ホーム競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜第十七話 約束
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第十七話 約束

 昼と夜の長さが近づく頃。
 涼しさを肌で感じることも増え、モニタールームは古参のクーラーが頑張らずとも適温となっている。日が落ちたのもあり、一息つける温かさを求めてしまう。
 後輩たちが珈琲を配ってくれた。

「どうぞ、ナックさん」
「あぁ......ハーベスト、助かる」

 香ばしい珈琲を堪能し、体の芯から温まった後に口を開いた。

「では、明日のプロミネンス戦のブリーフィングを始める」

 チーム《プロミネンス》は赤髪で大柄なアカトがリーダーを務めるトップリーグ常連チーム。
 印象的な赤髪と同じく、リーダー機も赤を基調としている。

「見通しが良く、赤い機体は目立ちますね」
「視線を集める狙いもあるのだろう」

 クロワの意見に頷き、補足を加えた。
 障害物が存在しない競技フィールドにおいて、真紅の機体は特に目立つ。
 半径69mに制限された空というスケートリンクで、モービルギアたちは止まることなく高速で動く。

 目を惹くアカトの機体には多くの敵が群がり、そして無数に沈んでいく様子がモニターへと映し出されている。
 チーザがモニターを指差す。

「機体もですけど、フォーメーションも変わってて目を奪われます。ウチは好きです!」

 好き嫌いではなく、有効かどうかで判断して欲しいところだ。
 プロミネンスはMCミドルチェイサー無しの編成。

 映像では断続的な高速チェイスが繰り広げられていく。
 広範囲をカバーできるチェイサーが居なくとも強さを誇示するプロミネンス。

 局所的な数的不利を招いても、技術を活かした強引な力押しで切り抜けていた。
 ハーベストは、ライムグリーン色の髪も一緒に傾けて疑問を口にする。

「どうしてチェイサーを外しているのでしょう? 数的不利の局面ばかりですよね?」
「あ? 極論言えば、いらねぇからだろーが!」

 ソルティの言葉は足りておらず、そう単純な話でもない。

「クロワ、プロミネンスの戦術方針は分かるか?」

 事前に勉強し、いかにも語りたいといった雰囲気を醸していたクロワへと水を向けた。

「えぇ、お答えしましょう。プロミネンスは、一人一人が高い技術を持ち、タイマン勝負に絶対の自信を持つチーム。守勢時はアタッカーシフトを基本とし、例え2機に囲まれても簡単にはやられない強さがあります」

 クロワが端末を操作していく。
 説明シーンも厳選してあり、クロワの弁を裏付ける映像ばかりが流れる。

 思い切りの良さが光る急襲や、カバーが見込めないときの即座の切替も巧い。
 数的不利の機体は必死に耐えて、パワー押しの格闘で確実に敵を仕留めていた。

「機動力よりもパワーとタフネスを優先していて、点を奪われずに点を奪えば良いという戦術を体現したチームです」

 満足げに眼鏡の位置を調整するクロワ。
 分析は合格点に届くので、頷いて補足をしておく。

「機動性が最も重要なこの競技において、それを真っ向から否定したスタイルな訳だ。要するにセオリーが通用しない」
「アカトは天邪鬼だからな!」

 発言したソルティへ視線が集まる。皆もブーメランの風切り音を聞いたようだ。
 咳ばらいをして、プロミネンス攻略へと話を戻していった。


 ───────────────────


「......以上が明日の作戦だ。何か質問は?」

 映像を止め、テーブルに両手をつき反応を待つ。
 流れていた大音量の戦闘音が途絶え、モニタールームには暫しの静寂が訪れた。
 手の内を知り尽くすライバルだからこその分析と、予想される苦戦にチーム全員が引き締まる。

 対策を伝えはしたが、各自の自力としてはまだプロミネンスに及ばず、上手く連携してウィークポイントを消していくしか勝機はない。
 ハーベストが眉尻を下げ、視線を落としていた。

「模擬戦で一度も勝ったことが無いのに......勝てるでしょうか?」

 戦績だけ見れば勝ち目はないが、勝負は時の運 やってみなければ分からない。
 ソルティはパイプ椅子に預けていた背を起こし、喝を飛ばす。

「あ? 何言ってんだハーベスト? 必ず勝つんだよ!」

 確かにそのくらいの気合いがいる。
 ハーベストと目が合ったので真剣な表情を向けておく。

「勝つと信じて戦うだけだ。ハーベスト、お前の仲間は信用ならないのか?」

 多少意地の悪い問いかけ。
 若いハーベストに対し、大人げないのは分かっている。
 だが、荒療治は必要だろう。

 ベテラン勢の圧に萎縮するハーベスト。
 まだあどけなさの残るオレンジの瞳は揺れていた。
 見かねたチーザとクロワが声をかける。

「大丈夫だよハーちゃん! 何事も為せば成るよ! 気合いがあればハーちゃんは誰にだって勝てるよ!」
「フッ。そうですね。気合いがあっても勝てないソルティさんみたいな例もありますが、大抵のことは気持ちの持ちようでどうにでもなります」

 タジタジだったハーベストは、アドバイスを受けて少し相好を崩す。
 逆にディスられたソルティは、むすっとした表情で腕を組んでいる。
 不機嫌なのを隠す気が無いのか、右足は貧乏ゆすりをしていた。

「僕、このチームでなら負ける気はしません! 勝ちます!」
「おっし、良く言ったハーベスト! それと余計なことを言ったクロワは後で俺と話そうな!」

 ハーベストの前向きな言葉に、間髪入れず被せたソルティの怒気を孕んだセリフ。
 当のクロワはピキリと固まり、視線を泳がせていた。
 モニタールーム内の緊張が緩んだところへ、キャメルの柔らかな声があがる。

「あたいが出せる情報は全部出した。今のプロミネンスは以前とは違うけど......」

 昔、プロミネンスの一員だったキャメルは、積極的にデータを提供してくれた。
 最近の模擬戦のデータもありはすれど過信は出来ない。

「データはあくまでデータだ。トーナメントは一発勝負。見知った仲の俺たちに対しては奇策を用いてくる可能性もある。明日は目の前の状況の変化を見逃さず頭を使い続けるより他に無い。......異論は?」
「ありません!」

 元気良く答えたチーザに面食らいつつ「結構」とだけ返しておいた。
 課題点の共有も済んだので、明日に備え、早めに解散することとなる。

 高まる士気に満足し、皆を見渡す。
 すると、眉間に皺を寄せたソルティがこちらを見たまま声を沈める。

「ナック。この後、少し付き合え。いいな?」

 確認を取ってはいるが、拒否権はなさそうだ。
 他のメンバーは先にあがらせて、今夜はソルティに付き合ってやることにした。


 ───────────────────


 ブリーフィングを終え、ソルティと二人で月夜の演習フィールドへと足を運ぶ。
 秋風がソルティの金の髪を撫でていて、風が運ぶ芝生の香りも青さが減り、古びた畳を思い起こさせる。
 到着するなりソルティは大地に寝転がった。

「あー、いよいよ明日か。アカトにこれまでの借金を返す日がやってきたな!」

 金髪に芝生がつくのも気にしていない様子。
 軽く嘆息し、倣ってやや色褪せた芝生の絨毯へと寝そべる。
 見上げた夜空は、いつもより星が遠く感じた。

「ずっと負け越しているのに、一回勝てばチャラか?」
「あぁん? いちいちこまけぇ~な! オセロだって最後に返した方が勝つだろ?」

 ここで反論しても無駄だろう。
 トーナメント戦が勝てば官軍なのは確か。

 諭すのを諦めて星を眺めると、後頭部に刺さる芝生が程よく心地良い。
 戦時中は野営も多く、暇を持て余しては空を見上げていたことを思い出す。

「こうして星を見ているとあの頃を思い出すな」

 ソルティが軽く笑い、茶化してくる。

「なんだよナック、今日はやけにセンチだな。あん頃のアカトでも思い出してたのか?」

 軍属時代は3人で戦場を駆け巡り、思えば対立も絶えなかった。
 互いに若かったし、今は随分と遠くへ来たと思う。

 そんなことを考えながら星に手を伸ばす。
 ふいにソルティが、心を見透かしたような言葉を投げてくる。

「変わんねーよ」

 その声に思わず横を見やる。

「俺もアカトもさ、ナックの力に惚れ込んだんだよ。命を救われたあの日から......」

 自分語りしそうなソルティを鼻で笑って止める。

「センチなのはどっちだ? それに命を救われたのは俺も同じだ。第三恒星系でのことを覚えているか?」
「ハハハ! あんときはマジで死ぬかと思ったぜ」

 隊からはぐれてソルティと二人孤立した時、飢え死に寸前になってその辺の雑草を食べたことを思い出す。今でもあの口に広がる苦さは忘れられない。

 救援物資を持って応援に来たアカトが、あの時は神に見えた程だ。
 一頻り笑った後、無意識に漏れた弱音。

「......多くの同胞を失った」

 風が一抹の冷たさを届けてくる。
 暫しの静寂の後、ソルティはこちらのブーツを軽く蹴ってきた。

「だから、変わんねぇつってんだろ! 俺もアカトも。ナックに生きて欲しくて色々とやってんだからさ」

 痛いほど理解している。
 それだけに二者択一の状況がもどかしく、表情も僅かに歪む。

「......アカトが俺のために手を尽くしてくれていることは知っている。優勝しなければ危ないことも」

 強化兵士同士、語らずとも分かることがある。
 アカトも結果を示せなければ廃棄を待つ身なのだろう。

 それでも手を伸ばして同じステージへと引っ張りあげてくれる。
 複雑な心境のまま夜空を眺めた。体を起こしたソルティがその視界へ割り込む。

「何度も言わせんな! どうせアカトも同じことを考えてんだろーぜ!」

 発言の意図が分からず、「何をだ?」と問う。

「最高の名勝負をやる! 誰もが注目せざるを得ない程のな! ほんでもって政府からアンタッチャブルな存在になる。当然、二人ともだ!」

 ソルティの方を見やり、「そう上手くいくか?」と視線で訴えたが、確信の色を携えたソルティの瞳は雄弁に語る。

「あ? みなまで言わせんのか?」
「いや、すまん......愚問だった」

 上手くいかせるだけだ。はっきりと思い出す。
 軍属時代から常にそうやって道を切り拓いてきたことを。

「勝つぞ、ナック」
「あぁ」

 二人で拳を付き合わせ、月明かりの下で約束を交わした。
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競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜作者:元毛玉(もとけだま)
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 昼と夜の長さが近づく頃。
 涼しさを肌で感じることも増え、モニタールームは古参のクーラーが頑張らずとも適温となっている。日が落ちたのもあり、一息つける温かさを求めてしまう。
 後輩たちが珈琲を配ってくれた。

「どうぞ、ナックさん」
「あぁ......ハーベスト、助かる」

 香ばしい珈琲を堪能し、体の芯から温まった後に口を開いた。

「では、明日のプロミネンス戦のブリーフィングを始める」

 チーム《プロミネンス》は赤髪で大柄なアカトがリーダーを務めるトップリーグ常連チーム。
 印象的な赤髪と同じく、リーダー機も赤を基調としている。

「見通しが良く、赤い機体は目立ちますね」
「視線を集める狙いもあるのだろう」

 クロワの意見に頷き、補足を加えた。
 障害物が存在しない競技フィールドにおいて、真紅の機体は特に目立つ。
 半径69mに制限された空というスケートリンクで、モービルギアたちは止まることなく高速で動く。

 目を惹くアカトの機体には多くの敵が群がり、そして無数に沈んでいく様子がモニターへと映し出されている。
 チーザがモニターを指差す。

「機体もですけど、フォーメーションも変わってて目を奪われます。ウチは好きです!」

 好き嫌いではなく、有効かどうかで判断して欲しいところだ。
 プロミネンスはMCミドルチェイサー無しの編成。

 映像では断続的な高速チェイスが繰り広げられていく。
 広範囲をカバーできるチェイサーが居なくとも強さを誇示するプロミネンス。

 局所的な数的不利を招いても、技術を活かした強引な力押しで切り抜けていた。
 ハーベストは、ライムグリーン色の髪も一緒に傾けて疑問を口にする。

「どうしてチェイサーを外しているのでしょう? 数的不利の局面ばかりですよね?」
「あ? 極論言えば、いらねぇからだろーが!」

 ソルティの言葉は足りておらず、そう単純な話でもない。

「クロワ、プロミネンスの戦術方針は分かるか?」

 事前に勉強し、いかにも語りたいといった雰囲気を醸していたクロワへと水を向けた。

「えぇ、お答えしましょう。プロミネンスは、一人一人が高い技術を持ち、タイマン勝負に絶対の自信を持つチーム。守勢時はアタッカーシフトを基本とし、例え2機に囲まれても簡単にはやられない強さがあります」

 クロワが端末を操作していく。
 説明シーンも厳選してあり、クロワの弁を裏付ける映像ばかりが流れる。

 思い切りの良さが光る急襲や、カバーが見込めないときの即座の切替も巧い。
 数的不利の機体は必死に耐えて、パワー押しの格闘で確実に敵を仕留めていた。

「機動力よりもパワーとタフネスを優先していて、点を奪われずに点を奪えば良いという戦術を体現したチームです」

 満足げに眼鏡の位置を調整するクロワ。
 分析は合格点に届くので、頷いて補足をしておく。

「機動性が最も重要なこの競技において、それを真っ向から否定したスタイルな訳だ。要するにセオリーが通用しない」
「アカトは天邪鬼だからな!」

 発言したソルティへ視線が集まる。皆もブーメランの風切り音を聞いたようだ。
 咳ばらいをして、プロミネンス攻略へと話を戻していった。


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「......以上が明日の作戦だ。何か質問は?」

 映像を止め、テーブルに両手をつき反応を待つ。
 流れていた大音量の戦闘音が途絶え、モニタールームには暫しの静寂が訪れた。
 手の内を知り尽くすライバルだからこその分析と、予想される苦戦にチーム全員が引き締まる。

 対策を伝えはしたが、各自の自力としてはまだプロミネンスに及ばず、上手く連携してウィークポイントを消していくしか勝機はない。
 ハーベストが眉尻を下げ、視線を落としていた。

「模擬戦で一度も勝ったことが無いのに......勝てるでしょうか?」

 戦績だけ見れば勝ち目はないが、勝負は時の運 やってみなければ分からない。
 ソルティはパイプ椅子に預けていた背を起こし、喝を飛ばす。

「あ? 何言ってんだハーベスト? 必ず勝つんだよ!」

 確かにそのくらいの気合いがいる。
 ハーベストと目が合ったので真剣な表情を向けておく。

「勝つと信じて戦うだけだ。ハーベスト、お前の仲間は信用ならないのか?」

 多少意地の悪い問いかけ。
 若いハーベストに対し、大人げないのは分かっている。
 だが、荒療治は必要だろう。

 ベテラン勢の圧に萎縮するハーベスト。
 まだあどけなさの残るオレンジの瞳は揺れていた。
 見かねたチーザとクロワが声をかける。

「大丈夫だよハーちゃん! 何事も為せば成るよ! 気合いがあればハーちゃんは誰にだって勝てるよ!」
「フッ。そうですね。気合いがあっても勝てないソルティさんみたいな例もありますが、大抵のことは気持ちの持ちようでどうにでもなります」

 タジタジだったハーベストは、アドバイスを受けて少し相好を崩す。
 逆にディスられたソルティは、むすっとした表情で腕を組んでいる。
 不機嫌なのを隠す気が無いのか、右足は貧乏ゆすりをしていた。

「僕、このチームでなら負ける気はしません! 勝ちます!」
「おっし、良く言ったハーベスト! それと余計なことを言ったクロワは後で俺と話そうな!」

 ハーベストの前向きな言葉に、間髪入れず被せたソルティの怒気を孕んだセリフ。
 当のクロワはピキリと固まり、視線を泳がせていた。
 モニタールーム内の緊張が緩んだところへ、キャメルの柔らかな声があがる。

「あたいが出せる情報は全部出した。今のプロミネンスは以前とは違うけど......」

 昔、プロミネンスの一員だったキャメルは、積極的にデータを提供してくれた。
 最近の模擬戦のデータもありはすれど過信は出来ない。

「データはあくまでデータだ。トーナメントは一発勝負。見知った仲の俺たちに対しては奇策を用いてくる可能性もある。明日は目の前の状況の変化を見逃さず頭を使い続けるより他に無い。......異論は?」
「ありません!」

 元気良く答えたチーザに面食らいつつ「結構」とだけ返しておいた。
 課題点の共有も済んだので、明日に備え、早めに解散することとなる。

 高まる士気に満足し、皆を見渡す。
 すると、眉間に皺を寄せたソルティがこちらを見たまま声を沈める。

「ナック。この後、少し付き合え。いいな?」

 確認を取ってはいるが、拒否権はなさそうだ。
 他のメンバーは先にあがらせて、今夜はソルティに付き合ってやることにした。


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 ブリーフィングを終え、ソルティと二人で月夜の演習フィールドへと足を運ぶ。
 秋風がソルティの金の髪を撫でていて、風が運ぶ芝生の香りも青さが減り、古びた畳を思い起こさせる。
 到着するなりソルティは大地に寝転がった。

「あー、いよいよ明日か。アカトにこれまでの借金を返す日がやってきたな!」

 金髪に芝生がつくのも気にしていない様子。
 軽く嘆息し、倣ってやや色褪せた芝生の絨毯へと寝そべる。
 見上げた夜空は、いつもより星が遠く感じた。

「ずっと負け越しているのに、一回勝てばチャラか?」
「あぁん? いちいちこまけぇ~な! オセロだって最後に返した方が勝つだろ?」

 ここで反論しても無駄だろう。
 トーナメント戦が勝てば官軍なのは確か。

 諭すのを諦めて星を眺めると、後頭部に刺さる芝生が程よく心地良い。
 戦時中は野営も多く、暇を持て余しては空を見上げていたことを思い出す。

「こうして星を見ているとあの頃を思い出すな」

 ソルティが軽く笑い、茶化してくる。

「なんだよナック、今日はやけにセンチだな。あん頃のアカトでも思い出してたのか?」

 軍属時代は3人で戦場を駆け巡り、思えば対立も絶えなかった。
 互いに若かったし、今は随分と遠くへ来たと思う。

 そんなことを考えながら星に手を伸ばす。
 ふいにソルティが、心を見透かしたような言葉を投げてくる。

「変わんねーよ」

 その声に思わず横を見やる。

「俺もアカトもさ、ナックの力に惚れ込んだんだよ。命を救われたあの日から......」

 自分語りしそうなソルティを鼻で笑って止める。

「センチなのはどっちだ? それに命を救われたのは俺も同じだ。第三恒星系でのことを覚えているか?」
「ハハハ! あんときはマジで死ぬかと思ったぜ」

 隊からはぐれてソルティと二人孤立した時、飢え死に寸前になってその辺の雑草を食べたことを思い出す。今でもあの口に広がる苦さは忘れられない。

 救援物資を持って応援に来たアカトが、あの時は神に見えた程だ。
 一頻り笑った後、無意識に漏れた弱音。

「......多くの同胞を失った」

 風が一抹の冷たさを届けてくる。
 暫しの静寂の後、ソルティはこちらのブーツを軽く蹴ってきた。

「だから、変わんねぇつってんだろ! 俺もアカトも。ナックに生きて欲しくて色々とやってんだからさ」

 痛いほど理解している。
 それだけに二者択一の状況がもどかしく、表情も僅かに歪む。

「......アカトが俺のために手を尽くしてくれていることは知っている。優勝しなければ危ないことも」

 強化兵士同士、語らずとも分かることがある。
 アカトも結果を示せなければ廃棄を待つ身なのだろう。

 それでも手を伸ばして同じステージへと引っ張りあげてくれる。
 複雑な心境のまま夜空を眺めた。体を起こしたソルティがその視界へ割り込む。

「何度も言わせんな! どうせアカトも同じことを考えてんだろーぜ!」

 発言の意図が分からず、「何をだ?」と問う。

「最高の名勝負をやる! 誰もが注目せざるを得ない程のな! ほんでもって政府からアンタッチャブルな存在になる。当然、二人ともだ!」

 ソルティの方を見やり、「そう上手くいくか?」と視線で訴えたが、確信の色を携えたソルティの瞳は雄弁に語る。

「あ? みなまで言わせんのか?」
「いや、すまん......愚問だった」

 上手くいかせるだけだ。はっきりと思い出す。
 軍属時代から常にそうやって道を切り拓いてきたことを。

「勝つぞ、ナック」
「あぁ」

 二人で拳を付き合わせ、月明かりの下で約束を交わした。
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