愛すべき日常
成神家の末っ子、成神蓮也は恋をしていた。
相手は峰岡優來という同じクラスの女の子。
彼女は蓮也の幼稚園からの幼なじみだ。よくある話である。
きっかけは弱っている時に優しくしてくれたのと、蓮也の想像より大人っぽくなっていたギャップに惹かれたからだ。これも、よくある話である。
しかし、そんな蓮也の気持ちなど知らず、クラスの人気者である優來は多くの男女に囲まれる。
「またぼーっとしてんのか、蓮也」
優來のことを考え、ぼーっとしていた蓮也を大家誠が小突いた。
「別にそんなことないよ」
慌てて言う蓮也を横目に誠はニヤニヤしている。
誠は毎日サッカー部で汗を流す、スポーツ万能青年だ。
彼もまた、蓮也と優來の幼なじみであり昔からよく知っている。
だが、帰宅部である蓮也とは違いサッカー部に入っている。そのためか賑やかな友達が多く、誠自身もいつも元気だ。いわゆる陽キャである。
「そういえば誠こそ、どうなんだ」
そう蓮也が反撃すると誠はすぐ答える。
「あー彼女か、もちろんまだ付き合ってるよ」
反撃が失敗に終わった蓮也と対照的に誠は意地悪な笑みを浮かべる。
そのまま優來のほうをちらっと見た。
「優來ー、今日蓮也と3人で帰らね?」
優來は話すのを一旦やめ、すぐ答えた。
「誠が誘うの珍しいじゃん、いいよ」
その言葉を聞いた誠はさらに意地悪そうな笑みで蓮也を見た。
――――――――――――――――――――――――
授業も終わり、蓮也たち3人は帰路についていた。
眩しいくらいの夕焼けがさす美しい夕方である。
「そういえば今日のバスケ、蓮也うまかったな」
歩きながら誠が言う。
話は今日の授業の体育のことだった。
「まぁサッカーだけしか出来ない誠よりかはマシだよ」
蓮也の言葉に3人は笑った。
実は誠はサッカーの腕前はプロ級だが、他のスポーツが全くと言っていいほど出来ない。
体育祭の時の野球では、辛うじてボールをバットに当てたが3塁の方へ走っていった。
言わば、壊滅的だ。
「私より出来ないよね、誠」
「流石に優來よりかは出来るわ」
優來が誠を小馬鹿にするとすぐ誠は応戦する。
蓮也は言い合う2人を見ながら笑った。
この時間を蓮也は愛している。
そうして楽しく帰っていると、間もなく3人が逆方向に別れる交差点だ。
交差点について改めて蓮也は幼なじみ2人が大好きなことを悟る。
「じゃあな優來、蓮也」
「また明日ね」
「ばいばい」
3人それぞれ言い合って別れた。
ここまでは愛すべき日常であるが、蓮也の生活はここから始まる。
蓮也はこの家へと続く道を歩くと毎回ため息をつく。
2人のことを思い出して、グッと拳を握り歩みをすすめた。