ホーム折り紙少女と不思議な力 ~君の手の上で、私の折り紙は動き出す~2-4:ポチの導き
← 前の話目次次の話 →

2-4:ポチの導き

 ポチはせっせとあちこちを嗅ぎ回っているけど、イヤリングはなかなか見つからない。
 だんだん日が暮れ始めてきて、私は内心で焦っていた。
「見つからないね......」
 そりゃそうだよ。本物の警察と警察犬ならともかく、私たちはただの中学生と折り紙だもの。
 雪谷くんも見つからないことに苛立ってきているようだった。でも、その方向性は私とは違った。
「おっかしいな。ばあちゃんだったら、もっと簡単に見つけられたと思うんだけどな」
「そんなにすごかったの?」
 雪谷くんは目を見開いた。
「ああ、すごかったよ。鳥はビュンビュン飛び回ってたし、ゴリラは物を持ち上げるくらいの力があった」
「ええ......?」
 さすがにそれは信じられないな。子どもの頃の記憶を美化しているのか、それとも話を盛っているのか。
 でも、それがもし本当なのだとしたら......。
「......私の折り紙だと、いまいちなのかな」
 私はぽつりと言った。
 ポチは動いてくれている。ちゃんと頑張って探してくれている。
 でも、見つからない。
 私と雪谷くんのおばあちゃんは、何が違うんだろう。
「なんだろう、もっと上手に折らないとダメかな......」
「違う」
 雪谷くんは突然大きな声を出した。
 私はびっくりして雪谷くんの方を向いた。
「荻目の折り紙は上手だよ。ダメじゃない」
「でも、おばあちゃんのはすごかったんでしょ」
「ああ。でも、上手とか上手じゃないとか、そういうすごさじゃなかった気がするんだよな......」
 そう言って、雪谷くんは考え込んでしまった。
 私はポチをそっとつかみ上げた。
「ねえポチ。私は加藤くんのイヤリング、どうしても見つけたいの。大切なイヤリングなの」
 ポチは首をかしげた。
 寂しがり屋の加藤くんのために、お姉ちゃんがあげたイヤリング。
 そして、それを今でも肌身離さず着けている加藤くん。
 二人の間の愛情を思うと、胸がキュッとなる。
「どうか、お願い......!」
 ポチは私の手の中で、少しだけ震えた。まるで「わかった」と返事をするみたいに。
 すると、ポチはふわっと温かくなり、少しだけ光を帯びた気がした。
 ポチは私の手を飛び降りた。そして、鼻をふんふんと鳴らしながら、力強く歩き始めた。
 明らかに、ポチの動きが変わった。はっきりと、探し物という目的を持って歩いているように見える。
「おい、ポチどうした」
 雪谷くんが驚いてその後を付いていく。
 少し歩いてから、ポチは立ち止まってこちらを見た。
 そして、ワン! と力強く吠えた。
 慌てて雪谷くんがそれを制する。
「しーっ! 吠えなくてもわかるから!」
「ねえ、ここって......」
 ポチが示した場所は、私たちのクラスの教室だった。
「さっきも来なかったっけ?」
 しかし、ポチが迷いなく教室の中へ入っていくので、私たちもそれに従う。
 ポチは教室を隅々まで嗅ぎまわっている。
 教卓の前に立ったポチは、細長い足を床との隙間に差し込んだ。
 すると、出てきた。金色の小さな輪っかが。
「うお! これ!」
 雪谷くんはそれを拾い上げて、しっかりと確認した。
「多分あいつのイヤリングだ......!」
「本当⁉」
「ああ、この細い感じ、きっとそうだと思う。うちのクラスでイヤリングしてるやつ、他にいないし」
「よかった......! すごいよポチ!」
「ワン‼」
「しーっ!」

 加藤くんに連絡をすると、学校の外のお店で時間をつぶしていると言っていた。
 イヤリングが見つかったことを伝えて、外で合流する。
「これだろ」
「マジか!」
 イヤリングを渡された加藤くんは、飛び上がりそうなほどに驚き、そして喜んでいた。
「ありがとう! マジでありがとう!」
「ポチのおかげだよ」
 私は鞄からポチを取り出し、加藤くんに手渡した。
「おお、そうか! お前は名犬だな! 本当にありがとう!」
 ポチも嬉しそうに尻尾を振っていた。
「えへへ、お姉ちゃんの大事なイヤリング、見つかって本当によかったよ」
 私がそう言うと、加藤くんは目を見開き、石のように固まってしまった。
「......淳だな?」
 加藤くんは雪谷くんをギロリとにらんだ。雪谷くんはニヤニヤしている。
「人に話すなって言っておいただろ」
「おいおい、見つける手伝いをしたんだぞ。荻目にはそのくらい話したって構わねえだろ」
「うん、きょうだいを大切に思う気持ちは素敵だと思うよ」
 私が肯定すると、加藤くんの顔は赤く染まり、
「うるせー」
 そう言って雪谷くんのことを蹴った。
「なんで俺」
「知るか!」
「あはは」
 私はその様子を見ていて、思わず笑いがこみあげてしまった。
 本当によかった。加藤くんが嬉しそうで。
 加藤くんのために、私の折り紙が役に立って。
 私は晴れ晴れとした気持ちで、言い争う二人の後を付いて歩いた。
シェア
← 前の話
2-3:加藤くんとお姉ちゃん
次の話 →
3-1:秘密の音楽室
折り紙少女と不思議な力 ~君の手の上で、私の折り紙は動き出す~作者:大山大チ
目次を見る
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません
ホーム折り紙少女と不思議な力 ~君の手の上で、私の折り紙は動き出す~2-4:ポチの導き
← 前の話目次次の話 →

2-4:ポチの導き

 ポチはせっせとあちこちを嗅ぎ回っているけど、イヤリングはなかなか見つからない。
 だんだん日が暮れ始めてきて、私は内心で焦っていた。
「見つからないね......」
 そりゃそうだよ。本物の警察と警察犬ならともかく、私たちはただの中学生と折り紙だもの。
 雪谷くんも見つからないことに苛立ってきているようだった。でも、その方向性は私とは違った。
「おっかしいな。ばあちゃんだったら、もっと簡単に見つけられたと思うんだけどな」
「そんなにすごかったの?」
 雪谷くんは目を見開いた。
「ああ、すごかったよ。鳥はビュンビュン飛び回ってたし、ゴリラは物を持ち上げるくらいの力があった」
「ええ......?」
 さすがにそれは信じられないな。子どもの頃の記憶を美化しているのか、それとも話を盛っているのか。
 でも、それがもし本当なのだとしたら......。
「......私の折り紙だと、いまいちなのかな」
 私はぽつりと言った。
 ポチは動いてくれている。ちゃんと頑張って探してくれている。
 でも、見つからない。
 私と雪谷くんのおばあちゃんは、何が違うんだろう。
「なんだろう、もっと上手に折らないとダメかな......」
「違う」
 雪谷くんは突然大きな声を出した。
 私はびっくりして雪谷くんの方を向いた。
「荻目の折り紙は上手だよ。ダメじゃない」
「でも、おばあちゃんのはすごかったんでしょ」
「ああ。でも、上手とか上手じゃないとか、そういうすごさじゃなかった気がするんだよな......」
 そう言って、雪谷くんは考え込んでしまった。
 私はポチをそっとつかみ上げた。
「ねえポチ。私は加藤くんのイヤリング、どうしても見つけたいの。大切なイヤリングなの」
 ポチは首をかしげた。
 寂しがり屋の加藤くんのために、お姉ちゃんがあげたイヤリング。
 そして、それを今でも肌身離さず着けている加藤くん。
 二人の間の愛情を思うと、胸がキュッとなる。
「どうか、お願い......!」
 ポチは私の手の中で、少しだけ震えた。まるで「わかった」と返事をするみたいに。
 すると、ポチはふわっと温かくなり、少しだけ光を帯びた気がした。
 ポチは私の手を飛び降りた。そして、鼻をふんふんと鳴らしながら、力強く歩き始めた。
 明らかに、ポチの動きが変わった。はっきりと、探し物という目的を持って歩いているように見える。
「おい、ポチどうした」
 雪谷くんが驚いてその後を付いていく。
 少し歩いてから、ポチは立ち止まってこちらを見た。
 そして、ワン! と力強く吠えた。
 慌てて雪谷くんがそれを制する。
「しーっ! 吠えなくてもわかるから!」
「ねえ、ここって......」
 ポチが示した場所は、私たちのクラスの教室だった。
「さっきも来なかったっけ?」
 しかし、ポチが迷いなく教室の中へ入っていくので、私たちもそれに従う。
 ポチは教室を隅々まで嗅ぎまわっている。
 教卓の前に立ったポチは、細長い足を床との隙間に差し込んだ。
 すると、出てきた。金色の小さな輪っかが。
「うお! これ!」
 雪谷くんはそれを拾い上げて、しっかりと確認した。
「多分あいつのイヤリングだ......!」
「本当⁉」
「ああ、この細い感じ、きっとそうだと思う。うちのクラスでイヤリングしてるやつ、他にいないし」
「よかった......! すごいよポチ!」
「ワン‼」
「しーっ!」

 加藤くんに連絡をすると、学校の外のお店で時間をつぶしていると言っていた。
 イヤリングが見つかったことを伝えて、外で合流する。
「これだろ」
「マジか!」
 イヤリングを渡された加藤くんは、飛び上がりそうなほどに驚き、そして喜んでいた。
「ありがとう! マジでありがとう!」
「ポチのおかげだよ」
 私は鞄からポチを取り出し、加藤くんに手渡した。
「おお、そうか! お前は名犬だな! 本当にありがとう!」
 ポチも嬉しそうに尻尾を振っていた。
「えへへ、お姉ちゃんの大事なイヤリング、見つかって本当によかったよ」
 私がそう言うと、加藤くんは目を見開き、石のように固まってしまった。
「......淳だな?」
 加藤くんは雪谷くんをギロリとにらんだ。雪谷くんはニヤニヤしている。
「人に話すなって言っておいただろ」
「おいおい、見つける手伝いをしたんだぞ。荻目にはそのくらい話したって構わねえだろ」
「うん、きょうだいを大切に思う気持ちは素敵だと思うよ」
 私が肯定すると、加藤くんの顔は赤く染まり、
「うるせー」
 そう言って雪谷くんのことを蹴った。
「なんで俺」
「知るか!」
「あはは」
 私はその様子を見ていて、思わず笑いがこみあげてしまった。
 本当によかった。加藤くんが嬉しそうで。
 加藤くんのために、私の折り紙が役に立って。
 私は晴れ晴れとした気持ちで、言い争う二人の後を付いて歩いた。
シェア
← 前の話
2-3:加藤くんとお姉ちゃん
次の話 →
3-1:秘密の音楽室
折り紙少女と不思議な力 ~君の手の上で、私の折り紙は動き出す~作者:大山大チ
目次
コメント0
ログインしてコメントする
まだコメントがありません