ホーム競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜第十二話 アンチウェポン
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第十二話 アンチウェポン

 エクリプスのFAフロントアタッカーの3機で縦ラインを展開。
 最上段をソルティ、中央をキャメルが担当。

「さぁ、死蝶モンドどちらへ逃げる?」

 縦の逃げ場を防ぎ、左右どちらかを強要する不自由な二択ダブルバインドを、フィールドに対し7:3の比率で仕掛けた。
 自信家で強気な死蝶は、予想通りに狭い方を選ぶ。
 こちらもキャメルを軸として再び包囲網を展開していく。

『けっ! 天邪鬼野郎が!』

 ミスの帳消しを狙うソルティが果敢に攻めるも、死蝶にはアクロバティックな動きで躱され、続くキャメルの突進もあと一歩のところで逃す。
 反撃に転じた死蝶は、エクリプスの弱点だと言わんばかりにキャメルを狙う。金のモービルギアが、ピンクホワイトの誘蛾灯と化したキャメル機を削り続ける。

『あたいは大丈夫! 任せて!』

 ノイズ混じりの音声だが、不安や強がりは感じられないクリアな声。
 キャメルが一皮剥けようとして、被弾しつつも持ちこたえていた。

 キャメルの奮戦に応えるのは、心配ではなく確かな成果。
 ソルティと二人でルーラーを落としにいく。

『いくぞ、ナック! ルーラー狩りだ!』

 ルーラーは視界誘導を巧みに操り、攻め気を反らしてきて中々決めきれない。
 魅せ弾だと頭では理解しても、目に見える爆発を完全に無視することは難しい。
 チーザからの強めの警告。

『イカロスのラインです!』

 こちらが手をこまねいていたら、切り返しとして代名詞のイカロスの横薙ぎが展開される。
 しかしルーラーが劣勢なので、守勢に回らせるための苦し紛れ感は否めない。

「続行だ」
『おうよ! 法の支配はいらねーからな!』

 守り切れると仲間を信じ、紫の番人ルーラーへ法改定の申請を続ける。
 言葉にせずとも背中で、態度で、頼むぞと後輩たちに告げる。

『ウチ、間に合わない! ウェハーさん、誘いルアー!』
『あいよ!』

 イカロスの5機編成で行われる圧巻の横ライン。
 上下の二者択一を押し付けてくる。

 セオリー通りなら上に逃げるのが定石。
 高度を保っている方が多少制御を失っても立て直す時間が稼げる。
 但し、制御を乱すと落下矯正の連携攻撃キャリブレーションを決められ、大きな失点に繋がるリスクもある。

 それに相手はイカロス。
 この横薙ぎを用いて多くのチームを沈めており、安易な選択は悪手となりうる。

『ハーちゃん! 上!』

 チーザが方針を定めた。即座にウェハーが囮になって下へ飛び、クロワとハーベストはセオリー通り上へ。

『やった! 釣れた!』

 敵はキーパーではなく、ダークブラウンのMCミドルチェイサーへと群がっていく。
 一見、上手く誘いルアーをできたかに見えた。

『逃げて! ウェハーさん!』

 ラインを仕掛けた5機でウェハーを猛追するイカロス。
 確実な各個撃破を狙っていたのだろう。

『ぐぬ!』

 集中砲火を浴びたウェハーは、さながら空中での一人ピンボール状態に陥り、最少失点の貢献ブロックダウンに切り替えを迫られるほどのダメージを負う。
 そこへ、今日はやけに耳障りな実況が届く。


《これは決まるかー?


 しかし、声援を全て塗り替えるクロワの神業が行われ、キャメルとウェハー、両方の窮地を救った。

『クロワ、助かった!』
『俺も持ち直した!』

 果たして観客の中に、凄さの全容を理解できた者はどれだけいるのか。
 イカロス側も動揺を隠せないのか多少の混乱が見られ、それに乗じてチーザとハーベストが死蝶へと突撃。

『隙ありです!!』

 キャメルとも連携を強め、攻勢に回る。
 クロワは射撃で両方を制圧しつつ、ハーベストのカバーにも入っている。

「これがお前たちの特訓の成果か?」

 相手のフルアタックを全て撃ち墜とすクロワ。
 ソルティが自慢げに公言していた通り、目に見えるその全てを・・・・・・・・・・

『新生クロワの記念すべきデビューは、イカロスを焼き鳥にする今日だぜ!』

 比喩か意気込みだと思っていたが、無数のホーミングミサイルまで全弾撃ち墜とす絶技を見て、本気だったことが分かった。

 鮮やかな弾幕を操るバックスに次第に喝采が集まりだす。

 観客たちもようやく理解し始めた。
 ただの無名なダークホースではなく、イカロスの翼を焼くことのできる強さを持つ挑戦者なのだと。

 遠距離戦では不利と判断した敵アタッカー陣が、矛先をウェハーから薄いスカイブルー色のバックス機へ変えた。

『ウェハーさん!』
『あいよ、チーザ』

 エクリプスの両翼であるチーザとウェハーが、ポジション最速のMCミドルチェイサーのフルブーストで突風を巻き起こし、クロワの援護へ向かう。

『フッ。第三フェーズですよ。ソルティさん』
『おう、任された!』

 ソルティの援護を受け、クロワは粘りを見せる。
 一切、モービルギア同士を遮るものが存在しないこの競技フィールドで、唯一の遮蔽物・・・を上手く活用している。

 焼き鳥とは良く言ったものだ。クロワとソルティの射撃に誘導され、獰猛な鳥たちはクロワに対し一列となっていて、数を活かせずにいる。

 ミサイルやグレネードで打開を試みても、発射した瞬間にクロワから撃ち落とされ、残る手段の格闘やビームでは眼前の友軍が邪魔なのだろう。


《アンチウェポンの爆誕だーーー!


 騒ぐ観客たちは、薄いスカイブルーの機体をどう呼ぶべきか当惑したみたいだが、即席の異名アンチウェポンがコールされると、歓声は押し寄せる波となり会場全体から聞こえだした。

『カカカ! ついにクロワも異名デビューか! すげーの付けてもらったな!』

 純粋な射撃の腕だけならばセブンスカイズは疎か、大戦時の精鋭よりも上だと思う。どんな体勢、状況であっても針の穴を通す正確無比の射撃。ルーラーと違い、実戦向きの能力。

 もし、数年後に戦場でクロワと相対したのなら全力で逃げる。勝ち目が無い。
 その異名はクロワに相応しいと自然に思えた。

「頼もしいな」
『ナック、合わせろ!』

 新進気鋭たちが踏みとどまっているのだ。ベテランの意地も見せたい。
 ソルティの動きをトレースするべく、操縦桿グリップにも力が籠る。

 ルーラーとの高速チェイスが激化し、直線的に追走するソルティの後を追い、蔓のように纏わりついてルーラーの逃げる方向を矯正していく。

『ウェハーさん!』

 状況は目まぐるしく変わり、ウェハーと敵チェイサーが相打ち。どちらも姿勢制御を失い、オーバーヒート気味な様子からも回復は困難だろう。

『総員! キャリブレ!』

 チーザ指揮でキャリブレーションが始まる。遠距離射撃やグレネードを活用し、落下するモービルギアを得点サークルへといざなう。
 敵もウェハーに対しキャリブレーションを展開し、豪雨のような猛攻をウェハーは受けていた。

 互いのチームが飛翔体を弾き、稲妻の軌道を描いた2機のモービルギアはそれぞれの得点サークルへ墜落。金属がひしゃげた嫌な音と落雷じみた爆音を轟かせた。
 ゴール合戦に大興奮のコールが響く。


《ゴルゴーール! イカロスは青! 対するエクリプスはなんと赤を獲得だー!


 双方のキャリブレーションの難易度が異なる位置で、相打ちに持っていったウェハーの隠れたファインプレー。
 呻き声すら通信が来ないので、気絶したのかも知れない。

『そろそろその股ひらけ!』
「下品だぞ、ソルティ」

 固く閉ざされた扉をこじ開ける一撃。
 尾を引く煙を靡かせたソルティの鉄拳がルーラーへと届き、撃鉄を打ち付けた。
 立て直させはしない。

 グレネードランチャーを主体に、ルーラーが嫌がるポイントへと散らしていく。ソルティが追加でショルダータックルを叩き込み、離れ際に蹴りもお見舞い済み。
 ルーラーを救援するべく、敵アタッカー陣からのビーム射撃がソルティへと殺到した。

「ここだソルティ」
『言われなくてもな!』

 ソルティが、肩の内側ショルダーパーツに隠していたリフレクターシールドを展開させる。
 リフレクターシールドは熱上昇が高いため連続利用できず、常にオーバーヒートへ注意を払う必要があり、タイミングこそが命。

 反射したビームが直撃し、敵アタッカー陣の足が一瞬止まる。
 着弾光を隠れ蓑に、ルーラーへと肉薄して告げる。

「閉廷時間だ」

 フルブーストからの右拳は紫の番人ルーラーへジャストミート。
 ここまでソルティと激しいチェイスを繰り広げ、オーバーヒート寸前のルーラーに立て直す余裕はない筈だ。
 すかさずチーザの指示が飛ぶ。

『キャリブレです!』

 ソルティ、チーザ、クロワの連携を紡ぐ。
 しかし、赤が狙えない位置取りと周囲のフォローで失点を抑えたのは、イカロス側の技術と言えよう。
 墜落と同時に実況が鳴る。


《ゴーール! 青です! 試合時間も残り少なくなってきました!


 ゴールコールも束の間、死蝶が執拗にハーベストを狙い始めた。
 ここからイカロスが逆転を狙うにはキーパーを落とすしかない。

『ハーちゃん!』
『大丈夫です! 僕に任せて下さい!』

 火花散る至近距離での高速バトル。最強キーパーの死蝶と互角──いや、上回る格闘の駆け引きをみせるハーベスト。
 会場からはどよめきが起こる。


《一体誰が予想したでしょうかー? 無名キーパーが死蝶と渡り合っています! ジャイアントキリングは起こってしまうのかー?


 キーパーの激突を皮切りに、敵も一斉反撃に転じてくる。
 邪魔はさせない。新時代の翼が今大きく羽ばたかんとしているのだ。
 チーザが敵に即応する。

『各員! 対アタッカーシフト!』

 敵アタッカー陣を残りのメンバーで封殺に向かう。
 その流れを断ち切る金属音。
 ハーベストがムーンサルトキックを叩き込まれ、姿勢制御を乱す。

 ここぞとばかりにグレネードをばら撒く死蝶。
 だが、手から離れた刹那、クロワが撃ち抜いていく。

『お返ししますね!』

 回転で被弾ダメージをいなしたハーベストの後ろ回し蹴りに、ついに死蝶がグラついた。
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 エクリプスのFAフロントアタッカーの3機で縦ラインを展開。
 最上段をソルティ、中央をキャメルが担当。

「さぁ、死蝶モンドどちらへ逃げる?」

 縦の逃げ場を防ぎ、左右どちらかを強要する不自由な二択ダブルバインドを、フィールドに対し7:3の比率で仕掛けた。
 自信家で強気な死蝶は、予想通りに狭い方を選ぶ。
 こちらもキャメルを軸として再び包囲網を展開していく。

『けっ! 天邪鬼野郎が!』

 ミスの帳消しを狙うソルティが果敢に攻めるも、死蝶にはアクロバティックな動きで躱され、続くキャメルの突進もあと一歩のところで逃す。
 反撃に転じた死蝶は、エクリプスの弱点だと言わんばかりにキャメルを狙う。金のモービルギアが、ピンクホワイトの誘蛾灯と化したキャメル機を削り続ける。

『あたいは大丈夫! 任せて!』

 ノイズ混じりの音声だが、不安や強がりは感じられないクリアな声。
 キャメルが一皮剥けようとして、被弾しつつも持ちこたえていた。

 キャメルの奮戦に応えるのは、心配ではなく確かな成果。
 ソルティと二人でルーラーを落としにいく。

『いくぞ、ナック! ルーラー狩りだ!』

 ルーラーは視界誘導を巧みに操り、攻め気を反らしてきて中々決めきれない。
 魅せ弾だと頭では理解しても、目に見える爆発を完全に無視することは難しい。
 チーザからの強めの警告。

『イカロスのラインです!』

 こちらが手をこまねいていたら、切り返しとして代名詞のイカロスの横薙ぎが展開される。
 しかしルーラーが劣勢なので、守勢に回らせるための苦し紛れ感は否めない。

「続行だ」
『おうよ! 法の支配はいらねーからな!』

 守り切れると仲間を信じ、紫の番人ルーラーへ法改定の申請を続ける。
 言葉にせずとも背中で、態度で、頼むぞと後輩たちに告げる。

『ウチ、間に合わない! ウェハーさん、誘いルアー!』
『あいよ!』

 イカロスの5機編成で行われる圧巻の横ライン。
 上下の二者択一を押し付けてくる。

 セオリー通りなら上に逃げるのが定石。
 高度を保っている方が多少制御を失っても立て直す時間が稼げる。
 但し、制御を乱すと落下矯正の連携攻撃キャリブレーションを決められ、大きな失点に繋がるリスクもある。

 それに相手はイカロス。
 この横薙ぎを用いて多くのチームを沈めており、安易な選択は悪手となりうる。

『ハーちゃん! 上!』

 チーザが方針を定めた。即座にウェハーが囮になって下へ飛び、クロワとハーベストはセオリー通り上へ。

『やった! 釣れた!』

 敵はキーパーではなく、ダークブラウンのMCミドルチェイサーへと群がっていく。
 一見、上手く誘いルアーをできたかに見えた。

『逃げて! ウェハーさん!』

 ラインを仕掛けた5機でウェハーを猛追するイカロス。
 確実な各個撃破を狙っていたのだろう。

『ぐぬ!』

 集中砲火を浴びたウェハーは、さながら空中での一人ピンボール状態に陥り、最少失点の貢献ブロックダウンに切り替えを迫られるほどのダメージを負う。
 そこへ、今日はやけに耳障りな実況が届く。


《これは決まるかー?


 しかし、声援を全て塗り替えるクロワの神業が行われ、キャメルとウェハー、両方の窮地を救った。

『クロワ、助かった!』
『俺も持ち直した!』

 果たして観客の中に、凄さの全容を理解できた者はどれだけいるのか。
 イカロス側も動揺を隠せないのか多少の混乱が見られ、それに乗じてチーザとハーベストが死蝶へと突撃。

『隙ありです!!』

 キャメルとも連携を強め、攻勢に回る。
 クロワは射撃で両方を制圧しつつ、ハーベストのカバーにも入っている。

「これがお前たちの特訓の成果か?」

 相手のフルアタックを全て撃ち墜とすクロワ。
 ソルティが自慢げに公言していた通り、目に見えるその全てを・・・・・・・・・・

『新生クロワの記念すべきデビューは、イカロスを焼き鳥にする今日だぜ!』

 比喩か意気込みだと思っていたが、無数のホーミングミサイルまで全弾撃ち墜とす絶技を見て、本気だったことが分かった。

 鮮やかな弾幕を操るバックスに次第に喝采が集まりだす。

 観客たちもようやく理解し始めた。
 ただの無名なダークホースではなく、イカロスの翼を焼くことのできる強さを持つ挑戦者なのだと。

 遠距離戦では不利と判断した敵アタッカー陣が、矛先をウェハーから薄いスカイブルー色のバックス機へ変えた。

『ウェハーさん!』
『あいよ、チーザ』

 エクリプスの両翼であるチーザとウェハーが、ポジション最速のMCミドルチェイサーのフルブーストで突風を巻き起こし、クロワの援護へ向かう。

『フッ。第三フェーズですよ。ソルティさん』
『おう、任された!』

 ソルティの援護を受け、クロワは粘りを見せる。
 一切、モービルギア同士を遮るものが存在しないこの競技フィールドで、唯一の遮蔽物・・・を上手く活用している。

 焼き鳥とは良く言ったものだ。クロワとソルティの射撃に誘導され、獰猛な鳥たちはクロワに対し一列となっていて、数を活かせずにいる。

 ミサイルやグレネードで打開を試みても、発射した瞬間にクロワから撃ち落とされ、残る手段の格闘やビームでは眼前の友軍が邪魔なのだろう。


《アンチウェポンの爆誕だーーー!


 騒ぐ観客たちは、薄いスカイブルーの機体をどう呼ぶべきか当惑したみたいだが、即席の異名アンチウェポンがコールされると、歓声は押し寄せる波となり会場全体から聞こえだした。

『カカカ! ついにクロワも異名デビューか! すげーの付けてもらったな!』

 純粋な射撃の腕だけならばセブンスカイズは疎か、大戦時の精鋭よりも上だと思う。どんな体勢、状況であっても針の穴を通す正確無比の射撃。ルーラーと違い、実戦向きの能力。

 もし、数年後に戦場でクロワと相対したのなら全力で逃げる。勝ち目が無い。
 その異名はクロワに相応しいと自然に思えた。

「頼もしいな」
『ナック、合わせろ!』

 新進気鋭たちが踏みとどまっているのだ。ベテランの意地も見せたい。
 ソルティの動きをトレースするべく、操縦桿グリップにも力が籠る。

 ルーラーとの高速チェイスが激化し、直線的に追走するソルティの後を追い、蔓のように纏わりついてルーラーの逃げる方向を矯正していく。

『ウェハーさん!』

 状況は目まぐるしく変わり、ウェハーと敵チェイサーが相打ち。どちらも姿勢制御を失い、オーバーヒート気味な様子からも回復は困難だろう。

『総員! キャリブレ!』

 チーザ指揮でキャリブレーションが始まる。遠距離射撃やグレネードを活用し、落下するモービルギアを得点サークルへといざなう。
 敵もウェハーに対しキャリブレーションを展開し、豪雨のような猛攻をウェハーは受けていた。

 互いのチームが飛翔体を弾き、稲妻の軌道を描いた2機のモービルギアはそれぞれの得点サークルへ墜落。金属がひしゃげた嫌な音と落雷じみた爆音を轟かせた。
 ゴール合戦に大興奮のコールが響く。


《ゴルゴーール! イカロスは青! 対するエクリプスはなんと赤を獲得だー!


 双方のキャリブレーションの難易度が異なる位置で、相打ちに持っていったウェハーの隠れたファインプレー。
 呻き声すら通信が来ないので、気絶したのかも知れない。

『そろそろその股ひらけ!』
「下品だぞ、ソルティ」

 固く閉ざされた扉をこじ開ける一撃。
 尾を引く煙を靡かせたソルティの鉄拳がルーラーへと届き、撃鉄を打ち付けた。
 立て直させはしない。

 グレネードランチャーを主体に、ルーラーが嫌がるポイントへと散らしていく。ソルティが追加でショルダータックルを叩き込み、離れ際に蹴りもお見舞い済み。
 ルーラーを救援するべく、敵アタッカー陣からのビーム射撃がソルティへと殺到した。

「ここだソルティ」
『言われなくてもな!』

 ソルティが、肩の内側ショルダーパーツに隠していたリフレクターシールドを展開させる。
 リフレクターシールドは熱上昇が高いため連続利用できず、常にオーバーヒートへ注意を払う必要があり、タイミングこそが命。

 反射したビームが直撃し、敵アタッカー陣の足が一瞬止まる。
 着弾光を隠れ蓑に、ルーラーへと肉薄して告げる。

「閉廷時間だ」

 フルブーストからの右拳は紫の番人ルーラーへジャストミート。
 ここまでソルティと激しいチェイスを繰り広げ、オーバーヒート寸前のルーラーに立て直す余裕はない筈だ。
 すかさずチーザの指示が飛ぶ。

『キャリブレです!』

 ソルティ、チーザ、クロワの連携を紡ぐ。
 しかし、赤が狙えない位置取りと周囲のフォローで失点を抑えたのは、イカロス側の技術と言えよう。
 墜落と同時に実況が鳴る。


《ゴーール! 青です! 試合時間も残り少なくなってきました!


 ゴールコールも束の間、死蝶が執拗にハーベストを狙い始めた。
 ここからイカロスが逆転を狙うにはキーパーを落とすしかない。

『ハーちゃん!』
『大丈夫です! 僕に任せて下さい!』

 火花散る至近距離での高速バトル。最強キーパーの死蝶と互角──いや、上回る格闘の駆け引きをみせるハーベスト。
 会場からはどよめきが起こる。


《一体誰が予想したでしょうかー? 無名キーパーが死蝶と渡り合っています! ジャイアントキリングは起こってしまうのかー?


 キーパーの激突を皮切りに、敵も一斉反撃に転じてくる。
 邪魔はさせない。新時代の翼が今大きく羽ばたかんとしているのだ。
 チーザが敵に即応する。

『各員! 対アタッカーシフト!』

 敵アタッカー陣を残りのメンバーで封殺に向かう。
 その流れを断ち切る金属音。
 ハーベストがムーンサルトキックを叩き込まれ、姿勢制御を乱す。

 ここぞとばかりにグレネードをばら撒く死蝶。
 だが、手から離れた刹那、クロワが撃ち抜いていく。

『お返ししますね!』

 回転で被弾ダメージをいなしたハーベストの後ろ回し蹴りに、ついに死蝶がグラついた。
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