第二話 ミズサキの意図
ミズサキ手牌
二三三四四伍七八九③④11
ミズサキ②-⑤待ち。
(はて?)
涼子がミズサキの手を覗き込むと6索のポンと待ちに全く関連性がなかった。
(一体マコトはどういう意図でこのタイミングにツモ切りリーチする事を選んだんだろう......)
単に攻めて来られたから(好きにさせないよ)という意味合いでのリーチだろうか。それもあるかもしれない。しかし、それ以上の意味がこのリーチにはあるのだった。そのヒントは4枚枯れてる2索にある。
結果、この局は流局寸前にミズサキがツモアガリで700.1300を決める。
――後日。
涼子は先日ミズサキの行ったツモ切りリーチの意図を聞いてみた。
「あ、あのさー。数日前の話なんだけど。マコトがツモ切りリーチしてナナトーサンツモったの覚えてるかな。青澤さんとかが同卓の時の」
「ええ? よくやることだし青澤さんも毎回のようにいるからそれだけじゃ思い出すヒントにならないんだけど」
「そうか......ええと。6索のポンが入ってた」
「ああ、あれね。待ちは②-⑤で流局寸前でツモったやつでしょ?」
「そう! それ」
「あの時2索が場に4枚見えてたの覚えてるかな」
「そうだったね。でもそれが?」
「つまり索子は3から9までしか存在せず、さらに今のタイミングは6がポンされた所だとなればリーチが有効だと私は思う」
「その理由は?」
「まず仮にこれをリーチしないままにしてるとして、この6索ポンにより場はどう変化した?」
「えっとお、6索の跨ぎやスジが切りやすくなった?」
「そう。しかも今回は索子が3までしかないから345789の6種が切りやすくなったよね。その6種はスジとワンチャンスだもん。安全牌候補だよ」
「!! 待ってわかった。私わかったワ! ここのタイミングでツモ切りリーチした事でこの6種の安全そうに見えるはずの牌が『その読みを狙ったもの』に見えてきてしまうんだ! つまり、6種もあった安全牌候補をこのツモ切りリーチで6種もの危険牌候補に見せることが出来る。そういうことでしょ!」
「御名答。厳密に言えば残り1枚の6索もそうね。なんだ、りょうちゃんもずいぶんと『麻雀脳』になってきたじゃん。これがわかる打ち手はうちの早番にはいないと思うよ」
「確かに、これは読む人の猜疑心をさらに利用した高等戦術に思う。
切りやすかったはずの6種が切りにくい6種になれば当然他の牌は押し出されるし、オリる人も出てくるということか〜。天才にしか効かない、超天才の戦術だね」
「そこまで言う程じゃないけどさ」
ミズサキの戦術を理解できる涼子もまた麻雀のスキルが上がってきていた。ミズサキのような先天的アビリティはないものの、周囲の雀士に影響を受けた涼子が次第に強くなり、いずれは競技麻雀プロの世界に踏み込んでいくことになるのだが。その未来はまだ誰も想像すらしていないのであった。