ホーム競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜第二十話 互いの背中
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第二十話 互いの背中

「間に合わん」

 クロワはスラスターを吹かして抵抗を試みたようだが、敵の鮮やかな落下矯正の連携攻撃キャリブレーションが返す刀で綺麗に決まり、最強の遠距離射手が落とされてしまう。

 流れるようなキャリブレーションはまさに手本と言える完成度だった。
 フォローする隙など微塵もなく地表に叩き落とされたクロワの機体が、フィールドを駆け抜ける衝撃波と轟音を放つ。


《ゴーーール! 赤です! 最高得点4点だぁ! 逆転! プロミネンス怒濤の逆転劇!


 得点の応酬に、観客も沸き立つ様子が視界に入れなくても分かる。
 残っている機数も点数も逆転されてしまう。
 アカトの執念を感じずにはいられないが、風前の灯火とも言える。

 エクリプス側はオーバーヒートにまだ余裕があり、対するプロミネンスは劣勢を挽回すべく各機全力で飛ばし続けているので、キーパー含め余力が無いと思う。

『手負いの連中ばかりだが、それだけに油汚れよりもしつこそうだぜ! これ簡単に落ちやしねーぞ?』
「同感だ」

 戦場でもそうだった。
 敗色濃厚になってからの敵の方が恐ろしかったし、不気味だ。
 今もブースターを休ませながらの飛行だが、襲ってくるのなら死を賭して味方に勝利を繋ぐという気迫が、誘いルアーからも読み取れる。

 とは言え、点数を逆転されたのでこのまま時間切れで負けるのは避けたい。
 それなりにはリスクを取る必要が出てきた。

「ハーベスト」

 意を決し、SKセーフキーパーのハーベストへ声をかける。

『なんでしょう、ナックさん?』

 問い返されて一瞬躊躇する。だが、ここまで共に飛んだのだ。
 信じてやらなくてどうすると自分自身に喝を入れ、口を開いた。

「俺とソルティで仕掛ける。暫く一人で捌けるか?」

 エクリプス側は愛機ランツを除けば、ソルティとハーベストしか残っていない。
 キーパーへの守りを0枚にするなど、愚の行為。
 それでもハーベストならやりきれる、と信頼を託す。
 周回運動の半周もしないうちに返答があった。

『ハッハッハ! 愚問ですね! 僕は死蝶に勝ったキーパーですよ?』

 とても明るい声で気負いなどまるで感じない。
 その強さにソルティと二人で大笑いをした。

『おいおい! プロミネンス相手に言い切るなんてすげーな! ハーベスト! よーーし、勝ったら俺が特大の肉を奢ってやる』
『え? 要りませんけど?』
「安心しろ、流し込めるように業務用サイズのプロテインもつけてやる」

 ハーベストから元気な抗議の声が続くも、聞き流して目標を定めた。

「プロミネンスを狩る。ついてこいソルティ」
『あぁ、ハーベストにあそこまで言われちゃ、ベテランってのもみせてやんなきゃだしな!』

 相対するのはアカト率いる手練れの集団。
 アカトは幾つもの戦場を共に乗り越えた戦友でもある。
 だが、今は全てを忘れて気ままに踊ろう。昔のように。

 背中にはソルティがいる。いつも変わらなかった。

 どれだけ振り払おうとしても、鬱陶しいほどに引っ付いてきて一人にはしてくれなかった。
 今はそれがどれだけ有難いか分かるし、全力で飛んだとしても必ず後ろにいる安心感がある。

『ナック!』
「ソルティ」

 ──「背中は任せた」と声がハモった。

 銀色シルバー濃紺色ダークネイビーのモービルギアがブースターで織りなす飛行機雲は、複雑にねじりあい絡み合って溶けてゆく。一切の軌道予測をさせない不規則な動きと阿吽の呼吸は、まるで1つのモービルギアのよう。

『た~まには、このソルティ様が援護に回ってやるよ。タイムセールサービスじゃあボケー!』

 ソルティがミサイルポッドとグレネードを用い、敵キーパーとアカト機を足止め、ブースターも楽には冷却させない。

 ソルティは無造作な攻撃を撒くかに見えて、その実、多段構造での攻撃構成。
 魅せ弾、誘い弾、カス当て弾の比率を細かく分け、狙いを絞らせず気付けば雁字搦めにしていく十八番を繰り出す。

各個撃破シングル
『よっし、確変大当たりばりに玉じゃんじゃん出してくるわ!』

 プロミネンスの栗色の機体にターゲットを定め、残りの介入をさせないようにソルティが抑え込む。
 ダークネイビー色のソルティ機は、FAフロントアタッカーだから射撃性能が高くなく、一対多だと不利であるのに不満も言わず突撃していった。

 後方の心配は一切せず、目の前の標的だけに全神経を注ぐ。
 標的とした敵は全力飛行すれば即オーバーヒートなのだろう。

 敢えて背を晒しての逃げは、こちらを降り切れないからこその選択。
 逃走にあわせ、大盤振る舞いで色んな攻撃を撒き散らすので追うのも大変だ。

 ビームランチャーは射線予測され最小の動きで躱されるし、無理に殴りに行けば振り向きざまのカウンターを狙っているのは明らか。
 料理方法を迷っていたら、ソルティから急かされる。

『落とせたか?』
「向こうも本気だ。手持ちだと厳しい」

 こんなに早く催促がくるというのは、ソルティの方も余裕が無さそうだ。

『相手がなりふりかまわねぇオークションで落とすのは厳しいな! ミサイルとグレネードは?』
「ゼロだ」

 ここまでの戦いでミサイルはオーバーヒート狙い、グレネードは濃霧の除去で使い果たしている。温存していたら流れも違ったと思われるし、無いものねだりをしても仕方が無い。手持ちでどうにかする。

『あーー......手ぇ貸そうか?』
「要らん。闇金より高くつきそうだ」

 明らかに貸す気の無い提案を即座に断る。
 フィールドを半周する間に手早く情報交換し、互いの役割を全うするべく動く。

「終わらせる」

 敵を追走する際にビームランチャーで攻撃を仕掛け、ビームを視界に捉えると、一瞬だけ意識の外になる位置取りを続けた。
 一瞬というところが鍵で、追われているプレッシャーと追わせている安堵感の両方が、逃げる敵の精神を蝕む。

 次も繰り返しだと相手が油断した頃合いに、位置取りを無視してフルブーストで急進。
 それでも歴戦の猛者。
 接近を予測し、オーバーヒート覚悟の応戦姿勢を見せてきた。

「甘い」

 それも予想の範囲。ここまで温存しておいた右肩のパワースラスターを解放し、捻じれ回転をして浴びせ蹴りのような恰好で攻撃を叩き込んだ。

「同点。次」

 撃破は出来たが、キャリブレーションを決める余裕などない。
 旗色が悪いソルティとハーベストへのフォローが急務。

「赤は後回し、緑から沈める」
『キッツイ方を押し付けやがって!』
「いや、こっちに回せ。射撃サポートに専念しろ」

 アカトの赤い機体はかなり損耗が激しく、機動力も大きく下げている。
 だが、後が無い分どのような奇策に出てくるかが読めない。

 ソルティも複数相手に奮闘していたため、オーバーヒートギリギリだろう。
 ここで無理して肝心なところで動けないよりは一列後ろに下がらせた方が良い。

『おらよ! お届けものだ! サインよろしく!』
「手早く済ませる」

 敵アタッカー2機を相手取り、疲弊しているアカトを狙う素振りを見せていく。
 すると、もう1機がすかさずカバーに入ってきた。

「練度が高くて助かる」
『フィッシュオーーン!』

 カバーに入った方へ急加速で向かい連続殴打を叩き込む。
 ソルティの射撃で意識を反らしていたのも功を奏し、うまく嵌った。

『やっぱ、キャリブレまではサービスしてくれねーか!』
「感心してないで早めに終わらすぞ」

 アカトが決死の覚悟で反撃を繰り出し、墜ちる友軍への追撃をさせまいと気迫のカバーリングをしていた。
 モービルギアも、アカト自身も恐らく満身創痍。

 それでも戦う牙は折れていないと行動で示される。
 決戦を前に、地表のチーザやクロワから激励が届き出す。

『先輩、負けないで下さい!』
『私は何も心配していません。勝利者インタビューの内容でも考えておきます』

 続くキャメルの通信音声からは秘めた覚悟が滲む。

『あたいは、ナックさんとアカトの両方がいる未来がいい。必ず優勝して二人を......』

 キャメルの思いを受け、再びアカトと対峙するべく空を翔ける。
 背中にはピタリとソルティがついてきていた。

『キャメルの我儘に応えてやらねーとな! なぁ、ナック!』
「......キャメルのは願いだ。キングのお前とは違う」
『あ?』

 通信中にアカト機が突進を開始。
 スピード的にはフルブーストに近く、片道切符の旅の様相に見える。

 その熱い思いを正面から受け止め......などはしない。

 これは勝負だ。あっさり躱してやり過ごす。
 誰もがアカトの自滅を疑わなかった。

『嘘だろ? まだできんのかよ!』
「凄まじいな」

 とっくに限界を迎えているであろう肉体で、全速力のターンを見せたアカト。
 黒煙を撒き散らしながらこちらへ戻ってくる。

『わりぃナック。いなして終わりなんて俺にゃできねー! ちゃんとおもてなししねーとな!』
「別に構わん。俺も気持ちは同じだ」

 自分から翼を止めることはしない。
 朽ちるにしても果てるにしても、空でありたい。
 そうした意志がアカトからは感じられた。

 目頭が熱い。
 こみ上げてくる気持ちを抑えきれず、グリップへ力を込める。

『しっかり受け取れやー!』

 愛機ランツのラリアットとソルティのローリングソバットを同時にアカトへ見舞った。
 墜落音に重なる実況。


《ゴーール! ついにプロミネンスのリーダーも陥落! エクリプスは青を獲得しました!


 ソルティが見事な射撃で軌道補正し、ゴールを獲得。
 高い技術に、改めてクロワの師匠なのだと気付かされる。
 その瞬間、轟音が鳴り響いた。


《ゴーーール! 何と黄色です! キーパーを黄色に叩き込みましたーー! パーフェクトで決着ー!


 何が起こったのかと地表を見やれば、プロミネンスのキーパーが黄色サークルへと墜ちている。
 ハーベスト機の両拳からは、敵モービルギアの熱を思わせる水蒸気が立ち上っていた。
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競技セブンスカイズ〜負ければ廃棄、勝ち続けて優勝を目指す〜作者:元毛玉(もとけだま)
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「間に合わん」

 クロワはスラスターを吹かして抵抗を試みたようだが、敵の鮮やかな落下矯正の連携攻撃キャリブレーションが返す刀で綺麗に決まり、最強の遠距離射手が落とされてしまう。

 流れるようなキャリブレーションはまさに手本と言える完成度だった。
 フォローする隙など微塵もなく地表に叩き落とされたクロワの機体が、フィールドを駆け抜ける衝撃波と轟音を放つ。


《ゴーーール! 赤です! 最高得点4点だぁ! 逆転! プロミネンス怒濤の逆転劇!


 得点の応酬に、観客も沸き立つ様子が視界に入れなくても分かる。
 残っている機数も点数も逆転されてしまう。
 アカトの執念を感じずにはいられないが、風前の灯火とも言える。

 エクリプス側はオーバーヒートにまだ余裕があり、対するプロミネンスは劣勢を挽回すべく各機全力で飛ばし続けているので、キーパー含め余力が無いと思う。

『手負いの連中ばかりだが、それだけに油汚れよりもしつこそうだぜ! これ簡単に落ちやしねーぞ?』
「同感だ」

 戦場でもそうだった。
 敗色濃厚になってからの敵の方が恐ろしかったし、不気味だ。
 今もブースターを休ませながらの飛行だが、襲ってくるのなら死を賭して味方に勝利を繋ぐという気迫が、誘いルアーからも読み取れる。

 とは言え、点数を逆転されたのでこのまま時間切れで負けるのは避けたい。
 それなりにはリスクを取る必要が出てきた。

「ハーベスト」

 意を決し、SKセーフキーパーのハーベストへ声をかける。

『なんでしょう、ナックさん?』

 問い返されて一瞬躊躇する。だが、ここまで共に飛んだのだ。
 信じてやらなくてどうすると自分自身に喝を入れ、口を開いた。

「俺とソルティで仕掛ける。暫く一人で捌けるか?」

 エクリプス側は愛機ランツを除けば、ソルティとハーベストしか残っていない。
 キーパーへの守りを0枚にするなど、愚の行為。
 それでもハーベストならやりきれる、と信頼を託す。
 周回運動の半周もしないうちに返答があった。

『ハッハッハ! 愚問ですね! 僕は死蝶に勝ったキーパーですよ?』

 とても明るい声で気負いなどまるで感じない。
 その強さにソルティと二人で大笑いをした。

『おいおい! プロミネンス相手に言い切るなんてすげーな! ハーベスト! よーーし、勝ったら俺が特大の肉を奢ってやる』
『え? 要りませんけど?』
「安心しろ、流し込めるように業務用サイズのプロテインもつけてやる」

 ハーベストから元気な抗議の声が続くも、聞き流して目標を定めた。

「プロミネンスを狩る。ついてこいソルティ」
『あぁ、ハーベストにあそこまで言われちゃ、ベテランってのもみせてやんなきゃだしな!』

 相対するのはアカト率いる手練れの集団。
 アカトは幾つもの戦場を共に乗り越えた戦友でもある。
 だが、今は全てを忘れて気ままに踊ろう。昔のように。

 背中にはソルティがいる。いつも変わらなかった。

 どれだけ振り払おうとしても、鬱陶しいほどに引っ付いてきて一人にはしてくれなかった。
 今はそれがどれだけ有難いか分かるし、全力で飛んだとしても必ず後ろにいる安心感がある。

『ナック!』
「ソルティ」

 ──「背中は任せた」と声がハモった。

 銀色シルバー濃紺色ダークネイビーのモービルギアがブースターで織りなす飛行機雲は、複雑にねじりあい絡み合って溶けてゆく。一切の軌道予測をさせない不規則な動きと阿吽の呼吸は、まるで1つのモービルギアのよう。

『た~まには、このソルティ様が援護に回ってやるよ。タイムセールサービスじゃあボケー!』

 ソルティがミサイルポッドとグレネードを用い、敵キーパーとアカト機を足止め、ブースターも楽には冷却させない。

 ソルティは無造作な攻撃を撒くかに見えて、その実、多段構造での攻撃構成。
 魅せ弾、誘い弾、カス当て弾の比率を細かく分け、狙いを絞らせず気付けば雁字搦めにしていく十八番を繰り出す。

各個撃破シングル
『よっし、確変大当たりばりに玉じゃんじゃん出してくるわ!』

 プロミネンスの栗色の機体にターゲットを定め、残りの介入をさせないようにソルティが抑え込む。
 ダークネイビー色のソルティ機は、FAフロントアタッカーだから射撃性能が高くなく、一対多だと不利であるのに不満も言わず突撃していった。

 後方の心配は一切せず、目の前の標的だけに全神経を注ぐ。
 標的とした敵は全力飛行すれば即オーバーヒートなのだろう。

 敢えて背を晒しての逃げは、こちらを降り切れないからこその選択。
 逃走にあわせ、大盤振る舞いで色んな攻撃を撒き散らすので追うのも大変だ。

 ビームランチャーは射線予測され最小の動きで躱されるし、無理に殴りに行けば振り向きざまのカウンターを狙っているのは明らか。
 料理方法を迷っていたら、ソルティから急かされる。

『落とせたか?』
「向こうも本気だ。手持ちだと厳しい」

 こんなに早く催促がくるというのは、ソルティの方も余裕が無さそうだ。

『相手がなりふりかまわねぇオークションで落とすのは厳しいな! ミサイルとグレネードは?』
「ゼロだ」

 ここまでの戦いでミサイルはオーバーヒート狙い、グレネードは濃霧の除去で使い果たしている。温存していたら流れも違ったと思われるし、無いものねだりをしても仕方が無い。手持ちでどうにかする。

『あーー......手ぇ貸そうか?』
「要らん。闇金より高くつきそうだ」

 明らかに貸す気の無い提案を即座に断る。
 フィールドを半周する間に手早く情報交換し、互いの役割を全うするべく動く。

「終わらせる」

 敵を追走する際にビームランチャーで攻撃を仕掛け、ビームを視界に捉えると、一瞬だけ意識の外になる位置取りを続けた。
 一瞬というところが鍵で、追われているプレッシャーと追わせている安堵感の両方が、逃げる敵の精神を蝕む。

 次も繰り返しだと相手が油断した頃合いに、位置取りを無視してフルブーストで急進。
 それでも歴戦の猛者。
 接近を予測し、オーバーヒート覚悟の応戦姿勢を見せてきた。

「甘い」

 それも予想の範囲。ここまで温存しておいた右肩のパワースラスターを解放し、捻じれ回転をして浴びせ蹴りのような恰好で攻撃を叩き込んだ。

「同点。次」

 撃破は出来たが、キャリブレーションを決める余裕などない。
 旗色が悪いソルティとハーベストへのフォローが急務。

「赤は後回し、緑から沈める」
『キッツイ方を押し付けやがって!』
「いや、こっちに回せ。射撃サポートに専念しろ」

 アカトの赤い機体はかなり損耗が激しく、機動力も大きく下げている。
 だが、後が無い分どのような奇策に出てくるかが読めない。

 ソルティも複数相手に奮闘していたため、オーバーヒートギリギリだろう。
 ここで無理して肝心なところで動けないよりは一列後ろに下がらせた方が良い。

『おらよ! お届けものだ! サインよろしく!』
「手早く済ませる」

 敵アタッカー2機を相手取り、疲弊しているアカトを狙う素振りを見せていく。
 すると、もう1機がすかさずカバーに入ってきた。

「練度が高くて助かる」
『フィッシュオーーン!』

 カバーに入った方へ急加速で向かい連続殴打を叩き込む。
 ソルティの射撃で意識を反らしていたのも功を奏し、うまく嵌った。

『やっぱ、キャリブレまではサービスしてくれねーか!』
「感心してないで早めに終わらすぞ」

 アカトが決死の覚悟で反撃を繰り出し、墜ちる友軍への追撃をさせまいと気迫のカバーリングをしていた。
 モービルギアも、アカト自身も恐らく満身創痍。

 それでも戦う牙は折れていないと行動で示される。
 決戦を前に、地表のチーザやクロワから激励が届き出す。

『先輩、負けないで下さい!』
『私は何も心配していません。勝利者インタビューの内容でも考えておきます』

 続くキャメルの通信音声からは秘めた覚悟が滲む。

『あたいは、ナックさんとアカトの両方がいる未来がいい。必ず優勝して二人を......』

 キャメルの思いを受け、再びアカトと対峙するべく空を翔ける。
 背中にはピタリとソルティがついてきていた。

『キャメルの我儘に応えてやらねーとな! なぁ、ナック!』
「......キャメルのは願いだ。キングのお前とは違う」
『あ?』

 通信中にアカト機が突進を開始。
 スピード的にはフルブーストに近く、片道切符の旅の様相に見える。

 その熱い思いを正面から受け止め......などはしない。

 これは勝負だ。あっさり躱してやり過ごす。
 誰もがアカトの自滅を疑わなかった。

『嘘だろ? まだできんのかよ!』
「凄まじいな」

 とっくに限界を迎えているであろう肉体で、全速力のターンを見せたアカト。
 黒煙を撒き散らしながらこちらへ戻ってくる。

『わりぃナック。いなして終わりなんて俺にゃできねー! ちゃんとおもてなししねーとな!』
「別に構わん。俺も気持ちは同じだ」

 自分から翼を止めることはしない。
 朽ちるにしても果てるにしても、空でありたい。
 そうした意志がアカトからは感じられた。

 目頭が熱い。
 こみ上げてくる気持ちを抑えきれず、グリップへ力を込める。

『しっかり受け取れやー!』

 愛機ランツのラリアットとソルティのローリングソバットを同時にアカトへ見舞った。
 墜落音に重なる実況。


《ゴーール! ついにプロミネンスのリーダーも陥落! エクリプスは青を獲得しました!


 ソルティが見事な射撃で軌道補正し、ゴールを獲得。
 高い技術に、改めてクロワの師匠なのだと気付かされる。
 その瞬間、轟音が鳴り響いた。


《ゴーーール! 何と黄色です! キーパーを黄色に叩き込みましたーー! パーフェクトで決着ー!


 何が起こったのかと地表を見やれば、プロミネンスのキーパーが黄色サークルへと墜ちている。
 ハーベスト機の両拳からは、敵モービルギアの熱を思わせる水蒸気が立ち上っていた。
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