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使い魔1

 夕食の知らせを届けてくれたアレクを意味ありげに見詰めた。

「ミユ、どーした?」

「アレクは王様から何か聞かなかった?」

 小首を傾げてみせると、アレクは苦々しげに顔をしかめる。

「上手くはぐらかされた。『話せることは何もないよ。それより、魔導師としての生活を聞かせてよ』だとよ。腹が立って、途中で玉座の間から出てきちまった」

「そうだったんだ......」

 私以上に何かを聞き出せていたら良かったのに。残念な思いが心を占めていく。

「でも、ミユは成果があったんだよね」

 そこでクラウが救いの手を差し伸べてくれた。

「うん。詳しくは使い魔も呼んで話したいの」

「なんで使い魔なんだ?」

「俺たちだけじゃ、いくら考えても分からない問題なんだ。何万年も生きてる使い魔なら、何か知ってるかもしれないじゃん?」

 私も一緒にうんうんと頷いてみせる。アレクは唸り声を上げはしたものの、賛同してくれたようだ。

「内容が分かんねぇから、下手なことは言えねーけど......。オマエらがそー言うならそーしてみようぜ」

 アレクは口角を上げ、親指を立てる。

「でもその前に夕飯な。落ち着いてから使い魔を呼ぶからな」

「うん」

 クラウと顔を見合わせ、微笑み合う。何かが進む。そんな予感がした。

 * * *

 満腹になった腹部を手で擦る。今日の夕食はミートドリアとオニオンスープ、ローストビーフだった。久しぶりに食べ物をしっかりと味わった気がする。どれもが美味しかった。
 四人でいつもの席に座り、談笑を始める。

「やっと平和って感じだなー」

 アレクは遠い目をしながら、にこりと微笑んだ。その隣で、フレアは軽く両手を合わせる。

「あっ、そうだ。ミユって暇つぶしの仕方、笛しかないでしょ」

「うん。本も読んでみたいけど、文字が分かんないし......」

「じゃあ、一緒に刺繍してみようよ。明日からでも良いから」

「刺繍?」

 刺繍といえば、小学生の頃に授業で教わったくらいだ。やり方なんて、とっくに忘れてしまっている。

「私、出来るかなぁ」

「やってみれば、案外うまくいくよ」

「う~ん」

 自信はないけれど、せっかくのフレアからの提案だ。暇つぶしになるなら、やるだけやってみよう。

「教えてください」

「そんなにかしこまらないで」

 頭を下げると、フレアに苦笑いされてしまった。

「あたしも久しぶりだから、腕が鳴るなぁ。明日までに道具を準備しておくね」

「うん、ありがとう」

「刺繍かー。オマエら、女子力たけぇな」

 アレクは特段興味もなさそうに、小さく言葉にした。

「上手く出来たら、俺にも見せてね」

「うん!」

 見せるだけではない。いつかプレゼントしてあげたい。いつの間にか、そんな希望も沸いてきた。
 アレクは話を一旦区切るように、勢い良く両手のひらを合わせる。その音を合図に、空気が少しだけ重くなった。

「んじゃ、そろそろ使い魔を呼ぶぞ。ロイの所に行ってくるから、オマエらは待ってろ」

「分かった」

 いよいよ、真相に近付くことが出来る。希望と不安で高鳴る鼓動を気にし、アレクがワープするのを見届けた。

「ねぇ、使い魔に何を聞くの?」

「今は聞かない方が良いよ。混乱するだけだから」

 小首を傾げるフレアに、クラウは口をへの字に曲げた。気になるのに聞けない。聞く相手がいない。フレアはそんな状況なのだろう。不服そうに口を尖らせる。
 ロイと話をつけたであろうアレクは、意外とすぐに戻ってきた。再びいつもの席に腰かけると、腕を組んでにかっと笑う。

「使い魔全員連れてくるように頼んできた。すぐに来んだろ」

 そこへフレアが文句を言いたげにアレクを見詰めた。

「アレクは気にならないの? ミユとクラウが何を聞き出そうとしてるか」

「気になるけどよー、使い魔が来たら話してくれんだ。急ぐことはねぇよ」

 フレアは小さく「もう」とだけ呟くと、目を伏せて黙り込んでしまった。
 そうこうしている間に、サラ、カイル、アリア、ロイの順番で、立て続けにワープを果たす。何を言うでもなく、静かに私たちの横に腰を下ろした。アレクは全員の顔を見回し、静かに口を開く。

「ミユとクラウから、オマエらに聞きたいことがあるんだとよ」

「聞きたいこと、ですか?」

 カイルは小首を傾げ、アレクを見る。

「あぁ」

「話はちゃんと俺たちからするよ。ミユ、話せる?」

「うん」

 返事をしたものの、どこから聞いていけば良いのだろう。気を落ち着けて、整理してみよう。王族の『愚かな行為』については、使い魔に聞く必要はない。王が神に会えない事実を伝えても、ああそうですか、で終わらせられそうだ。残るは一つ――。

「私たちの名前の『デュ』の意味って何?」

 その私の発言だけで、使い魔たちの表情は凍りついた。アリアは眉をひそめ、カイルはあたふたし、ロイは腕を組み、サラは顔色が悪い。

「『デュ』の名の意味......? んなの、ただの称号だろ?」

「王様の話だと、そうでもないみたいなの」

 アレクと淡々と話している間でさえ、使い魔たちは伏し目がちだ。

「オズ陛下......余計なことを言ってくださいましたね」

 アリアは唇を噛み、視線を流す。

「じゃー、やっぱり使い魔はその意味知ってんのか?」

「私が話します。こうなった原因はエメラルド王にありますから」

 全員の視線がアリアに集中する。

「『デュ』の意味は、私たちからお伝えする訳にはいかないんです。神様のお許しが出ないことには」

「スティアの神様?」

「......はい」

 少しの間が、アリアに対して不信感を募らせる原因となる。更にアリアは不安そうな顔をこちらに向け、生唾を呑み込む。
 アレクも一連の行動に不信感を抱いたのだろう

「アリア。オマエ、ウソ吐いてるだろ」

「えっ......?」

 アレクはアリアの瞳をまっすぐに見る。眼力が思いの外強く、口元に当てられたアリアの手は小刻みに震えていた。

「あっ......アリアは嘘なんか吐いてません! 信じて下さい!」

「あのなぁ、カイル。それがウソ吐いてないヤツの言い方か? 明らかに声震えてるだろ」

「えっ......!」

 カイルは誰もいない左側を向く。その様子にクラウが頭を抱えた。

「申し訳ありません、私たちに少しだけ時間を下さい。話をまとめてきます」

「ウソを塗り固めるための時間稼ぎ、じゃないだろうな」

「......はい」

 アリアは他の三人の使い魔に目配せすると、使い魔たちは立ち上がり、部屋の奥の片隅で相談をし始めた。
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神々の奇想四重奏作者:七宮叶歌
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使い魔1

 夕食の知らせを届けてくれたアレクを意味ありげに見詰めた。

「ミユ、どーした?」

「アレクは王様から何か聞かなかった?」

 小首を傾げてみせると、アレクは苦々しげに顔をしかめる。

「上手くはぐらかされた。『話せることは何もないよ。それより、魔導師としての生活を聞かせてよ』だとよ。腹が立って、途中で玉座の間から出てきちまった」

「そうだったんだ......」

 私以上に何かを聞き出せていたら良かったのに。残念な思いが心を占めていく。

「でも、ミユは成果があったんだよね」

 そこでクラウが救いの手を差し伸べてくれた。

「うん。詳しくは使い魔も呼んで話したいの」

「なんで使い魔なんだ?」

「俺たちだけじゃ、いくら考えても分からない問題なんだ。何万年も生きてる使い魔なら、何か知ってるかもしれないじゃん?」

 私も一緒にうんうんと頷いてみせる。アレクは唸り声を上げはしたものの、賛同してくれたようだ。

「内容が分かんねぇから、下手なことは言えねーけど......。オマエらがそー言うならそーしてみようぜ」

 アレクは口角を上げ、親指を立てる。

「でもその前に夕飯な。落ち着いてから使い魔を呼ぶからな」

「うん」

 クラウと顔を見合わせ、微笑み合う。何かが進む。そんな予感がした。

 * * *

 満腹になった腹部を手で擦る。今日の夕食はミートドリアとオニオンスープ、ローストビーフだった。久しぶりに食べ物をしっかりと味わった気がする。どれもが美味しかった。
 四人でいつもの席に座り、談笑を始める。

「やっと平和って感じだなー」

 アレクは遠い目をしながら、にこりと微笑んだ。その隣で、フレアは軽く両手を合わせる。

「あっ、そうだ。ミユって暇つぶしの仕方、笛しかないでしょ」

「うん。本も読んでみたいけど、文字が分かんないし......」

「じゃあ、一緒に刺繍してみようよ。明日からでも良いから」

「刺繍?」

 刺繍といえば、小学生の頃に授業で教わったくらいだ。やり方なんて、とっくに忘れてしまっている。

「私、出来るかなぁ」

「やってみれば、案外うまくいくよ」

「う~ん」

 自信はないけれど、せっかくのフレアからの提案だ。暇つぶしになるなら、やるだけやってみよう。

「教えてください」

「そんなにかしこまらないで」

 頭を下げると、フレアに苦笑いされてしまった。

「あたしも久しぶりだから、腕が鳴るなぁ。明日までに道具を準備しておくね」

「うん、ありがとう」

「刺繍かー。オマエら、女子力たけぇな」

 アレクは特段興味もなさそうに、小さく言葉にした。

「上手く出来たら、俺にも見せてね」

「うん!」

 見せるだけではない。いつかプレゼントしてあげたい。いつの間にか、そんな希望も沸いてきた。
 アレクは話を一旦区切るように、勢い良く両手のひらを合わせる。その音を合図に、空気が少しだけ重くなった。

「んじゃ、そろそろ使い魔を呼ぶぞ。ロイの所に行ってくるから、オマエらは待ってろ」

「分かった」

 いよいよ、真相に近付くことが出来る。希望と不安で高鳴る鼓動を気にし、アレクがワープするのを見届けた。

「ねぇ、使い魔に何を聞くの?」

「今は聞かない方が良いよ。混乱するだけだから」

 小首を傾げるフレアに、クラウは口をへの字に曲げた。気になるのに聞けない。聞く相手がいない。フレアはそんな状況なのだろう。不服そうに口を尖らせる。
 ロイと話をつけたであろうアレクは、意外とすぐに戻ってきた。再びいつもの席に腰かけると、腕を組んでにかっと笑う。

「使い魔全員連れてくるように頼んできた。すぐに来んだろ」

 そこへフレアが文句を言いたげにアレクを見詰めた。

「アレクは気にならないの? ミユとクラウが何を聞き出そうとしてるか」

「気になるけどよー、使い魔が来たら話してくれんだ。急ぐことはねぇよ」

 フレアは小さく「もう」とだけ呟くと、目を伏せて黙り込んでしまった。
 そうこうしている間に、サラ、カイル、アリア、ロイの順番で、立て続けにワープを果たす。何を言うでもなく、静かに私たちの横に腰を下ろした。アレクは全員の顔を見回し、静かに口を開く。

「ミユとクラウから、オマエらに聞きたいことがあるんだとよ」

「聞きたいこと、ですか?」

 カイルは小首を傾げ、アレクを見る。

「あぁ」

「話はちゃんと俺たちからするよ。ミユ、話せる?」

「うん」

 返事をしたものの、どこから聞いていけば良いのだろう。気を落ち着けて、整理してみよう。王族の『愚かな行為』については、使い魔に聞く必要はない。王が神に会えない事実を伝えても、ああそうですか、で終わらせられそうだ。残るは一つ――。

「私たちの名前の『デュ』の意味って何?」

 その私の発言だけで、使い魔たちの表情は凍りついた。アリアは眉をひそめ、カイルはあたふたし、ロイは腕を組み、サラは顔色が悪い。

「『デュ』の名の意味......? んなの、ただの称号だろ?」

「王様の話だと、そうでもないみたいなの」

 アレクと淡々と話している間でさえ、使い魔たちは伏し目がちだ。

「オズ陛下......余計なことを言ってくださいましたね」

 アリアは唇を噛み、視線を流す。

「じゃー、やっぱり使い魔はその意味知ってんのか?」

「私が話します。こうなった原因はエメラルド王にありますから」

 全員の視線がアリアに集中する。

「『デュ』の意味は、私たちからお伝えする訳にはいかないんです。神様のお許しが出ないことには」

「スティアの神様?」

「......はい」

 少しの間が、アリアに対して不信感を募らせる原因となる。更にアリアは不安そうな顔をこちらに向け、生唾を呑み込む。
 アレクも一連の行動に不信感を抱いたのだろう

「アリア。オマエ、ウソ吐いてるだろ」

「えっ......?」

 アレクはアリアの瞳をまっすぐに見る。眼力が思いの外強く、口元に当てられたアリアの手は小刻みに震えていた。

「あっ......アリアは嘘なんか吐いてません! 信じて下さい!」

「あのなぁ、カイル。それがウソ吐いてないヤツの言い方か? 明らかに声震えてるだろ」

「えっ......!」

 カイルは誰もいない左側を向く。その様子にクラウが頭を抱えた。

「申し訳ありません、私たちに少しだけ時間を下さい。話をまとめてきます」

「ウソを塗り固めるための時間稼ぎ、じゃないだろうな」

「......はい」

 アリアは他の三人の使い魔に目配せすると、使い魔たちは立ち上がり、部屋の奥の片隅で相談をし始めた。
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