ホームホンネキンギョ1
目次

1


揺蕩う意識が浮上して、
激しい雨音に気付かされる。

僅かに香る湿った土の匂いに
舌打ちしたいような気持ちになった。

少しだけ開いたカーテンから覗くのは
宙を泳ぐ色とりどりの金魚。

真紅、オレンジ、黄色、白、黒いデメキン。

それらはすべてそこにいることが当然かのように
悠然と美しく泳いでいる。

深い紺色の布団に沈んだ身体を起こして
立ち上がると、ベッドがキシ......と音を立てた。

毎朝の習慣になっている
メッセージのチェックをしながら
階段を降りていく。

真咲まさきおはよう!」

スマートフォンから顔を上げると
大きな瞳とぶつかった。

「わっ」

視界が反転しそうになるがすぐに
たたらを踏んでことなきを得る。

「まったくもう、ながら歩きは危ないでしょ?」

「華連。驚かせるなよ」

耳の後ろで二つに結んだ髪を巻き、
今時の女子らしく化粧を施した僕の妹、華連は
可愛らしく微笑んだ。

身長も相まって、顔の前に両手を持ってくる
その姿は小動物を彷彿とさせて、
ついドキッとしてしまった。

「あら、真咲起きてきたのね」

綺麗に片付けられた台所にはカラフルな花柄の
エプロンを身につけた母がいた。
部屋中に味噌汁の香りが漂い、ほっこりしていると父が新聞から顔を上げた。

「おはよう」

「おはよう、父さん、母さん」

テレビから流れてくるのは宙を泳ぐ金魚の話題。
綺麗なキャスターと共に映し出されたテロップには『本音金魚の鳴き声を聞いた住民が
次々と秘密を暴露』の文字が踊る。

僕は小さく鳴った心臓の音に気付かれないように
胸元を握りしめた。

本音金魚が現れてからもう何年も経つ。

本音金魚。それは──。
僕の罪を暴く存在。

その罪は

実の妹に恋をしたことだ。
シェア
最新話です
目次に戻る
ホンネキンギョ作者:藤川みはな
目次を見る
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホームホンネキンギョ1
目次

1


揺蕩う意識が浮上して、
激しい雨音に気付かされる。

僅かに香る湿った土の匂いに
舌打ちしたいような気持ちになった。

少しだけ開いたカーテンから覗くのは
宙を泳ぐ色とりどりの金魚。

真紅、オレンジ、黄色、白、黒いデメキン。

それらはすべてそこにいることが当然かのように
悠然と美しく泳いでいる。

深い紺色の布団に沈んだ身体を起こして
立ち上がると、ベッドがキシ......と音を立てた。

毎朝の習慣になっている
メッセージのチェックをしながら
階段を降りていく。

真咲まさきおはよう!」

スマートフォンから顔を上げると
大きな瞳とぶつかった。

「わっ」

視界が反転しそうになるがすぐに
たたらを踏んでことなきを得る。

「まったくもう、ながら歩きは危ないでしょ?」

「華連。驚かせるなよ」

耳の後ろで二つに結んだ髪を巻き、
今時の女子らしく化粧を施した僕の妹、華連は
可愛らしく微笑んだ。

身長も相まって、顔の前に両手を持ってくる
その姿は小動物を彷彿とさせて、
ついドキッとしてしまった。

「あら、真咲起きてきたのね」

綺麗に片付けられた台所にはカラフルな花柄の
エプロンを身につけた母がいた。
部屋中に味噌汁の香りが漂い、ほっこりしていると父が新聞から顔を上げた。

「おはよう」

「おはよう、父さん、母さん」

テレビから流れてくるのは宙を泳ぐ金魚の話題。
綺麗なキャスターと共に映し出されたテロップには『本音金魚の鳴き声を聞いた住民が
次々と秘密を暴露』の文字が踊る。

僕は小さく鳴った心臓の音に気付かれないように
胸元を握りしめた。

本音金魚が現れてからもう何年も経つ。

本音金魚。それは──。
僕の罪を暴く存在。

その罪は

実の妹に恋をしたことだ。
シェア
最新話です
目次に戻る
ホンネキンギョ作者:藤川みはな
目次
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません