宝石を持ってこい、この野郎!
011
「眠れないの?......」
「はい......」
ウィリアムはヒメコに向かって尋ねた......今、四人は廃業した武器屋に身を隠していた。中には鉄材や工具がそろっていて、彼が必要としている鎧と武器を作るのにうってつけの場所だった......
「一日中ずっと鉄を叩いていたから、うるさくて眠れなかったんじゃないのか?」
そう言い返されてヒメコはすぐに笑った......
「そう言われればそうかもしれないですね......ふふ......」
言い終えると、ウィリアムは再びハンマーを手に取って鉄を打ち始めた......
カンカン、カンカンと規則正しい音が響く......
「休まないんですか?」
「車の中で眠ったから......まだまだ力が余っているんだ......」
「ゼングラフで蘇ったせいですか?」
「たぶんそうだな......ああ、そこの鉄を取ってくれないか......」
「はい......」
ヒメコはウィリアムが少しずつ形にしてきた鎧を眺めた......
「白い鎧......なんですね?」
「そうだ......かつて着ていた鎧とは違うが......とりあえずうまくできている......」
鉄を打ち終えると、彼は冷水の中に沈めた......
先ほど打っていたのは兜だった......
それからウィリアムはヒメコと一緒にソファに腰を下ろして水を飲んだ......
「もう一度、あなたのことを話してくれますか?」
「なぜそんなにわしのことを聞きたがるんだ?」
「子どもってね......かっこいい英雄の話が聞きたいものなんですよ......」
ウィリアムはこの無邪気でおどけた少女の言葉に、こっそりと微笑んだ......
「まあ......昔、わしたちの大陸はまだ小さな街がいくつかあるだけで......小さな村が集まって静かに暮らしていた......でも常に脅威が俺たちを悩ませていた......」
「十三体の悪魔、でしょ?」
「話している途中で割り込まないでくれよ......」
「あははは......すみません......」
彼はもう一口水を飲んでから続けた......
「最初わしたちは、番兵のように選ばれて集落を守る役目を担っているただの村人だった......」
「悪魔の噂がどんどん広まるにつれて......村人たちから悪魔が暴れ回っているという訴えが来るようになった。そこでわしは、仲間を集めて悪魔を退治しようという馬鹿げた考えを思いついた......少しずつ仲間を集めていくうちに、気づけばみんなで兄弟の契りを結んでいたよ......」
「一人一人は別々の村の出身だった......集まったあとで、白銀騎士団を結成した......」
「でも本当のことを言うと......結成のきっかけはダリウスという友人が酒を飲みすぎて、"俺たち騎士団を結成しようぜ!!"と言い出したからなんだ......思い出すたびに笑えてしょうがないよ......」
ウィリアムの話を聞いてヒメコは大きく微笑んだ......
「それからわしたちは悪魔を一体ずつ倒し続けた......そしてしばらくして......わしは世界で一番美しい女性に出会った......」
「.....................」
「わしたちが救い出した村の一人の女性だった......それからやがて結婚した......」
「悪魔を全部退治し終えると......わしたちは六つの同盟国を建国し、わしの村があった場所にレギュラーを首都として置いた......」
「みんなそれぞれ都市の統治者になったり、他の誰かに引き継いだりした......」
「で......あなたは?」
「わしは......妻と一緒に緑豊かな草原でひっそりと暮らすつもりだった......」
「素敵ですね......」
「でも......それはわしの夢でしかなかった......」
五百年前......暗い部屋で......
「よう、ウィリアム......」
わしは真っ暗な部屋で目を覚ました......確か酒を一杯飲んで......そのまま眠ったはずだ......
なぜわしは魔法封じの手錠をつけられているんだ?
ケイシー......ケイシーがいる......
「ヘンリー......これはどういうことだ......なぜケイシーを連れてきた......?」
「まあね......わしがよく考えたら......王国が七つあるのに、俺たちは八人いるじゃないか......余分な一人を消しておこうと思ってさ......だから死ねよ......」
言い終えると、ヘンリーは自身の黒い魔法剣をウィリアムに向けた......
何をしているんだ......
「やめて!!!」
ケイシーが叫んだ......
「ケイシー......」
「お前ってね......ただ彼を妬んでるだけでしょ......そうじゃないの?」
嫉妬?......わしを?
「嫉妬?......わしを?......」
「見ればわかるのよ......お前はウィリアムを妬んでる......首領の座を手に入れて......それから......あっ......」
ヘンリーはケイシーの顔を思いきり蹴りつけた......
「ケイシー!!!!」
わしは力を込めて手錠と鎖を引き千切ろうとした......しかしどうにもならなかった......
「もし!! また!! 口を開いたら!! お前と!! 腹の子を!! 殺すぞ!!!」
ヘンリーは繰り返しケイシーを蹴り続けた......顔に......胸に......そして腹部に......
力の限り......
「この野郎!!! やめろ!!! 今すぐやめろ!!!!!!」
ヘンリーはわしの方を振り返った......その目には、わしをどれほど憎んでいるかが滲み出ていた......
「あっ......」
ケイシーの体が明らかに震え始めた......そして彼女の子宮から少しずつ血が流れ始めた......
「医者を......医者を呼んでくれ!!!」
「呼んでもいいよ......誰にも聞こえないけど......」
「彼女を放してくれ......頼む......わしを殺してもいい......だから彼女だけは放してくれ......」
ヘンリーはわしを見た......そして足をわしの顔の前に突き出した......
「じゃあ頭を下げてみろよ......」
わしは痙攣して横たわる妻を見た......そしてわしを見つめるその目には......哀れみを誘う光があった......
わしは魔法封じの手錠をつけた腕を持ち上げ、手を合わせた......そしてヘンリーの足元に、白銀騎士団の首領とは似ても似つかぬ惨めな姿で頭を下げた......
「よくできた......」
ヘンリーが指を鳴らした......兵士たちが部屋に入ってきた......
軍装を見る限り......こいつが統治するレギュラー王国の兵士たちだ。
「では......妻を"助けて"やろう......兵士よ......彼女を"助けろ"......」
しかし兵士たちは、人間と呼ぶには歪んだ顔をしていた......
そして冷たい声で尋ねた......
「"助ける"とは......どういう意味ですか?」
「痙攣して苦しまないようにしてやれ......もう感じなくてもいいようにしてやれ......」
その言葉が終わったとき......わしの目の前に映った光景は......約二十人の兵士が......
わしの妻を......蹂躙していた......
彼女の悲鳴がわしの記憶に刻み込まれた......どれほど忘れたくても忘れられない......
まるで呪いのように......死んでもなお、決して消えることのない記憶として......
彼女は殴られた......蹂躙された......人間ではないものとして扱われた......
あの兵士たちは彼女を使い捨ての物のように扱った......
そして......彼女の体は......その後......
もう動くことがなかった......
わしは叫び続けた......喉が裂けるまで......
彼女は兵士たちに目の前でレイプされて命を落とした......白銀騎士団の首領として、メディア大陸の守護者として......悪魔を退治し、数々の都を築いてきたわしの......すぐ目の前で......
仲間の兵士に妻を守ることすらできなかった......
それを見たヘンリーはわしの頭を掴み上げて顔を見た......
「さて......満足はしたが......まだ完全には満足できてないな......兵士よ......こいつを連れていけ......見せてやろうと思ってな......」
数人の兵士がわしを縛り上げた......ヘンリーはケイシーの亡骸のところへ歩いていった......
そして腹を力いっぱい踏みつけた......
「この野郎!!! 痛っ!!!」
腹を踏みつけられた......なぜこれほど痛いのか......
「白に赤を混ぜたら......ピンクになるよな......」
あの赤は血だ......そして白は......この畜生......
「白をもっと足したら何色になるかな?」
彼は兵士たちを振り返った......しかし兵士たちは顔を見合わせた......そしてヘンリーは......みずから......
ケイシーの亡骸を、辱めた......
「.....................」
部屋にいる全員が黙りこくっていた......目の前で展開される異常な光景を五分間眺め続けた......しかしわしにとって、それは頭が壊れてしまうほど長い時間だった......
「.....................」
「はあ......すっきりした......こいつを生きたまま壺に漬けろ......報酬はあとで出す......」
「は......はっ......」
兵士たちはわしの頭に袋をかぶせて引きずっていった......そして......映像が暗転した......
「.....................」
「だから......この鎧を作ってでも......お前たちの国王を殺したかった......」
ヒメコはただ黙っていた......彼女自身も、彼の過去について何も言えなかった......
「それからあの宝石も取り戻したい......彼女がいつもわしの傍にいてくれている......その証として......」
「......絶対にできますよ......」
「......ありがとう......助けてくれて......お前たち三人がいなかったら......ケイシーのために何をすればいいかもわからなかった......」
「話してくれて良かったですよ......ずっと心に抱えていたものを、少し出せたでしょう......」
「そうだな......」
ウィリアムはソファから立ち上がり......ヒメコの頭をそっと撫でた......
「もう寝なさい......明日は早く起きないといけない......」
「はい......お風呂にも入ってくださいよ......」
「わかってるよ......」
ヒメコは奥へと戻っていった......ウィリアムは自分の手で打ち上げた鎧をもう一度見つめた......
「お前には必ず報いを受けさせる......」
翌朝......
「おはよう......すごい音でうるさかったんですけど......」
「おお......」
二人の少女が目を覚ますと、ジェポンネ出身の友人がウィリアムの鎧の脚部を一緒に打っていた......
「よう......」
ヒメコが気さくに挨拶した......
「二人がこんなに仲良いとは知らなかったわ......」
「ほんとね......まるで親子みたいじゃない......」
ウィリアムとヒメコは顔を見合わせ......それぞれ自分を指差した......
「親子?」
「本当に似てるわよね......ねえリボン......」
「おじさんと姪っ子みたいとも言えるけどね......」
「ちょっと待って......もしわしが本当におじさんなら......なぜお前たちより顔が若いんだ......」
「あら、今ギャグも言うようになったじゃない......」
「でもそれ、おじさんのギャグセンスよね......」
「おじさんって呼ぶのをやめなさい......」
「でも五百歳なんだから......おじさんを通り越してるわよ......」
「顔で割り引いてよ......」
ウィリアムは幸せそうにやり合っている三人の少女を眺めた......かつて妻と一緒に夢見ていた日々を思い浮かべながら......
もしお前がまだいてくれたら......わしたちにもこんな可愛い子どもたちがいたかもしれないな......
ケイシー......お前にこの子たちを見せたかったよ......
「何にやけてるんですか?」
リボンがウィリアムに向かって聞いた......
「なんでもない......ただ、お前たちは本当に仲がいいなと思ってね......」
「当然ですよ......子どもの頃からずっと一緒なんですから......」
「まるで姉妹みたいにね......」
お前も言っていたよ......子どもは三人欲しいって......一人っ子は寂しいから、と......
「さあ......早く食べ物を買ってきてくれ......わしも鎧に魔法を込める作業があるんだ......」
「そうだった......すっかり忘れてた......じゃあ車で行くわ......」
「行ってきます......」
「ああ......気をつけて......」
三人は車に乗って出かけていった......
街の中心部にある図書室で......
「まったく......腹立たしい......」
マルガムは小さな魔法の杖をローブに仕舞い込み、宝石を箱に入れた......
「これで......グリモワールとグレムリンは見つけられるのでしょうか......」
「そうですよ師匠......あいつの情報ルートなしでは、簡単には見つけられませんよ......」
弟子たちが気にした様子もなく話していた......マルガムも返した......
「構わない......それはあとで考える......まずはロイヤルリボンを国王陛下にお渡しすることだ......どうした......」
マルガムは弟子の一人が池田の亡骸を確かめに行ったことに気づいた......しかしその弟子の顔色がたちまち失せた......
「亡骸が......消えています......」
「何だと!?」
マルガムが急いで確かめに行くと......池田の亡骸は本当に消えていた......
「幻惑魔法か......この食えない野郎め!!!」
マルガムは拳を固く握りしめた......しかもそれだけではなかった......
図書室がノイズの入ったテレビのようにちらつき始めた......
そして映像が切り替わり......何もない廃墟となった図書室だけが残った......
「.....................」
「どうしますか?」
「兵士たちを呼んであの小賢しい司書を追いかけさせろ......街中をひっくり返してでも見つけ出せ......」
「はっ!!!」
弟子は店から出ていった......
「わしにこんな真似をするとは......肝が据わっているな......顔を隠す魔法をかけておけ。村人に顔を見られるな......」
「了解......」
「なんで......こんな謀反みたいなことをするんですか......」
早朝......シルバーウィングストン邸で......
ルイスの許可なしには誰も入れないはずの彼の寝室に......今は三人の人物がいた......
この屋敷の現在の主であり第七代聖騎士......ルイス・シルバーウィングストン。
レギュラー王国に忠誠を誓う軍隊長......グラハム・レナー。
そして婚約を破棄された少女の体に転生した少女、クロエ・アンダーソン......つまり私だ。
「これはメグミ様のご命令だ......わしも共に加わることにした......」
三人はそれぞれの持つ情報と計画をすべて共有した......もちろんルイスは全面的に協力する意志を示した......
「私の部下とグラハム殿の信頼できる兵士を合わせても......せいぜい四十人にしかならない......」
「しかし国王直属の軍隊は総勢三万人......勝ち目はない......」
「でも......予知夢には勝利が示されていました......」
ルイスが私の顔を見た......
「はい......その通りです......」
「作戦はどうする?」
私は王宮の地図を二人に広げて見せ......計画を説明した......
「本の中とは少し違いますが......この作戦でいきます......」
計画はこうだ。私がルイスに"偽の"魔法封じの手錠をかけられた状態で捕らわれているふりをしながら王宮に入り、ヘンリー国王を暗殺しやすくする......本の状況から見ると、宮廷魔法使いたちはすでに城外に逃げ出しているはずだった。
だから中位程度の魔法が使える護衛兵が数十人いるだけだった......
戦闘が始まると、私たちの兵士の一部がルイスと共に戦う。
残りの護衛兵と馬鹿王子ヘレンに対応するのはメグミとクロエの役目だ。
そして他の者たちは王宮に押し寄せてくる軍勢を相手に、クーデターが完了するまで時間を稼ぐ......
「この作戦......私たちが圧倒的に不利ですよね......」
グラハムは頭を抱えた......四十人で数万人に勝てるはずがない......
「でも......やってみるしかないでしょう......」
三人は頷いた......そこに扉のノック音が響いた......
「入れ......」
ルイスの部下の兵士が一人入ってきて報告した......
「ただいま、池田様の図書室で騒動が起きています......」
「なんだと......」
知り合いの名前が出てきたとたん、ルイスは立ち上がった......しかし次の言葉を聞いて苦笑いをした......
「現場を確認しましたところ......マルガム様の弟子と思われる魔法使いの死体が入口に積み上がっていました。図書室内の荷物はすべて消えていました......」
「あいつのことだから逃げ出したんだろうな......現場に何か紙はあったか?」
「ありました......"大洋の真ん中"という本の中に挟んであったようです......」
その兵士は一枚の紙をルイスに手渡した。ルイスが声に出して読んだ......
「"この紙を読んでいるということは......宝石はマルガムの手にある"」
彼は私たち三人に向き直った......そして剣を手に取った......
「では......行こう......クーデターの時間だ......」
「はっ!!!」
車の中で......
「信じられないな......このわしが追い剥ぎに遭うとは......しかも弟子を全員やられた上に、兵士を呼びに走った者まで......」
満身創痍のマルガムは、さっきアイケダを始末するのに使った小型の魔法杖をリボンの喉元に突きつけていた......
三人の少女たちは縛り上げられたまま、ただじっと座っていた......
「しかしこれはたいしたものだ......馬車より遥かに速いな......」
「そ......そうですね......」
リボンはマルガムの言う通りに車を走らせ続けるしかなかった......
「ところで......さっきは腹の虫が収まらなかったな......あの狸め、本当に食えない男だったが......ははは......」
彼は低く笑った。そして魔法でリボンを操ろうとした......
しかし......
「?」
操れない......どういうことだ?......
魔力が落ちたのか? それはありえない......
違う......この娘には何か条件があるに違いない......
「おい......ピンク髪の娘......」
「はい?」
「お前の父親と母親は誰だ......」
「わかりません......生まれたときからずっと盗賊の巣にいたので......」
何だって......ただの盗賊の巣の子どもか......いや待て......
そうか......なるほど......だから操れないのか......この娘たちには何らかの魔法がかかっている......
もしかしてこの三人は......十九年前に誘拐された各王国の王女たちとヘンリー国王の間に生まれた子どもたちなのかもしれない......
ほほう......これは面白いものを見つけてしまったな......