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猫

消えた猫と私
 十年前に姿を消した猫が現れた。いや、姿を消したわけではない。猫は死んだ。日の光が当たらない奥の和室に安置したのは私だ。一生の飼い猫であった。素っ気のない野良猫のように、よそで野垂れ死んだわけでもない。それなのに、私は猫は消えたものだと思い込んでいる。死んだと信じたくないのか、あるいは初めから猫なんていなかったのだと、ありもしない「考え」が「感覚」だと騙っているのか。本当のところ、いくら考えを巡らせても、その飛躍に私は気づけるはずもない。
 昨日私は夜遅くに酒を呑んで帰ってきて、そのまま寝てしまおうと、ベッドに体を投げ出した。私は体温が高くなっていた。毛布も被らずにすぐうとうとし始めた。それがその夜はどういうわけか妙に目が冴えていた。その後どれほど時間が経ったろうか。十年ぶりに猫が現れた。三色がまだらに体を包みこんでいるように思えるのは、猫が縦に座り込んでいるにも関わらず、腹や背の方までどのようになっているのか想像したからに違いない。目が合っていた。言いしれない悪寒がしたのを覚えている。しばらく、私はそちらの方をじっと見ていた。まるで猫を見ていないようだった。実際、私の視線はあくまで時計の針にくぎ付けになっていた。ところが目線は猫の目にあった。猫は突然すっと立ち上がって、私に近づき、すぐ上の白いカーテンをすり抜けて出ていってしまった。
 早朝、カーテンを開けると窓は閉まっていた。猫は無事に消えた。カーテンから振り落とされた塵が部屋の中を淡く満たしていた。
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猫作者:かりんとう
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 十年前に姿を消した猫が現れた。いや、姿を消したわけではない。猫は死んだ。日の光が当たらない奥の和室に安置したのは私だ。一生の飼い猫であった。素っ気のない野良猫のように、よそで野垂れ死んだわけでもない。それなのに、私は猫は消えたものだと思い込んでいる。死んだと信じたくないのか、あるいは初めから猫なんていなかったのだと、ありもしない「考え」が「感覚」だと騙っているのか。本当のところ、いくら考えを巡らせても、その飛躍に私は気づけるはずもない。
 昨日私は夜遅くに酒を呑んで帰ってきて、そのまま寝てしまおうと、ベッドに体を投げ出した。私は体温が高くなっていた。毛布も被らずにすぐうとうとし始めた。それがその夜はどういうわけか妙に目が冴えていた。その後どれほど時間が経ったろうか。十年ぶりに猫が現れた。三色がまだらに体を包みこんでいるように思えるのは、猫が縦に座り込んでいるにも関わらず、腹や背の方までどのようになっているのか想像したからに違いない。目が合っていた。言いしれない悪寒がしたのを覚えている。しばらく、私はそちらの方をじっと見ていた。まるで猫を見ていないようだった。実際、私の視線はあくまで時計の針にくぎ付けになっていた。ところが目線は猫の目にあった。猫は突然すっと立ち上がって、私に近づき、すぐ上の白いカーテンをすり抜けて出ていってしまった。
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