
出逢い2
それにしても珍しい瞳の色だ。ロードライトガーネットのような真っ赤な瞳はキラキラと輝いている。それに、額に貼られた赤で雫形の石も――。「とりあえず、花束を横の席にでも置いて? ご飯食べよう?」「あっ、はい!」 見惚れている場合ではない、このままでは料理が冷めてしまう。抱えたままの花束をクラウとは反対の席に置き、ちょこんと座り直した。
「これ、どうぞ」「ありがとうございます」 フレアの手によって、料理が次々と取り分けられる。目の前は美味しそうな料理が乗った小皿でいっぱいだ。 口に溜まる涎を飲み込み、その時を今か今かと待ち侘びる。「よし!」 アレクが声を掛けると、三人ともナイフとフォークを手に取ったので、私も手を合わせてみる。「いただきます」 呟くと、三人に不思議そうな顔をされてしまった。フレアに至っては小首を傾げてもいる。「えっと......」「ソレ、何かの呪文か?」「えっ?」 成程、この世界には『いただきます』の文化がないらしい。ブンブンと首を振ってみせる。「ご飯の前の挨拶ですよ」「そんなのがあるんだな」 アレクは納得したように頷いた。 この人もそう。シトリントパーズのような濃い黄色の瞳をしている。額には、やはりあの雫形の石がある。 クラウの方を見てみれば、前髪で隠れていて額は確認出来ないものの、その瞳はロイヤルブルーサファイアのように深い青だ。 三人とも、この世のものとは思えない程に美しい色の瞳――。「どうかした?」「い、いえ......。ごめんなさい......」 まじまじと見詰め過ぎてしまっただろうか。クラウはほんのりと頬を赤く染め、左手を頭に乗せる。「あの、おでこの石って......アクセサリー、ですよね?」 実は、私にも心当たりがある。この世界に来て初めて顔を洗った時、額に違和感があったのだ。鏡で確認してみると、そこには音楽室で見た、あの緑の雫形の石が貼り付いていたのだ。何度も擦ったり、爪で引き剥がしにかかるも、未だにその石は取れそうにない。 アレクは口をへの字に曲げ、小首を傾げる。「オマエ、ホントにアリアから何も聞いてねーんだな」「は、はい......」 そういう風に言われてしまうと、凄く申し訳無くなってくる。俯いていると、アレクはそっと口を開く。「この石は魔導師の証だ。魔導師ってーのは何か分かるか?」「魔法が使えるって言う事くらい......。この世界は魔法を使えるのが普通なんですか?」「いや、魔法を使えるのは魔導師と各国の王、それと使い魔だけだ」 だから、アリアは『貴重な魔法』という言い方をしたのだろう。そんな大層なものに、私はなってしまったらしい。「とりあえず食え。オレが作った料理残したら後が怖いぞ?」「はっ、はい......!」 慌ててナイフとフォークを手に取り、一番近くにあった照り焼きチキンを頬張ってみる。緊張し過ぎて、味は良く分からない。「あの、アレクさん」「『さん』は止めろ。あと、敬語も禁止な」「は......う、うん」 小さく頷いてみせると、フレアとクラウに小さく笑われてしまった。「で、なんだ?」「えっと......何だっけ......」 先程聞きたいと思ったことも忘れてしまった。これにはアレクも笑い声を上げる。「オマエ、やっぱ......いや、なんでもねぇ」 これでは、私が変わった人、みたいに思われている気がする。緊張すれば、誰でもこうなる筈だ。口をへの字に曲げ、ポテトサラダを一口頬張った。「ミユ、美味しい?」 味が分からないとも言えないので、クラウの問いにちょこんと頷く。「良かった。俺の好物なんだ、ポテトサラダ」 整った顔立ちで王子様のような見た目なのに、質素ものが好きだなんて意外だ。もう一口ポテトサラダを頂く。「ミユの好きな物はある?」「うん。ケーキ」 私は大の甘党だ。食後のデザートは至福以外の何物でもない。ただ、今日ばかりは美味しく食べられるかどうかは分からない。「アレクとフレアの好きな食べ物は?」「オレは肉だな」「あたしは辛い物」 二人とも即答する。 通りでアレクの目の前には肉料理が、フレアの前には赤いスープがある訳だ。 少しだけ、ほんの少しだけ、三人のことが分かった気がする。 今度はサーロインステーキを口の中に放り込んだ。「フレア、こっちのも辛いぞ。食ってみろ」「うん。......美味しい」 こちらの二人も正しく美男美女だ。とは言っても、アレクとクラウは格好良さのタイプが違う。アレクは切れ長の目で逞しい印象を受ける。 フレアは可愛いと言うよりも、正真正銘の美人系で、スタイルも良い。 アレクとフレアが並んでいると、互いが互いを引き立て合っていて、溜め息が漏れそうだ。 私が異質なもののように思えてくる。少し自信をなくしながら、もう一口ステーキを噛み締める。「ミユ、どうかした?」「ううん、何でもない」 三人にはバレてしまわないように、こっそり口から息を吐き出した。「そーだ! ここら辺でゲームでもしねーか?」「何するの?」「そーだな......。他己紹介ゲームなんかどーだ?」「良いじゃん。ミユに俺たちのことを知ってもらえるし」 三人は頷き合い、にっこりと笑う。「ミユは見ててくれ。んじゃ最初はクラウがフレアの他己紹介だ」「分かった」 クラウは頷き、フレアの方をじっと見る。 出逢い2
それにしても珍しい瞳の色だ。ロードライトガーネットのような真っ赤な瞳はキラキラと輝いている。それに、額に貼られた赤で雫形の石も――。「とりあえず、花束を横の席にでも置いて? ご飯食べよう?」「あっ、はい!」 見惚れている場合ではない、このままでは料理が冷めてしまう。抱えたままの花束をクラウとは反対の席に置き、ちょこんと座り直した。
「これ、どうぞ」「ありがとうございます」 フレアの手によって、料理が次々と取り分けられる。目の前は美味しそうな料理が乗った小皿でいっぱいだ。 口に溜まる涎を飲み込み、その時を今か今かと待ち侘びる。「よし!」 アレクが声を掛けると、三人ともナイフとフォークを手に取ったので、私も手を合わせてみる。「いただきます」 呟くと、三人に不思議そうな顔をされてしまった。フレアに至っては小首を傾げてもいる。「えっと......」「ソレ、何かの呪文か?」「えっ?」 成程、この世界には『いただきます』の文化がないらしい。ブンブンと首を振ってみせる。「ご飯の前の挨拶ですよ」「そんなのがあるんだな」 アレクは納得したように頷いた。 この人もそう。シトリントパーズのような濃い黄色の瞳をしている。額には、やはりあの雫形の石がある。 クラウの方を見てみれば、前髪で隠れていて額は確認出来ないものの、その瞳はロイヤルブルーサファイアのように深い青だ。 三人とも、この世のものとは思えない程に美しい色の瞳――。「どうかした?」「い、いえ......。ごめんなさい......」 まじまじと見詰め過ぎてしまっただろうか。クラウはほんのりと頬を赤く染め、左手を頭に乗せる。「あの、おでこの石って......アクセサリー、ですよね?」 実は、私にも心当たりがある。この世界に来て初めて顔を洗った時、額に違和感があったのだ。鏡で確認してみると、そこには音楽室で見た、あの緑の雫形の石が貼り付いていたのだ。何度も擦ったり、爪で引き剥がしにかかるも、未だにその石は取れそうにない。 アレクは口をへの字に曲げ、小首を傾げる。「オマエ、ホントにアリアから何も聞いてねーんだな」「は、はい......」 そういう風に言われてしまうと、凄く申し訳無くなってくる。俯いていると、アレクはそっと口を開く。「この石は魔導師の証だ。魔導師ってーのは何か分かるか?」「魔法が使えるって言う事くらい......。この世界は魔法を使えるのが普通なんですか?」「いや、魔法を使えるのは魔導師と各国の王、それと使い魔だけだ」 だから、アリアは『貴重な魔法』という言い方をしたのだろう。そんな大層なものに、私はなってしまったらしい。「とりあえず食え。オレが作った料理残したら後が怖いぞ?」「はっ、はい......!」 慌ててナイフとフォークを手に取り、一番近くにあった照り焼きチキンを頬張ってみる。緊張し過ぎて、味は良く分からない。「あの、アレクさん」「『さん』は止めろ。あと、敬語も禁止な」「は......う、うん」 小さく頷いてみせると、フレアとクラウに小さく笑われてしまった。「で、なんだ?」「えっと......何だっけ......」 先程聞きたいと思ったことも忘れてしまった。これにはアレクも笑い声を上げる。「オマエ、やっぱ......いや、なんでもねぇ」 これでは、私が変わった人、みたいに思われている気がする。緊張すれば、誰でもこうなる筈だ。口をへの字に曲げ、ポテトサラダを一口頬張った。「ミユ、美味しい?」 味が分からないとも言えないので、クラウの問いにちょこんと頷く。「良かった。俺の好物なんだ、ポテトサラダ」 整った顔立ちで王子様のような見た目なのに、質素ものが好きだなんて意外だ。もう一口ポテトサラダを頂く。「ミユの好きな物はある?」「うん。ケーキ」 私は大の甘党だ。食後のデザートは至福以外の何物でもない。ただ、今日ばかりは美味しく食べられるかどうかは分からない。「アレクとフレアの好きな食べ物は?」「オレは肉だな」「あたしは辛い物」 二人とも即答する。 通りでアレクの目の前には肉料理が、フレアの前には赤いスープがある訳だ。 少しだけ、ほんの少しだけ、三人のことが分かった気がする。 今度はサーロインステーキを口の中に放り込んだ。「フレア、こっちのも辛いぞ。食ってみろ」「うん。......美味しい」 こちらの二人も正しく美男美女だ。とは言っても、アレクとクラウは格好良さのタイプが違う。アレクは切れ長の目で逞しい印象を受ける。 フレアは可愛いと言うよりも、正真正銘の美人系で、スタイルも良い。 アレクとフレアが並んでいると、互いが互いを引き立て合っていて、溜め息が漏れそうだ。 私が異質なもののように思えてくる。少し自信をなくしながら、もう一口ステーキを噛み締める。「ミユ、どうかした?」「ううん、何でもない」 三人にはバレてしまわないように、こっそり口から息を吐き出した。「そーだ! ここら辺でゲームでもしねーか?」「何するの?」「そーだな......。他己紹介ゲームなんかどーだ?」「良いじゃん。ミユに俺たちのことを知ってもらえるし」 三人は頷き合い、にっこりと笑う。「ミユは見ててくれ。んじゃ最初はクラウがフレアの他己紹介だ」「分かった」 クラウは頷き、フレアの方をじっと見る。 次の話出逢い3›