生きていけるわけがない
学校の帰りだった、コンビニに寄ってフライドチキン買って、のんびり帰るだけだった
それなのに視界がぐにゃりと歪み、次の瞬間には石造りの広間に立っていた
「......え、ちょっと待って、なに」
ーここ
最後の言葉は出せなかった
周囲には同じ学校の人達数名(制服が違う学生も見た)と何人かの大人、そして中世みたいな派手な装束の人々。
中央で王様らしき人物が声を張り上げる。
「勇者よ!魔王討伐のため、異世界へようこそ!」
幸はそっと一歩下がった。
勇者?異世界ってこと??
魔王とうばつ、ぶきをとる???
ぶき、武器
武器=戦闘=死
―もしかしてまきこまれた?
知らない場所
知らない人
知らない言語(っぽいけどなぜか理解できる)
視線が自分に向く
息がうまく吸えない
「ヒュッ......」
ぐにゃりと視界が歪んで直ぐに自分の膝ががくりと折れた。
誰かが名前を呼んだ気がしたが、もう聞こえなかった
石の床が近づき、世界が暗く沈んだ
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幸が寝かされた客間は静かだった
メイドのテリーナが布団を整え、執事のアーヴィンが魔法板を確認している
姫はゆっくりと扉を閉め、3人だけの空間になると、表情をふっと変えた。
さっきまでの慈悲深い微笑みは消え、冷たい光が瞳に宿る
「......で、アーヴィン
あの娘のスキル、どういうものなのか分かりました?」
執事は慎重に答える。
「いえ、姫様
『コンビニ』という単語自体が、こちらの言語体系に存在しません
翻訳魔法でも意味が出てこないのです」
姫は小さく舌打ちした。
「役に立つのか立たないのかも分からないなんて... 召喚は便利でも不便でもありますね」
テリーサが不安そうに幸を見つめる。
「姫様......この者は勇者ではありませんし、魔法版を確認しても巻き込まれただけと書いてあります
この者の処罰は......?」
姫はゆっくりとテリーナに視線を向けた。
その目は、優しさではなく“支配者の目”だった。
「テリーサ?
召喚者は全員、王国の資源よ。
使えるかどうか判断するのは私
帰すかどうか決めるのも私
少なくとも、お父様に権限は与えられているわ
召喚された者達の後ろ盾も権限も私にあります」
テリーサは直ぐに頭を下げた
「......申し訳ありません、姫様」
姫は幸の寝顔を見下ろし、冷たい声で続けた。
「この娘が役に立つなら利用する。
役に立たないなら......他の勇者の士気を上げるための“慰めモノ”にでもしておけばいいわ」
アーヴィンが静かに頷く。
「では、スキルの調査を進めます。『コンビニ』という言葉を知っている召喚者がいるかどうか、他の者に聞き回りましょう」
姫は指先で幸の頬を軽くつつく。
「そうして。
この子が何者で、何ができるのか......全部調べておきたいの」
「この娘はキタムラ・サチ(喜多村幸)という名前なのはわかっておりますが、ほかの召喚者には顔見知りがいるかはさておき、この“コンビニ”のスキルだけでも知っておかなければ行けませんね」
アーヴィンが魔法版を見ながら淡々と答えた
そしてテリーサが恐る恐る尋ねる
「姫様......起きたら、どう扱われるのでしょうか」
姫は微笑んだ。
それは広間で見せた優しい笑みと同じ形なのに、まったく違う意味を持っていた。
「もちろん、優しくするわ。
怯えた子ほど、従わせやすいもの
起きるまでしばらくみてあげて」
「承知しました」
テリーサ、アーヴィンは淡々と頷いた
手元には今回の召喚者が書かれているメモ帳がある
名前、性別、スキル、魔力量
姫は幸の寝顔を見つめながら、低く囁いた
「さあ......あなたの“コンビニ”とやら、どれほどの価値があるのかしらね」
その瞬間、幸の手元で光が揺れた
《K-MART 開店準備中》
姫の目が細くなる。
「......勝手に動くのね。面白いじゃない」
異世界の文字が浮かんだ、この国では召喚者に対して、文字を学んでいたりしているが、漢字の読み方、特に日本語に関しては読み方が多いせいか未だ読めていないものが多い
それが幸いなのか、姫は読み方の意味を気づきもしなかった