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第20話 やっぱり居やがったか

翔が混乱していた為か、お茶を飲みひと段落したらその場はお開きの流れとなった。

「今日は、歪みを探してここまできたと思うが、今後はその道具が反応してそんなことはしなくても良くなる。出入りの仕方はゆうから聞け。ここにはいつでも来ていいぞ」

 と久遠に言われた為、ゆうを見ると翔に向かって親指を突き立ててくる。不安しかない。そんな様子を見ていたコウが縁側に続く扉の方を見ながら、翔に話しかけてきた。

「俺はまだここに用があるから、帰りはゆうと2人で帰れ」
「わかったけど、こいつと2人かぁ」

 少し嫌そうに翔が顔を顰めるとゆうはあからさまに悲しそうな泣き顔をつくった。

『酷いぞ、少年。俺は少年の安全を祈っているのに』
「その性格が信用ならない!」
『でも、俺達はもはや一蓮托生だぞ?』
「その受け入れ難い真実を言うなー!!」

  漫才の様に言い合う2人を離れた位置で見ていたコウのため息が翔の耳に飛び込んでくる。そして衝撃な言葉も。

「いいコンビじゃねぇか。しばらくはゆうと一緒に過ごすんだから仲良くやれよ」
「ほんとじゃな。ゆうもあまり苛立たせない様に気をつけろ」

  他人事のように言うコウ達に翔は泣きなくなった。ゆうとしばらく一緒に過ごすとか聞いていない。しかし、自分の身の安全の為だと理解できるからこそ反論できなくて悔しい。

『さぁ、少年。帰るぞー、着いてこい』

  やる気満々のゆうに嫌々ついていく翔。ゆうは屋敷の外に出ると、庭にある蔵に向かった。

『さぁ、少年。蔵の扉を開きながら家の玄関を思い浮かべろ』
「は?」
『そうしたら、扉を開けた先は少年の家の玄関だ!』

  また非科学的な話が出てきたが、もう翔は疑うことはなかった。散々、常識が壊されたのだから。
 訝しみながらも、蔵の扉に手をかけて家の玄関の扉と意識して扉を開き、一気に中に入る。
 蔵に入った瞬間に眩しさを感じ、目が開けていられなくなる。そして次に目を開けるとそこは見慣れた自宅の玄関だった。

「......嘘だろ」

 口から思わず言葉が滑り落ちた。



 ♢♢♢♢



「やっぱり居やがったか」

 不意に障子が開く音がして振り返ると不機嫌そうなコウがドシドシと縁側に出てくる。

「無事に終わったみたいだね」

 縁側に腰掛け、お茶を飲んでいた制服姿の朔夜は驚いた様子もなく振り返る。真正面からコウに睨みつけられるも、朔夜は全く気にしない。

「知世が戻ってくるのが遅かったからな。となるとテメェが来てる可能性が高い」
「流石、付き合いが長いだけあってよくわかってるね」
「......話は聞いて嫌がったな?」
「そうだね、久遠がそっち行く前に集音器貸してくれてたからな」

 朔夜は耳からイヤリングを外しながら言う。それに対してコウが苦虫を噛み潰したような顔をした。

「久遠もグルかよ」
「グルという言い方はやめてくれ。それに先にこの場に来てたのはさやだ」
「そりゃそうだろうな。ガキのために歪みを探す必要がねぇ分、時間がかからない。」


 忌々しそうに呟くコウに後ろからついて来たらしい久遠が苦言を呈する。その様子に朔夜は笑う。

「でも僕がいたら話は進まなかっただろ? あいつもだけどゆうも面白がって話を引っ掻き回しただろうし」
「はぁ、それもわかってるから苛立ってんだろ」
「なら、リンに頼むべきだった?」
「あいつならさらに話が進まなくなる。チッ、俺で正解だよ」

 イラついた様子で舌打ちをするコウを朔夜は笑いながら見る。その態度にもう一度コウは舌打ちするとその場を後にした。

「あまり、あいつをからかってやるな」
「久遠、別にそんな気はないよ。口は悪いのに身内には面倒見がいい性格のせいでそうなるんだ」
「......そなたはそなたで相変わらずじゃなぁ」

 呆れた様な、どこか孫を見る様な目で久遠は朔夜を見つめる。それに居心地の悪さを覚えた朔夜は視界をずらして、お茶を啜る。

「よかった、まだいらしたんですね。さやちゃん」

 座敷の片付けが終わったのか知世が朔夜の方に歩いてくる。久遠と2人きりの空間から解放された朔夜は小さく息を吐く。

「お茶ありがとね、美味しかった」
「それなら良かった。昔はお茶が上手く入れれないと怒られていましたから」
「時代を感じるね」

 そう言って、朔夜はまた一口お茶を啜る。そして、太陽の元で青白い顔の知世を見て、そういえばと以前から感じていた疑問を口にした。

「でも、キョンシーって味覚とかあるの?」
「ありますよ。久遠様のおかげでお札もなく活動もできます」

 そう言いながら、知世は大切そうに両耳のピアスに触れる。
 その表情をみて、朔夜は笑う。本当に知世は幸せだと思う。死に際に久遠に逢え、人外になっても人権を侵害されずに自由に生きられるのだから。朔夜は幸せそうな知世を見ると嬉しくなるから会うのが好きだった。

「それにしても久遠も流石、白澤はくたくだね。見ただけでわかるなんて」
「昨日の時点でゆうの状態を見て話を聞いておったからな。だいたいは予測はついていた」

 朔夜の独り言に久遠が当たり前の様に答えた。しばらく3人で縁側に並んで座り、見事な日本庭園を見ながら情報の交換をする。

「さて、そろそろ僕は帰るよ。明日の学校生活が平穏に終わる様に祈っておいて」
「狐くんと同じクラスなんでしたっけ?」
「そう。今日教室であいつを見かけて危うく舌打ちするところだったよ」

 今朝の事を思い出し、朔夜の顔が歪む。しかしすぐに無表情に戻ると久遠を見た。

「とりあえず今日の話は鳴海に共有するよ」
「そうだな、鳴海の一族は知っておくべきだ」

 朔夜の言葉に久遠は神妙に頷く。それを確認して、朔夜は縁側から庭に飛び降りる。

「とりあえず、また何かわかったら連絡して」

 久遠にそう言い渡し、朔夜はその場を後にした。
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境界の管理人 〜隠世と現世の狭間で織りなす青春奇譚〜作者:星川宙
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第20話 やっぱり居やがったか

翔が混乱していた為か、お茶を飲みひと段落したらその場はお開きの流れとなった。

「今日は、歪みを探してここまできたと思うが、今後はその道具が反応してそんなことはしなくても良くなる。出入りの仕方はゆうから聞け。ここにはいつでも来ていいぞ」

 と久遠に言われた為、ゆうを見ると翔に向かって親指を突き立ててくる。不安しかない。そんな様子を見ていたコウが縁側に続く扉の方を見ながら、翔に話しかけてきた。

「俺はまだここに用があるから、帰りはゆうと2人で帰れ」
「わかったけど、こいつと2人かぁ」

 少し嫌そうに翔が顔を顰めるとゆうはあからさまに悲しそうな泣き顔をつくった。

『酷いぞ、少年。俺は少年の安全を祈っているのに』
「その性格が信用ならない!」
『でも、俺達はもはや一蓮托生だぞ?』
「その受け入れ難い真実を言うなー!!」

  漫才の様に言い合う2人を離れた位置で見ていたコウのため息が翔の耳に飛び込んでくる。そして衝撃な言葉も。

「いいコンビじゃねぇか。しばらくはゆうと一緒に過ごすんだから仲良くやれよ」
「ほんとじゃな。ゆうもあまり苛立たせない様に気をつけろ」

  他人事のように言うコウ達に翔は泣きなくなった。ゆうとしばらく一緒に過ごすとか聞いていない。しかし、自分の身の安全の為だと理解できるからこそ反論できなくて悔しい。

『さぁ、少年。帰るぞー、着いてこい』

  やる気満々のゆうに嫌々ついていく翔。ゆうは屋敷の外に出ると、庭にある蔵に向かった。

『さぁ、少年。蔵の扉を開きながら家の玄関を思い浮かべろ』
「は?」
『そうしたら、扉を開けた先は少年の家の玄関だ!』

  また非科学的な話が出てきたが、もう翔は疑うことはなかった。散々、常識が壊されたのだから。
 訝しみながらも、蔵の扉に手をかけて家の玄関の扉と意識して扉を開き、一気に中に入る。
 蔵に入った瞬間に眩しさを感じ、目が開けていられなくなる。そして次に目を開けるとそこは見慣れた自宅の玄関だった。

「......嘘だろ」

 口から思わず言葉が滑り落ちた。



 ♢♢♢♢



「やっぱり居やがったか」

 不意に障子が開く音がして振り返ると不機嫌そうなコウがドシドシと縁側に出てくる。

「無事に終わったみたいだね」

 縁側に腰掛け、お茶を飲んでいた制服姿の朔夜は驚いた様子もなく振り返る。真正面からコウに睨みつけられるも、朔夜は全く気にしない。

「知世が戻ってくるのが遅かったからな。となるとテメェが来てる可能性が高い」
「流石、付き合いが長いだけあってよくわかってるね」
「......話は聞いて嫌がったな?」
「そうだね、久遠がそっち行く前に集音器貸してくれてたからな」

 朔夜は耳からイヤリングを外しながら言う。それに対してコウが苦虫を噛み潰したような顔をした。

「久遠もグルかよ」
「グルという言い方はやめてくれ。それに先にこの場に来てたのはさやだ」
「そりゃそうだろうな。ガキのために歪みを探す必要がねぇ分、時間がかからない。」


 忌々しそうに呟くコウに後ろからついて来たらしい久遠が苦言を呈する。その様子に朔夜は笑う。

「でも僕がいたら話は進まなかっただろ? あいつもだけどゆうも面白がって話を引っ掻き回しただろうし」
「はぁ、それもわかってるから苛立ってんだろ」
「なら、リンに頼むべきだった?」
「あいつならさらに話が進まなくなる。チッ、俺で正解だよ」

 イラついた様子で舌打ちをするコウを朔夜は笑いながら見る。その態度にもう一度コウは舌打ちするとその場を後にした。

「あまり、あいつをからかってやるな」
「久遠、別にそんな気はないよ。口は悪いのに身内には面倒見がいい性格のせいでそうなるんだ」
「......そなたはそなたで相変わらずじゃなぁ」

 呆れた様な、どこか孫を見る様な目で久遠は朔夜を見つめる。それに居心地の悪さを覚えた朔夜は視界をずらして、お茶を啜る。

「よかった、まだいらしたんですね。さやちゃん」

 座敷の片付けが終わったのか知世が朔夜の方に歩いてくる。久遠と2人きりの空間から解放された朔夜は小さく息を吐く。

「お茶ありがとね、美味しかった」
「それなら良かった。昔はお茶が上手く入れれないと怒られていましたから」
「時代を感じるね」

 そう言って、朔夜はまた一口お茶を啜る。そして、太陽の元で青白い顔の知世を見て、そういえばと以前から感じていた疑問を口にした。

「でも、キョンシーって味覚とかあるの?」
「ありますよ。久遠様のおかげでお札もなく活動もできます」

 そう言いながら、知世は大切そうに両耳のピアスに触れる。
 その表情をみて、朔夜は笑う。本当に知世は幸せだと思う。死に際に久遠に逢え、人外になっても人権を侵害されずに自由に生きられるのだから。朔夜は幸せそうな知世を見ると嬉しくなるから会うのが好きだった。

「それにしても久遠も流石、白澤はくたくだね。見ただけでわかるなんて」
「昨日の時点でゆうの状態を見て話を聞いておったからな。だいたいは予測はついていた」

 朔夜の独り言に久遠が当たり前の様に答えた。しばらく3人で縁側に並んで座り、見事な日本庭園を見ながら情報の交換をする。

「さて、そろそろ僕は帰るよ。明日の学校生活が平穏に終わる様に祈っておいて」
「狐くんと同じクラスなんでしたっけ?」
「そう。今日教室であいつを見かけて危うく舌打ちするところだったよ」

 今朝の事を思い出し、朔夜の顔が歪む。しかしすぐに無表情に戻ると久遠を見た。

「とりあえず今日の話は鳴海に共有するよ」
「そうだな、鳴海の一族は知っておくべきだ」

 朔夜の言葉に久遠は神妙に頷く。それを確認して、朔夜は縁側から庭に飛び降りる。

「とりあえず、また何かわかったら連絡して」

 久遠にそう言い渡し、朔夜はその場を後にした。
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