ホーム›転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜›第5章 深まる関係編 - 第1話「再審議」
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第5章 深まる関係編 - 第1話「再審議」


翌日。

朝食を終えた美月は、食器を片づけるなり卓の前へ戻ってきた。

手には一枚の紙。
そこへ妙に真剣な顔で向き合うと、ぺんっと卓上へ置いた。

「緊急会議を開催します」
「また会議かよ!」

向かいにいたジャジーが即座に顔をしかめた。

「今回はわりかし重要度が高いです!」
「なら必要でござるな」

鳳ほうは理由すら聞かず、素直に席につく。

文句を言っていたジャジーも結局その隣へ腰を下ろし、三人が卓を囲んだ。

美月は紙の上部を指で叩く。

「今回の議題は、補給についてです」
「前回話さなかったか?」
「再審議が必要になったもので!」

ぺしっ。
もう一度、紙を叩く。

「前回、ジャジーは二日に一回、鳳ほうは三日に一回という話をしました」
「したでござるな」
「ですが!」

美月は勢いよく顔を上げた。

「あれって、戦闘だったり妖力を使ったりしなければ、っていう最大航続のリミットだよね?」
「そうだな」
「左様にござる」
「じゃあ今やってることってギリッギリ目的地に到着するガソリンの入れ方ってことじゃん!」

朝の居間に声が響いた。

「俺は平気だぞ」

ケロリとした顔で告げるジャジーに、美月は眉を寄せた。

「そういえばジャジーは最近ナチュラルに私を抱き上げたり触ったりしてるけど、それって毎日ちょくちょく補給されてるってことだよね?」
「拙者もそれは思ったでござる」
「あれはスキンシップだろ!」
「でも実際、ちょっとは回復してるでしょ?」
「......してる」

ジャジーはバツが悪そうに口元を引き締め、顔を逸らした。

「だがキスじゃねぇから、まとまった量ではねぇけどな」

美月がぴたりと止まった。

「でも、それで元気ならキス必要なくない?」
「それ切られたら俺メンタルが死ぬ!」
「まだ恋人じゃないもん」
「俺淫魔だぞ?淫魔に禁欲させるとか個性殺しにかかってんだろ」
「知らないよ!残ったハーピーの神聖さだけ出しといて!」
「今のハーピーは精霊っつーか、略奪する怪物寄りだぞ」
「救いがない!」
「話が進まぬ」

鳳ほうの静かな一言で、二人が止まる。
美月はこほん、と咳払いした。

「っていうかジャジーはいいの!とりあえず元気だから!」
「元気で片付けんな!」
「問題は鳳ほうだよ!」
「......拙者か」

美月は鳳ほうへ向き直り、指を一本立てた。

「まず前提として、一人我慢大会は今後一切禁止!」
「......承知したでござる......」

露骨に声が小さい。

「で、本題。戦闘とか、青札あおふだとしての任務とか含めて、何日に一回補給できれば安全圏?」
「............」
「ギリギリで見積もらないでよ?ちゃんと健康運用可能な補給でよろしくね」

長い沈黙のあと、鳳ほうが観念したように口を開いた。

「......ごく少量......」
「うん」
「それを毎日いただければ、問題はないでござる......」
「毎日だぁ!?」

ジャジーが卓へ身を乗り出した。

「俺はキス切られかけてんのに、お前は毎日美月のどっかに口つけんのかよ!」
「お主の補給とはわけが違うでござる!」
「それ以上喧嘩したら今日の補給ありません」
「悪ィ」
「申し訳ござらぬ」

一秒で静かになった。

美月は二人を見比べ、少し考える。

「......まぁ、ジャジーの主張は分からなくもない......」
「だろ?」
「仕方ない。ジャジーは二日に一回のキスは継続。私からの返事待ってくれてるし、つまみ食いは目を瞑ります」

しかしジャジーは笑わなかった。

「それは違ぇ」
「え?」
「俺は、お前がしたくねぇもんを無理にさせるつもりはねぇ」

美月が目を瞬く。

「......ジャジー......」
「罪悪感で許可されても嬉しくねぇし、美味くねぇし、虚しいだけだ。回復すること以外になんもいいことねぇ」

予想していなかった言葉に、美月は少し黙った。

やがて頬を赤くし、視線を卓へ落とす。

「......嫌じゃ、ない......」

耳まで赤く染まる。

「ただ......最近のジャジー、積極的すぎて......。私の心臓が保たないだけ......」

ギュン。

明らかにジャジーの中で何かのメーターが高まった。

美月が顔を上げた。

「なんか今聞こえた気がする」
「音はしてねぇ」
「概念擬音が聞こえた」
「もはや哲学でござる」

ジャジーはすっかり緩んだ口元を隠す気もなく、美月へ顔を寄せる。

「......俺とキスするの、嫌じゃねぇんだな?」
「......うん」
「ならいい。二日に一回で耐えてやる」
「上から!」
「淫魔がキスで我慢してんだ。嫌じゃねぇって聞いてなお二日に一回でいいとか、かなり譲歩してんだろ」
「私の心臓が二日に一回小爆発するぅ......」

その横で、鳳ほうが静かに美月を見ていた。

「......美月殿」
「あ、ずっと静かに待っててくれててありがとう、鳳ほう。なぁに?」
「......」
「鳳ほう?」
「......何でもござらぬ......」

美月の目が細くなる。

「溜めてからの『何でもござらぬ』は何でもあるんだよ」

鳳ほうの視線がわずかに泳いだ。

「......海から帰宅次第、伝えたいことがあるでござる」
「?わかった」

美月は特に追及せず、ぱん、と手を叩いた。

「じゃあまとめます!ジャジーは二日に一回、昼のキス継続。スキンシップは今の常識の範囲内で」
「恐ろしいほど色気がねぇ......」
「会議内容のまとめに色気求めないで!」

紙へ視線を戻す。

「鳳ほうは毎夜ごく少量ね。あと海から帰宅次第、何か私に伝達があるということで」
「......うむ」
「じゃあ会議終了!ちょっとこの紙あっちに仕舞ってくるね」

美月が席を立ち、居間から出ていく。

その足音が遠ざかった途端。

「鳳ほう」

ジャジーが鳳ほうを呼んだ。

「何でござるか」
「キスしてぇって伝えんだろ」

ジャジーの正確な推測と確信を持った目に、鳳ほうの肩が跳ねた。

「お主はなぜそういった勘が鋭いのだ!」
「淫魔の下心センサー舐めんな」
「......まだ、返事は頂いておらぬ」
「だからなんだ」

鳳ほうは少し黙ったあと、低く続けた。

「......しかし、返事を頂いていないからといって、我慢するものでもござらぬ」
「おー」

ジャジーの眉と口角が上がる。

「隠世かくりよと人間界の恋愛、絶妙に混ぜたな」
「一人我慢大会をするなと申されたゆえ」
「俺も我慢してる。実質、一人我慢大会じゃねぇな」
「我慢の度合いに大幅な差があるでござる!」
「お前が引っ込めすぎなんだよ!出す方の練習しろ!」
「お主は遠慮や配慮といったものを頭に入れるべきでござる!」
「二人とも、出すとか入れるとかなんの話?」

いつの間にか戻っていた美月が、きょとんと首を傾げている。

「......」
「......」

ジャジーが遠い目をした。

「縫い合わせた語彙ごいが事故ってんな」
「この話は終いでござる」
「なんか急に話が締まったね?」
「お前もう喋んな」
「なんで!?」

ジャジーが額を押さえた。

「“入れる”、“締まった”、“出す”はアウトだ!」
「玉突き事故でござる」
「“玉突き”追加すんな!」
「もうほんとさっきからなんの話なの〜!?」

朝の拠点に、美月の悲鳴が響いた。

深まっていく、ジャジーと鳳ほうとの関係。

その第一歩目の品位は、非常に危うかった。




第5章 深まる関係編 - 第1話
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転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜作者:桜桃
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第5章 深まる関係編 - 第1話「再審議」


翌日。

朝食を終えた美月は、食器を片づけるなり卓の前へ戻ってきた。

手には一枚の紙。
そこへ妙に真剣な顔で向き合うと、ぺんっと卓上へ置いた。

「緊急会議を開催します」
「また会議かよ!」

向かいにいたジャジーが即座に顔をしかめた。

「今回はわりかし重要度が高いです!」
「なら必要でござるな」

鳳ほうは理由すら聞かず、素直に席につく。

文句を言っていたジャジーも結局その隣へ腰を下ろし、三人が卓を囲んだ。

美月は紙の上部を指で叩く。

「今回の議題は、補給についてです」
「前回話さなかったか?」
「再審議が必要になったもので!」

ぺしっ。
もう一度、紙を叩く。

「前回、ジャジーは二日に一回、鳳ほうは三日に一回という話をしました」
「したでござるな」
「ですが!」

美月は勢いよく顔を上げた。

「あれって、戦闘だったり妖力を使ったりしなければ、っていう最大航続のリミットだよね?」
「そうだな」
「左様にござる」
「じゃあ今やってることってギリッギリ目的地に到着するガソリンの入れ方ってことじゃん!」

朝の居間に声が響いた。

「俺は平気だぞ」

ケロリとした顔で告げるジャジーに、美月は眉を寄せた。

「そういえばジャジーは最近ナチュラルに私を抱き上げたり触ったりしてるけど、それって毎日ちょくちょく補給されてるってことだよね?」
「拙者もそれは思ったでござる」
「あれはスキンシップだろ!」
「でも実際、ちょっとは回復してるでしょ?」
「......してる」

ジャジーはバツが悪そうに口元を引き締め、顔を逸らした。

「だがキスじゃねぇから、まとまった量ではねぇけどな」

美月がぴたりと止まった。

「でも、それで元気ならキス必要なくない?」
「それ切られたら俺メンタルが死ぬ!」
「まだ恋人じゃないもん」
「俺淫魔だぞ?淫魔に禁欲させるとか個性殺しにかかってんだろ」
「知らないよ!残ったハーピーの神聖さだけ出しといて!」
「今のハーピーは精霊っつーか、略奪する怪物寄りだぞ」
「救いがない!」
「話が進まぬ」

鳳ほうの静かな一言で、二人が止まる。
美月はこほん、と咳払いした。

「っていうかジャジーはいいの!とりあえず元気だから!」
「元気で片付けんな!」
「問題は鳳ほうだよ!」
「......拙者か」

美月は鳳ほうへ向き直り、指を一本立てた。

「まず前提として、一人我慢大会は今後一切禁止!」
「......承知したでござる......」

露骨に声が小さい。

「で、本題。戦闘とか、青札あおふだとしての任務とか含めて、何日に一回補給できれば安全圏?」
「............」
「ギリギリで見積もらないでよ?ちゃんと健康運用可能な補給でよろしくね」

長い沈黙のあと、鳳ほうが観念したように口を開いた。

「......ごく少量......」
「うん」
「それを毎日いただければ、問題はないでござる......」
「毎日だぁ!?」

ジャジーが卓へ身を乗り出した。

「俺はキス切られかけてんのに、お前は毎日美月のどっかに口つけんのかよ!」
「お主の補給とはわけが違うでござる!」
「それ以上喧嘩したら今日の補給ありません」
「悪ィ」
「申し訳ござらぬ」

一秒で静かになった。

美月は二人を見比べ、少し考える。

「......まぁ、ジャジーの主張は分からなくもない......」
「だろ?」
「仕方ない。ジャジーは二日に一回のキスは継続。私からの返事待ってくれてるし、つまみ食いは目を瞑ります」

しかしジャジーは笑わなかった。

「それは違ぇ」
「え?」
「俺は、お前がしたくねぇもんを無理にさせるつもりはねぇ」

美月が目を瞬く。

「......ジャジー......」
「罪悪感で許可されても嬉しくねぇし、美味くねぇし、虚しいだけだ。回復すること以外になんもいいことねぇ」

予想していなかった言葉に、美月は少し黙った。

やがて頬を赤くし、視線を卓へ落とす。

「......嫌じゃ、ない......」

耳まで赤く染まる。

「ただ......最近のジャジー、積極的すぎて......。私の心臓が保たないだけ......」

ギュン。

明らかにジャジーの中で何かのメーターが高まった。

美月が顔を上げた。

「なんか今聞こえた気がする」
「音はしてねぇ」
「概念擬音が聞こえた」
「もはや哲学でござる」

ジャジーはすっかり緩んだ口元を隠す気もなく、美月へ顔を寄せる。

「......俺とキスするの、嫌じゃねぇんだな?」
「......うん」
「ならいい。二日に一回で耐えてやる」
「上から!」
「淫魔がキスで我慢してんだ。嫌じゃねぇって聞いてなお二日に一回でいいとか、かなり譲歩してんだろ」
「私の心臓が二日に一回小爆発するぅ......」

その横で、鳳ほうが静かに美月を見ていた。

「......美月殿」
「あ、ずっと静かに待っててくれててありがとう、鳳ほう。なぁに?」
「......」
「鳳ほう?」
「......何でもござらぬ......」

美月の目が細くなる。

「溜めてからの『何でもござらぬ』は何でもあるんだよ」

鳳ほうの視線がわずかに泳いだ。

「......海から帰宅次第、伝えたいことがあるでござる」
「?わかった」

美月は特に追及せず、ぱん、と手を叩いた。

「じゃあまとめます!ジャジーは二日に一回、昼のキス継続。スキンシップは今の常識の範囲内で」
「恐ろしいほど色気がねぇ......」
「会議内容のまとめに色気求めないで!」

紙へ視線を戻す。

「鳳ほうは毎夜ごく少量ね。あと海から帰宅次第、何か私に伝達があるということで」
「......うむ」
「じゃあ会議終了!ちょっとこの紙あっちに仕舞ってくるね」

美月が席を立ち、居間から出ていく。

その足音が遠ざかった途端。

「鳳ほう」

ジャジーが鳳ほうを呼んだ。

「何でござるか」
「キスしてぇって伝えんだろ」

ジャジーの正確な推測と確信を持った目に、鳳ほうの肩が跳ねた。

「お主はなぜそういった勘が鋭いのだ!」
「淫魔の下心センサー舐めんな」
「......まだ、返事は頂いておらぬ」
「だからなんだ」

鳳ほうは少し黙ったあと、低く続けた。

「......しかし、返事を頂いていないからといって、我慢するものでもござらぬ」
「おー」

ジャジーの眉と口角が上がる。

「隠世かくりよと人間界の恋愛、絶妙に混ぜたな」
「一人我慢大会をするなと申されたゆえ」
「俺も我慢してる。実質、一人我慢大会じゃねぇな」
「我慢の度合いに大幅な差があるでござる!」
「お前が引っ込めすぎなんだよ!出す方の練習しろ!」
「お主は遠慮や配慮といったものを頭に入れるべきでござる!」
「二人とも、出すとか入れるとかなんの話?」

いつの間にか戻っていた美月が、きょとんと首を傾げている。

「......」
「......」

ジャジーが遠い目をした。

「縫い合わせた語彙ごいが事故ってんな」
「この話は終いでござる」
「なんか急に話が締まったね?」
「お前もう喋んな」
「なんで!?」

ジャジーが額を押さえた。

「“入れる”、“締まった”、“出す”はアウトだ!」
「玉突き事故でござる」
「“玉突き”追加すんな!」
「もうほんとさっきからなんの話なの〜!?」

朝の拠点に、美月の悲鳴が響いた。

深まっていく、ジャジーと鳳ほうとの関係。

その第一歩目の品位は、非常に危うかった。




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転生先は隠世!?〜属性過多の妖怪達に愛され過ぎて、念願のスローライフは享年1日で終了しました〜作者:桜桃
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