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弟のポルックスが一等星。
兄のカストルが二等星。
プラネタリウムでふたご座の解説を知った時、思ったのだ。
その気持ち、とても分かる! と。
※
私は双子の姉の方だ。それも一卵性の。
そのことを特に苦に思ったことはない。よくある「お姉ちゃんなんだから」というセリフも、双子には通じない。便宜上、長女・次女となっているだけで、同じ日に生まれた者同士なのだから。
もちろん仲がいい時も、険悪な時もあった。けれど、気持ちはいつも一緒だった。
私は、自分を輝かせるよりも、妹を輝かせたいと。
だって。
「自慢の妹なんです。私より優秀で運動も出来て、性格も良くて......!」
力説する私に、目の前の男性――有馬さんは目をパチクリとさせた。あっ、と私が思ったのと、お相手の男性が噴き出したのは同時だった。
「あの......確認ですが。今、僕は、あなたとお見合いしているんですよね?」
かぁー、と自分の頬が熱くなる。そうだ、私は今、父の指示でお見合いをしているのだ。
時代遅れかもしれないが、父はそこそこの規模の会社の社長であるし、不動産も保有している。
心に決めた相手がいないのであれば、ある程度同格の家柄のご子息と縁を結びたいという、親心である。
でも、言い訳をさせてほしい。
「元々は妹にきていたお話ですので......」
「それでも今、僕の前に座っているのは、志穂さんだ。妹の奈穂さんじゃない」
「それは......私が他の人と破談になったから......」
「違いますよ。僕が頼んだんです。僕が志穂さんに逢いたかったんです」
有馬さんの言葉に、私は返答に詰まった。
元々私は他の方との縁談をしていたのだ。が、上手くいかなかった。理由は、何度目かの顔合わせの時、お相手の男性が妹に一目惚れしたから。
学生時代からよくある話である。
同じ卵から生まれたのに、奈穂は非情にモテる。才色兼備という言葉が相応しい女性なのだ。そして、性格も私と違って明るくて、誰とでも分け隔てなく接することが出来る。
その裏には沢山の努力をしていたのを私は知っている。勉強に励み、雑誌を見て服装やメイクを研究して。
私にはその努力が出来なかったから、妬みなどはない。むしろ尊敬しているほどだ。
だから特段自分磨きをしてこなかった私より、奈穂の方に目移りするのは仕方ないと思う。
自慢の妹だから。
だけど。
「あっ......! ちょっ......!! すみません!」
面と向かって自分に逢いたかった、と言われると照れてしまう。奈穂に勝った、と思っているわけでもないのに。
私は有馬さんから思わず目を背けてしまった。
そんな私に有馬さんは微笑んで、爆弾を落とした。
「僕はポルックスよりも、カストルの方が好きですよ」
「!?!?」
有馬さんの発言に、私は激しく動揺した。
「な、なんで!? そのことを......!?」
「さあ、何ででしょうか」
有馬さんはイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「この話を知っている、ということは僕たちは初対面じゃない、ということです」
「えっ!? い、いつお会いしましたか!?」
「まだナイショです。頑張って思い出してください」
一瞬、私の中で何かが瞬く。
何かが始まる予感を感じさせるように。
ドギマギしている私の前で有馬さんは、立てた人差し指を唇に当てて、素敵な顔を見せながら笑ったのだった。
(終わり)