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特訓4

 もう一度、視界を閉ざす。代わりに、岩が氷柱を貫く場面をイメージした。

「そこ」

 呟き、魔法を放出する。瞼を開けてみると、岩は氷柱の一歩手前まで迫っていた。
 もう少しでいける。確信を持ち、続けて魔力を放った。氷の割れる音と共に、今まで氷柱があった所には岩の柱が立っていた。

「やった!」

「やったじゃん!」

 私よりもクラウの方が喜んでくれたようだ。弾けんばかりの笑顔と共に、ハイタッチを求められた。
 私もやれば出来る子だ。クラウの右手に自身の手を合わせる。

「じゃあ、もう一回ね」

「え~っ!?」

「これでへこたれるようなら影は倒せないし、バテるようなら体力が足りない」

「そんなぁ......」

 途端にクラウのことが鬼教師のように思えてくる。小さく吐いた溜め息さえ、クラウは見逃さない。

「溜め息吐かない。次、行くよ」

 有無を言わさず、先程交わした手は氷柱を生み出す。
 結局、正午になるまで氷柱との鬼ごっこは続いた。

 * * *
 
「もう駄目~......」

 アリアに連れられて会議室に戻ってきた時には、既に体力は限界を迎えていた。ワープした先で、そのままへたり込む。

「おい、ミユ。大丈夫か?」

「全然、大丈夫そうじゃないでしょ」

 疲れ切った私の代わりに、フレアが答えてくれた。クラウはやり過ぎたと言わんばかりに頭を掻く。

「おい、どーしてくれんだ。これじゃー、午後から使いもんにならねーじゃねぇか」

「ごめん、こんなにクタクタになるなんて思ってなくてさ」

 二人とも、私を物扱いしないで欲しい。思わず目を吊り上げると、クラウは私の機嫌を取りにかかる。

「ミユ、ごめんね」

 言いながら、私の頭を撫でる。
 そんなことをされては、許さない訳にもいかないではないか。小さく頷くと、横でフレアがふふっと笑った。

「午後は休息の時間だね」

「昼飯は食べれるか?」

「食べる。お腹空いた~......」

 体力を消耗したせいで、胃の中は空っぽだ。お腹が鳴ってしまいそうになる。
 腹部をさする私に、アリアは微笑んでみせる。

「今日のお昼はサーロインステーキですよ。皆さん腹ぺこかと思いまして」

「ステーキ!?」

 昼からステーキを食べられるなんて。思わぬご馳走に、口の中には涎が溜まっていく。

「お席へどうぞ」

 使い魔たちが次々と料理を運んでくるので、言われるがまま、私たちもいつもの席に着いた。ステーキとオニオンの香ばしい匂いが漂ってくる。

「いただきます」

 小さく呟くなり、ポテトサラダを横目にサーロインステーキとライスをがっついた。程良いミディアムレアで、ジューシーな肉汁が口の中に広がった。

「そんなに急がなくても、ステーキはどこにも行きませんよ?」

「だって~」

 美味しいし、空腹を満たせるしで最高なのだ。アリアに膨れると、七人全員に笑われてしまった。
 満腹になれば眠気も訪れるものだ。例に漏れず、今日の私もそうだった。

「ご馳走様でした~」

 眠気まなこで呟くと、ケーキが運ばれてきたのにも気づかずに部屋へ戻ってしまった。ケーキの存在に気づいたのは、西日が傾いてからのことだった。
 ベッドの上で目を覚ますと、うーんと伸びをする。

「良く寝たぁ」

 まるで緊張感がない。先日、影に襲われたばかりだというのに。
 影のことを考えると、気持ちがマイナスな方へと傾いてしまう。それに、現実を素直に直視は出来ない。
 今はアリアがいるから大丈夫だと、自分を落ち着けるしかなかった。
 体力は昼寝のお陰か少し回復したように思う。それでも、無暗に魔法は使わないでおこう。心に決めた時、アリアの声が聞こえた。

「ケーキ、お好きでしたよね?」
 
 横たわりながら、窓辺に佇むアリアの方へと目を向ける。

「うん。どうして?」

「お昼に召し上がらないで、眠ってしまったので」

「ケーキあったの?」

「はい」

 頷くアリアに、一気に心が沈む。
 嘘だ。ケーキは私の好物なのに。誰か教えてくれても良かったではないか。理不尽なことは分かっているけれど、若干の怒りを覚える。

「もうないよね」

「ありますよ」

 言われ、跳ね起きた。しかし、時計の針は五時を回っている。この時間にケーキを食べてしまっては、夕食が入らなくなるだろう。

「夜ご飯の後で食べたい」

「分かりました」

 アリアは口に手を当て、小さく笑った。

 * * *

 次の日も魔法の特訓は行われた。昨日と同じ場所に立ち、クラウと顔を見合わせる。

「今日は、いよいよ協力魔法だよ」

「うん」

 火照る顔を気にしながら、大きく頷く。

「説明するより、やってみよう」

 クラウがその場にしゃがむので、私もつられてしゃがみ込む。

「この先に岩を出してもらっても良い? 大きさは無理のない程度で」

「うん」

 昨日の三倍くらいの大きさで良いだろうか。多分、無理のない程度だ。
 地面に右手をつき、意識を集中させる。数メートル先に岩の柱が出来るのを見届けた直後だった。
 クラウが私の手に自身の手を重ねたのだ。一気に顔が火を噴いた。
 流水音と共に、岩が水によって砕かれる。その勢いは止まらず、前方に茶色の一本道が出来上がった。

「うん、こんな感じ」

 クラウは好感触を得たようで、何度か小さく頷く。
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神々の奇想四重奏作者:七宮叶歌
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特訓4

 もう一度、視界を閉ざす。代わりに、岩が氷柱を貫く場面をイメージした。

「そこ」

 呟き、魔法を放出する。瞼を開けてみると、岩は氷柱の一歩手前まで迫っていた。
 もう少しでいける。確信を持ち、続けて魔力を放った。氷の割れる音と共に、今まで氷柱があった所には岩の柱が立っていた。

「やった!」

「やったじゃん!」

 私よりもクラウの方が喜んでくれたようだ。弾けんばかりの笑顔と共に、ハイタッチを求められた。
 私もやれば出来る子だ。クラウの右手に自身の手を合わせる。

「じゃあ、もう一回ね」

「え~っ!?」

「これでへこたれるようなら影は倒せないし、バテるようなら体力が足りない」

「そんなぁ......」

 途端にクラウのことが鬼教師のように思えてくる。小さく吐いた溜め息さえ、クラウは見逃さない。

「溜め息吐かない。次、行くよ」

 有無を言わさず、先程交わした手は氷柱を生み出す。
 結局、正午になるまで氷柱との鬼ごっこは続いた。

 * * *
 
「もう駄目~......」

 アリアに連れられて会議室に戻ってきた時には、既に体力は限界を迎えていた。ワープした先で、そのままへたり込む。

「おい、ミユ。大丈夫か?」

「全然、大丈夫そうじゃないでしょ」

 疲れ切った私の代わりに、フレアが答えてくれた。クラウはやり過ぎたと言わんばかりに頭を掻く。

「おい、どーしてくれんだ。これじゃー、午後から使いもんにならねーじゃねぇか」

「ごめん、こんなにクタクタになるなんて思ってなくてさ」

 二人とも、私を物扱いしないで欲しい。思わず目を吊り上げると、クラウは私の機嫌を取りにかかる。

「ミユ、ごめんね」

 言いながら、私の頭を撫でる。
 そんなことをされては、許さない訳にもいかないではないか。小さく頷くと、横でフレアがふふっと笑った。

「午後は休息の時間だね」

「昼飯は食べれるか?」

「食べる。お腹空いた~......」

 体力を消耗したせいで、胃の中は空っぽだ。お腹が鳴ってしまいそうになる。
 腹部をさする私に、アリアは微笑んでみせる。

「今日のお昼はサーロインステーキですよ。皆さん腹ぺこかと思いまして」

「ステーキ!?」

 昼からステーキを食べられるなんて。思わぬご馳走に、口の中には涎が溜まっていく。

「お席へどうぞ」

 使い魔たちが次々と料理を運んでくるので、言われるがまま、私たちもいつもの席に着いた。ステーキとオニオンの香ばしい匂いが漂ってくる。

「いただきます」

 小さく呟くなり、ポテトサラダを横目にサーロインステーキとライスをがっついた。程良いミディアムレアで、ジューシーな肉汁が口の中に広がった。

「そんなに急がなくても、ステーキはどこにも行きませんよ?」

「だって~」

 美味しいし、空腹を満たせるしで最高なのだ。アリアに膨れると、七人全員に笑われてしまった。
 満腹になれば眠気も訪れるものだ。例に漏れず、今日の私もそうだった。

「ご馳走様でした~」

 眠気まなこで呟くと、ケーキが運ばれてきたのにも気づかずに部屋へ戻ってしまった。ケーキの存在に気づいたのは、西日が傾いてからのことだった。
 ベッドの上で目を覚ますと、うーんと伸びをする。

「良く寝たぁ」

 まるで緊張感がない。先日、影に襲われたばかりだというのに。
 影のことを考えると、気持ちがマイナスな方へと傾いてしまう。それに、現実を素直に直視は出来ない。
 今はアリアがいるから大丈夫だと、自分を落ち着けるしかなかった。
 体力は昼寝のお陰か少し回復したように思う。それでも、無暗に魔法は使わないでおこう。心に決めた時、アリアの声が聞こえた。

「ケーキ、お好きでしたよね?」
 
 横たわりながら、窓辺に佇むアリアの方へと目を向ける。

「うん。どうして?」

「お昼に召し上がらないで、眠ってしまったので」

「ケーキあったの?」

「はい」

 頷くアリアに、一気に心が沈む。
 嘘だ。ケーキは私の好物なのに。誰か教えてくれても良かったではないか。理不尽なことは分かっているけれど、若干の怒りを覚える。

「もうないよね」

「ありますよ」

 言われ、跳ね起きた。しかし、時計の針は五時を回っている。この時間にケーキを食べてしまっては、夕食が入らなくなるだろう。

「夜ご飯の後で食べたい」

「分かりました」

 アリアは口に手を当て、小さく笑った。

 * * *

 次の日も魔法の特訓は行われた。昨日と同じ場所に立ち、クラウと顔を見合わせる。

「今日は、いよいよ協力魔法だよ」

「うん」

 火照る顔を気にしながら、大きく頷く。

「説明するより、やってみよう」

 クラウがその場にしゃがむので、私もつられてしゃがみ込む。

「この先に岩を出してもらっても良い? 大きさは無理のない程度で」

「うん」

 昨日の三倍くらいの大きさで良いだろうか。多分、無理のない程度だ。
 地面に右手をつき、意識を集中させる。数メートル先に岩の柱が出来るのを見届けた直後だった。
 クラウが私の手に自身の手を重ねたのだ。一気に顔が火を噴いた。
 流水音と共に、岩が水によって砕かれる。その勢いは止まらず、前方に茶色の一本道が出来上がった。

「うん、こんな感じ」

 クラウは好感触を得たようで、何度か小さく頷く。
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神々の奇想四重奏作者:七宮叶歌
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