骨董屋の指定席
川沿いにある骨董屋。
白髪交じりの女が、奥の椅子に腰掛けている。
──ギィー、ガチャン。
男が入ってきた。
店の中をゆっくりと見て回る。
そのとき、壁の戸棚に目が止まった。
「これは何ですか」
「知らん」
「売り物ですか」
「あぁ」
戸棚から一冊の本を手に取った。
「鍵つき......鍵はありますか」
「ない」
表紙を眺めながら、しばらく迷った。
そして、安くはない金を払い、店を出た。
帰り道、鍵屋を探す。
「すみません。この鍵、開けられますか」
店主は本を手に取り、鍵穴をレンズで覗き込んだ。
「これ、無理に開けるより鍵作ったほうがいいな。どうする?」
男は、鍵を作ってもらうことにした。
そしてまた、安くはない金を払った。
郊外の一軒家。
部屋には、趣味で集めた骨董品が並んでいる。
机の上に本を置くと、小さく深呼吸をした。
──カチ、カチ。
鍵を回し、重たい表紙を開いた。
「二百年前か......」
男は、ゆっくりと時間をかけて読んだ。
すべてを読み終えると、本を抱えて家を出た。
──ギィー、ガチャン。
「これ、買い取ってくれ」
「安いよ」
女はカウンターに、わずかな金を置くと、 戸棚に本を戻した。
「予言、全部はずれだったぞ」
「知らん」
店を出た男は、持っていた鍵を川に投げた。
川の底には、同じ形の鍵が、キラキラと光っていた。