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50.信じる

グラナートは再び村の周りを歩きながら思考を巡らせる。
 神魔大戦は間違いだったのか。
 自分は、決断を間違えたのか。
 あの時。あの時。あの時。
 そして、今の、あの赤。一番見たくない色。
「俺は、守るために生み出されたはずだ......」
 相棒で今代の勇者の育ての親。その死は、ウルラートとは違う方向性でグラナートを揺さぶる。
 グラナートが魔王になって、七魔が街を作った。
 その街は順調に育っている。5つの街のうち、3つはそれを確認した。あと2つ。あと2つもまた正しかったのだと、ちゃんと育っているのだと確認したい。そうでなければ、確認できなければ、自分の正しさに自信が持てない。
「......情けないものだな」
 いつまで経っても、自分の足で立てないのは誰よりも自分自身かもしれない。そう自嘲しつつ、思考を切り替える。
「アオス・シュテルベンの復活。やつが復活したのなら、俺の賭けは負け。.........敗色濃厚な気がしてきたな......」
 そろそろ、ウルラートたちにすべてを話すべきなのかもしれない。特に、ウルラートは今回の件で、これまでのようにグラナートが自発的に喋るのを、もう待ってはくれないだろう。
 だが、グラナートは、残り2つの街を見てから決めたいというのが本音だ。逃げともいう。街の状態によっては、グラナートの決断の間違いを指摘されることになりかねない。
「............勇者、か。勇者とは、なんだろうな......」
 何を持ってウルラートは選ばれたのか。
 かつての勇者と、ウルラートは違う。
「くそ......その辺まで説明しておけよ......」
 結局、こんな思考もただあの場所に戻りたくないがための時間稼ぎ。そんなことは、グラナート本人が誰よりもよく分かっていた。


 一方。
「フィリさんが......ルシフェルの契約者......?傲慢の七魔の......」
 街を持たない、どこにいるかもわからない。グラナートはそう言っていた。だからこそ、フィリテ・コレールの言葉に、ピスティは目を丸くしていた。
「私のどこが傲慢だというんだ、失礼な」
「いやだいぶ傲慢ではあると思うぞ......」
 フィリテの片目が赤くなり、一つの口から2つの声が吐き出される。
「る、ルシフェル......え、片目だけ......?」
「あぁ。コレールの一族は他とは少し違う契約を結んでいるからな、同調性が高いんだ。他がこれをやろうとすると、脳がパンクしてオーバーヒートする。いわゆる、知恵熱みたいな感じで」
 七魔との契約の危険性を知恵熱で片付けた。まさかの例えである。どうかと思う。
「ち、知恵熱......いえ、そうではなく......なぜ黙っていたんですか」
 若干ピスティの困惑が滲み出ているが、とにかく話を聞かねばと気を取り直す。
「今代勇者とやらがどんなやつか興味があったからな。しばらく放置......いや、様子を見ようかと」
 放置って言った。
「まぁ何をおいても普通だな。何だアレは。アレで勇者か」
「.........言いたいことはわかるが、そういうところが傲慢だって言われるんじゃないか?」
「失礼な」
 喋れる相棒がいると皆コントを始めるのだろうか。真面目に会話をしてほしい。喋れないペルルを相棒にするピスティは心底思った。そして、本人たちにその自覚はないんだろうな、と、勇者と魔王を思い浮かべて諦めた。諦めが肝心。
「ウルラート様が勇者にふさわしくない、とでも?ウルラート様は勇者の剣に選ばれたただ一人のお方。ウルラート様こそが光の女神様に選ばれた勇者なのですよ」
 ピスティの言葉に、ため息が2連発。フィリテとルシフェルがそれぞれにため息をついただけではあるが、一つの口からため息が2回吐き出されると普通にムカつく。
「......ルシフェル、ちょっと引っ込め。お前がいると話が進まない」
「貴様、言うに事欠いて私を邪魔者扱いか」
「まぁ、割と邪魔」
 恐れ知らずのド直球。本当にどうかと思うが、ルシフェルがしぶしぶ引っ込んだようで、フィリテの目が両目とも同じ色に戻った。
「グラナートに、どこまで聞いている?」
 フィリテがそう問えば、ピスティは、なにも、と答えるしかなかった。
「七魔領を回る理由も、神魔大戦についても、何も」
「.........逆にそれでよくついて回ったな?」
 その通りである。
「私は反対しました。でも、ウルラート様が......相棒を信じる、と」
 フィリテの目がわずかに丸くなる。
「信じる、か」
 ルシフェルの記憶がフィリテの脳内に蘇る。そして納得したような呆れたような顔をした。
「なるほど。前言を半分撤回。代替わりしても勇者ってバカなんだな」
「バカとはなんですか、失礼な!世界を魔王から守った勇者様と、光の女神様と勇者の剣に選ばれた勇者様ですよ!」
 ピスティが抗議するのを、フィリテがとめる。ここで騒いでは、クリアールを悼むウルラートの邪魔になる。
「言ったのは勇者だけじゃないがな。でも、初代勇者も同じことを言った。それをルシフェルは覚えている」
 呆れたように。諦めたように。それでも、どこか誇らしげなのは、それを見ていたルシフェルの感情か。
「人間を信じる。かつての勇者は、人間を信じたから神魔大戦を“起こした”んだ」
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殴る勇者と斬る魔王作者:輝波斗
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50.信じる

グラナートは再び村の周りを歩きながら思考を巡らせる。
 神魔大戦は間違いだったのか。
 自分は、決断を間違えたのか。
 あの時。あの時。あの時。
 そして、今の、あの赤。一番見たくない色。
「俺は、守るために生み出されたはずだ......」
 相棒で今代の勇者の育ての親。その死は、ウルラートとは違う方向性でグラナートを揺さぶる。
 グラナートが魔王になって、七魔が街を作った。
 その街は順調に育っている。5つの街のうち、3つはそれを確認した。あと2つ。あと2つもまた正しかったのだと、ちゃんと育っているのだと確認したい。そうでなければ、確認できなければ、自分の正しさに自信が持てない。
「......情けないものだな」
 いつまで経っても、自分の足で立てないのは誰よりも自分自身かもしれない。そう自嘲しつつ、思考を切り替える。
「アオス・シュテルベンの復活。やつが復活したのなら、俺の賭けは負け。.........敗色濃厚な気がしてきたな......」
 そろそろ、ウルラートたちにすべてを話すべきなのかもしれない。特に、ウルラートは今回の件で、これまでのようにグラナートが自発的に喋るのを、もう待ってはくれないだろう。
 だが、グラナートは、残り2つの街を見てから決めたいというのが本音だ。逃げともいう。街の状態によっては、グラナートの決断の間違いを指摘されることになりかねない。
「............勇者、か。勇者とは、なんだろうな......」
 何を持ってウルラートは選ばれたのか。
 かつての勇者と、ウルラートは違う。
「くそ......その辺まで説明しておけよ......」
 結局、こんな思考もただあの場所に戻りたくないがための時間稼ぎ。そんなことは、グラナート本人が誰よりもよく分かっていた。


 一方。
「フィリさんが......ルシフェルの契約者......?傲慢の七魔の......」
 街を持たない、どこにいるかもわからない。グラナートはそう言っていた。だからこそ、フィリテ・コレールの言葉に、ピスティは目を丸くしていた。
「私のどこが傲慢だというんだ、失礼な」
「いやだいぶ傲慢ではあると思うぞ......」
 フィリテの片目が赤くなり、一つの口から2つの声が吐き出される。
「る、ルシフェル......え、片目だけ......?」
「あぁ。コレールの一族は他とは少し違う契約を結んでいるからな、同調性が高いんだ。他がこれをやろうとすると、脳がパンクしてオーバーヒートする。いわゆる、知恵熱みたいな感じで」
 七魔との契約の危険性を知恵熱で片付けた。まさかの例えである。どうかと思う。
「ち、知恵熱......いえ、そうではなく......なぜ黙っていたんですか」
 若干ピスティの困惑が滲み出ているが、とにかく話を聞かねばと気を取り直す。
「今代勇者とやらがどんなやつか興味があったからな。しばらく放置......いや、様子を見ようかと」
 放置って言った。
「まぁ何をおいても普通だな。何だアレは。アレで勇者か」
「.........言いたいことはわかるが、そういうところが傲慢だって言われるんじゃないか?」
「失礼な」
 喋れる相棒がいると皆コントを始めるのだろうか。真面目に会話をしてほしい。喋れないペルルを相棒にするピスティは心底思った。そして、本人たちにその自覚はないんだろうな、と、勇者と魔王を思い浮かべて諦めた。諦めが肝心。
「ウルラート様が勇者にふさわしくない、とでも?ウルラート様は勇者の剣に選ばれたただ一人のお方。ウルラート様こそが光の女神様に選ばれた勇者なのですよ」
 ピスティの言葉に、ため息が2連発。フィリテとルシフェルがそれぞれにため息をついただけではあるが、一つの口からため息が2回吐き出されると普通にムカつく。
「......ルシフェル、ちょっと引っ込め。お前がいると話が進まない」
「貴様、言うに事欠いて私を邪魔者扱いか」
「まぁ、割と邪魔」
 恐れ知らずのド直球。本当にどうかと思うが、ルシフェルがしぶしぶ引っ込んだようで、フィリテの目が両目とも同じ色に戻った。
「グラナートに、どこまで聞いている?」
 フィリテがそう問えば、ピスティは、なにも、と答えるしかなかった。
「七魔領を回る理由も、神魔大戦についても、何も」
「.........逆にそれでよくついて回ったな?」
 その通りである。
「私は反対しました。でも、ウルラート様が......相棒を信じる、と」
 フィリテの目がわずかに丸くなる。
「信じる、か」
 ルシフェルの記憶がフィリテの脳内に蘇る。そして納得したような呆れたような顔をした。
「なるほど。前言を半分撤回。代替わりしても勇者ってバカなんだな」
「バカとはなんですか、失礼な!世界を魔王から守った勇者様と、光の女神様と勇者の剣に選ばれた勇者様ですよ!」
 ピスティが抗議するのを、フィリテがとめる。ここで騒いでは、クリアールを悼むウルラートの邪魔になる。
「言ったのは勇者だけじゃないがな。でも、初代勇者も同じことを言った。それをルシフェルは覚えている」
 呆れたように。諦めたように。それでも、どこか誇らしげなのは、それを見ていたルシフェルの感情か。
「人間を信じる。かつての勇者は、人間を信じたから神魔大戦を“起こした”んだ」
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殴る勇者と斬る魔王作者:輝波斗
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