ホーム›境界の管理人 〜隠世と現世の狭間で織りなす青春奇譚〜›第23話 何千年前から思い出そうかな?
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第23話 何千年前から思い出そうかな?

朔夜は心の中で頭を抱えていた。生徒手帳の騒動以降、翔に何かと絡まれる。朔夜は狭霧神社の境内でたまらずに吠えた。

「あー、もうあいつ、チカチカ五月蝿い!!」
「例の人間ですか? 私が処しましょうか?」
「テメェ、殺生できねぇのにどう処すつもりだ」

 昨夜の近くに控えていたリンはすぐに走り出そうとしてコウに止められている。

 今日は土曜日で学校は休みだ。私服姿で髪を結っている朔夜は、やっと翔から解放されて清々しい気分ではあるが溜まったストレスは解放されない。

「やるなら、僕が関わったってバレないようにやってよね」
「おい、さらっとゴーサイン出してんじゃねぇぞ」

 疲れ切った朔夜は楽になるのならなんでもいいと思いリンに同意するとすぐにコウが突っ込む。

「そんなに厄介なのか、あのガキ。ゆうに振り回されてたが」
「正直僕は慣れもあると思うけど、ゆうを相手にする方が100倍マシだね」
「そんなにか」

 コウは久遠のところへの案内で一度翔にあっている。しかしその時はゆうに振り回されている可哀想な子供にしか見えなかったと言っていた。
 しかし朔夜にとっては初対面の時から関わるのがめんどくさい人種だった。

「関わるなオーラだしても近寄ってくるとか厄介以外の何者でもないよ。鳴海も余計な事を言ったみたいだし」
「鳴海? ......ああ、狭霧神社の倅か」
「そっ、何を思ったのか教師になってて、担任で最悪だよ」
「そうか。まっ、表側にテメェの理解者がいるのはいい事じゃねぇか」
「コウ、まるで母親みたいな事言わないでくれない?」
「......誰が誰の母親だ」

 朔夜の言葉にコウは青筋を浮かべる。しかし、朔夜は知った事じゃないと言うように続ける。

「隠世は今日も平和?」
「はい、今朝見てきましたが問題なかったです」

 朔夜の疑問にリンが答える。それにコウも頷く。

「そもそも、何かあったら叩き起こしてる」

 その発言を聞き、朔夜は笑った。まるでその反応が正解であるように。それからコウとリンから隠世の情報収集をする。
 しばらくするとリンが耳をピクリと動かした。

「主様、人が来る気配がします」

 リンが警戒するように朔夜に伝える。

「それとあの気に食わない幽霊の気配も......」

 その言葉を聞いた瞬間に、朔夜は固まる。同じ事を察したらしいコウがリンを掴んで、その場を神速で立ち去り森の中へと身を潜める。
 固まりながらもちらりと様子を確認するとコウがリンの口を塞いでいるのが見えた。

 リンの言う気に食わない幽霊はゆうだ。そしてゆうは現在稲荷翔と行動を共にしている。簡単な方程式が頭の中で成立した。ため息をつきながら、朔夜も身を隠そうと動き出すが、遅かった。

「てめぇは、あの時のいけすかねぇ女!?」

 その声を聞いて朔夜は深く息を吐いた。




 ♢♢♢♢



 幽霊が見えるようになって初めての土曜日、翔は寝巻きから服に着替えながら、考えた。
 あのいけすかない女にどうやって幽霊の存在を認めさせるかと。まずは自分以外にも例を見ることが出来るかを確認しないといけないと思った。そこで、この村唯一の神社に行けば何かわかるんじゃないかと思いついたのだ。

『少年、出掛ける用意してどこに行くんだ?』

 ゆうが宙を浮きながら聞いてくる。流石に数日一緒にいると人間とは慣れる生き物だ。ゆうに対する違和感はほとんど感じなくなっていた。学校や部屋の外ではひたすら存在を無視して、部屋だと普通に喋る。徐々にゆうのペースにも慣れてきた。さらに学校でわからない問題を指摘された時にこっそり答えを教えてくれたりと良い関係を築いてさえいた。

「俺以外にお前見える奴いないか調べようと思ってさ、学校では誰も見えてないみたいだし、この近くの狭霧神社の神主さんとか見えないか気になってさ」
『おー、狭霧神社行くのか。長年の俺の寝床だぜ』
「マジか!? そこでお前が見えたやついるか!?」

 そうだ、直接ゆうに聞けば良いんだと思いついた翔の目が光る。しかし、ゆうは『うーん』と唸り宙返りしながら考え込む。

『何千年前から思い出そうかな? 近年は見える奴が減ったからなぁ』
「ここ数年でいいに決まってるだろ!!」
『うーん、どうだったかなぁ』

 明らかにはぐらかしているのはわかった。狭霧神社に見える人がいるかはわからないが、何かヒントがある気がした。
 翔の目標はまだ変わっていない。いけすかない女に幽霊の存在を認めさせてギャフンとさせる。その次にチカに自分を認めさせる事。
 自分の目標を再度思い出し、翔は気合を入れる。母に出かける事を伝え、神社へと向かう。

 時折話しかけてくるゆうを無視しながら狭霧神社までの長い坂を登る。まだ春だが、じんわりと汗が滲んでくる。10分ほど上ると、大きな鳥居と石段の階段が見えてくる。その先が狭霧神社だ。

 翔ははやる気持ちを抑えながら階段を上る。あと数段というところで気持ちがせいて1段飛ばしで駆け上り、階段の上の鳥居をほぼ駆け足でくぐり境内に入る。
 神社は森に囲まれるように山の中腹ほどにある。その森の方へ人影が動いている事に気づく。確認するとそこには自分の人生が激変した時にあったいけすかない女がいた。

「てめぇは、あの時のいけすかねぇ女!?」

 思わず翔が叫ぶと、女は嫌そうな顔をして振り向いた。
 そして後ろでゆうが爆笑している声が聞こえてきた。
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境界の管理人 〜隠世と現世の狭間で織りなす青春奇譚〜作者:星川宙
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第23話 何千年前から思い出そうかな?

朔夜は心の中で頭を抱えていた。生徒手帳の騒動以降、翔に何かと絡まれる。朔夜は狭霧神社の境内でたまらずに吠えた。

「あー、もうあいつ、チカチカ五月蝿い!!」
「例の人間ですか? 私が処しましょうか?」
「テメェ、殺生できねぇのにどう処すつもりだ」

 昨夜の近くに控えていたリンはすぐに走り出そうとしてコウに止められている。

 今日は土曜日で学校は休みだ。私服姿で髪を結っている朔夜は、やっと翔から解放されて清々しい気分ではあるが溜まったストレスは解放されない。

「やるなら、僕が関わったってバレないようにやってよね」
「おい、さらっとゴーサイン出してんじゃねぇぞ」

 疲れ切った朔夜は楽になるのならなんでもいいと思いリンに同意するとすぐにコウが突っ込む。

「そんなに厄介なのか、あのガキ。ゆうに振り回されてたが」
「正直僕は慣れもあると思うけど、ゆうを相手にする方が100倍マシだね」
「そんなにか」

 コウは久遠のところへの案内で一度翔にあっている。しかしその時はゆうに振り回されている可哀想な子供にしか見えなかったと言っていた。
 しかし朔夜にとっては初対面の時から関わるのがめんどくさい人種だった。

「関わるなオーラだしても近寄ってくるとか厄介以外の何者でもないよ。鳴海も余計な事を言ったみたいだし」
「鳴海? ......ああ、狭霧神社の倅か」
「そっ、何を思ったのか教師になってて、担任で最悪だよ」
「そうか。まっ、表側にテメェの理解者がいるのはいい事じゃねぇか」
「コウ、まるで母親みたいな事言わないでくれない?」
「......誰が誰の母親だ」

 朔夜の言葉にコウは青筋を浮かべる。しかし、朔夜は知った事じゃないと言うように続ける。

「隠世は今日も平和?」
「はい、今朝見てきましたが問題なかったです」

 朔夜の疑問にリンが答える。それにコウも頷く。

「そもそも、何かあったら叩き起こしてる」

 その発言を聞き、朔夜は笑った。まるでその反応が正解であるように。それからコウとリンから隠世の情報収集をする。
 しばらくするとリンが耳をピクリと動かした。

「主様、人が来る気配がします」

 リンが警戒するように朔夜に伝える。

「それとあの気に食わない幽霊の気配も......」

 その言葉を聞いた瞬間に、朔夜は固まる。同じ事を察したらしいコウがリンを掴んで、その場を神速で立ち去り森の中へと身を潜める。
 固まりながらもちらりと様子を確認するとコウがリンの口を塞いでいるのが見えた。

 リンの言う気に食わない幽霊はゆうだ。そしてゆうは現在稲荷翔と行動を共にしている。簡単な方程式が頭の中で成立した。ため息をつきながら、朔夜も身を隠そうと動き出すが、遅かった。

「てめぇは、あの時のいけすかねぇ女!?」

 その声を聞いて朔夜は深く息を吐いた。




 ♢♢♢♢



 幽霊が見えるようになって初めての土曜日、翔は寝巻きから服に着替えながら、考えた。
 あのいけすかない女にどうやって幽霊の存在を認めさせるかと。まずは自分以外にも例を見ることが出来るかを確認しないといけないと思った。そこで、この村唯一の神社に行けば何かわかるんじゃないかと思いついたのだ。

『少年、出掛ける用意してどこに行くんだ?』

 ゆうが宙を浮きながら聞いてくる。流石に数日一緒にいると人間とは慣れる生き物だ。ゆうに対する違和感はほとんど感じなくなっていた。学校や部屋の外ではひたすら存在を無視して、部屋だと普通に喋る。徐々にゆうのペースにも慣れてきた。さらに学校でわからない問題を指摘された時にこっそり答えを教えてくれたりと良い関係を築いてさえいた。

「俺以外にお前見える奴いないか調べようと思ってさ、学校では誰も見えてないみたいだし、この近くの狭霧神社の神主さんとか見えないか気になってさ」
『おー、狭霧神社行くのか。長年の俺の寝床だぜ』
「マジか!? そこでお前が見えたやついるか!?」

 そうだ、直接ゆうに聞けば良いんだと思いついた翔の目が光る。しかし、ゆうは『うーん』と唸り宙返りしながら考え込む。

『何千年前から思い出そうかな? 近年は見える奴が減ったからなぁ』
「ここ数年でいいに決まってるだろ!!」
『うーん、どうだったかなぁ』

 明らかにはぐらかしているのはわかった。狭霧神社に見える人がいるかはわからないが、何かヒントがある気がした。
 翔の目標はまだ変わっていない。いけすかない女に幽霊の存在を認めさせてギャフンとさせる。その次にチカに自分を認めさせる事。
 自分の目標を再度思い出し、翔は気合を入れる。母に出かける事を伝え、神社へと向かう。

 時折話しかけてくるゆうを無視しながら狭霧神社までの長い坂を登る。まだ春だが、じんわりと汗が滲んでくる。10分ほど上ると、大きな鳥居と石段の階段が見えてくる。その先が狭霧神社だ。

 翔ははやる気持ちを抑えながら階段を上る。あと数段というところで気持ちがせいて1段飛ばしで駆け上り、階段の上の鳥居をほぼ駆け足でくぐり境内に入る。
 神社は森に囲まれるように山の中腹ほどにある。その森の方へ人影が動いている事に気づく。確認するとそこには自分の人生が激変した時にあったいけすかない女がいた。

「てめぇは、あの時のいけすかねぇ女!?」

 思わず翔が叫ぶと、女は嫌そうな顔をして振り向いた。
 そして後ろでゆうが爆笑している声が聞こえてきた。
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境界の管理人 〜隠世と現世の狭間で織りなす青春奇譚〜作者:星川宙
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