ホーム›転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜›第2章 隠世の問題編 - 第5話「管理所は今日も通常運転」
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第2章 隠世の問題編 - 第5話「管理所は今日も通常運転」


再び廊下を進んでいくと、『妖魔力環境課』の看板が見えた。

「あ、蔓実ツルミさんのところだ」
「こちらは担当の蔓実ツルミ職員から直接話を聞いておられましたよね」

美月は朝方会ったばかりの植物系美人を思い出す。

見目麗しい、エルフのような綺麗な見た目。
細い手足を飾るように、植物の蔓が巻き付き、神秘さを引き立たせていた。

しかしその中身は、田舎の農家のおばちゃん。

「絶対映像と音声の出力間違えてるよ...」

美月の脳は、未だ蔓実ツルミのギャップを受け入れられていなかった。

「個性的な言語を話す方なのでなかなか聞き取れない者も多いのですが、美月さんには分かるのですね」
「はい。ゴリッゴリの秋田弁でした」
「“あきたべん?”」
「人間界の、東北地方にある言語です」
「“とうほくちほう?”」
「ダメだマジカルバナナ始まる!」

奥では数名の職員が、水の入った瓶や土らしきものを覗き込んでいた。

その中に蔓実ツルミの姿もあり、美月に気づいた瞬間、ぱっと顔を上げた。

「美月ー!まだんめぇの持ってこいよー!」
「やっぱりおかわりきた!」
「人気じゃねぇか」
「人気の方向が直売所なんだよ!」

軽く手を振り返し、そのまま次へ進む。

少し歩くと、これまでより明らかに慌ただしい窓口が見えてきた。

看板には『災異治安対応課』と表示されている。 

「名前からして忙しそう」
「実際、忙しい部署ですよ」

百之鬼モモノキが答えた直後、奥から職員達の声が聞こえる。

「また例の畑か?」
「あぁ。最近、火炎系能力を扱う妖が農地を荒らして回っているらしい」

美月の足が止まった。

「畑!?」

ジャジーも眉を上げる。

職員達は美月達には気づかず、資料を見ながら話を続けていた。

「青札の者を向かわせてはいるが、人員が足りん。陸を住処とする青札は少ないからな」
「総務管理課へ応援を相談するか?」
「いや、それなら種族支援課ではないか?」

職員2人組は腕を組み、黙る。

「役所も担当迷子になるんだ......」
「たらい回しになることはよくあります」
「なんか、風邪で内科行ったら『耳鼻科行け』って言われて、耳鼻科行ったら『内科行け』って言われたの思い出した」
「何度も往復した結果、まったく違う部署に回されることもあります」
「内科でもなく耳鼻科でもなく呼吸器科だったってことかぁ......」

人間であれば美月の例えはわかる。
しかしこの場には、そこにツッコむことのできる者はいなかった。

その横でジャジーが小さく舌打ちをした。

「火炎系かよ。羽持ちには面倒くせぇ相手だな」
「ジャジー、火苦手なの?」
「苦手っつーか相性が悪ィ。風起こしゃ燃え広がるし、羽焼かれりゃ飛べねぇ」
「苦手なんじゃん」
「プライド守らせろよ!」

百之鬼モモノキは旗を次の通路へ向けた。

「では、こちらへ」

続いて現れたのは、『風聞対策課』の文字。

「“風聞”って、噂?」
「はい。伝承、噂、誤認、人間界から流入した情報などを扱います」
「噂まで行政案件なの?」

美月が首を傾げた時、窓口の奥から声が聞こえた。

「氷海で新しい目撃情報だ」
「例の、翼のある者か?」
「そうだ。天使のような姿だったと」
美月が振り返る。
「天使?」
「まだ情報が少ないようですね」

百之鬼モモノキはそれだけ答えた。

「害があるという報告は?」
「今のところない」

職員達はこちらを気にする様子もなく、慌ただしく資料を確認している。

美月は少しだけ興味を引かれたものの、旗はすでに先へ進んでいた。

「待って百之鬼さん歩くの早い!」
「もう少しで私も休憩時間になりますので」
「ツアーガイドが急に現実的!」

次に現れたのは『境界管理課』。

「こちらでは、人間界と隠世を含む各領域間の境界、裂け目、誤侵入などを管理しています」

美月は真顔になった。

「私、ここ案件だったんじゃないですか?」
「出生時点では、また別ですね」
「私の人生、担当部署多くない?」
「今さらじゃねぇか?」
「ジャジーにだけは言われたくない!」

そのまま巨大な吹き抜けを一周し、美月は指を折る。

「在魂課、総務管理課、捜索監視課、種族支援課、妖魔力環境課、災異治安対応課、風聞対策課、境界管理課......」

途中で指が足りなくなった。

「役所っていうより、もう国じゃない?」
「管理所です」
「名前の規模感だけ頑な!」

百之鬼モモノキが笑いながら旗を下ろす。

「本日のご案内は、ひとまず以上ですね」
「......あれ?」

美月は案内板を見上げた。
まだ見ていない部署、『幼怪課』が残っている。

「あちらは担当職員が現在外勤中なのです」
「“幼”怪って......もしかして子ども関係?」
「はい。人間界で言う、子ども家庭課に近いですね。今各家庭に訪問し、妖育の悩みを調査しているところです」
「保健師さんの家庭訪問みたいなことまでやってるんだ!?」

美月が字面をしげしげと見つめる。

看板の周りには、画用紙のような紙で作成した一反木綿や唐傘小僧などの装飾が貼り付けてある。

「一反木綿と唐傘小僧ってマスコット枠なんだ...」

そして、百之鬼モモノキは再び旗を持ち上げた。

「担当が戻りましたら後日ご紹介しますので、今日はこの辺にしましょうか」
「はい。ありがとうございました」

その隣でジャジーが腹を押さえた。

「やっとツアー終わったか」
「うん。また紹介してくれるって」
「じゃあキス」
「先に帰宅!」
「チッ」
「舌打ち3回目!」

巨大な管理所の中央に、美月の声がよく響いた。




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再び廊下を進んでいくと、『妖魔力環境課』の看板が見えた。

「あ、蔓実ツルミさんのところだ」
「こちらは担当の蔓実ツルミ職員から直接話を聞いておられましたよね」

美月は朝方会ったばかりの植物系美人を思い出す。

見目麗しい、エルフのような綺麗な見た目。
細い手足を飾るように、植物の蔓が巻き付き、神秘さを引き立たせていた。

しかしその中身は、田舎の農家のおばちゃん。

「絶対映像と音声の出力間違えてるよ...」

美月の脳は、未だ蔓実ツルミのギャップを受け入れられていなかった。

「個性的な言語を話す方なのでなかなか聞き取れない者も多いのですが、美月さんには分かるのですね」
「はい。ゴリッゴリの秋田弁でした」
「“あきたべん?”」
「人間界の、東北地方にある言語です」
「“とうほくちほう?”」
「ダメだマジカルバナナ始まる!」

奥では数名の職員が、水の入った瓶や土らしきものを覗き込んでいた。

その中に蔓実ツルミの姿もあり、美月に気づいた瞬間、ぱっと顔を上げた。

「美月ー!まだんめぇの持ってこいよー!」
「やっぱりおかわりきた!」
「人気じゃねぇか」
「人気の方向が直売所なんだよ!」

軽く手を振り返し、そのまま次へ進む。

少し歩くと、これまでより明らかに慌ただしい窓口が見えてきた。

看板には『災異治安対応課』と表示されている。 

「名前からして忙しそう」
「実際、忙しい部署ですよ」

百之鬼モモノキが答えた直後、奥から職員達の声が聞こえる。

「また例の畑か?」
「あぁ。最近、火炎系能力を扱う妖が農地を荒らして回っているらしい」

美月の足が止まった。

「畑!?」

ジャジーも眉を上げる。

職員達は美月達には気づかず、資料を見ながら話を続けていた。

「青札の者を向かわせてはいるが、人員が足りん。陸を住処とする青札は少ないからな」
「総務管理課へ応援を相談するか?」
「いや、それなら種族支援課ではないか?」

職員2人組は腕を組み、黙る。

「役所も担当迷子になるんだ......」
「たらい回しになることはよくあります」
「なんか、風邪で内科行ったら『耳鼻科行け』って言われて、耳鼻科行ったら『内科行け』って言われたの思い出した」
「何度も往復した結果、まったく違う部署に回されることもあります」
「内科でもなく耳鼻科でもなく呼吸器科だったってことかぁ......」

人間であれば美月の例えはわかる。
しかしこの場には、そこにツッコむことのできる者はいなかった。

その横でジャジーが小さく舌打ちをした。

「火炎系かよ。羽持ちには面倒くせぇ相手だな」
「ジャジー、火苦手なの?」
「苦手っつーか相性が悪ィ。風起こしゃ燃え広がるし、羽焼かれりゃ飛べねぇ」
「苦手なんじゃん」
「プライド守らせろよ!」

百之鬼モモノキは旗を次の通路へ向けた。

「では、こちらへ」

続いて現れたのは、『風聞対策課』の文字。

「“風聞”って、噂?」
「はい。伝承、噂、誤認、人間界から流入した情報などを扱います」
「噂まで行政案件なの?」

美月が首を傾げた時、窓口の奥から声が聞こえた。

「氷海で新しい目撃情報だ」
「例の、翼のある者か?」
「そうだ。天使のような姿だったと」
美月が振り返る。
「天使?」
「まだ情報が少ないようですね」

百之鬼モモノキはそれだけ答えた。

「害があるという報告は?」
「今のところない」

職員達はこちらを気にする様子もなく、慌ただしく資料を確認している。

美月は少しだけ興味を引かれたものの、旗はすでに先へ進んでいた。

「待って百之鬼さん歩くの早い!」
「もう少しで私も休憩時間になりますので」
「ツアーガイドが急に現実的!」

次に現れたのは『境界管理課』。

「こちらでは、人間界と隠世を含む各領域間の境界、裂け目、誤侵入などを管理しています」

美月は真顔になった。

「私、ここ案件だったんじゃないですか?」
「出生時点では、また別ですね」
「私の人生、担当部署多くない?」
「今さらじゃねぇか?」
「ジャジーにだけは言われたくない!」

そのまま巨大な吹き抜けを一周し、美月は指を折る。

「在魂課、総務管理課、捜索監視課、種族支援課、妖魔力環境課、災異治安対応課、風聞対策課、境界管理課......」

途中で指が足りなくなった。

「役所っていうより、もう国じゃない?」
「管理所です」
「名前の規模感だけ頑な!」

百之鬼モモノキが笑いながら旗を下ろす。

「本日のご案内は、ひとまず以上ですね」
「......あれ?」

美月は案内板を見上げた。
まだ見ていない部署、『幼怪課』が残っている。

「あちらは担当職員が現在外勤中なのです」
「“幼”怪って......もしかして子ども関係?」
「はい。人間界で言う、子ども家庭課に近いですね。今各家庭に訪問し、妖育の悩みを調査しているところです」
「保健師さんの家庭訪問みたいなことまでやってるんだ!?」

美月が字面をしげしげと見つめる。

看板の周りには、画用紙のような紙で作成した一反木綿や唐傘小僧などの装飾が貼り付けてある。

「一反木綿と唐傘小僧ってマスコット枠なんだ...」

そして、百之鬼モモノキは再び旗を持ち上げた。

「担当が戻りましたら後日ご紹介しますので、今日はこの辺にしましょうか」
「はい。ありがとうございました」

その隣でジャジーが腹を押さえた。

「やっとツアー終わったか」
「うん。また紹介してくれるって」
「じゃあキス」
「先に帰宅!」
「チッ」
「舌打ち3回目!」

巨大な管理所の中央に、美月の声がよく響いた。




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