ホーム競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜第十話 代理リーダー
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第十話 代理リーダー

「ウチ、やります。でも一つだけ教えて下さい」

 真剣なチーザの眼差しに答えるため、服の皺を直して居住まいを正す。

「先輩がウチの指揮に期待していることは何ですか?」

 求められているものが分からないのだろう。
 見つめてくるコバルトブルーの瞳の中には、怯えに思える色も見え隠れ。それでも期待に応えようとしてくれていた。
 理由は皆も求めているみたいで、モニタールーム中の視線が集まってくる。

「そうだな......イカロスとプロミネンスの試合観戦をした時に気付き、今日のディスカッションで確信を得た。チーザは音響空間を捉える感覚を、極めて高いレベルで備えている」
「空間を捉える感覚とは?」
「先輩、どういうことですか!?」

 クロワとチーザ本人から意味を問われ、仕方が無いので軽くテストする流れに。
 チーザだけが壁際を向き、残りのメンバーは無言で席をシャッフル。

 チーザは、誰がどこに移動したかを全て言い当てた。
 やや興奮気味なクロワ。

「チーザさん! 何故分かるのですか!?」

 詰め寄られても、当のチーザは苦笑い。
 チーザとしては出来て当然で、説明は難しいのかも知れない。
 慌ててソルティが割って入る。

「ハイハイハイハイ、クロワ、ステイだ! 一先ず座れ! チーザはそれを他の奴らからみた感覚でも、把握できるって認識で合ってるか?」

 チーザは「はい」とだけ答えていた。キャメルが喜色に満ちた様子で褒める。

「チーザ、凄いね。あたいには無理だから、本当にその凄さが分かるよ」

 まるで年の離れた姉が、優しく告げるかに思える声色。
 声をかけられほんのりと赤面したチーザは、その言葉を大切に噛みしめているようにも見えた。

 日が落ちたのかクーラーの利きが一気に良くなったので、ハーベストが珈琲を淹れて配り、人心地つける。カラカラだった喉が潤っていくのを感じた。

 全員が落ち着いたのを見計らってモニター側へ歩み寄り、映像を出しながらチーザを選んだ理由の続きを話す。

「その能力を有しているからといって、明日までに実戦で活用するのは困難だろう。ここで、自由奔放、奇想天外な発想をするチーザに任せるのは......」

 紫の機体ルーラーが大きく映し出されたシーンで一時停止し、皆の方へ向き直ってモニターを掌で叩く。乾いた音がモニタールームに響いたのち、僅かに語気を強めた。

「このムッツリの番人・・・・・・・の思考の裏をかくためだ」

 一瞬の間を置き、ソルティが大口を開けて馬鹿笑いし、それにつられて笑い声が漏れ始める。

「あぁいいぜ! ムッツリの扉をこじ開けてオープンスケベに変えてやろうぜ!」
「先輩でもそういう下ネタ言うんですね」
「ソルティさんは下ネタを減らして欲しいです」

 皆の緊張をほぐそうとして、慣れないことをするものでは無いと痛感する。
 恥ずかしさを小さく咳払い。

「......では、死蝶からゴールを奪う検討を再開するぞ」

 モニターの映像を金色のモービルギアのシーンへ切り替えていく。死蝶という異名のせいで格闘の印象は少ないが、並べてみると意外に多くて被弾も多い。

「この人、自分から殴りに行ってませんか?」
「だろうな」
「蝶という呼び名なのに、ツイスト飛行多くありませんか?」
「モービルギアは蝶では無い」

 さっきからハーベストのぼやきに近い問いに返していたら、「ナックさんが冷たい」と嘆きだした。
 眼鏡を直したクロワが、多少はマシな意見を出し始める。

「被弾の多さは気になります。誘いルアーも兼ねているのでしょう。ここにつけいる隙があるかと」
「良い着眼点だ」

 恐らく死蝶は、試合時間に応じてダメージコントロールをしていて、タイムアップまで持つ前提で被弾覚悟の突撃も多い。全く捕まえられないと追われなくなるので、クロワが述べた通り撒き餌を兼ねているのもあると思う。

 華麗に躱すシーンと、アグレッシブに自ら殴りにいくシーンを交互にモニターへ出していく。普段は元気一杯のチーザが黙ってモニターを見ているのは新鮮だ。
 リーダーという立場と自覚が覚悟を与えたのだとすれば、指名した甲斐がある。

「被弾を割り切っているのもあるが......どうだ? チーザ。インプットは完了したか?」
「はい」

 チーザは、コバルトブルーの瞳を閉ざして一人イメージの世界に入った。
 動きをトレースしているのか、操縦桿グリップを扱うかのように手が動いている。
 隣ではキャメルがリードしつつ、ハーベストとクロワの議論も白熱していく。

 時に冷静に、時に激情に。

 活発な意見の応酬が続き、若さゆえのエネルギーを感じる。
 中腰で錆びたパイプ椅子に手を添え、皆を眺めていたら、申し訳なさそうなウェハーの声が横から聞こえてきた。

「あのー......盛り上がっているところ悪いんですけど、俺そろそろあがっても?」

 ダークブラウンの短髪を何度もかき、金の瞳には憂いの色も見えるウェハー。

「構わない。遅くまで悪かった」

 先にあがる許可を出すと、事情を知らないハーベストが強い反発を見せる。

「そんな! ナックさんが生き残れるかがかかっている重要なブリーフィングですよ? ちょっと夜に入ったぐらいで......」
「やめろ、ハーベスト。あがれウェハー。事情は俺から説明しておく」

 何度も頭を下げたウェハーが退室しようとしたら、ソルティがウェハーへ駆け寄って肩を組んだ。

「わりぃ! 俺もウェハーと一緒に少し抜けるわ!」
「好きにしろ」

 ソルティとウェハーが連れ立っていくのを見送り、ハーベストへ向き直る。
 ハーベストの表情に、ウェハーへの嫌悪を微かに感じた。

「ハーベスト、いいんだ」
「でも!」

 食い下がろうとしたハーベストの肩をチーザが軽く叩き、ライムグリーン色の頭にはキャメルの手が優しく添えられる。

「ハーちゃんは知らなかったんだし、仕方ないよ」
「ウェハーさんには幼い娘さんがいるんだ。まだちっちゃくて可愛い。それに......」

 その先を言い淀んだキャメルがこちらを見る。だから代わりに言葉を紡いだ。

「ウェハーの妻は元エクリプスのメンバーだ。彼女が亡くなったのと入れ替わりでお前が加入した」
「......僕、知りませんでした。ご病気とかで亡くなったのでしょうか?」

 ハーベストの問いに部屋の空気が重くなる。まるで深海に沈められたかのように暗く、息も苦しい。だが他のメンバーに言わせる訳にはいかない。

「......強化兵士だった。まぁ、俺より先に廃棄が......」
「その言葉遣いだけは改めてください!」

 クロワが眼鏡の奥から涙の筋を覗かせ、鋭い声で遮ってきた。

「強化兵士だって人間です! 物ではありませんよ! 私はナックさんの自虐めいたそれをやめて欲しいのです!」

 まさか泣く程とは思っていなかったので少し戸惑う。
 静かに震える声でキャメルが続く。

「強化兵士の中でそう呼ばれているけど、ナックさんが使うのは嫌」

 気付かない内に皆を傷つけていたのだろうか。ふと、そんな考えが頭を掠めた。
 けれど、涙を吹き飛ばす明るいチーザの声が、モニタールームに響く。

「皆さん! やめましょう! いつでもポジティブに! ですよ! ウチは暗い過去の話よりも、明るい未来の話がしたいです!」

 チーザ自身が今のフレーズを、仲の良かったウェハーの妻から繰り返されていたことを思い出した。

「そうだな。ウェハーの娘の誕生日祝いでも企画するのはどうだ?」

 軽い気持ちで発した言葉。なのに暗い空気を消し飛ばす風を呼んだ。
 まるで天空へ舞い上がる天使のように、皆の表情が晴れやかなものへ。

「先輩が来年の予定を話すなんて! 絶対にやりましょう!」
「フッ。私にプランニングを一任下さい」
「ナックさん......あたいもナックさんとの未来を見たい」

 拳を突き上げたハーベストが最後に結んだ。

「ナックさん。僕たちが必ず貴方を未来に届けます。信じて下さい!」

 チーザも、キャメルも、高々と拳を突き上げる。やや遅れてクロワも続いた。
 ソルティがよくやる仕草のそれは、拳を太陽に被せて日食を模す行為。

「クロワ、予算は優勝賞金から出す。とびっきりのプランを用意しろ」

 小さく拳を突き上げて、誕生日プランの許可を出した。
 チームの昂ぶりを感じていたところに、廊下の足音が聞こえ出す。
 モニタールームのドアが大きな音と共に開かれ、部屋の空気が肉とソースの香りに包まれていく。

「今、戻った! 差し入れもあるぜ!」

 先ほど席を外したソルティが、大量のハンバーガーと同伴で御帰還だ。

「あー、ま~た、ブッチャーストライク。ウチ、あそこの肉は焦げてて好きじゃないんです!」
「私も同感です。ウェルダンが過ぎて、舌がおかしくなります。店名をブッチャーアウトに改名すべきでしょうね」

 皆から相次ぐ苦情にソルティは「差し入れに文句を言うな」と笑顔で返す。
 味に関しては同意見だが、ソルティが元戦友のあの店以外でハンバーガーを買うことは無い。

「660gのビッグサイズだ。泣いて喜んで感謝しろ!」
「うへぇ、焦げすぎですよー」
「そういうハーベストには2個やろう」

 ハーベストは涙目で首を振り、キャメルも無言でお腹を擦り何やら思案顔。
 奢りの栄養補給に不満は無いが、もう少し焼き加減をソフトに出来ないものか。
 一先ず、最重要事項をソルティに尋ねる。

「ピクルス抜きはあるか?」
「おうよ! ナックスペシャルを店長が用意してくれてるぜ!」

 受け取ったハンバーガーからは手に伝わるズシリとした重み。
 包みを開ければ強いチーズとガーリックの香りが漂う。

 目の前に居なくても「ナックさん、好物だろ? 多めにいれといたぜ!」と店主の顔が思い浮かんだ。
 どうにか胸やけする量を食べ終える。

「もう一度戦局パターンだけさらっておく。さぁ、明日は勝つぞ」
「了解!!」

 英気を養い、明日の空へ羽ばたく。その思いと共に夜は更けていった。
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競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜作者:元毛玉(もとけだま)
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「ウチ、やります。でも一つだけ教えて下さい」

 真剣なチーザの眼差しに答えるため、服の皺を直して居住まいを正す。

「先輩がウチの指揮に期待していることは何ですか?」

 求められているものが分からないのだろう。
 見つめてくるコバルトブルーの瞳の中には、怯えに思える色も見え隠れ。それでも期待に応えようとしてくれていた。
 理由は皆も求めているみたいで、モニタールーム中の視線が集まってくる。

「そうだな......イカロスとプロミネンスの試合観戦をした時に気付き、今日のディスカッションで確信を得た。チーザは音響空間を捉える感覚を、極めて高いレベルで備えている」
「空間を捉える感覚とは?」
「先輩、どういうことですか!?」

 クロワとチーザ本人から意味を問われ、仕方が無いので軽くテストする流れに。
 チーザだけが壁際を向き、残りのメンバーは無言で席をシャッフル。

 チーザは、誰がどこに移動したかを全て言い当てた。
 やや興奮気味なクロワ。

「チーザさん! 何故分かるのですか!?」

 詰め寄られても、当のチーザは苦笑い。
 チーザとしては出来て当然で、説明は難しいのかも知れない。
 慌ててソルティが割って入る。

「ハイハイハイハイ、クロワ、ステイだ! 一先ず座れ! チーザはそれを他の奴らからみた感覚でも、把握できるって認識で合ってるか?」

 チーザは「はい」とだけ答えていた。キャメルが喜色に満ちた様子で褒める。

「チーザ、凄いね。あたいには無理だから、本当にその凄さが分かるよ」

 まるで年の離れた姉が、優しく告げるかに思える声色。
 声をかけられほんのりと赤面したチーザは、その言葉を大切に噛みしめているようにも見えた。

 日が落ちたのかクーラーの利きが一気に良くなったので、ハーベストが珈琲を淹れて配り、人心地つける。カラカラだった喉が潤っていくのを感じた。

 全員が落ち着いたのを見計らってモニター側へ歩み寄り、映像を出しながらチーザを選んだ理由の続きを話す。

「その能力を有しているからといって、明日までに実戦で活用するのは困難だろう。ここで、自由奔放、奇想天外な発想をするチーザに任せるのは......」

 紫の機体ルーラーが大きく映し出されたシーンで一時停止し、皆の方へ向き直ってモニターを掌で叩く。乾いた音がモニタールームに響いたのち、僅かに語気を強めた。

「このムッツリの番人・・・・・・・の思考の裏をかくためだ」

 一瞬の間を置き、ソルティが大口を開けて馬鹿笑いし、それにつられて笑い声が漏れ始める。

「あぁいいぜ! ムッツリの扉をこじ開けてオープンスケベに変えてやろうぜ!」
「先輩でもそういう下ネタ言うんですね」
「ソルティさんは下ネタを減らして欲しいです」

 皆の緊張をほぐそうとして、慣れないことをするものでは無いと痛感する。
 恥ずかしさを小さく咳払い。

「......では、死蝶からゴールを奪う検討を再開するぞ」

 モニターの映像を金色のモービルギアのシーンへ切り替えていく。死蝶という異名のせいで格闘の印象は少ないが、並べてみると意外に多くて被弾も多い。

「この人、自分から殴りに行ってませんか?」
「だろうな」
「蝶という呼び名なのに、ツイスト飛行多くありませんか?」
「モービルギアは蝶では無い」

 さっきからハーベストのぼやきに近い問いに返していたら、「ナックさんが冷たい」と嘆きだした。
 眼鏡を直したクロワが、多少はマシな意見を出し始める。

「被弾の多さは気になります。誘いルアーも兼ねているのでしょう。ここにつけいる隙があるかと」
「良い着眼点だ」

 恐らく死蝶は、試合時間に応じてダメージコントロールをしていて、タイムアップまで持つ前提で被弾覚悟の突撃も多い。全く捕まえられないと追われなくなるので、クロワが述べた通り撒き餌を兼ねているのもあると思う。

 華麗に躱すシーンと、アグレッシブに自ら殴りにいくシーンを交互にモニターへ出していく。普段は元気一杯のチーザが黙ってモニターを見ているのは新鮮だ。
 リーダーという立場と自覚が覚悟を与えたのだとすれば、指名した甲斐がある。

「被弾を割り切っているのもあるが......どうだ? チーザ。インプットは完了したか?」
「はい」

 チーザは、コバルトブルーの瞳を閉ざして一人イメージの世界に入った。
 動きをトレースしているのか、操縦桿グリップを扱うかのように手が動いている。
 隣ではキャメルがリードしつつ、ハーベストとクロワの議論も白熱していく。

 時に冷静に、時に激情に。

 活発な意見の応酬が続き、若さゆえのエネルギーを感じる。
 中腰で錆びたパイプ椅子に手を添え、皆を眺めていたら、申し訳なさそうなウェハーの声が横から聞こえてきた。

「あのー......盛り上がっているところ悪いんですけど、俺そろそろあがっても?」

 ダークブラウンの短髪を何度もかき、金の瞳には憂いの色も見えるウェハー。

「構わない。遅くまで悪かった」

 先にあがる許可を出すと、事情を知らないハーベストが強い反発を見せる。

「そんな! ナックさんが生き残れるかがかかっている重要なブリーフィングですよ? ちょっと夜に入ったぐらいで......」
「やめろ、ハーベスト。あがれウェハー。事情は俺から説明しておく」

 何度も頭を下げたウェハーが退室しようとしたら、ソルティがウェハーへ駆け寄って肩を組んだ。

「わりぃ! 俺もウェハーと一緒に少し抜けるわ!」
「好きにしろ」

 ソルティとウェハーが連れ立っていくのを見送り、ハーベストへ向き直る。
 ハーベストの表情に、ウェハーへの嫌悪を微かに感じた。

「ハーベスト、いいんだ」
「でも!」

 食い下がろうとしたハーベストの肩をチーザが軽く叩き、ライムグリーン色の頭にはキャメルの手が優しく添えられる。

「ハーちゃんは知らなかったんだし、仕方ないよ」
「ウェハーさんには幼い娘さんがいるんだ。まだちっちゃくて可愛い。それに......」

 その先を言い淀んだキャメルがこちらを見る。だから代わりに言葉を紡いだ。

「ウェハーの妻は元エクリプスのメンバーだ。彼女が亡くなったのと入れ替わりでお前が加入した」
「......僕、知りませんでした。ご病気とかで亡くなったのでしょうか?」

 ハーベストの問いに部屋の空気が重くなる。まるで深海に沈められたかのように暗く、息も苦しい。だが他のメンバーに言わせる訳にはいかない。

「......強化兵士だった。まぁ、俺より先に廃棄が......」
「その言葉遣いだけは改めてください!」

 クロワが眼鏡の奥から涙の筋を覗かせ、鋭い声で遮ってきた。

「強化兵士だって人間です! 物ではありませんよ! 私はナックさんの自虐めいたそれをやめて欲しいのです!」

 まさか泣く程とは思っていなかったので少し戸惑う。
 静かに震える声でキャメルが続く。

「強化兵士の中でそう呼ばれているけど、ナックさんが使うのは嫌」

 気付かない内に皆を傷つけていたのだろうか。ふと、そんな考えが頭を掠めた。
 けれど、涙を吹き飛ばす明るいチーザの声が、モニタールームに響く。

「皆さん! やめましょう! いつでもポジティブに! ですよ! ウチは暗い過去の話よりも、明るい未来の話がしたいです!」

 チーザ自身が今のフレーズを、仲の良かったウェハーの妻から繰り返されていたことを思い出した。

「そうだな。ウェハーの娘の誕生日祝いでも企画するのはどうだ?」

 軽い気持ちで発した言葉。なのに暗い空気を消し飛ばす風を呼んだ。
 まるで天空へ舞い上がる天使のように、皆の表情が晴れやかなものへ。

「先輩が来年の予定を話すなんて! 絶対にやりましょう!」
「フッ。私にプランニングを一任下さい」
「ナックさん......あたいもナックさんとの未来を見たい」

 拳を突き上げたハーベストが最後に結んだ。

「ナックさん。僕たちが必ず貴方を未来に届けます。信じて下さい!」

 チーザも、キャメルも、高々と拳を突き上げる。やや遅れてクロワも続いた。
 ソルティがよくやる仕草のそれは、拳を太陽に被せて日食を模す行為。

「クロワ、予算は優勝賞金から出す。とびっきりのプランを用意しろ」

 小さく拳を突き上げて、誕生日プランの許可を出した。
 チームの昂ぶりを感じていたところに、廊下の足音が聞こえ出す。
 モニタールームのドアが大きな音と共に開かれ、部屋の空気が肉とソースの香りに包まれていく。

「今、戻った! 差し入れもあるぜ!」

 先ほど席を外したソルティが、大量のハンバーガーと同伴で御帰還だ。

「あー、ま~た、ブッチャーストライク。ウチ、あそこの肉は焦げてて好きじゃないんです!」
「私も同感です。ウェルダンが過ぎて、舌がおかしくなります。店名をブッチャーアウトに改名すべきでしょうね」

 皆から相次ぐ苦情にソルティは「差し入れに文句を言うな」と笑顔で返す。
 味に関しては同意見だが、ソルティが元戦友のあの店以外でハンバーガーを買うことは無い。

「660gのビッグサイズだ。泣いて喜んで感謝しろ!」
「うへぇ、焦げすぎですよー」
「そういうハーベストには2個やろう」

 ハーベストは涙目で首を振り、キャメルも無言でお腹を擦り何やら思案顔。
 奢りの栄養補給に不満は無いが、もう少し焼き加減をソフトに出来ないものか。
 一先ず、最重要事項をソルティに尋ねる。

「ピクルス抜きはあるか?」
「おうよ! ナックスペシャルを店長が用意してくれてるぜ!」

 受け取ったハンバーガーからは手に伝わるズシリとした重み。
 包みを開ければ強いチーズとガーリックの香りが漂う。

 目の前に居なくても「ナックさん、好物だろ? 多めにいれといたぜ!」と店主の顔が思い浮かんだ。
 どうにか胸やけする量を食べ終える。

「もう一度戦局パターンだけさらっておく。さぁ、明日は勝つぞ」
「了解!!」

 英気を養い、明日の空へ羽ばたく。その思いと共に夜は更けていった。
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