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第1話:パーティを追放され、それを受け入れる

 ラスプの冒険者ギルドは賑やかだ。酒場となっている室内の奥は冒険者たちが酒を飲みがやがやと騒がしい。

 クラウスはそんな室内のさらに奥の席でパーティメンバーと集まっていた。端正な顔立ちに映える紅い眼は細められている。馬の尾尻のように結われた長い黒髪がはらりと揺れた。

 周囲は楽しげであるというのに、クラウスたちの間はひんやりとした風が吹いているかのように冷めていた。


「お前、パーティ追放な」


 ツンツンと上げている金髪を掻きながらリングレットは言った。このパーティのリーダーである彼はそのせいか少しばかり態度が大きい。


「......突然だな」

「そうだろうよ。クラウスには何も言ってねぇからな」


 突然のことにクラウスは驚いたけれど、表情には出さずただリングレットを見つめる。彼は知らなくて当然だといったふうだ。


「お前、隠密行動だけ得意でも役に立たねぇじゃん。俺ら、これでもギルドのBランク冒険者だぜ? AやSほどではねぇけど、下位層の奴らとは違うんだ。そりゃあ、お前は顔が良いから交渉には使えたけど、戦闘で役に立てなきゃ困るわけよ」


 顔だけはいいが役に立ってないのならば、このパーティに必要はないとリングレットは告げる。


「クラウスはさぁ。気配消すの得意なの分かるけど、消し過ぎて何処にいるか分からなくなるから困るのよねぇ。あと、その長くてうざったい髪が邪魔。いくら高い位置で結っていても、邪魔なものは邪魔」

「ミラ、言い過ぎだろー」

「だってそうじゃない。黒髪ポニーテールとか格好つけているだけでしょ」


 ミラと呼ばれたワインレッドの魔導士服に身を包む女は眼鏡を上げながら睨む。

 彼女は何かとつけて突っかかってくる女性だ。自分が嫌われているということにクラウスは気づいていた。

 ミラにはいつも言われていた。気配を消すのをやめてくれ、いきなり現れるな、その長い髪をどうにかしろ、顔が良いってだけの男。いろいろ言われてきたので嫌われているというのは伝わっている。

 ふわりと肩にかかる赤茶毛を耳にかけ、ミラは蔑むような眼を向けて言う。


「無表情で何を考えているか分からないんだもの。それで気配消して歩き回るのよ? 気持ち悪いわ」

「それなー」

「二人とも言い過ぎです」

「なんだよ、アンジェもこいつをパーティから外すのは賛成なんだろ?」

「それは、そうだけど......」


 金の長い髪を弄りながらぼそぼそと返すアンジェの言葉にクラウスは眉を寄せた。

 アンジェは幼馴染の女性だ、幼い頃から彼女のことを知っている。クラウスは彼女に僅かな恋心を抱いていた。けれど、彼女は良い所のお嬢様だ。それに比べて自分は捨て子、里親に育てられた身で位の差は歴然だった。

 だから想いなど伝えることはできなかった。そんなもの関係ないだろうと言えたのなら良かったが、クラウスにはそんな勇気はなかったのだ。

 そんな彼女もパーティから外すのに賛成のようだ。幼馴染とはいえ、庇うほどの仲でもないのだから仕方ないと言えば仕方ないことだ。思うことはあるけれどクラウスは黙って話を聞く。


「パーティから外すからってそこまで言う必要はないでしょう」

「なんだよ、アンジェだって気配消して歩き回るの気持ち悪いって言ってただろ」

「それは、そうなんだけど......」

「幼馴染だからって遠慮することねぇんだよ。嫌なら嫌って言えばいいんだ。引っ付いてきた男なんだろ」


 それを聞いてクラウスは苦笑した。いつの間に自分はアンジェにくっついてきた男という扱いを受けていたのだと。

 元はギルドに一人で行くのは不安だから一緒に冒険者になろうと彼女から誘ってきたのだ。どこから変わったのか、どうやらアンジェからそう言っているようだった。リングレットが文句言っていただろうと話している。

(あぁ、嘘か。嘘をついてまで俺と離れたいのか......)

 クラウスはそんなアンジェの気持ちに気づき、一つ息をつき立ち上がった。


「分かった。俺は此処で別れる。今まで組んでくれて感謝する」

「なんだよ、案外あっさりしてるじゃねぇか」


 名残惜しくはないのかとリングレットの不満げな表情にクラウスは片眉を下げる。何を言っても無駄だと言いたげな雰囲気を出しているのはそちらじゃないか。そう言いかけた口をなんとか閉じた。


「リーダーであるリングレットの決めたことだろう。パーティメンバーも賛成しているのなら、俺はそれに従うさ」

「俺様にアンジェを奪われて悔しくはねぇってか?」

「リングレット!」


 アンジェが慌てたようにリングレットを制するその反応だけで彼の言葉が本当であるのは分かった。パーティから外す理由も大半はこれだろうと僅かに抱いた感情がすっと冷めていく。


「別に。アンジェが決めた人に俺が口を出す権利はない。それじゃあな」


 クラウスは馬の尾尻のように結った長い黒髪を靡かせ、酒場を出ていった。背後から何か言われていた気もしなくはないが彼には届いていない。

 酒場を出たクラウスはラスプの街を歩きながら息を吐く。


「さて、どうするかな」


 パーティーから外される冒険者というのはよくいることだ。そうなってしまったなら、自分自身でどうにかするしかない。新しいメンバーを募集しているところへ行くも、一人でやるのも。


「暫く、彷徨うか」


 ぽつりと呟くと青く晴れ渡った空を見上げた。

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第2話:聖女と出会う
パーティを追放されけれど、助けた聖女と共に冒険者として生きていくことにした作者:巴雪夜
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第1話:パーティを追放され、それを受け入れる

 ラスプの冒険者ギルドは賑やかだ。酒場となっている室内の奥は冒険者たちが酒を飲みがやがやと騒がしい。

 クラウスはそんな室内のさらに奥の席でパーティメンバーと集まっていた。端正な顔立ちに映える紅い眼は細められている。馬の尾尻のように結われた長い黒髪がはらりと揺れた。

 周囲は楽しげであるというのに、クラウスたちの間はひんやりとした風が吹いているかのように冷めていた。


「お前、パーティ追放な」


 ツンツンと上げている金髪を掻きながらリングレットは言った。このパーティのリーダーである彼はそのせいか少しばかり態度が大きい。


「......突然だな」

「そうだろうよ。クラウスには何も言ってねぇからな」


 突然のことにクラウスは驚いたけれど、表情には出さずただリングレットを見つめる。彼は知らなくて当然だといったふうだ。


「お前、隠密行動だけ得意でも役に立たねぇじゃん。俺ら、これでもギルドのBランク冒険者だぜ? AやSほどではねぇけど、下位層の奴らとは違うんだ。そりゃあ、お前は顔が良いから交渉には使えたけど、戦闘で役に立てなきゃ困るわけよ」


 顔だけはいいが役に立ってないのならば、このパーティに必要はないとリングレットは告げる。


「クラウスはさぁ。気配消すの得意なの分かるけど、消し過ぎて何処にいるか分からなくなるから困るのよねぇ。あと、その長くてうざったい髪が邪魔。いくら高い位置で結っていても、邪魔なものは邪魔」

「ミラ、言い過ぎだろー」

「だってそうじゃない。黒髪ポニーテールとか格好つけているだけでしょ」


 ミラと呼ばれたワインレッドの魔導士服に身を包む女は眼鏡を上げながら睨む。

 彼女は何かとつけて突っかかってくる女性だ。自分が嫌われているということにクラウスは気づいていた。

 ミラにはいつも言われていた。気配を消すのをやめてくれ、いきなり現れるな、その長い髪をどうにかしろ、顔が良いってだけの男。いろいろ言われてきたので嫌われているというのは伝わっている。

 ふわりと肩にかかる赤茶毛を耳にかけ、ミラは蔑むような眼を向けて言う。


「無表情で何を考えているか分からないんだもの。それで気配消して歩き回るのよ? 気持ち悪いわ」

「それなー」

「二人とも言い過ぎです」

「なんだよ、アンジェもこいつをパーティから外すのは賛成なんだろ?」

「それは、そうだけど......」


 金の長い髪を弄りながらぼそぼそと返すアンジェの言葉にクラウスは眉を寄せた。

 アンジェは幼馴染の女性だ、幼い頃から彼女のことを知っている。クラウスは彼女に僅かな恋心を抱いていた。けれど、彼女は良い所のお嬢様だ。それに比べて自分は捨て子、里親に育てられた身で位の差は歴然だった。

 だから想いなど伝えることはできなかった。そんなもの関係ないだろうと言えたのなら良かったが、クラウスにはそんな勇気はなかったのだ。

 そんな彼女もパーティから外すのに賛成のようだ。幼馴染とはいえ、庇うほどの仲でもないのだから仕方ないと言えば仕方ないことだ。思うことはあるけれどクラウスは黙って話を聞く。


「パーティから外すからってそこまで言う必要はないでしょう」

「なんだよ、アンジェだって気配消して歩き回るの気持ち悪いって言ってただろ」

「それは、そうなんだけど......」

「幼馴染だからって遠慮することねぇんだよ。嫌なら嫌って言えばいいんだ。引っ付いてきた男なんだろ」


 それを聞いてクラウスは苦笑した。いつの間に自分はアンジェにくっついてきた男という扱いを受けていたのだと。

 元はギルドに一人で行くのは不安だから一緒に冒険者になろうと彼女から誘ってきたのだ。どこから変わったのか、どうやらアンジェからそう言っているようだった。リングレットが文句言っていただろうと話している。

(あぁ、嘘か。嘘をついてまで俺と離れたいのか......)

 クラウスはそんなアンジェの気持ちに気づき、一つ息をつき立ち上がった。


「分かった。俺は此処で別れる。今まで組んでくれて感謝する」

「なんだよ、案外あっさりしてるじゃねぇか」


 名残惜しくはないのかとリングレットの不満げな表情にクラウスは片眉を下げる。何を言っても無駄だと言いたげな雰囲気を出しているのはそちらじゃないか。そう言いかけた口をなんとか閉じた。


「リーダーであるリングレットの決めたことだろう。パーティメンバーも賛成しているのなら、俺はそれに従うさ」

「俺様にアンジェを奪われて悔しくはねぇってか?」

「リングレット!」


 アンジェが慌てたようにリングレットを制するその反応だけで彼の言葉が本当であるのは分かった。パーティから外す理由も大半はこれだろうと僅かに抱いた感情がすっと冷めていく。


「別に。アンジェが決めた人に俺が口を出す権利はない。それじゃあな」


 クラウスは馬の尾尻のように結った長い黒髪を靡かせ、酒場を出ていった。背後から何か言われていた気もしなくはないが彼には届いていない。

 酒場を出たクラウスはラスプの街を歩きながら息を吐く。


「さて、どうするかな」


 パーティーから外される冒険者というのはよくいることだ。そうなってしまったなら、自分自身でどうにかするしかない。新しいメンバーを募集しているところへ行くも、一人でやるのも。


「暫く、彷徨うか」


 ぽつりと呟くと青く晴れ渡った空を見上げた。

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パーティを追放されけれど、助けた聖女と共に冒険者として生きていくことにした作者:巴雪夜
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