。あるのは、今まで経験してきた治癒士としてのノウハウだけです」

「そうですかねぇ。もったいないなぁ。テイマーは貴重なんですよ?」

「いやはや、体力もない僕は冒険者も務まりません。この治癒院でしがない治癒士をしているくらいが関の山ですよ」

 難しい顔をしている隊長さん。
 何かを考えているようだ。

「軍の方にも治癒士部隊があるのを知っていますか? 今は、まったく機能していませんが」

「いえ。知らないです。それが、どうしました?」

「......もし、ヤブ先生が良ければですけど、一人預かってもらえませんか?」

「軍人を、ですか?」

 嫌な予感がした。
 軍人であれば、街の人達をないがしろにする様な。
 ベントさんのような発言をする人もいるだろう。

 患者さんを見るときにそんな発言が出てはこの治癒院の口コミが悪くなってしまう。心証を悪くするのは、今のところは避けたいのだが。

「あっ、そんなに心配することはありません。国民への差別などがある者ではありません。それに、女性ですが、ちょっとホワンとしたところがありますので、癒しになると思いますよ?」

 それもなんか不安なんだが。
 ちゃんと治癒士として動けるのだろうか。

「実は、治癒士としてはかなり優秀なんです。その者は、どうにか魔法以外での治療をしようと、一人模索していたんです。どうですか?」

 その話を聞いた限りでは、いい人材かもしれない。
 この国に、魔法以外の治療法を広めるいい機会かもしれない。
 僕は先頭に立つのは面倒だ。

 その人に立ってもらおう。

「良いですよ。受け入れます。いつから来ますか?」

「戻ったら、こちらに来るように伝えます」

「わかりました。では、よろしくお願いします」

 手を振って去って行った隊長さん。
 その後ろをペコペコと頭をさげながらついて行くベントさん。

 引き受けちゃったけど、大丈夫だろうか?
シェア
前の話 →
26.手術と隊長
最新話です
目次に戻る
ヤブ医者、治癒魔法の耐性ができた世界で人々を救う作者:磐城緩哉
目次を見る
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません

27.もう一人の助手

 隊長さんと一緒に処置室から出ると、ベントさんとヤコブさんが待っていた。

 ベントさんは隊長さんの腕がくっついているのを見ると、僕の前へと歩み出て頭を下げた。

「先ほどは、申し訳ありませんでした! 隊長の腕をつけて頂き、有難う御座います!」

「まだ、動くかはわからない状況です。ただ、できる事はしました。腕が動かなくても、切り捨てないでくださいね?」

 ちょっと意地悪を言うと涙を溢れさせて頭を再び深々と下げた。

「おれ......本当に馬鹿で......すぐ周りが見えなくなっちゃうんです。隊長を助けたいだけだったんです。切り捨てられても文句は言えません。なんなら、斬り伏せて頂いてもいいです! すみませんでした!」

 ベントさんはそう言い放ち、剣を差し出してきた。
 僕も少し意地悪を言ってしまったからなぁ。

「僕こそ、すみません。ちょっと意地悪をしました。これでおあいこです。別に怒っていませんし、わかってくれればそれでいいです。ベントさんが隊長さんを大切に思っているのだということはわかりました」

 そう言葉を紡ぐとベントさんは顔を赤くしだした。
 何をそんなに慌てているのだろう?

「べ、べつに隊長を好きってことではないですよ!? そ、そのっ! 尊敬していると言いますか、慕っていると言いますか......」

「ふふふっ。それはわかっていますよ。いい部下をお持ちですね?」

 隊長さんへと笑顔を向けると。
 呆れた様に鼻で笑い、ベントさんを見つめて言い放った。

「お前は、もう少し冷静になることを覚えろ。ましてや、助けてくれようとしている治癒士に剣を振り下ろすなど、言語道断だ」

「......すみません」

 俯いて震えだすベントさん。

「ただ、私を思っての行動なのはわかる。ベントが自分に肩入れしてくれているのは、面倒見ているからだろう? もう、そんなの気にする必要ないんだぞ?」

「そういうわけにはいきません! おれは、すぐにカッとなるから、どこの仕事をしようにもうまくいってなかった。そんなとき、隊長が自分を軍に誘ってくれたんです。そして、ずっと面倒を見てくれている。感謝しかありません!」

「だが、ずっと自分の部下でいる必要はないんだぞ? 他の部隊にいったっていい。わざわざ防衛部隊になんて入らなくたってよかったんだ」

 その言葉には再び顔を赤くしているが、今度は恥ずかしさからではなく、怒りからのようだ。

「おれは! 隊長といたいから防衛部隊を希望したんです! おれは、あなたのために働きたい! 他の誰に何を言われようと、隊長を信じて、一生ついて行くんです!」

 耳が痛くなるほどの大きな声でそう宣言した。
 思わず笑ってしまった。
 こんなに気持ちいいくらい部下に信頼される上司がいるだろうか。

 少なくとも、僕の知る限りはいない。
 これは、もはや尊敬というより、崇拝しているに近い。

「はははっ。隊長さんは凄く熱い信頼を得ているようですね。そのままの人間でいて下さい。国の上のような腐った思考の持ち主にならないでください」

「ヤブ先生に言われるとは。自分だけではないじゃないですか。見ていればわかりますよ? 助手のユキノさんと言いましたか? ヤブ先生への信頼、忠誠心はかなりのものだ」

 そういわれると僕も照れてしまう。
 たしかにユキノさんは僕のことを信頼してくれている。
 それに、アドバイスもくれる。

 もう、僕にはかかせないような存在になっているのだ。

「僕にとっても、大切な存在ですよ」

 正直にこう話すと、遠くで会話を聞いていたユキノさんの顔が仄かに赤くなった。照れているみたいだ。それをみた僕まで顔が熱い。

「くっくっくっ。ヤブ先生。いいコンビですね。そのポイズンスパイダーも、先生を信用しているように思える。たいしたものです」

「ムーランといいます。この子は、不思議と僕の言葉を理解して行動してくれるんです」

「っ!? そんなことが!? 興味深いですなぁ。聞いたことがないですが。ヤブ先生、もしかしてテイマーの素質でもあるのではないですか?」

「僕には、何の能力も力もありません。あるのは、今まで経験してきた治癒士としてのノウハウだけです」

「そうですかねぇ。もったいないなぁ。テイマーは貴重なんですよ?」

「いやはや、体力もない僕は冒険者も務まりません。この治癒院でしがない治癒士をしているくらいが関の山ですよ」

 難しい顔をしている隊長さん。
 何かを考えているようだ。

「軍の方にも治癒士部隊があるのを知っていますか? 今は、まったく機能していませんが」

「いえ。知らないです。それが、どうしました?」

「......もし、ヤブ先生が良ければですけど、一人預かってもらえませんか?」

「軍人を、ですか?」

 嫌な予感がした。
 軍人であれば、街の人達をないがしろにする様な。
 ベントさんのような発言をする人もいるだろう。

 患者さんを見るときにそんな発言が出てはこの治癒院の口コミが悪くなってしまう。心証を悪くするのは、今のところは避けたいのだが。

「あっ、そんなに心配することはありません。国民への差別などがある者ではありません。それに、女性ですが、ちょっとホワンとしたところがありますので、癒しになると思いますよ?」

 それもなんか不安なんだが。
 ちゃんと治癒士として動けるのだろうか。

「実は、治癒士としてはかなり優秀なんです。その者は、どうにか魔法以外での治療をしようと、一人模索していたんです。どうですか?」

 その話を聞いた限りでは、いい人材かもしれない。
 この国に、魔法以外の治療法を広めるいい機会かもしれない。
 僕は先頭に立つのは面倒だ。

 その人に立ってもらおう。

「良いですよ。受け入れます。いつから来ますか?」

「戻ったら、こちらに来るように伝えます」

「わかりました。では、よろしくお願いします」

 手を振って去って行った隊長さん。
 その後ろをペコペコと頭をさげながらついて行くベントさん。

 引き受けちゃったけど、大丈夫だろうか?
シェア
最新話です
目次に戻る
ヤブ医者、治癒魔法の耐性ができた世界で人々を救う作者:磐城緩哉
目次
コメント0件
ログインしてコメントする
まだコメントがありません